第16話「哀しきミュージカル」(1989年4月30日)
の続きです。
家を飛び出したトオルを、懸命に探し回るぱいぱい。
ヌルハチを呼び出して、彼の力を借りてトオルの居場所を突き止める。ついでに、ヌルハチの持っていたソフトクリームも取る。
一方、トオルのことなどこれっぽっちも気にしていない行男たちは調子に乗って、「公会堂でミュージカルの公演をしよう」と、大胆不敵なことを言い出すのだった。
アキラとシンゴもいつになく協力的で、四人は公演に向けてがっちり手を握り合う。
さて、公園でひとり黄昏ているトオル、ふと目を上げると、目の前にぱいぱいが立っていた。
ぱいぱい「そんなにぃ軽いお父さん嫌いなの?」(……って、いつも軽いと思うが)
トオル「ぱいぱい!」
ぱいぱい「井上君、なんか反省してたみたい……いいじゃない、軽くても重くてもトオル君には自慢のお父さんなんだから!」
トオル「そうかなぁ」

ぱいぱい「そうよ、アイスクリーム食べる?」
トオル「食べる!」
ぱいぱい「はいっ!」
笑顔で(ヌルハチから奪った)ソフトクリームを差し出すぱいぱい。
生きてて良かったと思える可愛さである……

トオル「そうかぁ、父さん俺のこと懲らしめようとして……」
ぱいぱい「やっぱり、父親が考古学者だって自慢するのあんまり良くないんじゃない? だから先生、わざと軽くなって」
トオル「歌って踊れる考古学者じゃあ、確かに自慢する気にもなれないもんね」
ぱいぱい「先生も先生なりに……」
トオル「何も考えてない!」 ぱいぱい「えっ?」
突然、再び態度を硬化させたトオルに驚くぱいぱい。
ぱいぱい「どうしたの?」
トオル、無言で前方を指差す。

ぱいぱいが視線を向けると、そこにはこんな貼り紙が……
ぱいぱい、もっともらしいことを並べていたが、案の定、行男は別にトオルの教育のことを考えてあんなことをしていた訳ではなく、単に自分が歌って踊りたかっただけだと言うことが判明する。

ぱいぱい「あらーっ」
声を上げるぱいぱいだったが、その吐き出す息が白いのだ。
撮影は4月だろうが、多分、かなり気温が低かったのだろう。
とすれば、トオルもあまりソフトクリーム貰っても嬉しくなかっただろうな。
トオル「何も俺に恥かかせることないじゃないか!」
トオル、そのソフトクリームを貼り紙に投げ付けると、そう叫んでまた何処かへ行ってしまう。
ノリノリのアキラとシンゴは、手当たり次第に街のあちこちにそのポスターを貼って回っていた。
トオルはそれを全て回収すると、公園の手洗い場で火をつけて燃そうとする。
ぱいぱい「折角みんなが作ったポスターを! 気持ちは分かるけど、許せない!」

やや強引だったが、ぱいぱいは中華魔女の姿になり(これが本来の姿なんだけどね)、
「高山トオル、その醜い根性、クリーニングしてやる!」

ぱいぱい、魔法の洗濯機を出すと、その中にトオルを入れてぐるぐる回して洗う。
やがて、「醜い根性」を洗い落とされたトオルが、清々しい面持ちで洗濯機から出てくる。

トオル「うーっ、なんだか心が急に美しくなったみたいだ」
ぱいぱい、ポスターの火を消して元通りにする。
すっかり素直になったトオル、そのポスターを改めて貼って回るのだった。
ぱいぱいの声「こうして慌しいうちに、発表会にこぎつけました……」

で、なんと、ほんとにミュージカルの公演が行われることになるのである。
うーん、正直、この展開はあまり感心しないなぁ。
いかにも嘘っぽくて、浦沢義雄(脚本)マジックの効き目が途中で切れてしまったような印象を受ける。
前回も、無駄なシーンが多くて間延びした感じがあったが……。

とにかく、結構な数の市民が見物に訪れる。勿論、無料である。
二人の歌と踊りはめちゃくちゃであったが、客たちはゲラゲラ笑って割と好評であった。
トオルも、ホームビデオを手に井上君と会場にやってくる。

ぱいぱいにとっては、公演の成功より、トオルが来てくれたことの方が嬉しく、思わず笑顔がこぼれるのであった。
いやー、ぱいぱいの画像は何枚貼っても飽きることがない。

その夜、ぱいぱいがファミレスで子供たちと打ち上げを開く。
ぱいぱい「皆さん今日は良く頑張ってくれました、どうぞ、お腹一杯食べて下さいね!」
だが、その頃、大人たちは……、

トオルたちの撮影した自分たちの踊っている映像を見ては「うわー」と言うような顔をしていた。
憑かれたような一時の熱狂が過ぎ去り、すっかり白けてしまっているのだった。

組長「……消しましょうか?」
行男「消して! はぁー、やっぱり私、歌って踊れる考古学者、無理なようです」
組長「先生、ワシも、元の暴力団の親分に戻ります……」
行男「うん、それがいい、それがいい」
組長「おい高山、そうと決まったらさっさと注ぎやがれ!」
急に態度が大きくなった組長だったが、またまた高山にフライパンで
ゴン!される。
ふらふらになりながら、組長は今日自分を三回殴ったのは誰だったろうと虚ろな顔で思い出そうとしていた。

すると、ファミレスのぱいぱいが、
「くしゅっ」と、世界で4番目に可愛らしいクシャミをする。

アキラ「ぱいぱい?」
シンゴ「どうしたの?」
ぱいぱい「どうしちゃったんだろう、あたし? ……あーっ」
何かを思いついたぱいぱいの顔を映しつつ、終わりです。