第14話「生きていた敵」(1988年2月11日)
低視聴率が続き、1クールで打ち切られることになったこの作品であるが、後続番組までのつなぎとして、急遽14話と15話が追加で放送されることになった。
で、タイトルにもあるように、13話で倒した筈の敵を強引に復活させ、改めて決着を付けさせるという苦しい処理がされている。
冒頭、日本電子工学研究所から車で出てきた初老の男性が、三人組のコマンドに待ち伏せされ、素手で殴り殺されると言う事件が起きる。

それを踏まえて、一転して明るく活気に満ちたいづみたちの様子が描かれる。
何故か、いづみたちがユニフォームに身を包んで野球場へ現れ、同年代のギャラリーから熱い歓声を受けている。いづみ、13話で宣言したように「普通の女子高生」としての生活をエンジョイしているようであった。

恵子「みんないい? 今日は絶対負けられないからね」
佐織「そうです、一週間も練習に打ち込んだんです、もし負けたら一週間の青春が取り戻せません!」
ベンチに座るチームメイトを前に、カツを入れる恵子と佐織。
と、球場の反対側の入り口から、別の高校のユニフォームを着た男子生徒たちが「おーい頑張って練習してっかーっ?」などと、いかにもバカにしたような軽口を叩きながら現れる。
彼らが対戦相手らしい。

いづみ「うちの野球部がだらしないせいで、宮前高校の札付き野球部にあたしたちまでバカにされて、何十人もの女子生徒があいつらにバットでお尻撫でられてるのよ! それを忘れないで!」
いづみも立ち上がって、仲間に檄を飛ばす。
詳しい経緯は不明だが、晴海学園の野球部のカタキをいづみたちの即席チームが討つことになったらしい。

恵子「そうだーっ!」
一同「やっつけろーっ!」
主将である恵子が拳を突き上げ、もう一度気合を入れる。
美味しそうな女子高生のフトモモが大収穫祭を迎え、管理人の頬もつい緩むのであった。

場当たり的なエピソードだが、試合の経過はかなり詳細に描かれている。
1回の表、宮前の攻撃。
晴海のピッチャーは勿論、いづみ。
女の子としてはまずまずのピッチングフォームから繰り出される球を、宮前の部員たちは面白いように空振りして三振の山を築く。

1回裏、晴海の攻撃。トップバッターはいつでも元気一杯の佐織ちゃん。

が、フルスイングしたバットはボールから2メートルは離れていて、あえなく三振を喫する。

宮前の先発は、なかなかの男前で、相手が女子だろうと淡々とボールを放り続ける。
佐織の後続も倒れ、2回表の宮前の攻撃。

内野ゴロになって、明らかにセーフ……であったが、塁審の健は迷わず「アウト!」と宣言する。
当然、怒ったランナーと揉み合いになるが、健は居丈高に「退場だぁっ!」と叫ぶ。
そもそも、一方のチームの関係者が塁審してると言うのがおかしいんだけどね。

とにかく、2回表も無得点。
2回裏のマーコの打席。
マーコの場合、ボールがミットに収まってから振っているので、100万回打席に立ったところで、ヒットは出そうになかった。
それにしても、野球してる女の子って可愛いね。
出来ればもっと丹念に女の子のプレーを見せて欲しかったところだが、時間の余裕がないので、次のシーンでは早くも9回表にワープしている。
スコアはどちらも0点である。

宮前のバッターがぼてぼてのセカンドゴロを打つ。
セカンドのアイ、いかにも危なっかしい腰つきでなんとか捕るが、

何を血迷ったのか、ショートのマーコにポイッと投げてしまう。

マーコはマーコで、ボールを持ったまま「あっちに投げなさいよー」と、アイに詰め寄り、グラブごと地面に叩きつけてしまう。

恵子「ちょっと何してんの、こっちよーっ!」
キャッチーの恵子、ホームベースの上でもどかしそうに地団駄踏んでアピールするが、マーコたちは言い争いに夢中で、ボールを返そうとしない。
そうこうしているうちに2累か3累にいたランナーが悠々生還し、バッターランナーまで一気にダイヤモンドを一周し、内野ゴロがランニングホームランになると言う奇跡が起きる。
……良くこんなザル内野で無失点で9回まで来られたな。
とにかく、2点ビハインドで迎えた9回裏の晴海の攻撃。
先頭バッターの佐織が内野安打で出塁。

続く恵子はデッドボールを受け、「痛いなぁ……何考えてんのよ変態!」と、男前ピッチャーを罵りながら一塁へ向かう。

そして3番のいづみがバッターボックスに入る。
ボールが肩口に入り、危くデッドボールになりかけるが、いづみはかわす。
いづみ「私を、怒らせないで!」
かつての最終兵器時代を髣髴とさせる鋭い目でピッチャーを睨むいづみ。
で、外野に高々と打ち返し、捕ろうとしたセンターとレフトが激突し、ボールは後方に転々と……
どちらもエラーで点が入ると言うのは情けないが、とにかくいづみが一気にホームまで戻り、ドラマのような逆転サヨナラ勝ちとなる。

