第43話「第四惑星の悪夢」(1968年7月28日)
これは以前、レビューしたことのあるエピソードなのだが、不満があるので書き直すことにした。
ナレ「地球防衛軍は長距離用宇宙ロケット・スコーピオン号を完成させた。テスト飛行に成功すれば、太陽系は遥か、銀河系のどの星へも自由に行けるようになるだろう……」

いささか能天気なナレーションの流れる中、スコーピオン号がレールによって運ばれ、発射台にセットされる様子が、美しいミニチュアセットで描かれる。

科学の粋を集めて作られたスコーピオン号であったが、テストパイロットのひとり、我らがソガ隊員は懐中時計のような金属製ホロスコープを操作しながら、ブツブツつぶやいている。
ソガ「いかんいかん、さそり座と冥王星が並び、さらにそこを火星が通過する……」
フルハシ「何言ってんだ、ソガぁ、そんな星占いに振り回されて」
ソガ「いや、さそり座、冥王星、火星と重なった時には、死神の座と言って、何か災難が起こるものなんだ……今度の宇宙ロケットがスコーピオン、つまりさそりだと言うのも気に掛かる」
フルハシ「お前の星占いとは関係ないよ」
アマギ「頼りねえテストパイロット! ハッハハハハッ」

ソガ「占星術をバカにしちゃいかんよ、潮の満ち干が月と関係あるように、万物はすべからく天体の動きに影響されながら生きてるんだ、科学万能の時代になればなるほど、我々は宇宙の神秘と向き合ってみる必要があるんじゃないのか?」
ソガ、星占いに凝っていると言う意外な一面があったのだ。

キリヤマ(聞いてない)「いいか、スコーピオン号は君たちが操縦する訳じゃない、すべて計器がやってのける。航路からロケットの状態まですべて計器が弾き出し、地上に送ってくる。我々はそのデータを見ながら地上から操縦するって仕組みだ」
スコーピオン号の計器は、データを地球の管制室へ送るだけで、実際の操縦は基地に残った人間が行うのだから、オートパイロットという訳ではないらしい。
やがてスコーピオン号が、ソガとダンを乗せて発射され、順調に予定のコースに入る。
ダン「計器航行へ切り替えました」
キリヤマ「よし、これから睡眠テストに移る。後は一切電子計算機に任せろ。安心してぐっすり眠るんだ」
フルハシ「長い夜だ、いい夢をな!」
ダン「……」(シカト)
睡眠テストについては説明がないが、将来、他の恒星系へ航行する場合には、パイロットはその間、人工的な冬眠状態に入ることになっていて、そのテストも兼行すると言うことなのだろう。
ただし、特にコールドスリープ用のカプセルに入る、などと言う定番の描写はなく、二人がリクライニングシートを倒して照明を落とし、互いに「おやすみなさい」と告げて目をつぶると言う、省エネルックも真っ青の簡易表現が採られている。

だが、二人が眠りに入っている間に、スコーピオン号が本部からのコントロールを外れ、全然別の方角へ向かい始めると言うトラブルが発生する。
アマギ「電子計算機に誤りがあるとも思えません」
キリヤマ「じゃあ、ロケットの故障か? すぐダンとソガに連絡するんだ」
アマギ「ダメです、あと二十日間、目を覚まさないようになってます!」
現時点ではどうにも手の打ちようがなく、顔を見合わせる隊員たち。
ホーク2号で追いかけられるような距離ではないのだろう。
アンヌ「今頃、
物凄くいやらしい夢を見ているわ、きっと……」
パネル上の、スコーピオン号を示す青い光を見詰めながらつぶやくアンヌ。
そして長い眠りから覚めた二人は、いつの間にかロケットが地上に着陸しているのに気付く。
ダン「あれから30日が経過している……」
ソガ「何処だい、ここは?」
ダン「分かりません……酸素も十分ありますよ」
二人は、計器航行中、ロケットに何らかのアクシデントが生じた為、予定を変更して地球に戻されたのだろうと、ごく妥当な推論を下す。

一方、ウルトラ警備隊作戦室では……。
フルハシ「隊長、
テトリスばっかりやってないで、少しは働いて下さいよ!」
キリヤマ「すまん」
じゃなくて、
フルハシ「全く手掛かりなしです」
アマギ「宇宙前衛基地も全く無電をキャッチしてないそうです」
アンヌ「遭難……」
キリヤマ「決め付けるのは早い、覚醒タイムスイッチが遅れて寝過ごしてるのかも知れんし……」
キリヤマの台詞から、地球時間でも30日が経過したことが分かる。
基地からコントロールできず、所在も分からず、連絡も取れない。
うん……、それって「遭難」って言うんじゃないの?

