第21話「東京ニュータウン沈没」(1973年8月24日)
虫かごと網を手に、炎天下でセミ取りをしている光太郎と健一。
だが……

健一「何処にセミがいるって言うのさ?」
光太郎「困っちゃったなぁ、僕が子供の頃はこの辺一帯は武蔵野の林が延々とあったんだ。それで夏になると毎日セミを取りに来てたんだがなぁ」
子供の頃とは様変わりした人工的な団地を前に、光太郎は嘆く。
健一「だけど、光太郎さんの子供の頃なんてもう20年くらい前のことだろう」
光太郎「なにをっ!! 違うよ、10年そこそこ前のことだ」

光太郎「それにしてもどんどん町が広がっていくスピードは凄いもんだな……」
健一「折角早起きしてここまで来たのになぁ」
休むことなく続く都市開発……言い換えれば自然破壊に対する批判的な眼差しは、「タロウ」ではちょくちょく見られる。
その時、二人の耳に何処からかセミの鳴き声が聞こえてくる。
団地の公園の一角にあるマンホールの中からしているようだと、蓋を持ち上げようとする二人だったが、

彼らの前に、セミの入った虫かごを持った少年が現れる。
一学期まで健一の同級生だった正一少年であった。
健一「正一君はクラス一の昆虫博士だったんだ。虫のことなら何でも知ってるのさ」
光太郎「なるほど、それでセミを持ってるんだな……何処で採ってきたんだい」
正一「ああ、これ、スーパーで買ってきたのさ!! 今時分、こんなところにセミがいるわけないだろう」
今では、スーパーでなんでも売っていると聞かされ、光太郎は不機嫌そうにそっぽを向く。

健一「良いなぁ、僕も欲しいなぁ」
健一のもの欲しげな声に、苛立たしそうにガシガシと髪を掻き毟る光太郎だった。
それでも結局、スーパーで買ったのだろう、数羽のセミを部屋のカーテンに張り付かせてその鳴き声を聴いている光太郎と健一。

さおり「うるさいわねえ、もうミンミンミンミンいい加減にしてよ。英語の勉強が全然出来ないじゃないの」
ムチムチした体を揺すりながら、さおりタンが入ってくる。

しかし、光太郎の後頭部が邪魔で、よく見えないのが悲し過ぎるのだった。
管理人は、この時ほど、光太郎の後頭部が憎いと思ったことはない。
さおり、いかにも若い女性らしく、殺虫剤を吹きかけ、セミを殺そうとする。
虫好きの管理人的にはありえない行動である。

健一「お姉ちゃん!!」
光太郎「さおりさん!! いくらうるさいからって、そこまでやるのはやり過ぎだよ!!」
これには、さすがに光太郎が声を荒げる。
その後、

再びあの団地のミニチュアセットが映し出されるが、パッと見、実景にしか見えない。
正一少年も、母親からセミの声がうるさいとやかましく言われていた。
さっさと標本にしろと言われるが、正一少年は、7年間も土の中にいて、地面に出ても1週間で死んでしまうセミがかわいそうだと反発する。
ZATでは、光太郎のセミの話から、自然がどんどんおかしくなっていると隊員たちが雑談していた。

森山「副隊長!!」
荒垣「あん?」

森山「東京ニュータウンで異常振動が発生しています。ZATの出動を要請していますが……」

光太郎「東京ニュータウンだって? 昨日行ったところじゃないか……」

森山いずみ隊員の顔を頭の上に乗せて考え込む新垣。
このZAT内のシーン、いちいちカメラアングルが凝っていて面白いのである。
荒垣「出動!!」

団地の道路に、大きな亀裂が走る。
無論、ミニチュアセットによる特撮だが、素晴らしいの一言。

続いて、団地がゆらゆら動いて地面に沈んでいくシーンも実にリアルである。

正一少年も一度逃げかけるが、セミの虫かごを取りに傾いている建物に引き返す。
光太郎が後を追って助け出すが、その際、壁を破って赤い目を光らせる巨大な怪物を目撃する。
震動はほどなく収まる。

