「魔法少女ちゅうかなぱいぱい！」第18話「ザ・偉人伝」 前編

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　第18話「ザ・偉人伝」（1989年5月14日）

　またしても、母親代わりをしている三バカ兄弟のことで、学校に呼び出されたぱいぱい。今回は次男のトオルについてであった。

　
　森「私、トオル君の担任の森です」
　ぱいぱい「はじめまして……あの、トオル君が何か？」
　森「今日もドリルをやってきていません……私もどうすればトオル君のやる気を引き出せるか考えましてね」

　
　森「ナポレオン、聖徳太子……」
　ぱいぱい「豊臣秀吉、エジソン……なんですか、これは」
　森「偉人伝です。トオル君もこういう立派な人たちの伝記を読めばそれを見習ってやる気が出る筈です……ライト兄弟、ナイチンゲール、西郷隆盛、アレキサンダー大王……」

　
　森「……森進一！」

　最後に、突然、森進一のモノマネ（営業の切り札）を繰り出す森先生。

　森先生は一応準レギュラー扱いだが、演じているのは森篤夫さん。
　森篤夫さんと言えば、「少女コマンドーいづみ」第10話の石津の部下役がお馴染みだが（知るかっ）、実は、「メタルダー」のクールギンの声など、声優としても活躍されているらしい（……と言うことをついさっきウィキペディアで知った）。

　と言う訳で、ぱいぱいは大量の伝記本を抱えて、家に帰ってくる。

　
　トオル「先生、これを全部俺に読めって？」
　ぱいぱい「そうなのよ、無理よねえ、こんなに……」

　持って帰ったものの、その膨大な量にぱいぱいもいささか途方に暮れた様子であった。トオルたちは手を出そうともしない。

　
　そこへ、三軒茶屋のババアが現れ、森先生のアイディアに全面的に賛意を示す。
　ぱいぱいは、「偉人伝を読んで偉人になるのなら、世の中偉人だらけではないか」と、懐疑的であった。

　アキラ「だいたいこんなに一杯偉い人がいたのにどうして世の中はちっとも良くならないんですか？」
　シンゴ「偉い人はみんな死んじゃったからさぁ」
　トオル「だぁれも残ってない」
　三バカ「うわーっはっはっはっはっ」

　三バカも、ぱいぱいに同調するように「偉人」を笑い飛ばす。

　ババア「おだまり！　トオル、その本持ってこっちおいで！　お前たちも手伝って！」

　が、すっかりその気になったババア、先生に言われるままトオルに伝記を読ませるつもりらしい。

　
　ひとり残ったぱいぱいの「どうかなぁ？」と言う表情がとても可愛いのである！

　なんだかんだで、ババアには逆らえないトオルは、ババアの監視下、朝も昼も晩も夜も延々と偉人伝を読ませられる。

　一日目の夜。

　
　ババア「あー、これチャーシューでっかいわ」

　二日目の夜。

　
　ババア「苦労してんだねえ……」

　と、ババアが泣きながら読んでいるのは、他ならぬ原作者の石ノ森章太郎さんの伝記だったりする。

　これは自分も是非読みたい。

　三日目の朝、

　
　玄関先で顔についたゴミを、コンパクトを見ながら取り除いているぱいぱいが可愛いのである！

　
　その前に、森先生が現れる。
　ぱいぱい「森先生！」
　森「トオル君は読んでますか、偉人伝」
　ぱいぱい「ええ、三日三晩ぶっ続けで読まされてます」

　
　やがて、ババアが誇らしげに、体じゅうに偉人伝をぶらさげたトオルを連れて玄関から出てくる。
　森「トオル君、偉人伝を読んでどう感じたか言って見なさい」
　トオル「はい、二宮金次郎は貧しさに負けず、幼い頃から働き……ナポレオンは一日に4時間しか眠りませんでした……」
　森「ようし、君も偉い人を手本にして努力しようと言う気になったろう？」
　トオル「いいえ」
　森「どうしてまた？」
　トオル「あーあー、俺こんな偉い人たちの真似、逆立ちしたって出来ないよ、そう思うとやる気なくしちゃった……」

