第9話「ねらわれた秘伝奥義! コマンドーvs唯」(1987年1月8日)
新年一発目の放送だが、映画「コマンドー」が日本で公開されたのがちょうど1年前。この言葉、よほど流行っていたようで、次回作「少女コマンドーいづみ」では、タイトルにまで使われることになる。で、意外なことに、このイロモノ的なサブタイトルの9話が最も視聴率が高かったのだ(関東で21.3%)。
さて、冒頭、「翔」の眼前で、格闘技の関節技のような術を披露している屈強な戦士ハヤブサ。

オトヒ「楠流忍法の格闘術と米軍特殊部隊の戦闘術をも身に付けております」
ミヨズ「手土産に、楠流秘伝の毒・於宇(おう)の実を持って参るとのこと……古書によれば秘伝の製法により、幻覚、殺生、思うがままの万能毒でありながら今や絶滅したと伝えられる毒草にございます」
ミヨズこと屋敷かおりさんの美しい正面からのショット。

翔「面白い、名は?」
ハヤブサ「ハヤブサ!」
ハヤブサを演じるのはキャプテンウルトラこと、中田博久さん。
さて、唯は生まれて初めて横浜を訪れていた。一応、中華街を歩くシーンもある。
唯「全く東京生まれの癖して迷子になるなんて姉ちゃんたちも情けなかぁ~」
大きな地図を手に歩きながらぼやく唯。姉二人と一緒に来て、はぐれてしまったらしい。
その唯、たまたま通り掛かった公園で、屈強な不良たち(うち、ひとりはヒョウ柄のタイツを履いている変態)に絡まれているスケバン風の女の子を目にする。
……なんかこのパターン、多いよね。

唯にも劣らぬ身体能力で、不良たちを手玉にするアメリカンな娘・美沙を演じるのはクリスティーナさん。
どういう素性の人なのかさっぱり分からないが、モデルでもやっていたのではないだろうか?
美沙は、ハヤブサと同じような妙な関節技を使い、唯はそれを見逃さなかった。
唯「あの動き、忍びんごつある」

で、いつものように唯はほいほいと彼女についていき、気さくに話し掛ける。
唯「なんちゅうと、今の技は?」
美沙「なんだよ、おめー」
唯「今の技、わちに教えちくり」
美沙のカタコトのヤンキー風日本語と、唯の方言丸出しの日本語でも、ちゃんとコミニュケーションが取れるんだねと、変なところに感心してしまう。
そんな二人の姿を、公園の木陰からハヤブサが鋭い目付きで見詰めていた……。

唯はしつこく美沙にねだり続け、港まで来てしまう。
そこで、クレープ(当時、大人気だったのよ)の屋台をやっていたおじいさん、美沙が不良たちを叩きのめしたと聞くと、血相を変えて美沙をビンタする。そのおじいさん、美沙の祖父だったのだ。
岡田「あの技はみだりに使うなと言った筈じゃ」
美沙「うっせーなぁ、だったら教えなきゃいいだろう!」
美沙は悪態をついて走り去ってしまう。

唯「厳しかぁ、うちのじいちゃんとおんなじじゃ」
岡田「グレさせまいと、厳しく育てたのが逆目に出たのかも知れん……」
美沙の祖父・岡田久義を演じるのは戸浦六宏さん。
唯「わかった、女心は複雑なんじゃ、おじいさんにも分からんことがある、わちに任しやい」
唯は美沙の後を追って走り出す。

その後、心ここにあらずといった顔でクレープを焼いている岡田だったが、少し離れた所にいるハヤブサの存在に気付く。
岡田「生きていたのか、ハヤブサ」
ハヤブサ「さすが、楠流宗家だな」
二人は、他の人間には聞こえない特殊な言葉で離れたまま会話を交わす。
ハヤブサは岡田のかつての弟子であった。
彼は岡田に「於宇の実」とその秘伝書を渡すよう要求するが、岡田は拒否する。
唯は美沙につきまとい、あれこれうるさく話しかけていたが、揉み合っているうちに二人とも海へ落ちてしまう。が、それがきっかけで二人はやっと打ち解けるようになる。
服が乾くのを待ちながら、美沙のアパートで互いの身の上話などをする。

