第24話「ラブ・フォーエバー」(1984年9月25日)
長きに渡ってお送りしてきたこの企画も、いよいよ最終回となりました。
ちなみに第1話を書いたのが、2014年の11月20日でした。
早速レビューに取り掛かる前に、管理人は、シリアスなストーリーの中でコメディリリーフとしての役をきっちり果たされた男谷弁護士(男谷「誰がじゃっ」)の、物語冒頭の台詞を思い出さずにはいられないのです。
それは、束の間、幸せの絶頂にあった哲也と恭子さんが婚約披露パーティーの司会を共通の友人である男谷に強引に引き受けさせたシーンでのこと。

恭子「男谷さんも、早く良い人見付けたらどうですか」
男谷「いやぁ、俺は哲也と違ってモテんからなぁ」 「哲也と違ってモテん……」
何気なく聞き流してしまったが、それから24週に渡って繰り広げられる青春愛憎劇の中で、その自虐的台詞が全く何の掛け値のない事実だったと言うことを嫌と言うほど見せ付けられることになろうとは、神ならぬ身の私に分かろう筈がなかった。
要するに、男谷は自己申告した通り、全くモテなかったのだ。チーン。
ああ、男谷……
だから、せめて、弁護士事務所で働いていて、男谷に密かな憧れを抱いている女の子・智子ちゃん(仮名)なんて言う脇役を添えて差し上げましょう、管理人の妄想の中で……
冗談はそれくらいにして、さて、24話の始まりです。
前回のラストが、部分的に繰り返されるところからスタート。
ロイヤル貿易のオフィスに、ギンギンになった笙子と朝男が殴り込みをかけたところです。

笙子「相模悪竜会会長・曽我笙子!」
朝男「東京流星会会長・西村朝男!」
社員ズ「……」
これがまともな会社のオフィスだったら、数瞬の間を置いて、社員達が一斉に笑い出して一件落着となるのだが、幸か不幸か、ここはまともな会社のオフィスではなかった。

それが証拠に、社員たちは即座にナイフなどの武器を手に、二人に襲い掛かってくる。
前回のラストに流れていた笙子の心情を思い入れたっぷりに語るナレーションをバックに、彼らの激しいバトルが音声や効果音なしで描かれる。

戦いは笙子たちの一方的な勝利に終わる。二人は酒井の居場所を聞きだそうと社員を締め上げる。
笙子「言わないか、言わなきゃ首の骨が折れるんだよ」
朝男「どーなんだ?」
社員「ま、待て、社長は明日恭子さんと結婚式を挙げる……」
だが、社員はどの教会で挙式するのかまでは知らないと主張する。

葉山のところへ男谷が来て、酒井と恭子さんの行方が分からないと報告する。
多賀子はこうなったら警察に頼んで、娘を助け出そうと夫に訴えるが、葉山は依然として家名が大事だと言ってそれを許そうとしない。
多賀子「私たちの娘が、悪魔のような男に殺されかかってるんですよ!」
葉山「恭子が自ら選んだことだ、死のうが生きようが私の知ったことではない」
多賀子「あなた……」
夫の酷薄な言葉に絶句する多賀子。
葉山「第一、警察に知らせたら葉山家の家門はどうなる? 娘が覚醒剤中毒だということがたちまち世間に知れ渡ってしまうだろう。そうなれば葉山家を私の代で滅ぼすことになる。私のことは構わん、だが伝統ある舞楽を滅ぼす訳に行かんのだ」

多賀子「……家門がなんですか、葉山家の名誉がなんですか! あなた、私は今まであなたのお言葉ならどんなことでも従ってまいりました。あなたのお言葉なら間違いないと信じてきたからです。でも、いまはっきりと分かりました。あなたのそう言う考えが恭子を不幸に追いやったのです!」
葉山「なんだと!」
多賀子「家門の為に娘を見捨てるようなあなたに私はもうついていけません。
今日限りお暇を頂きます」
今まで堪えてきたものを一気にぶちまけ、妻としての最終兵器「実家に帰らせて頂きます」砲を発射する多賀子であった。
葉山「多賀子!」
多賀子「私は恭子の母親なんです、娘を見殺しには出来ません。家門も格式も葉山家の妻であると言う名誉も私はもう何も要りません! 恭子の母親としてあの子のそばにいてやりたい……」
二人は警察へ届けるべく、葉山の前から去る。

