「宇宙刑事シャイダー」 第5話「突然！なまけもの」

宇宙刑事シャイダー メモリアル [ 円谷浩 ] 価格：4840円（税込、送料無料)

　第5話「突然！なまけもの」（1984年3月30日）

　冒頭、いつものように神官ポーによる作戦のプレゼンが行われている。

　ポー「学ぶこと、努力すること、この二つが人間の知識を増やし、人間社会を発展させる原動力となっております（後略）」

　要するに、子供たちを怠け者にしてしまおう！　と言うのが今回の作戦の趣旨であった。

　クビライは早速その為の不思議獣ムジムジの卵をポーに授ける。

　さて、小村家のいつもの朝の光景。
　迎えに来た友人たちと元気良く登校する良一に続いて、初登場、陽子たちの父親・良介が仕事に出掛けようと家から出てくる。

　
　陽子「胃薬、持ったぁ？」
　良介「あーっ、いけねえ」
　陽子「もう、これだから」

　陽子、すぐ薬を取りに行き、父親を送り出す。

　良介を演じるのは依田英助さん。この作品を含めて、色んな特撮番組で怪人の声を演じている人だ。

　その後、洗濯物を干してから、やっと制服に着替えて学校へ行こうとする陽子。
　小村家は母親がおらず、陽子が主婦代わりを務めているのだ。

　
　そんな陽子に家の前で突然話しかけてきたものがいる。保険の勧誘のようななりをしたギャル1である。
　女「ムジムジ教にお入りになりません？」
　陽子「ジムジム教？」
　女「ジムジム教ではありません、ムジムジ教です。ムジムジ教はあなたの心の悩みの全てを救ってくださるありがたい大宇宙の神様です！」
　陽子「間に合ってます、それに悩みがあれば近くに鬼子母神もあるし……」
　
　陽子はキッパリ断ると、走って学校へ向かう。

　
　ジムニーを走らせていた大、陽子に気付いてクラクションを鳴らす。
　陽子「びっくりしたぁ、沢村さん、悪いけど駅まで乗せてって」
　大「うん、いいよ」
　陽子「洗濯物に手間取っちゃってさ、学校に遅れそうなの」

　駅に向かう車の中で、あれこれ話すふたり。

　
　大「へー、勉強してバイトしてその上、家事一切切り盛りしてるのか」
　陽子「あんまり儲かってないのよね、父さんの印刷工場……それにあんまり体も丈夫じゃないし、私が手助けしなきゃね」
　大「バイタリティの塊だなぁ、陽子さんは」

　感嘆の声を上げる大ちゃん。

　ギャル1が話しかけたのも、陽子が働き者だからだったのだろう。

　
　続いて、ギャル2が学生に扮して予備校に入り込み、隣の男子学生に声を掛ける。
　2「高校生で春の講座受けてるの？」
　学生「ええ、現役で受かりたいんです」
　2「浪人させて、貰えないの？」

　
　学生「母が病気なんです、合格して喜ばしてあげたいから……」
　2「感心ね、そうだ、君の願いを叶えて上げる」

　親孝行の真面目な学生を演じるのは、子役時代から特撮番組などで活躍している神谷政浩さん。

　続いてギャル3、自動車整備工場みたいなところへ行き、

　
　3「何の為にそんなに一生懸命働くの？」
　工員（なんじゃ、このおなごは？）

　勤労青年に親しげに話しかけ、ムジムジ教への入会を勧める。

　ギャル4は塾へ、そして我らがギャル5は、

　
　カメラマンっぽい格好でボクシングジムへ行き、
　5「そんなにまでして、減量に耐えることはないと思うわ」
　青年（可愛い……）

　その一言で、幼い頃からプロボクサーを志していたこの青年は、その夢をポイッと捨てたと言う。

　
　最後に再びギャル1が、今度は金持ちそうなマダムに変装して小次郎さんのペットショップへ現れる。
　女「このリス頂くわ……あなた、アルバイト？」
　陽子「ええ、そうです」
　女「じゃ、あなたに届けて頂くわ、うちまで」

　ギャル1、陽子を指名して自分の車に乗せて走り出す。

　陽子「良い車ですね～」
　女（ふぬけにしてやる……）

　陽子、身なりや話し方が全然違うので、それが朝の勧誘員と同一人物だと気付かない。

　車を走らせながら、ギャル1は催眠ガスを陽子に吸わせて、眠らせる。
　ジムニーで擦れ違った大ちゃんが、その車を追いかける。

　そして資材置き場まで来ると、前述の変装のままのギャルたちが次々と大ちゃんに襲い掛かってくる。

　

　
　戦いながら、本来の姿に変わるギャルたち。

　5人は大ちゃんの体にロープを巻きつけ、その自由を奪う。

　
　そこへアニーのRX-7が突っ込んできて、タイヤでロープを断ち切る。

　思わず後ろへのけぞる演技をするギャルたちであったが、ギャル2は明らかに笑ってるなぁ。

　
　大「焼結！」

　

