第24話「ラブ・フォーエバー」(1984年9月25日)
の続きです。
朝男の高級雀荘に、ノーネクタイの哲也、トキ子、おハルが駆けつけ、カンバックした笙子を説得しようとする。

哲也「君は僕の為に酒井から恭子さんを取り戻そうとしているんだね? その気持ちだけで十分だ、酒井と戦おうとするのはやめてくれ! 君は自分の幸せを考えて生きてくれればいいんだ。もう僕や恭子さんの為に自分自身を犠牲にするのはやめてくれ」
おハル「笙子ぉ~(中略)裏切るのかい?」

トキ子「笙子、私だよ、私は今日出たんだ、真っ先に笙子の喜んでくれる顔見たいと思った。笙子の頑張ってる姿を見て私も頑張ろうと思ってきたんだ……それなのになんだよ、こんなのってあるかい? ネバーギブアップ……園長先生の言葉を忘れちまったのかい? 麻里の遺骨だよ! 笙子と、一緒に海に流してやろうと貰って来たんだ。麻里はパカをやった私たちの罪を背負って死んじまったようなもんじゃないか!」
首にぶら下げた白木の箱を示して、必死に笙子を止めようとするトキ子。
しかし、貰ったって誰から貰ったのだろう?
麻里の実家に行ったとも思えない(註1)ので、麻里の遺骨はまだ愛育女子学園に置いてあり、麻里はその一部を貰い受けたのだろうか?
(註1……いきなり押しかけて「すいません、遺骨下さい」などと言える訳がない)

さすがに麻里の遺骨を前にしては、動揺を隠せない笙子。
麻里との思い出がフラッシュバックするが、なんとか遺骨を押し戻す。
再び山崎から電話があり、朝男が受話器を掴む。
朝男「なにっ、酒井がマコトと会ってると言うのか? 分かった、目を離すな」
一瞬、「マコトって誰?」と思ってしまうが、モナリザのことなのだった。
前回も書いたが、久樹葉子は、
モナリザ(by笙子)
マコト(by朝男、麻里)
葉子(by哲也)
マコ(byおアキ)
などと、色んな呼ばれ方をするキャラなのだ。

哲也「西村君、葉子は何処で酒井と会ってるんだ?」
朝男「……」
朝男は無言で哲也を押しのけ、そのまま店を出て行く。

朝男と笙子が出てくるのを、完全武装した剛やおタマたちが待っていた。
剛「笙子、カンバックするんだってなぁ」
おタマ「おネエ、私たちも一緒にやるよ」
笙子「ヒヨッコがナマ言ってんじゃないよ! どきな、邪魔なんだよ!」 ドスの利いた声で、悪竜会時代の貫禄を示す笙子。
二人は彼らを押しのけ、さっさと車に乗り込む。
哲也「君が昔の君に戻るくらいなら僕は死んだ方がマシだ!」 哲也の必死の呼びかけにも答えず、笙子は朝男に車を出すよう促す。
結局、折角大挙して集まった剛たちは、そのまま何もしないで笙子を見送るのだった。
追いかけんかコラ。

一方、ホテルか何処かの喫茶店で和やかに話している酒井とモナリザ。
酒井、「自分の気持ちだ」と言って、あるものを渡す。
モナリザ「成田からパリまでの飛行機の切符じゃないか。私にあんたと恭子さんの新婚旅行に付き合えって言うの?」
酒井「あんたはパリで待っててくれればいい」
モナリザ「恭子さんはどうするつもり?」
酒井「恭子さんは病弱なんでね、旅の途中でどうなるか……」

モナリザ「保険金はたっぷりかけてあるみたいね」
酒井「当然でしょ、そんなこと」
新婚旅行中に、保険金目当てに恭子さんを殺してしまうつもりだと平然と仄めかす酒井に、モナリザが改まった口調で尋ねる。
モナリザ「酒井さん、こんな大切な話を私みたいな女に話してもいいの?」
酒井「あんただから話せるんだよ……私は一目見てあんたに惚れた。あんたとなら手が組める。あんたがそばについててくれるとどんなことでも安心して出来そうな気がするんだよ」
酒井、あけすけにモナリザへの想いを打ち明ける。多分に、悪事のパートナーとしての実利的側面も混じっているのだろうが、本気でモナリザが好きになってしまったらしい。
考えたら、モナリザが誰かに惚れられるシチュエーションって、これが初めてなんだよね。
ここで主要キャラクターの恋愛についてまとめてみる。
左側のキャラを、右側のキャラが好いていると言うことである。
哲也←笙子・恭子・モナリザ(一時的)
笙子←哲也・朝男・剛(一応)
朝男←麻里
恭子←男谷・哲也(最初だけ)
モナリザ←酒井
男谷←
……
哲也「お、男谷ぃ……お前って奴は」(泣いている)
関係ないけど、男谷ってモナリザが不良になる前からの知り合いの筈なんだけど、劇中ではほとんどと言うか、全く絡まないんだよね、確か。
話を戻す。
酒井「恭子の親や久樹哲也が何と言おうと、誰も手が出せやしない、ふっふっふっ、結婚式ってのは便利なもんだ。どう、出て見ないか? 面白いよ」
モナリザ「……そうね、面白そうね、場所は何処?」
モナリザ、一瞬何か考えを巡らす顔になるが、あくまでにこやかに応じる。

