第31話「死斗!ありくい魔人アリガバリ」(1971年10月30日)
一度入った人間は誰も戻って来ないと言う物騒な言い伝えのある南アルプスの天狗岳。
そんな伝説もものともせず、元気と夢がモリモリの山田と井崎の仲良しコンビが天狗岳へ山登りにやってくるが、速攻で怪物が現れ、山田を襲って何処かへ連れて行こうとする。
井崎は勇敢にも、怪物……怪人アリガバリに立ち向かい、山田を取り戻そうとするが、山田はアリガバリの毒を注入されてどろどろに溶解してしまう。
アリ「このアリガバリ様のアマゾンの呪いと名付けられた細菌に耐えられるかどうかな?」
井崎は奮闘するが、結局怪人にのされて、井崎同様、細菌の実験台にされそうになるが、その時、空中からゾル大佐の声が響く。地下のアジトからモニター越しに話しかけているのだ。

ゾル「待て、アリガバリ、その男は十分に細菌に耐える。奴には細菌をばら撒く役目をさせる。そのようにコンピューターのデータでは、利用価値があることを示している」
アリ「すると、こやつを使い、俺が力を発揮する時が来た訳ですな」
ゾル「はっはは、そのとーりだアリガバリ、お前ならたとえ仮面ライダーが気付き、挑戦して来ようとも奴を撃退することが出来る。ゆけ、アリガバリ、天狗岳から里に下って猛威を振るうんだ」
アリ「やる! 俺は今日と言う日を待っていたのだ!」
ゾル「あ、うん、そうだね。あんまり無理しないようにね、ハハ……」 ゾル大佐、アリガバリの必要以上に高いテンションに少し引いていた(註・嘘である)。
その後、ふもとでは伊崎の弟・武夫がひとりで兄を探しに行くんだと息巻いて、村人に止められていた。

村人の制止を振り切って山に入りかけた武夫だったが、案に相違して、すぐに兄が元気な姿を現わす。
村人「良くまあ無事で、連れはどうしたね」
井崎「仲間の山田は霧にまかれて崖から落ちて死んだ。僕は霧が晴れるのを待って……」

淡々と説明する井崎であったが、誰よりも兄のことを知る武夫は(違う、お兄ちゃんとどこか違う!)と、違和感を感じていた。
ちなみに武夫少年を演じるのは、後に「星雲仮面マシンマン」でスーパーヒーローをさわやかに演じることになる作久田修さん。で、井崎青年役は、「レッドバロン」のボスこと、大下哲也さんである。
その夜、井崎は武夫が眠ったのを確かめると、団地の部屋を出て、別の部屋を訪ねる。
井崎「3階の井崎ですが、少々お願いが」
男「はい、今開けます……何か?」
寝惚けまなこをこすりながらドアを開けた男性を押し戻すようにして、さっさと上がり込む井崎。
男「井崎さん、こんな真夜中に
」 普通の台詞も、こうやって装飾すると全然別の意味になるから不思議である。
無論、彼らは別に禁断の愛に落ちている訳ではなかった。
井崎「あなたも私のようにショッカーの為に働くのです!」
井崎が不気味に笑うと、その背後にぬっとアリガバリが立つ。
……
翌朝、五郎と武夫が連れ立って登校している。

五郎「そりゃあお前の考え過ぎじゃないかな」
武夫「そうかなぁ、俺にはどうしても兄ちゃんじゃないような気がして仕方がないんだ」
五郎「良く大人が言うじゃんか、人間生死の境を彷徨うと、性格が変わるって……きっと遭難のショックで変わっちまったんだよ」
武夫「食べ物の好き嫌いまで変わるかなぁ。山から降りてきてからご飯を全然食べないんだぜ……夜中にこっそり抜け出して何か食べてる様子なんだ」
五郎「へーっ、まるで怪談じみてるな」
武夫「ひとつ気になることがあるんだ。お兄ちゃんが帰ってきてから団地の回りに急にアリがいなくなったんだ……」
当時としては飛び抜けて演技のうまい子役二人であった。周りの子供たちがまるっきり素人なので、ますますその演技が際立つ。
武夫の話に五郎も興味をそそられ、その夜、武夫と二人で部屋を抜け出した井崎の後に付いて行く。
果たして、井崎は、団地の一角まで来ると土に直接口をつけて、蟻を食っているではないか。