みんなで跳び上がって勝利を喜ぶ。
……
いやぁ、女子高生のお尻とフトモモってほんとに良いもんですね。

殊勲のいづみが胴上げされるのを、フェンス越しに見ている藤原の姿があった。
藤原「良いツラぁして、活き活きしてやがる。やっぱり言えんなぁ……」
藤原、いづみに声を掛けることなく立ち去ろうとするが、藤原に気付いていたいづみが追いかけて呼び止める。

いづみ「何か話があったんでしょう?」
藤原「いや、もう良いんだ。ちょっと、人に頼まれてな、お前の様子を見に来ただけだ。じゃっ……」
いづみ「誰に頼まれたの?」
結局、いづみは藤原と一緒にあるところへ行くことになる。
それは警視庁の特別調査室と言うプレートの掛かった部屋であった。

室長「君が五条いづみか?」
いづみ「……」
いづみ、冒頭の事件のことをスライドで説明される。
室長「高野喜一郎、コンピューター工学にかけては権威ある学者だ。事故と発表されているが、何者かの手によって殺されたものだ」
続いて、国会議事堂をバックにいかにも大物っぽい雰囲気の男性の写真が投影される。
室長「竜崎英吾、国防省副長官まで上り詰めた男で、軍事研究家、それが表の顔だが、政界の影のフィクサーと噂されている」
いづみ「竜崎英吾……」
最後の最後に出てきたこの竜崎こそ、石津の上司であり、「謎の組織」のトップなのだった。

室長「この竜崎英吾の周りで最近不穏な動きが起きている。それも国防に関わることだ。高野が殺されたことで、竜崎の狙いが絞られてきた」
藤原「もう良いでしょう。彼女は何も知らないんだ。行こう……」
室長「そうはいかん! そうはいかんことを、君は一番良く知ってるだろう!」
いづみ「どういうこと?」
室長「石津麟一郎が生きてるかもしれん!」 室長の衝撃的な言葉にさすがに驚きの色を隠せないいづみ。
いづみ「そんな……」
藤原「ある軍事施設が武器も使わず人間の手によってぶち壊され侵入されちまったらしい」
いづみ「……バイオフィードバック?」
室長はいづみに協力を求めるが、いづみは「私は誰の道具でもない!」と言って、きっぱり断る。
急造シナリオだから仕方ないのかもしれないが、このシーンのやりとり、実に曖昧で分かりにくいことこの上ない。そもそも、なんで所轄署の少年課のヒラ刑事に過ぎない藤原が、こんなえらい人たちと関わりを持っているのか?
14話や15話での活躍を見ると、藤原は、かつては公安やこの調査室に所属していたエリート捜査官だったのではないかと言う気がしてくる。
いづみ、協力は拒否したが、やはり石津のことが気になって仕方ない。
バーガーインの奥の溜まり場でも、むっつりと考え込んでいる。

恵子「いづみの気持ちも分かるけどさ、でも、石津なんてもうあたしたちに関係ないってぇ……警察に任しとけばいいのよ」
佐織「そうですよー、いづみ先輩はもう普通の高校生なんですよ」
いづみから話を聞いた恵子たちは、口々にそう言って、いづみがまた首を突っ込むのに反対する。

佐織「それにほら、宮前高校から、リターンマッチの挑戦状です!」
物置代わりに使っている壊れた冷蔵庫から、挑戦状を取り出して見せる佐織。
佐織「返り討ちにしてやりましょうよ~」
恵子「やろうやろう、ね、いづみ?」
佐織「今度負けたら、野球部を解散するって言ってますよ!」
なんとかいづみを引き留めようとする二人がわざと明るい声を出して誘う。

健も、
「俺たちの戦う相手って、銃やナイフ持った奴ばっかりじゃねえよ」と、実に素敵な台詞を放つ。
いづみ「そうね!」
いづみ、笑顔で応えるとそのまま部屋を出て行こうとする。
去り際、「リターンマッチ、やろうね!」と言いながら。

さて、その竜崎の司令室に、杖を突いたひとりの男がやってくる。
石津であった。やはり生きていたのだ。
竜崎「R機関、その本当の姿を知る者は、この広い日本の中でごく小数の限られた者しかいない」

竜崎「……まず、東京! 九州! 北海道! 四国! そして全土!」
日本地図のパネルを前に、高揚した声で叫ぶ竜崎。
竜崎「もうすぐ日本が変わる! 国防省のエリートだった君を引き抜いたのもその本来の目的の為だ! 石津君……超兵士製造計画は中止となったが、君にはまだまだやって貰いたいことがある! その為にも、断じて君を死なせる訳には行かなかった」
ここで、13話の最後、猛火の中に朽ち果てた筈の石津が、防火服を着た竜崎の部下たちによって密かに救い出された様子が回想される。
竜崎「明日には国防省の地下深くに眠る戦略コンピューターを我々のメインフレームに直結させる。国防省のあらゆる軍事施設を意のままに動かすことが出来る。日本の新しい夜明けが来るんだよ、はははははは……だが、その前に君自身がやらなければならないことがある筈だ。僅かな危険分子でも抹殺しなければならん」 石津「いづみ……」
そのいづみ、ああ言ったものの、やはりひとりで石津との決着を付けに行こうとするが、恵子と佐織がそれを察して部屋に押しかけ、再び三人で戦うことになる。
彼らが向かったのは藤原のいる晴海署。
嬉しいことに、ここで再びむーちゃんこと武藤萌(加藤麻里)が登場する。

