第24話「水爆特急900キロ」(1975年3月17日)
楽しい楽しい宮崎ロケもこれが最後となります。
前回のラストから、マッハバロンは操縦する陽が一時的に視力を失っていることもあり、敵ロボットに圧倒され、韓国岳の温泉地帯に半身をめりこませた状態になっている。
ガンさんたちは、KSSバードで懸命にマッハバロンを引き揚げようとするが、力及ばず、マッハバロンはそのまま地中に吸い込まれ、地下に作られた秘密基地へ収容され、陽も捕虜となる。
基地では、タンツの指揮の下、900キロの水爆を宮崎から東京へ撃ち込むと言う、「V900地獄作戦」が着々と進められていた。

メンバー総出で、韓国岳で秘密基地の所在を捜索する村野たち。
背後の雲のような蒸気が実に良い絵になっている。
そんな彼らの頭上に、タンツの全面降伏を促す声が響く。
村野「ララーシュタインに伝えろ、たとえ手足をもがれてもKSSは戦い続けるとな!」

ララーシュタイン「なにぃ、手足もがれても戦い続ける? 村野の奴、むげに殺すには惜しい才能だから降伏を勧めたのに……V900地獄作戦を実行に移し、火の海となった東京を見せ付けてやるのだ!」
ララーシュタイン「はっはははははっ」 身なりは異様だが、良く見たらめっちゃ良い人そう……。

その後も、秘密基地への入り口を捜すKSSメンバー。
後方に小さく見える愛の身体、オーバーオールの生地が弾けそうなくらい、パツンパツンになっている。
一度ぐらい、愛の水着姿を見せて欲しかった……
一方、人質にされた陽だったが、例によってロボット帝国は抜け目がないようで抜けていて、見張りもつけずに陽をボイラー室のようなところに放り出していた為、陽は自力でいましめを解いて、基地から脱出しようとする。視力は、自然と快復したらしい。
結局、敵に見付かって再び拘束されるのだが、なんとか村野に連絡して「V900地獄作戦」の概要について伝えることが出来た。

ホテルへ引き揚げ、作戦会議中の村野たち。
花倉「ロボット帝国の奴ら、韓国岳から東京に水爆を撃ち込むつもりだったんだな」
譲司「なんとしても、我々の力で水爆投下は食い止めなければならない」
村野「待ちなさい、みんな無駄な抵抗はやめるんだ」
岩井「無駄ぁ? じゃあ降伏するってんですか?」
村野「そうしようかと考えている」
譲司「バカなっ、手足もがれても戦う、そう言ったでしょう」
村野「敵は地底で完璧な武装をしてるんだ。犬死は避けたい」
岩井「奴隷になるよりはマシでしょう!」
村野は、なにより「V900地獄作戦」を阻止するのが先決だと、血気にはやる部下を抑える。
花倉「では、降伏してどう阻止する?」
村野「我々には最早一つの賭けしか残されていません」
岩井「その方法は?」
村野「それは言えない」
岩井「言えない?」
村野の発言に、ありありと不信の色を浮かべるKSSメンバー。
村野「君たちの命を私に預けて欲しい。今言えるのはそれだけだ」 
村野の台詞と同時に、ED「眠れマッハバロン」のイントロが流れ出すのが、素晴らしい選曲センス。
「マッハバロン、眠れ眠れ~お前が静かに眠れる世の中が~平和で一番素晴らしい時~それを父さんも祈っているだろう~遠い世界で祈っているだろう~♪」

印象的な歌詞をバックに、三人が決然とした顔で、無言でKSSサー!(了解)のサインを突き出すのだが、番組におけるひとつのハイライトと言って良い感動的なシーンである。
岩井「我々の命を博士にお預けします!」
花倉刑事も同行を申し出るが、博士はそれを許さない。
村野たち4人は再びあの場所へ行き、降伏を宣言、無抵抗で彼らに秘密基地へ連行される。
陽たちと一緒に手錠で吊るされている村野たち。
タンツは、村野に「マッハバロンに水爆をセットしろ」などと、とんでもないことを命令する。
だが、村野はあっさりそれを受け入れてしまう。「命を預ける」と誓った岩井たちでさえ、信じられないと言う顔をする。まして、何も知らない陽は激昂する。
陽「冗談でしょう、博士、マッハバロンを水爆ロボットに改造するんですよ!」
村野は彼らを無視し、マッハバロンのところへ連れて行かれる。
そして、マッハバロン改造の指揮を事務的に取る。

作業を終えた村野、元の場所に戻ってきて再び吊るされる。
村野「1万メガトンの水爆が搭載された、東京どころか、関東一円砂漠になるぞ」
陽「その作業を進んでやってるのか、俺たちのリーダーのすることか、この野郎!」 江戸っ子の陽、かつてないほど激しく村野を罵る。
岩井「あなたは降伏する前、ある賭けをすると言った。教えて欲しい、みんな動揺している。このままだと気が狂いそうだ!」
愛「せめてもの望みを……」
村野「……状況は極めて困難、だが信じて欲しい、最後の最後まで私を!」
その後、秘密基地に潜入し、村野たちを助けようとした花倉と健一だったが、あえなく捕まり、陽たちと一緒に監禁される。