ひとり残った葉山は「私は、私は葉山家を守らねばならんのだ……」と、自分に言い聞かせるようにつぶやくのだった。
もっとも、この後も、多賀子たちが警察へ駆け込むシーンや、警察が出動するシーンは全く出てこない。

その頃、恭子さんは何処かのビルの機械室のようなところに、黒岩夫婦たちに見張られながら監禁されていた。

恭子さん、虚脱したような顔で座っている。

意識朦朧としているようで、ふと電話を目にすると、何も考えずに立ち上がり、電話に近付こうとする。

が、鬼母に頭を小突かれると、そのままふらっと黒岩の横に倒れるように腰を落とす。

覚醒剤を打たれた直後なのか、まるで手応えのない恭子さんの顔に、タバコの煙をふきつける鬼母。
どうでもいいけど「火気厳禁」だよ。
そのシーンを挟んで、葉山家の電話が鳴る。

慌てて受話器を取った葉山は「恭子か」と思わず娘の名を呼ぶ。
なんだかんだで、娘のことが心配でしょうがないんだなぁとほろりとさせるシーンである。
だが、相手は笙子の父・聖一郎だった。
葉山は失望しつつも、笙子が既に葉山家を出たことを知らせると同時に、笙子の才能を褒め称える。
葉山「笙子君の舞楽の素質には恐るべき物があります、この後、哲也くんと共に精進を重ねれば舞楽人として必ず名を成す人物となられるでしょう……末は大映ドラマの主人公になるかも知れません」

聖一郎たちは、笙子が葉山家を出たのに彼らのところに顔を見せないのを案じる。
哲也やおタマたちも、ジョーズに集まって笙子のことを心配していたが、

聖一郎と美也子がそのまんまの格好で駆けつける。
聖一郎「笙子は我が家に姿を見せたようなんですが、私たちには一言も声を掛けずに姿を消してしまったんです」
哲也「笙子さんがですか?」(聞くなよ)
おタマ「笙子おネエは『笙の会』にも姿を見せたんだけど、私たちに『笙の会』を頼むって言って走り去ってしまったんです……」

で、こういう取り込み中の時に限って、来客があるのがドラマなのである。
しかもそれは、あの懐かしい、少年院時代の笙子の友人トキ子であった。
トキ子「ごめんくさい」
ズドドドドッ!(全員がコケる音)
じゃなくて、

トキ子「ごめん下さい」
景子「トキ子、トキ子じゃないかー」
トキ子「景子ぉ、あ、久樹先生……私、今日仮退院が許されました。笙子に真っ先に会おうと思って……みんなどうしたんです?」
その場の雰囲気に気付いて、尋ねるトキ子。
こうして見ると、少年院にいた頃とは別人のようだね。
ちなみにトキ子は、景子と哲也しか知らないような顔をしているが、彼女は元々相模悪竜会と抗争を繰り広げていた不良だったのだから、その場にいたおタマやマサコとも顔見知りの筈なんだけどね。
トキ子に聞かれても、答えようがなく黙りこくる面々。
その時、不意に、おタマが「笙子おネエはカンバックしたんだ!」と霊感を働かせて断言する。

おタマ「みんなに知らせな、笙子おネエはカンバックしたんだ!」
おタマの言葉に、笙子の友人たちがどやどやと店を出て行く。
聖一郎「そんなバカな……」
美也子「哲也さん、そんなことありませんよね」
哲也「曽我さん、僕が笙子さんにはそんなことはさせません、命に代えても」
哲也も悲壮な顔付きで言い捨て、店を飛び出す。