武夫「どうして蟻なんか食べるんだよ!」
井崎「俺の体に巣食ったアマゾンの呪いの細菌を養う為には蟻を食い続けなければならない」
五郎、隼人に助けを求めに行こうとするが、背後から戦闘員も現れ、取り囲まれる。
井崎の背後から、さっきと同じようにアリガバリが登場する。

武夫「お兄ちゃんに何をした?」
アリ「お前の兄はショッカーの実験台になった。俺はお前の兄を使い、この団地の人たちにショッカーの発明した細菌を植え付け、破壊活動を行わせる!」
いつもながら、質問には懇切丁寧に答えてくれるショッカーの皆さんであった。
と、頭上から隼人の笑声が響く。見上げれば、いつの間にか隼人が3階のベランダに立っているではないか。
隼人「……と言う訳か」
アリ「おのれは!」
隼人「普通の人の姿を使って破壊活動をするとは、考えたもんだな」
隼人は五郎たちの目の届かないところで変身して、アリガバリと戦う。
が、ゾル大佐が豪語したように、アリガバリは強力で、ライダーキックをまともに受けても平気な顔をしている。思わず飛び出した五郎、怪人に張り倒されて重傷を負う。そしてライダーも投げ飛ばされ、頭部を激しく打ち、苦痛に呻き声を漏らす。

五郎、おやっさんたちに見守られながら、病院のベッドで苦しみもがいている。
医者「今日一杯
小峠です」
五郎「なんて日だ!」 じゃなくて、
医者「今日一杯が峠です」
マリ「いやーっ、死なないで五郎」
ユリ「先生、私の血を全部取って下さい」
医者「全部取ったら死にますよ」
ユリ「あ、じゃあ、結構です」
医者によると、五郎は体の傷もさることながら、「ライダーが負けた」と言う事実に激しい精神的ショックを受けていて、それが怪我にも影響しているらしい。

と、自身も頭に包帯を巻いた隼人が入ってくる。
マリ「隼人さん、五郎の看病は私たちが引き受けるわ」
五郎「ライダー! 負けた……」
隼人「五郎、頑張るんだ。仮面ライダーは負けやしない。きっとショッカーの怪人に勝つ」
マリの立体的なおっぱいが素晴らしいですね。

病院の外へ出て、天を仰いで叫ぶ隼人。
隼人「五郎! すべては、すべては俺の責任だ……」 立花(変な人がいるなぁ……視線を合わせないようにしよう)
じゃなくて、
立花「五郎にとって仮面ライダーは尊敬と憧れの的だった。その仮面ライダーが目の前で一敗地にまみれ、しかも五郎は重傷だ。体の傷と心の傷、このふたつがいいか、隼人、今、五郎の気力を奪いかけてるんだ」

隼人「おやっさん、だが今の俺には……とてもアリガバリを破る自信は……」
隼人が言いかけると、おやっさんがいきなり隼人の顔をぶん殴る。
立花「ばきやろう! たったひとりの子供もかなえてやれずに、やれ正義だの人類を守るだの、でかい口叩くな!」
必要以上に隼人に厳しく当たるおやっさん。何か嫌なことでもあったのだろうか?(天皇賞で7万円スッたとか)

父親のように慕うおやっさんから愛の鉄拳を受け、キュウ~ッとなる隼人。
が、その向こうを、平然と通行人が歩いていくのが今のドラマではまず考えられない無神経ぶりである。

立花「この世の中に絶対なんてありゃしない。一度や二度痛い目に遭ったからって尻込みするほど貴様って奴は腰抜けなのか?」
隼人「おやっさん!」
立花「馴れ馴れしく呼ぶな!」 ……いや、さすがにそこまで言うのは厳し過ぎるのでは?
「仮面ライダー」名シーンのひとつではあるが、おやっさんのあまりに突き放した態度に、違和感が拭えないのである。

