第11話「土グモ一族の頭 土鬼見参!」(1987年1月22日)
「影」との戦いがいよいよ激化する第11話。

冒頭、ミヨズ(屋敷かおり)が護摩壇の前で祈念し、彼らと同じ「影」の一族を呼び寄せている。
ミヨズ「影の子らよ、集え!」
ミヨズの呼びかけに応じ、背後に忍びの影が現れる。
ミヨズ「我らに立ち向かわんとするおなごがひとり、額にカーンの梵字を持つ風魔、そのもの、ヴァジュラを身に付けておるやもしれません。どなたかヴァジュラを奪い、おなごを消して頂けませぬか?」

巨大な影から別の影が分離し、六道衆のひとり、土ぐも一族の頭領・土鬼と言う、黒子のような格好をした男の姿になる。
OP後、礼亜が三姉妹に任務の説明をしている。

礼亜「昨日、地獄明王アグニの像が三つ発見されました」
唯「地獄明王アグニの像ってなんね?」

礼亜、資料を三人に見せる。
礼亜「影が信奉する邪悪な火の神です。アグニの像あるところ、必ず影の存在あり、発見されたのは松風森林公園、武蔵丘霊園、朝日ヶ丘公園の三箇所……調べて貰えますか?」
と言う訳で、三人は手分けしてアグニの像が発見された場所へ行き、アグニの像を調べてくることになるのだが、そもそも、「誰が」「どういう状況で」アグニ像を発見したのか、さっぱり情報が与えられておらず、その知らせが一般に報道されているのかどうかも分からない。

三人で行こうとすると、般若おじさんが出てきて
「罠かも知れぬ、影が信奉するアグニ像はそう簡単に人目に触れるものではない。それが三つも見付かった、おかしいとは思わぬか?」と、自分たちで調査を依頼しておいて、そんなことを言い出すのであった。
三人(聞かれても……)
般若「視覚、聴覚、嗅覚、全てを研ぎ澄まさねば敵のまやかしの術には勝てんぞ」
般若、そうアドバイスしてから三人を送り出す。

んで、早くも由真の「ジレンマ」が流れる中、三人はマップを手に、それぞれ分担の場所へアグニ像をチェックに行くのであった。
結花は武蔵丘霊園、由真は朝日ヶ丘公園、唯は松風森林公園。
しかし、「発見された」と言うことは、既にアグニ像はしかるべき施設に保管されてるんじゃないのかなぁと思うのだが……。

結花がひょいと岩の後ろを覗き込むと、

アグニ像がポンと置かれていた。
……これって、発見された言うより、捨てられてるんじゃないの?
この状況だけ見ても不自然過ぎるのだが、

結花は般若に言われたことを思い出して精神を集中し、それが砂で作られたまがいものに過ぎないことを見破る。

由真の場合は、いくつもある石のベンチの下を覗き込むと、

やはりアグニ像がポンと置いてあった。
これなんか、むしろ、「由真が発見した」と言うべき状況だろう。
最初から「アグニ像が何処其処に隠されていると言う情報が入ったので、行って調べて欲しい」と言う指令の方が良かった気がする。
で、由真も、心眼を研ぎ澄まして、それが土くれだと言うことを見抜く。

唯の場合、木の根元に置いてある像を見付け、何の気なしに持ち上げようとすると、落ち葉の中に潜んでいた忍びに足首を掴まれる。
無論、土ぐも一族は、唯がカーンの梵字を持つ少女であることをあらかじめ知らされていたのだ。

唯は、忍びの放ったロープに縛られて、身動きできなくなる。

唯「くそう……」
すぐ、その額にカーンの梵字が浮かび上がる。

土鬼「なるほどのう、額にカーンの梵字を持つ風魔か」
唯「貴様、なにもんじゃっ」
土鬼「六道衆のいち、土ぐも一族かしら、土鬼! このアグニ像とヴァジャラと交換せぬか」
唯「ヴァジュラ? なんじゃそりゃ?」
土鬼「とぼけるな、おぬしが持っていることは分かっておる」
だが、唯はそんなものは知らないと言い張る。実際、この時点ではヴァジュラのことは何も知らないのだから、他に答えようがないのであった。