美沙「あたいと同じだね。もっともあたいはみなしごだけどさ」
唯「でも、じいちゃんが」
美沙「あいつとは血が繋がってないんだよ、あんなに厳しいのも所詮他人だからさ」
唯「そんげなことなかー、いんや、血の繋がりなんかどんげでもよか、あん時のじっちゃんの目はほんとんこつ美沙さんのことを心配しちょった目じゃ!」
美沙「分かったこと言いやがって……」

翌日、唯は学校の裏手で、丸太棒を相手に美沙の使った関節技の再現を試みていた。

例によってすぐ依田が現れ、「馬鹿力だけを頼りにしているようじゃバツですね」とダメ出しをする。

依田から「テコの原理」と言うヒントを貰った唯、結花の教室へ行き、そこにいた由真に「テコの原理」について教えてくれるよう頼み込む。
由真「自分で調べな」
唯「そんげな、冷たいこと言わんとー、教えちくりよ」
由真「そんなもん分かる訳ねえだろー」
唯「ああー、うん、由真姉ちゃん知らんとー?」
由真「てめーっ」
ところ構わず喧嘩を始める妹たちに、つい笑みを浮かべる結花だったが、頃合を見て「やめなさい!」といつもの一喝。

スケバンなのに成績トップと言う変な設定の結花は、黒板に図を書いて分かりやすく説明してやる。
結花「力点に加えたf×bって力のモーメントが作用点ではa×wと言う逆向きの力のモーメントとして働く訳……分かる?」

唯「うん……」
自信なさそうに何度も頷く唯と、とりあえず笑っているだけの由真を見て、

結花「ダメだこりゃあ……」
唯、結花の説明が分かったのか分からないのか、今度はもっと太い原木を素手でへし折ろうと奮闘する。

「テコの原理」とはあまり関係ない気もするが、遂に根性でその太い木を折ってしまう唯。
……さすがに説得力がないなぁ。
物陰から見ていた依田は「恐るべきは無知なる者」と半ば呆れ、半ば感心していた。
その後、唯はまた岡田を屋台を引いているところを見掛ける。
ちょうどそこへ、目出し帽をかぶった数人のコマンドが現れ、老人に襲い掛かる。

唯、思わずヨーヨーを取り出して助けようとするが、岡田は老人とは思えぬ動きを見せ、唯の力を借りずに彼らを撃退してしまう。

唯「すごかー、じいちゃん! じいちゃん?」
岡田「いつかこういう日が来ると思っていた。君に頼みがある……」
一方、公園で物思いに沈んでいた美沙、「血の繋がりなんか……」と言う唯の言葉に背中を押されるようにして、祖父と和解しようと歩き出すが、そこにハヤブサと部下たちが現れ、苦もなく美沙を気絶させる。
ちょうどそこへ、岡田から頼まれた唯がやってくる。

唯「なんじゃ貴様、うちの関節技、見せてやる!」
唯、無謀にも見よう見まねの関節技で、ハヤブサに挑みかかる。

ハヤブサの逞しい体に抱き付いてベアハッグのような技を仕掛けるが、

あっさり返されて、逆に両肩の骨を外されてしまう。
ハヤブサ、唯のことは知らされていなかったようで、動けなくなった唯を放って行ってしまう。
「影」としては、千載一遇のチャンスを逃したことになるが……。
ほどなく岡田も駆けつけ、倒れていた唯の体を起こし、肩の骨を戻してやる。

と、その瞬間の激痛のせいか、唯の額にあの梵字が浮かび上がる。
岡田「まさか、君は風魔一族の?」

唯「風魔一族、鬼組の頭・小太郎の娘!」
岡田「……」
唯「星流学園1年B組風間唯、またの名を三代目スケバン刑事・麻宮サキ」
岡田「いや、誰もそんなこと聞いてない……」 ここで初めて、岡田は自分が楠流忍術23代目宗家だと名乗る。
直後、レター付きのナイフが飛んでくる。手紙には、廃倉庫で「例の物」と美沙を交換したいと記してあった。
ここで、ごく簡単に岡田と美沙の関係が説明される。
岡田は、忍びとして活動中、偶然捨てられていた赤ん坊の美沙を拾い上げ、それから自分の孫として育ててきたらしい。