　
　二人同時に、車を飛び越しながら、瞬時にシャイダーに変身する鮮やかなアクション。

　ギャルたちは適当に戦ってから退却するが、結局陽子はまんまと攫われてしまった。

　
　陽子や他の若者たちは、荒れ地に建つ西洋のお城のようなところへ連れて行かれ、「神の祝福」と称して、ムジムジの放つ特殊な光を浴びる。

　
　その後、虚ろな表情でチキンの骨付き肉を食べ、得体の知れない呪文をつぶやきながら歩いている陽子を、大ちゃんが発見し、家に連れ戻す。

　
　ムジムジの光でおかしくなった陽子は、手当たり次第に食べ物を腹に詰め込み、遂には巨大な繭の中に閉じ篭もってしまう。

　良介「陽子ーっ！」
　良一「姉ちゃん！」

　
　家族の声も届かず、あらぬことをつぶやきながら、延々と物を食べ続ける陽子。

　当然、ほかの若者たちの身にも同様の出来事が起きていた。

　クビライは、「日本中の青少年を繭の中に閉じ込めるのだ！」と、ギャルたちが聞いたら死にたくなるような命令を下すのだった。

　仮に、該当する年齢の人口が2000万として、ギャル一人当たり400万人の若者を勧誘しなくてはならない計算になる。無理だっての。

　一方、シャイダーとアニーはいかにも刑事らしく、フーマの過去の犯罪記録を洗い直して、フーマの目的が那辺にあるのか、突き止めようとしていた。

　アニー「ヘルクレス座の第43惑星で起きた事件よ」
　大「繭の中に閉じ篭もり、食事ばかりとり続けた人間はやがて手足が退化し、さなぎのようになって……」

　
　そのさなぎ人間のイラストまでご丁寧に表示される。グロい。

　
　陽子、相変わらず食べて食べて食べまくり、遂には生のキャベツをまるごと齧ると言う、東海林さだおも真っ青の挙に出ていた。

　……しかし、その食べ物はどこから調達してるんだろう？

　繭の中に自動的に生成されているのだろうか？

　当然、家族の嘆きはひととおりではない。

　良一「死んじゃうよ、そんなに食べてばかりじゃ、姉ちゃん！」
　良介「母親が死んだのは4年前です。それから陽子が母親代わりで、その上バイトまでして、私もつい甘えてしまったんです。さぞつらかったんだと思います」

　良介は、家事やバイトなど、過大な負担を強いられてきた陽子がその反動でこんなことをしているのだと、自分を責める。

　アニーの調べで、陽子と同じような症状の若者が多数いることが判明する。
　アニーと大は、それぞれ自らが囮になって、敵の懐に飛び込む作戦に出る。

　
　で、大ちゃんはボクシングに打ち込む若者、

　
　アニーは眼鏡っ子の学生になって、ギャル2が入り込んだ予備校へ潜入し、フーマが近付くのを待つ。

　さすがにそう簡単に声を掛けられることはなかったが、アニー、予備校からたくさんの若者を乗せたバスが出て行くのを見掛け、慌ててそれに乗り込む。フーマがそうやって一度に大量の若者を誘拐しているだと睨んだのだ。

　
　アニー「ねえ、何処行くの、このバス？」
　学生「地獄行きさ」

　アニー、さりげなく隣の男子学生に行く先を尋ねると、学生は物騒なことを口にする。

　
　アニーがハッとして周囲を見渡した瞬間、

　
　周囲の若者たちが一斉に立ち上がり、ギャルやミラクラーの姿になってアニーを取り囲む。

　そう、フーマは全てお見通し、だったのだ。

　
　運転席から飛んで来た吸引機で、催眠ガスを強制的に吸わせられるアニー。

　ギャル2の大きく開いた胸元や、前屈みになったギャル5の胸元など、見所の多いカットである。

　2「やはり女宇宙刑事」
　1「ふふふ、良い土産が出来た」

　アニーが眠りに落ちたのを見届け、彼は再び人間の姿になって座席に戻る。

　同じ女優が演じているのはギャル2だけだが、ここは是非ギャル5にも予備校生っぽい姿になって欲しかった。

　一方その頃、大ちゃんは、

　
　無視されていた。

　大（あれえ、おかしいなぁ……）

　そりゃまあ、大ちゃんとアニーが並んでたら、大抵の人はアニーの方へ行きますよね。

　
　ムジムジ「お前たちの魂は全宇宙より広大なのじゃ、ちっぽなことにこだわるのをやめよ、働くのをやめよ、学ぶことをやめよ、怠惰こそ最大の美徳である……」

　陰にこもった独特の声で、若者たちに説くムジムジ。

　ヘスラー「ムジムジ神様、この女宇宙刑事は働き過ぎました。ムジムジ様！　休息の時を」
　ムジムジ「永遠の怠惰を与えよう」

　ムジムジが糸を吐き出すと、眠ったままのアニーの体を芯にたちまち巨大な繭が出来上がる。

　ヘスラー「これで蚕になったぁ！」
　ヘスラーが叫んだ瞬間、シャイダーのビデオビームガンが発射され、出来たばかりの繭を破壊し、アニーを解放する。

　
　服を脱ぎ捨て、いつものスタイルに一瞬で変わるアニー。

　
　シャイダー「ここの場所を探る為に一芝居打たせて貰った」
　アニー「私はマウント星人、少しくらいの催眠ガスでは眠くならないのよね！」

　その後は、いつもの戦闘ルーティンをこなして、事件解決。

　ムジムジが倒されると同時に、陽子たち繭の中に入っていた若者たちも元に戻る。

　ラスト、すっかり元気になって駆け回る陽子たちの姿を微笑ましく見守る大ちゃんとアニーの映像で締め。

　ちなみに今回のテーマ、新学期を間近に控えた子供たちへの教訓も込めてのチョイスだったのだろうか？