朝男の運転する車の助手席に座りながら、一筋の涙を流す笙子のアップで、OPです。

いよいよこれが最後のOPとなる。
考えたら、我々は毎回、笙子さん本人の舞う姿を見てるんだよね。原笙子さん、どんな顔なのか知らんけど。
芥川ナレ「この物語は(中略)非行に走り、そして立ち直った貴重な体験をドラマ化したものである……」
原笙子「やかましいわっ!」 芥川ナレ「ひぃーっ!」
毎回毎回繰り広げられてきた原作には
全くない滅茶苦茶なストーリーに、遂に原笙子さんの怒りが爆発したぁっ!
……すべて頭のおかしい管理人の妄想ですので、ゆめ本気にしないで下さい。
OP後、マサコたちがかつての悪竜会時代のメンバーに次々と声をかけている。

ここで唐突に、剛が働いているシーンが初めて出てくる。
そう、いかにも取って付けた感じだが、剛は一日中、タイヤを意味もなく転がす仕事(時給70円)に就いていたのだ。
マサコ「剛ぃ、笙子がカンバックした!」
剛「なんだってえ!」
伝令は、今や歌手として立派に活動しているおハルのところへも現れる。

晴子「にっがいコォッヒィー、口もつけずにぃっ、夜明けまで踊るつもりアアンアン!」
この年の日本レコード大賞に輝いた「しゅがあ抜きのさたでない」を熱唱するおハル。
と、客席に、息せき切っておタマが駆け込んでくる。
晴子「ほぉしが瞬くぅっ、ドライブインはっ、変わらずに賑やかだわ
アアンアン!」
おハル、驚いて歌うのをやめるのだが、太字の部分は歌ってないのにしっかり聞こえている。
……そうか、口パクやったんか。

おタマは、以前、朝男から笙子を逃がした時のように仲間内だけで通じるブロックサインを作り、笙子がカンバックしたことを知らせる。

おハルは急に歌うのを辞め、
晴子「皆さん、聞いて下さい、私の親友に大変なことが起こってるんです、どうか皆さん、
私に1時間だけ時間を下さい!」
自分が全国クラスの人気歌手にでもなったつもりのような、ふざけたことを言い出す晴子さん。
晴子「折角私の歌を聞きに来てくれた皆さんにこんなことを頼める筋合いじゃないんだけど……」
観客(パチパチパチパチパチ……)
観客は快く拍手でそれに応じてくれる。
どうでもいいけど、
ブロックサインにした意味ねえじゃん。 
さて、酒井はあるホテルのラウンジにいた。
それを、朝男の忠実な部下・山崎(久保寺健之)が抜かりなく見張っている。

朝男たちはとりあえず高級雀荘で山崎からの連絡を待っていたが、その待望の電話がかかってくる。
朝男、独特の手付きで受話器を取る。
朝男「山崎か、なにぃ、酒井が? 分かった、そのまま尾行を続けろ。山崎、酒井が何処で恭子さんと式を挙げるのか突き止めるんだ」
大活躍の山崎だが、何故か今回も台詞はなし。
笙子はすぐ酒井をとっちめてやろうと逸るが、朝男が冷静に「酒井が恭子さんの居場所を喋る筈がない」と宥める。

朝男「笙子、俺はいつか笙子となら地獄の底でも生きていけるといったことがあったな、だが今の俺はそんな風には思っていない。
笙子にだけは幸せになって欲しい」
朝男にしては平凡だけれど、これ、一番素敵な台詞ではないだろうか?
笙子「朝男、止めても無駄だよ」
朝男「止めたりはしない、俺もお前もこうと決めたら止まらない人間だ、だが俺は笙子にだけは……そう思ってるよ」
笙子「……」
その時、ドアが開いて、哲也とおハル、トキ子が入ってくる。
どうやってこの場所を知ったのか、野暮なことは突っ込むまい。
その2へ続く。