少年課の受付でみかんをまるごと頬張っているところにいづみたちが来て、慌てて飲み込む。
いづみ「あの、藤原刑事は?」
武藤「今、出掛けてるわよ」
いづみ「どちらへ?」
武藤「警視庁の方だけど……あなた、もしかしたら、五条いづみさん?」
むーちゃんが、噂に聞いていたいづみと顔を合わすのはこれが初めてであった。興味津々でいづみの顔を覗き込む。
武藤「あなたが、藤原さんのタイプなんだっ?」
いづみ「えっ?」
思い掛けないことを言われ、キョトンとするいづみ。
佐織「藤原刑事、いづみ先輩のこと好きなんですかー?」
恵子「あの顔で?」

などとやってると、その藤原が帰ってくる。
藤原「バカなこと言ってるんじゃないよーっ! ここはバーガーインじゃないんだよ!」
照れ隠しのように大声を張り上げる藤原。

署の屋上で話すいづみたち。
藤原「今奴らが狙ってるのは、国防省の地下戦略コンピューターだ。チッ、いつどうやって来るのか分からんがなぁ」
いづみ「狙うなら、地下道ね」
藤原「特捜の奴らも、戦略コンピューターに一番近い地下通信ケーブル通路を狙う筈だって、張り込んでいる」
いづみ「危ないわ! 行きましょう、早く知らせないと」
藤原「よしっ!」
時間もあまりないので、二人はすぐ地下通路へ向かう。ただし、恵子と佐織は足手まといと言うことで置いていかれる。
果たして、二人が通路を進むと、既に「特捜の奴ら」はその場にぶっ倒れていた。
通路の向こうから、三つのシルエットが近付いて来る。
そう、冒頭、高野の車を襲撃した三人組である。
そして、真ん中のひとりは女性であることが判明する。
女コマンドが拳を握り締めると、筋肉がパンパンに膨れる。
いづみ「バイオフィードバック!」
そう、彼らもいづみと同じバイオフィードバック戦士だったのだ。

狭い通路内でいづみとコマンドたちのバトルが繰り広げられる。
バイオフィードバックを発動した女コマンドに一方的に攻められるいづみ。
喉を掴まれて宙に持ち上げられたところで、いづみもバイオフィードバックを発動させる。
女の胸に膝蹴りを叩き込み、体の自由を取り戻すいづみ。
それを見て、他の二人のコマンドもバイオフィードバックを起こすが、横合いから石つぶてが飛んで来て、彼らをまごつかせる。
ビリヤードのキューを持った健と、スリングショットを持った恵子と佐織が加勢に駆けつけたのだ。

いづみ「みんな……」
恵子「いづみひとりに良いカッコさせないわよ!」
健「みんなじっとしてられなくてよー」
三人のコマンドに対し、勢揃いで構えるいづみたち。

と、階段の上から杖を突きながら石津が現れる。
石津「久しぶりだな、いづみ!」
いづみ「生きていたのね!」
石津「行動が甘いなぁ、いづみ、既に国防省戦略コンピューターは我々のメインフレームに直結した。もはや、我々に手を出せるものはこの日本にはいない。たとえ政府でさえ、行動を起こした瞬間に、日本中の軍事施設からの攻撃を受けることになる」
いづみ「そんなことはさせないわ!」
石津「何もかも遅い、お前は負けたのだ」
いづみ「可能性がある限り、諦めないわ」
石津「その可能性はゼロに等しい」
石津、一旦そう切り捨てるが、
石津「……だが、私がお前に与えた力はゼロパーセントの可能性を越えられる筈だ。その能力のないものと、戦うことはない。越えて来い、いづみ」 いづみ「石津!」
石津、まるで、いづみに自分たちの計画を阻止して欲しいとでも言いたげな様子で、三人の戦士に守られながら後退する。
石津には既に当初抱いていた軍事クーデターへの情熱はなく、その道具に過ぎなかったバイオフィードバック戦士・五条いづみの無限の可能性をとことん見て見たいと言う、研究者としての純粋な願望だけが残っていたのではないだろうか。
その後、自分の部屋に戻って眠れぬ一夜を過ごしたいづみは、改めて最後の戦いに向けて闘志を燃やす。
いづみ「戦い抜いてやる、それが私の全てだから!」 いよいよ次回、最終回である。……ま、誰も読んでないと思うが。