土鬼「それでは用はない、死んで貰う」
唯、そのまま宙に引っ張り上げられる。
これも、浅香さん本人が吊り上げられている。なかなかえらいよね。

ヨーヨーで反撃して、ロープで宙を滑空する時も本人が演じている。
土ぐも一族の包囲網を突破した唯であったが、樹上にいた土鬼の妹・奇羅(きら)が垂らした毒蜘蛛に噛まれてしまう。
一方、結花と由真は先に自宅に戻ってくるが、既に家の中に土ぐも一族の忍びが入り込んでいた。
さすがに二人はそれを察知すると、彼らを撃退する。
唯の部屋に行って見ると、部屋は空き巣に入られたようにめちゃくちゃに荒らされていた。
恐らく、ヴァジュラを捜していたのだろう。
結花と由真、般若に土ぐも一族のことを伝えてから、松風森林公園に唯を探しに行く。

般若、勝手で家に上がり込み、放り出されていた唯の雛人形を手にする。
般若「遂に始まったか、何もかも動き出す、何もかもが……」
その唯は、公園の物置小屋に入り込んでソファに横たわり、毒の苦しさに耐えていた。

そのぼやけた視界の中、結花と由真らしき人影が、複数の忍びと戦っている姿が見える。
由真「唯、しっかりしろ」
結花「唯、もう大丈夫よ」
姉たちの言葉を遠くに聞きながら、唯は安堵のあまり意識を失う。

唯、目を覚ますと、自分の部屋の布団に寝かされていることに気付く。
唯「くんくん、ああー、味噌汁の匂いじゃ……そうか、助かったんじゃ」
唯、自分が宮崎から持って来て、値打ちのありそうなものは雛人形の女雛しかなかったので、「これのこと、どっかの方言でヴァジュラっちゅうんかのう?」と、方言丸出しで考え込む。

唯、それを持ったまま、1階に降りる。
結花は背中を向けて包丁を使っていて、由真は居間でお茶を飲んでいる。
唯「姉ちゃん、雛人形のことを、どっかの方言でヴァジュラっちゅんじゃろか?」
結花「さあ、でもどうして?」

唯「あいつら、わちがヴァジュラっちゅうものを持っちょるって言うちょった」
由真「他にヴァジュラの心当たりは?」
唯「それがないんじゃ、これは母ちゃんの形見やし……」

その瞬間、唯、強烈な違和感を覚え、緊張に顔を強張らせる。
唯(違う……)
唯、結花の包丁のリズムや、由真の話し声が、いつもと微妙に違うことに気付く。
そう、二人もニセモノで、唯からヴァジュラについて聞き出そうとしていたのだ。
このシーン、最初から結花と由真の顔を映さないように工夫されていて、シリーズ全体でも印象に残るシーンとなっている。

唯が「違う!」と叫ぶと、結花は土鬼に、由真は奇羅の姿に変わる。
唯、雛人形を土鬼に奪われる。

土鬼「土ぐも一族かしら・土鬼」
奇羅「同じく、妹・奇羅!」
土鬼「よくぞ、我らが空蝉の術を見破った」
奇羅「第一の目的は果たした。後は……」
二人は蜘蛛の糸で唯の動きを封じ、その場で唯を殺そうとする。
が、本物の結花と由真が助けに来た為、土鬼は唯を殺すのは諦めて、引き揚げようとする。

森の中、土鬼は雛人形を置いて、ヴァジュラの本体を取り出そうとするが、そこへ般若が登場。
土鬼「貴様、風魔鬼組、般若!」
般若「いかにも、哀れ、土ぐも一族、影に飲まれてしもうたか……」
般若、そう言って雛人形を掲げて見せる。
ハッとして土鬼が唯から奪った雛人形を見ると、それは土の塊に過ぎなかった。
彼らの得意とする空蝉の術で、逆に彼らを騙すと言うのも見ていて快感を覚える優れたストーリーである。
で、色々あって、土鬼は般若に倒され、

奇羅は、兄が死んだのを見ると、自ら首に毒蜘蛛を噛ませ、兄を追って自害する。
二人とも、死ぬと体が土の塊となって崩れるのが不気味であった。

般若「よく見ておけ、それが影に魂を売ったものの末路だ……」
結花「恐ろしい、恐ろし過ぎるわ」
由真「信じられない……」
この世のこととは思えない現象を目の当たりにして、結花と由真は声を震わせて立ち尽くす。

だが、唯は、土鬼の攻撃を受けて般若の面がずれた時、一瞬覗いたその顔が、自分たちの良く知るある人物に似ていたことの方が気掛かりなのだった。

唯「般若、あの男……」
12話へ続く。