　
　トオル「ああ、俺はダメなんだ、生きていくのも恥ずかしい……」

　前よりますますやる気をなくしたように、ふらふらと何処かへ行ってしまうトオルの後ろ姿を、大人たちは茫然と見送る。

　
　ぱいぱい「先生、逆効果です。トオル君はすっかり自信を無くしてしまって……どうするんですかっ」
　森「もう、匙を投げるしかありません、へっ」

　森先生、そう言いながら本当にスプーンを取り出して、放り投げて見せる。

　森「トオルほどどうしようもない子は見たことがない」
　ぱいぱい「いいえ、やり方次第でドリルだってちゃんとやる子です」

　森先生、漢字ドリルを取り出して、明日の朝8時までにトオルに1ページでもやらせてみろと、ぱいぱいに挑戦する。

　
　その挑戦に応じ、強く唇を結んで頷くぱいぱいが可愛いのである！

　森「それが出来たら、私は校庭の真ん中で裸になって行水して見せます。しかし、トオル君がドリルをやらなかった時は……」

　
　森「このコンパクトを頂きます」
　ぱいぱい「コンパクト？　……いいわ」

　唐突に意外な交換条件を持ち出す森先生であったが、ぱいぱいは少し考えてから、重々しく約束する。

　
　そのトオル、公園のベンチに腰掛け、ニクマンをやけ食いしていた。
　トオル「俺なんて生きてる資格ないから、ニクマン喉に詰めて死んでやる！」
　ぱいぱい「ちょっ、ちょっとやめなさいって」

　
　バカはバカなりに深刻に落ち込んでいる様子を見て、ぱいぱいも悲しそうな眼差しになる。

　その後、本屋で何やら物色しているぱいぱい、そこへアキラたちがやってくる。

　シンゴ「こんなところでなにしてるの？」
　ぱいぱい「いい、トオル君は偉人伝を読んで自分と比べて落ち込んじゃったでしょう。だったら逆にうーんとダメな人のことを書いた本を読んだら俺の方がマシだって、少しは自信がつくんじゃないかしら？」

　
　ぱいぱい「あの、伝記ありますか、徹底的にダメで何の取柄もない人のことを書いた伝記」
　店主「ええっ、そんな本ある訳ないでしょう。ふざけんでください」

　ぱいぱい、店主に聞いてみるが、当然相手にされない。

　アキラは、伝記じゃなくても、ダメ人間の実物がいるのではないかとぱいぱいに指摘する。

　ぱいぱい「誰のことよ？　……あっ」
　何か思いついたのか、パッと笑顔になるぱいぱい。

　ここは、トオルたちの父親・行男もありかと思ったが、今回ぱいぱいが思い浮かべたのは、ヌルハチたち中華魔界からの刺客コンビであった。

　次のシーンでは、いかにもヌルハチたちが潜んでいそうな森の中を、中華魔女の姿で疾走しているぱいぱい。

　
　ぱいぱい「ヌルハチとタクラマカンの、ドジー、間抜けー、腑抜けー、おたんこなすの臆病者ーっ！」

　木立の間に立ち、大きな声で二人の悪口を並べ立てる。

　果たして、「誰だ俺たちの悪口を言ってる奴は？」と、反応がある。

　

　
　その瞬間、振り向くぱいぱいの顔が凛々しくて可愛いので貼りました。

　空中から、ヌルハチとタクラマカンが出現し、思い出したようにぱいぱいを捕まえようとする。

　くどくて済みませんが、二人は元々、ぱいぱいを中華魔界に連れ戻すと言う五目殿下の使命を帯びて人間界に来ているのだ。

　
　無論、二人はぱいぱいには歯が立たず、あっさりと返り討ちに遭う。

　自分も小沢なつきさんに思いっきり蹴られたいと思った人、手を挙げて！

　……あ、俺だけか（ただの変態だ）。

　ヌルハチ「いくらやってもダメだなぁ」
　ぱいぱい「お前たちのそのダメさをトオル君に見せてあげて欲しいのよ」

　トオルが池のそばのベンチに寝転がって落ち込んでいると、ぱいぱいが来て、「あれを見て」と指差す。

　
　トオルがそちらを見ると、「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損損！」などと歌い踊りながら、ヌルハチとタクラマカンが近付いて来るではないか。

　
　ぱいぱい「あの二人はこの世で最低の人間です！　金に汚く女にはスケベ、これっっっぽっちも取柄のない人間なのよ」
　トオル「……」

　呆気に取られて踊り狂う二人を見詰めるトオル。

　ぱいぱい「あんなダメな二人でも図々しくケロッと生きてるの……トオル君は自分とあの二人、どっちがましな人間だと思う？」
　トオル「そりゃ俺さ」
　ぱいぱい「でしょう？　だったら何も落ち込むことないじゃない。さ、勇気を出してドリルに挑戦して」
　トオル「でもさぁ、あの二人を見てたら分かったんだ」
　ぱいぱい「なにがぁ？」
　トオル「ダメでも陽気に生きられるってことが！　だったら俺も勉強するのやめた！」
　ぱいぱい「ちょっと、トオル君！」

　
　トオル、そう言うと二人の後に続いて浮かれたように踊りまくるのだった。

　ぱいぱい「あーあ、また裏目に出ちゃった……」

　後編に続く。