隼人「いや、呼ばしてくれ、おやっさん、今の俺にはおやっさんの言葉だけが……」
折角隼人が何か感動的な台詞を言おうとしているのに、ユリが慌てた様子で駆けて来る。
なんかこのシーンのユリの脚が妙に色っぽく見えるのだ。
ユリ「会長、五郎が、五郎が……」
立花「なにっ」
再び病室へ行くと、五郎はもう危篤状態に近かった。
医者「この少年の生死は、あとは気力の問題です!」(お前は治す気ないんか)
マリ「こんな時にっ」
ユリ「どうして仮面ライダーは来ないの?」
その仮面ライダーこと隼人は、裏山でひとりアリガバリに対抗する為の特訓を行っていた。
が、ひとりではなかなかそれも難しく、苦悩する隼人であったが、そこへ良き相棒の滝が現れる。
滝「五郎の為だ。俺も一役買うぜ!」
隼人は滝を練習台にして、遂に新しい技を編み出す。

隼人「出来たぞ、滝、新しい技がっ」
ちなみに、そのキックを受けた岩は割れ、さらに巨大な爆発が起きている。
さすがに、普通の岩を蹴ったくらいで爆発はしないんじゃないかなぁ?

勇躍、二人があの団地へ向かうと、既にショッカーは細菌をすべての住民に注入し、立ち去っていた。
ここでは、住民は眠ったように意識を失っている。
最初の被害者・今夜が山田さんはドロドロに溶けてましたが……。
「アフリカの呪い」は話の途中で作用がコロコロ変わる、得体の知れない細菌である。
その後、ライダーはアリガバリに再び挑む。

ライダーの新技「ライダー卍キック」は、ジャンプして体にひねりを加えながら放つもので、蹴る瞬間、体が「卍」の形に見え……見え……見えないこともないところから、そう命名された。
ライダー「勝った、私は勝った!」

隼人は、アジトにあったと言う解毒剤を、井崎たちに飲ませる。
……毎度のことだが、なんでわざわざ解毒剤を用意しているのだろう?
解毒剤を飲んだ井崎は、ポヨーン! みたいな効果音と共に正気に返るのだった。
……もっと他に適切な効果があったと思うのだが。
滝は、隼人にすぐ五郎のところへ行くよう促し、他の住民ひとりひとりに解毒剤を飲ませて行く。

滝「……待てよ」
滝、この際だからと、この美人姉妹のおっぱいを思う存分、心行くまで揉んでから、解毒剤を飲ますのだった。

隼人は、ライダーの姿になってヒョコッと病室の窓に立つ。
ライダー「五郎君、私は勝った。アリガバリに勝った。五郎君も早く病気を治すんだ」

五郎「うん、僕もきっと良くなるよ」
ライダー「うん、武夫君の兄さんも無事だったぞ」
ライダー、手を振って去って行く。
しかし、五郎の様子を見る限り、ライダーが励ましに来なくても普通に治ってたんじゃないかなぁ。
ライダーに呼ばれた時点でガバッとベッドに上に起き上がってるもんね。血色メチャクチャ良いし。
五郎の興奮した声に、看病疲れで眠りこけていたマリたちも目を覚ます。

五郎「仮面ライダーが来たんだよ! 仮面ライダーは本当に怪人に勝ったって告げに来たんだよ」
ユリ「会長、五郎の様子が変よ」
立花「変じゃない。仮面ライダーは五郎の為に戦ったんだ。そして勝った。五郎、お前が仮面ライダーに力を与えたんだ」
なかな感動的な結末であったが、どうせなら、おやっさんが(隼人、良くやったな!)と、心の中でねぎらうシーンが欲しかったところだ。
それにしても今回のショッカーの作戦は具体的に何をしたいのか、さっぱり分からなかったなぁ。ぽてちん。