岡田は唯をアパートへ連れて行き、畳の下に隠していたハヤブサが喉から手が出るほど欲しがっている「例の物」、すなわち「於宇の実」を取り出して見せる。
岡田「これは「於宇の実」と言い、使い方によっては万人を殺すことも、また目の錯覚を起こさせ、術の助けにすることもできる。万能の毒の実じゃ。世界中にこの種のみ。永久に封印しておくつもりであったが、やむをえん。楠流の奥義は、あらゆる殺気を消し去り、自らの存在すら消すことだ。おぬし、俺の影になるか?」
唯「影?」

こうして、スケバン刑事と老いた忍びと言う異色コンビが誕生し、完全武装で敵地に乗り込むことになる。
由真の「ジレンマ」がBGMとして使われ、実に燃えるシーンである。
で、唯と岡田のコンビネーションによるハヤブサの部下との戦いの模様は、長くなったので割愛。
ハヤブサとの決戦を前に、岡田は「於宇の実」のひとつを火種の筒の中に入れ、唯はそのひとつを口に含む。

岡田、ハヤブサとの一騎打ちに挑むが、壮年のハヤブサにはかなわず、首を固められる。
が、それは岡田も想定していた展開だった。
岡田「楠流奥義、月影の術!」

岡田の叫びと同時に、なんと、岡田の影の中から唯のヨーヨーが飛んできて、ハヤブサの手首に巻きつく。

ハヤブサ「影が動く?」
続いて唯自身の姿も浮かび上がる。
さすがに、ほんとにそんな魔術めいたことは不可能なので、「於宇の実」の煙によって、ハヤブサに幻覚を見せたのだろう。つまり、闇に紛れて唯は岡田の影に張り付くように隠れていたのだ。

唯、岡田の体を吊り上げる際、「支点、力点、作用点!」と、結花から習った「テコの原理」を使いこなしている雰囲気を出しているが、これはまあ、形だけのもの。
岡田「これが於宇毒の秘術よ」
ハヤブサ「於宇! それさえ手に入れば……世界は我が手に……ふっふっふっふっ」
ハヤブサ、自ら舌を噛んで自害する。
人質になっていた美沙を唯が助け下ろす。

唯「見たじゃろう、じいちゃんはな、命を賭けて戦ったとよ」
美沙「身から出た錆さぁ助けんのが当然だろ」
それでも不貞腐れた態度を取り続ける美沙。岡田がカッとなって思わず手を上げようとするが、
唯「しゃからしかっ!」
その前に唯が美沙の顔を引っ叩く。
唯「なんで二人とも突っ張ると? なんで素直な気持ちが言えんとー?」

岡田、足元に秘伝書を置き、火薬を撒いて火をつける。更に、世界にそれひとつしかない於宇の実を投げ入れる。
岡田「わしゃ、これで過去の全てを捨てた。もしもう一度やり直す気があるなら、明日公園に来てくれ。もし美沙がいなかったら、そのままどっかへ消えてしまうよ」
岡田はそう言い残して、闇の中へ消える。

翌日、お約束の感動の再会シーンではなく、あっさりと美沙が祖父と和解するつもりだと唯に告げているシーンとなっている。
美沙「あたい、あいつをほんとのじっちゃんと思うことにしたよ」
唯「良かったね」
美沙「そうじゃないと、あたいひとりぼっちだもん」

屋台を引いてやってきた岡田に抱き付く美沙を見ながら、唯は「なんでわちのじっちゃんは黙っておらんごなったんじゃろう……」と暗い面持ちになるのだった。
なお、新年一発目と言うことで、今回からED主題歌が浅香唯の「STAR」に代わる。タケカワユキヒデ作曲だぜぃ。
追いかけて 私のシューティングスター~
導いて きらめくシューティングスター~
紅く強く燃えながら~