スーカン「V900地獄作戦の実行プランを発表する。キャプテン村野!」
岩井「キャプテン村野?」
スーカン「村野博士はパイロットとしてマッハバロンを東京へ運ぶことになった」

村野「本日6時、韓国岳基地を出発、東京A地区へ突入する。操縦は私がするが、KSSの隊員全員にも搭乗して貰う」
感情のない顔で、淡々と説明する村野。
陽「ふざけるなっ」
思わず叫ぶ陽を、ピシピシと平手打ちする村野。
花倉が止めようとするが、村野は花倉も押し飛ばし、平然としている。
愛「なんてことをするんです」
譲司「狂ってる……」
岩井「見ろ、超電磁波で操られてるんだ!」
岩井が、村野の耳の上に、アンテナのような物が生えているのに気付く。
村野は陽たちをマッハバロンの移動エレベーターの中へ閉じ込めてから、操縦席に座る。
マッハバロンには、陽以外の人間には操縦出来ないよう、生体認証システムがあった筈だが、改造の際、村野が無効にしたのだろう。
スーカン「これより直ちにV900地獄作戦を実行せよ」
村野「ララー!」
身も心もロボット帝国の傀儡と成り果ててしまった村野、ロボット帝国式の敬礼をして、マッハバロンを飛び立たせる。目指すは東京。

エレベーターには、ご丁寧に、現在位置を示すモニターランプまで付いていた。
健一「東京に近付いていく!」
花倉「博士、やめてくれーっ!」
どうすることも出来ず、刻々とマッハバロンと水爆が東京に近付くのを見守るしかない岩井たち。

KSS史上、最大のピンチであったが、
スーカン「爆破装置作動開始だ」
村野「……」
スーカン「そのレバーを引くんだ」
村野が赤いレパーを握った瞬間、激しい電気ショックが村野を襲い、村野は絶叫してその場にぶっ倒れてしまう。その際、エレベーター開閉スイッチを偶然村野が押してしまう……と言うのは、ちょっと都合が良過ぎる。

とにかく、陽は急いでエレベーターから出て、操縦席へ行き、間一髪でマッハバロンを旋回させる。
陽(村野博士は爆破装置レバーに触れた時、失神するように仕掛けておいたんだ) ここに来て初めて、博士の深謀遠慮に気付く陽であった。
ちなみに、メンバーもろとも東京(地球)に自爆攻撃させると言うのは、前作「レッドバロン」の最終エピソードと酷似してるよね。まぁ、同じ人(上原正三)が書いてるんだから、無理もない。
ホッとする陽だったが、ここでララーシュタインの勝ち誇った笑い声が聞こえる。
ララーシュタイン「喜ぶのは早いぞ、村野博士がそれくらいの小細工をするくらい分かっていた。マッハバロンには水爆は積んでない。本物のV900地獄作戦はこれから始まるのだ」
ララーシュタインは、水爆ミサイルとメガトンゲー(陸軍ロボット)を出撃させる。
そして、水爆ミサイルの操縦席に座るのは、陸軍参謀にして、ララーシュタインの長男でもあるタンツ自身であった。そう、自ら特攻攻撃を仕掛けようという凄まじい作戦なのであった。

タンツ「はっははははっ」
操縦席で狂気の笑い声を立てるタンツ。
なんか、昔のビートたけしを思い出してしまうなぁ。
ララーシュタイン「タンツ、もうすぐ東京だぞ、ロボット帝国は勝ったのだ!」 人類史上最悪の大量殺戮を、それも息子の命を捨てさせてまで行おうとする悪魔のララーシュタイン。
タンツ「私も嬉しゅうございます!」
マッハバロン、メガトンゲーに捕まって水爆ミサイルを阻止できない。

が、土壇場で陽はマッハバロンのベルトの飾りを発射させ(ベルヘンロケッター)、ミサイルを追跡させる。
ベルヘンロケッターは東京上空に達していた水爆ミサイルに取り付くと、その向きを反転させ、そのまま宇宙へ。
あわれ、タンツは誰もいない虚空で塵となる……。

勝利目前のまさかの作戦失敗に、さすがのララーシュタインもしばらくは言葉も出ないほどの衝撃を受ける。
ララーシュタイン「ゲラー、そしてタンツまでも……くぅ~」
両手を握り締め、無念の呻き声を放つララーシュタインであった。
ラスト、夕陽に染まった宮崎の美しい山々を見下ろしている村野たち。
村野「この素晴らしい自然を見たまえ、宇宙広しと言えども、こんな豊かな大地があるのは恐らく地球だけだ。ララーシュタインに蹂躙させてたまるか! これからも命懸けで守ろうではないか、我々の手で、この美しい地球をな!」