一方、謎の惑星にいつの間にか着陸していた二人は、本部とどうしても連絡が取れないのでロケットから出て、別の手段で連絡を取ろうとしていた。

真新しいガソリンスタンドへ立ち寄り、給油機に「ガソリン」と書いてあるのを見て、「やっぱり日本じゃないか」と安堵する。

その後、巨大なガントリークレーンやコンテナの並ぶ近代的な港へ出る二人。
ダンが赤電話を見つけて、ウルトラ警備隊の番号をダイヤルするが、「ただいまの電話番号は廃番になりました……」と、女性の音声がエンドレスで流れるばかり。

二人はトラックに轢かれそうになった自転車の少年を見掛け、駆け寄る。
少年「おじさんたち、何処から来たの?」
ソガ「地球防衛軍さ、富士山の麓……」
少年「……?」
少年は、ウルトラ警備隊のことを知らないらしい。

そこへジープに乗って、軍人風の警察署長が現れる。
ソガ「トラックにはねられそうになったんです」
ダン「確かに車が悪かった、手配して早く逮捕すべきです」

署長「警察にそんな暇はない、人間がよければ事故は起こらずに済んだ、車はよけようにもよける場所がない、従って、事故を起こした人間が悪い!」
少年「逃げて、早く……ここは……あっ」
何か言いかけた少年の顔を、署長が手にしたムチで引っ叩く。
ダン「何をするんだ、子供じゃないか」
署長「お前たちを逮捕する!」
この署長、常に口の中に飴玉か何かを含んでおり、文字で表現しがたいコリコリした音を出している。それがこの悪夢のような世界のこの上ないBGMの役割を果たしている。
ちなみに、管理人、自慢ではないが、この署長役の俳優が「スケバン刑事2」の信楽老こと、森塚敏さんだと言うことを、ついさっき初めて知ったのである(確かに自慢にはならんな)。
いやぁ、「ウルトラセブン」と「スケバン刑事2」に、こんな繋がりがあったとは……世の中、知らないことだらけだぜ。

とにかく、二人はジープで移送され、司法・立法・行政を始めとする、あらゆる機能が総括されていると言う「総合センター」なる建物へ連れて行かれる。
そこでは、ドラマの撮影を行うスタジオまであって、ちょうど激しい銃撃戦で大勢の人が殺されるシーンを撮っているところだった。

ソガ「見ろよ、やっぱり日本だよ」
ダン「うん」
ソガ「このオヤジ、少しおかしいんじゃないのか?」

その後、二人は長官(成瀬昌彦)の前に連れて行かれる。そこは、ヤケクソに奥行きのある部屋であった。
長官「遠路はるばるようこそ」
ダン「ここへ」
長官「クッククック……」
じゃなくて、
長官「お前たちが来るのを首を長くして待ってたんだ。お前たちのロケットを誘導して、この惑星に着陸させたのは我が第四惑星の優れた科学技術だ」
ソガ「第四惑星?」
長官「ここは地球から約120億万キロ離れた第四惑星だ」

話しながら、目の部分のカバーを外し、人工眼球と歯車の詰まった内部を見せる長官。
ダンとソガは驚きのあまり声も出ない。
長官「この惑星も昔は人間が支配していたのだ……」

長官「ワシの記憶装置によると、ええっと、あれは2000年も前のことだ。人間は我々ロボットを生み出してからと言うもの、すっかり怠け者になってしまって……つまりやることがなくなった訳さ。そのうちロボットに取って代わられたと言う訳だ」
女性秘書(人間)がコーヒーを持ってきたついでに、長官の後頭部のカバーを外し、機械油を差す。
しかし、こんな大事な部分を毎日人間の秘書にメンテナンスさせているとは、長官も割と無防備であった。秘書がその気になれば、簡単にその機能を破壊されてしまうだろう。
……もっとも、長官一人を倒しただけではロボットの支配を終わらせることは出来ないのだが。

長官はひとしきり話してから、コーヒーを啜る。

が、一口含んだだけで、烈火のごとく怒って立ち上がり、「ぬるい、砂糖も多い! つーか、これ甘口醤油だろ?」などとダメ出しし、秘書を何度も打擲する。
秘書「すいません、データ通りにやったんです、以後気を付けます……ああっ」

秘書は恨みを込めた眼差しを向けつつ、退室する。
その目は明らかに(ちきしょう、今度は
墨汁飲ませてやる!)と語っていたが、人間の機微に疎い長官は気付かない。

長官「どうも人間は物覚えが悪くていかん、コーシーの味が毎日違うんだからなぁ」
ダンとソガは、長官と署長に案内されてまた別の部屋へ移動する。
その際、さっきの秘書がダンと擦れ違いざま、ウエスタンラリアットを放つ……じゃなかった、メモをヘルメットの中に落とす。
それには
「あなたたちも殺される 地球が危い」と書かれていた。
後編に続く。