近くのテーブルで二人の会話に耳を立てていた山崎だったが、酒井はさすがに用心深く、メモに「聖チャペル教会」と書いて渡す。
モナリザ「あら、教会でやるの?」
山崎、そこまで聞くと、急いでその場を離れる。
これが朝男の忠実な部下・山崎の最後の出番となるのかな?
その夜、花屋に帰ってきたモナリザは、屈託のない顔で酒井から貰ったチケットを見せびらかす。
おアキは、モナリザが酒井の仲間になるつもりなのかと、その真意を糾す。

おアキ「私はマコと一生行動を共にしようって考えてるんだ……それなのに、私に何も本当のことを言ってくれないなんて悲しいじゃないか!」
あれ……、おアキ、一生って、ヨシ坊を捨てるつもりなの?
うーん、さすがに恩人とは言え、あまりに極端だなぁ。
劇中ではそんな空気はカケラもないが、おアキがモナリザに同性愛的な感情を抱いていたと言うことも考えられなくはない。

モナリザ「おアキ、私はカンバックするよ……こんな素敵な店を私の為に用意してくれてありがとう」
すぐにまた出掛けようとするモナリザだったが、そこへ哲也たちが「どやどやどや」と現れる。
酒井が何処で結婚式を挙げるのか、聞きに来たのだ。

彼らを無視して行こうとするモナリザを、路泰たちが止める。
路泰「酒井と言う男は恭子さんを食い物にしてる、ひどい男と言うじゃないか、何故そんな男と親しくしてるんだ?」
信子「自分から不幸を招くようなこと、もうやめて頂戴!」
路泰「何故黙ってるんだ、私たちには関係ないとでも言うのか、親子じゃないか、家族じゃないか、お前が不幸になるのを私たちはもう黙って見ていられないんだ!」
後の「乳姉妹」でも、高橋昌也さんと伊藤かずえさんは、血の繋がりのない親子として、これと似たようなやりとりを何度も繰り返すことになる。
ついでに、信子の岩本多代さんは、「乳姉妹」では伊藤さんの実の母親役なんだよね。

モナリザ、人をバカにしたような笑みを浮かべるが、

路泰「バカッ! まだ分からないのかっ」
と、いきなり路泰に引っ叩かれる。

「初めてのビンタ」に、一瞬、あどけない表情になるモナリザ。
さっきの邪悪系の笑いと見比べると、結構笑えます。
モナリザ「初めて殴ってくれたね、父さん、この痛み、忘れないよ」
モナリザ、そう言って、去って行く。
不器用だが、モナリザが漸く示した「和解」への第一歩であった。
結局、モナリザは、世間体や奇麗事じゃなくて、本気で自分と言う人間と向かい合ってくれることを、家族に求めていたのだろう。
だが、モナリザとその家族の関係については消化不良のまま、ドラマは終わってしまう。
モナリザは何も言い残さなかったが、さっきのメモから、哲也たちは結婚式の場所を知ることが出来た。
次のシーンでは、早くも結婚式が執り行われている。

MC(神父なのか牧師なのか分からん)から「~を誓いますかぁ?」と問われ、酒井は即答するが、恭子さんはなかなか口を開こうとしない、と言う定番の演出。
その時、背後から笙子の凛とした声が飛んでくる。

笙子「待ちな!」
黒岩「何だ、君たちは」
朝男「東京流星会会長・西村朝男」
笙子「相模悪竜会会長・曽我笙子、この結婚式は私たちが認めないよ。恭子さん、あなたが結婚するのは酒井なんてドブネズミじゃない、哲也さんなのよ」
……あれ、二人はどうやってこの場所を知ったのだろう?
山崎がずーっと彼らを尾行して、電話で知らせたのかなぁ?

恭子「笙子さん、誤解しないで下さい、私は私の意志で酒井と結婚するんです」
笙子「恭子さん、哲也さんや家族を殺されると脅かされてるんだろうけど、もうそんな心配は要らない。酒井とは私がきっちりカタをつけるからね!」
MC(俺にもなんか台詞くれよ)

二人が武器を構えると、座っていた酒井の部下たちも立ち上がり、応戦の構えを取る。

と、ここでモナリザが二人の前に立ちはだかる。
モナリザ「ここから先は通さないよ、私は酒井さんとパリ旅行としゃれ込むつもりなんだよ……たっぷり保険金をかけた恭子さんには旅の途中で事故に遭って死んでもらう段取りになってるんだ」
酒井の味方をするように見せて、とんでもないことを暴露するモナリザ。
勿論、モナリザは最初から酒井の仲間になる気などなく、あえて酒井に共鳴する素振りを見せ、彼の魂胆を暴くのがモナリザなりのアシストだったのだ。
恭子さん、保険金殺人のことは初耳で、さすがにギョッとする。
不幸大好き恭子さんであったが、殺されてしまっては元も子もないので、ここでやっと目が覚めたようだ。

酒井「バカな、何を言ってるんだ、君は」
モナリザ「今更とぼけるんじゃないよ、恭子さんを殺してパリで私と結婚式を挙げようといったのはどこのどいつだい?」
酒井「どういうつもりだ、何もかもばらしやがって」
モナリザ「お前とパリ旅行に行くつもりなど私には最初からないんだよ」
モナリザ、酒井から貰ったチケットをビリビリ破り捨てる。

モナリザ「笙子、酒井とカタをつけるのはお前じゃない、私だ。私は哲也兄さんの為に、酒井を殺す!」
得意の二枚刃カミソリ(シック)を構えるモナリザ。
なんだかんだで、モナリザが一番美味しいところを掻っ攫ってしまったような感じである。
他の色んなことも思い合わせると、モナリザ(と言うか、伊藤かずえさん)がスタッフに愛されていたんだなぁと言う気がする。
その3へ続く。