団地の公園で、話し合っている隊員たち。
荒垣「なに、この地下に怪獣が?」
正一「違うよ、怪獣じゃない、凄いでっかいセミの幼虫がいるんだ……おじさんたち、何も分かっちゃいないんだ、今から7年も前にセミのお母さんが卵を産んだんです。それがここにニュータウンを建てたんで、地上へ出られなくなってしまったんだ」
光太郎「そう言えば昨日、マンホールの中でセミが鳴いてたような気がするが……」
荒垣は、南原に命じてホエールで団地の地表を引き剥がして、怪獣を外へ出そうとする。

果たして、地中には巨大なセミのような幼虫(と言うかサナギ)がいて、その中からセミの成虫のような怪獣が這い出してくる。
羽化したばかりで、まだ羽が固まっていないのか、団地の中を這い回るセミ怪獣キングゼミラ。

正一「やめてくれ、あれはセミだよーっ」
光太郎「だって君、あれはセミじゃないぜ」
正一「足は六本、羽は4枚、目だって口だってセミじゃないか。隊長さん、そっとしといてあげてよ。どうせ1週間すれば死んでしまうんだ。そんなこと判ってるくせに、殺してしまうなんて……」
とりあえず攻撃しようとするZATを、正一少年が体を張って止めようとする。
光太郎も、「セミは大人しい昆虫です。網を張って閉じ込めておけば……」と、荒垣に進言する。

荒垣、南原に命じて、ホエールから巨大なネットを発射して、キングゼミラを団地の建物の間に閉じ込めさせる。
そのままセミが死ぬまでの1週間、この状態で見守ろうと言う思いやりのある措置であったが……真夜中になってセミが凄まじく大きな鳴き声を上げ始め、怒った住民が血相変えて押し寄せてくる。
監視していた光太郎たちは、「1週間だけ我慢して下さい」と必死に住民をなだめようとするが、暴徒と化した住民がネットに火をつけてしまう。
キングゼミラは破れたネットから出て夜空へ飛び上がり、住民に泡状のオシッコを引っ掛けてから、いずことなく飛び去ってしまう。
翌日、再びZAT基地。
荒垣「森山君、まだ掴めんのか?」
森山「全然レーダーには反応しません」
光太郎「しかし、たかが1週間、セミの鳴き声ぐらい我慢できないもんですかね……」
その時、原因不明の電波障害が東京一円で発生する。

見れば、他でもない東京タワーにキングゼミラが取り付いているではないか。
ZAT本部って、こんなところにあったんだね。

本部の円形窓から、それを目視している隊員たち。
北島「あー、あいつのお陰で東京タワーの電波はめちゃくちゃだ」
荒垣「ああ、出動!!!」
仕方なく荒垣は命令を下す。

タワーにくっついているキングゼミラの姿をあおりで見せてから、

本物の東京タワーを下から見上げているエキストラの姿を映す。
東京タワーのミニチュアが、これまた精巧に出来ているので物凄いリアリティがあるのだ。
その周辺の住民たちも、団地との人たちと同じで、一時たりとも我慢しようとせず、警官にセミを撃ち殺せと要求する。やむを得ず、警官が銃を一発撃って命中させるが、そのくらいでキングゼミラが死ぬ筈もない。
キングゼミラ、東京タワーから離れると、口から炎を吐き出して都市を破壊し始める。
ZATもやむなく戦闘機でキングゼミラに攻撃を加える。
地上には正一少年の姿があって、またしても「撃たないでくれー」と叫んでキングゼミラを守ろうとしていた。

色々あって、光太郎がタロウに変身し、キングゼミラに向かって行く。
それにしても、団地と言い、東京タワーと言い、この街並みと言い、週1で放送されていたのが信じられないくらい、恐ろしく金と手間がかかっているなぁ。
感動を通り越して、呆れてしまう。
優勢に戦いを進めるタロウであったが、健一や正一の「キングゼミラを殺さないで」と言う願いを聞き入れ、怪獣の体を持ち上げたまま宇宙に飛び立つと、宇宙空間にキングゼミラを解き放つのだった。
キングゼミラはそのまま宇宙ゼミになって、今でも夏になると鳴くと言う……
いかにも「タロウ」らしいファンタジックな結末だが、前回も似たような感じだったなぁ。
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