第21話「ドクガンダー大阪城の対決!」(1971年8月21日)
20話から続くエピソードで、タイトルにあるように大阪ロケが行われている。
前回、富士山麓にてドクガンダー(幼虫)と死闘を演じた仮面ライダーであったが、一度倒されて、成虫になる為にドクガンダーがこもった繭が、ゆったりと浅い川の上を流れていくのを手を束ねて見送ると言う失態を演じてしまう。
舞台は一転、吉岡助教授の勤める阪神理科大学のある大阪へ移る。

大学の研究室の前で、たくさんの記者に質問攻めにあっている吉岡。
彼は、富士山麓で巨大な毛虫を発見しまひた、と発表し、一躍脚光を浴びているのだ。
その毛虫と言うのが、ドクガンダーの幼体だったのだ。

彼は「では、証拠をお見せしませう」と、証拠、つまり毛虫の写真を取りに、研究室へ入る。
なんか、サタンマスク(16~17話)の控え室のような気がするが、気のせいだ。
だが、机の上に置いてあった肝心の写真がなくなっている。
もっとも、その写真は彼の師匠・小泉教授が命懸けでフィルムに収めたもので、吉岡は小泉が行方不明なのを良いことに、それを自分の手柄として発表しようとしていたのだから、なかなか太い野郎である。

と、物陰からぬっと現れたのが、他でもない、消息不明だった小泉であった。
小泉「つい、道に迷ってしまってね」
吉岡「良かった……僕はもう先生が死んだものだと思って……」

小泉は、催促する記者たちの前に出ると、
「吉岡君が、人物大の毛虫を見たなどと発表したが、あれは間違いです。マスコミを通じて自分の名前を売り込もうとした売名行為なんです」 と、吉岡の抗議にも耳を貸さず、言い切ってしまう。

レーシングクラブの面々も、新聞記事で、小泉が無事だったこと、巨大毛虫が吉岡の虚言で、彼はそのせいで大学を追放されたこと、などを知る。
隼人「おかしいな、俺たちもあの毛虫は見た」
立花「ひょっとしたら、小泉教授はニセモンじゃないのか?」
隼人は吉岡の身を案じ、即座に大阪へ向かう。
しかし、この記事だけで「小泉がニセモノではないか」と考えるのは、いささか唐突だ。
もっとおかしいのが、それに続いて出てくる、

恩師の発言で大学の職まで奪われたと言うのに、吉岡が落ち着いた様子でその小泉に自分の研究を見せているシーンである。
そもそも、「大学を追われた」と書いてあるのに、なんでまだ研究室にいるんだ?
それはともかく、その研究とは、繭を急速に成長させる成長促進剤と言う、ショッカーにとっておあつらえむきの薬品だった。
小泉「これから私の研究室へ行ってもっとよく調べてみよう。私の秘密の研究室があるんだよ、協力してくれるね?」
吉岡「はあ……」
いや、「はあ」じゃなくて……
普通の社会人なら
「それより先生のせいで、大学クビになっちゃったじゃないですか、どうしてくれるんすか!」と食って掛かるところだと思うんですが……。
どうもこの辺、シナリオの整合性が取れてない感じ。
とにかく、吉岡はギネス級のお人好しなのか、
単なるバカなのか、怪しみもせずに小泉教授と一緒に「秘密の研究室」へ赴くのであった。

一方、大阪へ向かってバイクを飛ばす隼人の前にあの繭が転がり落ちてきて、中から立派に成長したドクガンダーの成体が元気良く飛び出す。
ドクガンダー「俺は生き返った、今度こそお前の命は頂く」
より強力になったドクガンダー、戦闘員たちと戦う隼人。
後方から、滝がジープでやってくるが、ドクガンダーは指先からミサイルのような物を発射して、ジープを破壊する。
ドクガンダー「今のは小手調べだ、また会おう!」
ドクガンダー、空を飛んでいずくともなく去る。
「今度こそ~」とか言ってたのに……
ともあれ、隼人と滝は一緒に大阪へ向かう。

大阪に着くと、真っ直ぐ大学の研究室へ行くが、既に二人の姿はなく、代わりに握りがワシの顔になっている凝った通信機付きナイフで、首領が語りかける。
首領「遅かった、一文字隼人、吉岡はこっちで頂いた。我がショッカーの力は無限なのだ!」
わざわざそんなこと彼らに言う必要はないと思うのだが、首領の自己顕示欲の強い性格を如実に表わしているシーンである。

その吉岡は小泉に連れられて、大坂城近くの、どう見ても廃墟にしか見えない建物に来ていた。

吉岡「こんな場所で研究を?」
小泉「うん、うふふふ」
怪しい、どう考えても怪しい。
……が、吉岡はギネス級のお人好しなのか、
単なるバカなのか、素直に建物の中へ入るのだった。
ちなみに、実際にはこの建物、大坂城とは全然別のところにあるようだ。

で、吉岡はものの見事に彼らの罠にはまり、地下室へ閉じ込められる。チーン。
小泉「先生、これは一体どう言う訳なんです?」
吉岡「うっふぇふぇふぇ……」
鉄格子の嵌まった窓から、小気味良さそうに覗き込む小泉。

一旦引っ込むと、すぐドクガンダーの姿になって登場。
ドクガンダー「よーく来てくれた、これから君にお願いする仕事を説明しよう」
これだけ見ると、ニセ小泉の正体はドクガンダー自身だったとしか思えないのだが、小泉はずっと吉岡と一緒だったのだから、大阪へ近付いている隼人たちを襲撃できる筈がない。よって、戦闘員が化けていたと考えるのが妥当か?
無論、本物の小泉は、20話の冒頭で崖から転落して既に死亡していたのだ。

しかし、次のシーンでは秘密の研究室で、ドクガンダーがたくさんの繭を見せているのが、またもや、なんだかなぁと言う感じ。
だったら、わざわざ一度地下室へ監禁せずとも、そのまま研究室へ連れて行けばよかったのだ。
で、ショッカーは、ドクガンダー(量産型)の繭を、吉岡の開発した成長促進剤で一気に成長させ、たくさんの怪人を生み出そうと目論んでいるのだ。
吉岡は断固協力を拒否するが、断れば最愛の娘ミキを殺すと脅され、やむなく従うことになる。

その吉岡家の前の道をちり紙交換の車で行ったり来たりしながら、それとなくミキをガードしているユリとマリ。
マリ「あー、隼人さんに頼まれた仕事が」
ユリ「大阪でちり紙交換とはねえ」
マリ「若い女の子がする仕事じゃないわ」
明敏な隼人は、ショッカーが吉岡に言うことを聞かせる為、娘を誘拐しに来るのではないかと考え、二人に護衛を頼んだのだろう。

玄関先で、お下げの女の子が無心にボールをついている。
車が家の前で停まり、若い女性が出て来て、ミキに話しかける。

女「ミキちゃん、パパが交通事故で病院に入院したのよ。すぐ行きましょう」
ベタベタな嘘で、少女を誘拐しようとする女。
無論、彼女はショッカーの一味なのだが、なかなか可愛い。渋谷秀美さんと言うのかな?

が、少女が振り向くと、それはミキではなく五郎であった!
女も驚いたが、見ていた管理人もこれには完全に意表を衝かれた。
こういうハッとするようなシーンがひとつあると、そのエピソードが強く心に刻まれるんだよね。

五郎「べーっ、騙されるもんか」
で、この女装した五郎が妙に可愛いんだよね。
女はすぐ戦闘員(おっさん)の姿になって、管理人をがっかりさせる。

戦闘員、ナイフを振り回して彼に向かってくるが、マリとユリがすぐ駆けつけ、三人がかりでどつき回される。
……戦闘員って、その辺のヤクザより弱いんじゃないかと言う気がする今日この頃でありました。

「イーッ」と一声叫んでぶっ倒れた戦闘員の体に馬乗りになり、なおも頭をパコパコ殴る五郎。
五郎「こんにゃろ、こんにゃろ」
ユリ「カッコイイ~、五郎ちゃ~ん」
五郎「あったり前じゃんか、僕はお姉さんとちょっと(頭の出来が)違うんだなぁ」
ユリ「威張るんじゃないの」
マリ「作戦成功よ、早く隼人さんとこへ……」
ユリとマリも、当然、五郎が化けていることを知っていたのだ。
五郎が自分の頭の良さを自慢しているのは、その作戦を彼自身が発案したと言う意味なのだろう。
彼らは戦闘員を捕虜にして、隼人たちが活動拠点にしているサニーストンホテルと言う小さなホテルへ移動する。

隼人「アジトは何処だ?」
戦闘員「言うもんか」
ユリ「言わないともう一発空手をお見舞いするわよ」
ユリが怖い顔で手刀を振り上げると、戦闘員がびびって体をのけぞらすのが、とても悲しくなる管理人であった。
「お前ら本気で世界を征服するつもりがあるのか?」と、ショッカーの皆さんを居酒屋に集めて6時間くらい説教したくなる。
隼人「ウーマンリブはストップ! 君たちはミキちゃんの方を心配してくれ」
本物のミキも、彼らの部屋にかくまわれていた。

五郎「てやんでい、子供は子供同士、ねえ、ミキちゃん?」
ミキ「私、男の子の大嫌いよ!」
五郎「ショック!」
滝「みんなピーチクパーチクうるさいよ、俺が面倒見てやろう」
滝がミキの体を抱き上げた時、窓の外をドクガンダーが音もなく横切り、爆弾を放り投げる。
戦闘員は「イッ」と、か細い声を出して死んでおしまいになる。コオロギみたいに弱々しい戦闘員であった。

滝、急いで屋上へ駆け上がり、頭上を旋回しているドクガンダーに、「化け物、降りて来い!」と叫ぶ。

すると、ドクガンダーは、言われた通り彼の目の前に着陸するのであった。
滝が
「ほんとに降りるんかーい!」と、(場所が大阪だけに)関西人のノリで派手にひっくり返っているのがお分かり頂けるだろうか? 勿論、管理人の口からでまかせである。

苦戦する滝であったが、そこへ隼人もやってきて、ライダーに変身する。
なお、ここでも、後ろから隼人に「待て」と言われて、滝にトドメを刺すのを素直に「待つ」ドクガンダーの姿を見ることが出来る。
ライダー、屋上でドクガンダーと空中戦を演じるが、決着は付かず、ドクガンダーは空を飛んで去って行く。
後編に続く。