第13話「最後の戦い」(1988年2月4日)
1年間の予定で始まった「いづみ」だったが、視聴率は1桁を連発し、1クールでの打ち切りとなってしまう。
唯一の救いは、後続番組のつなぎの為に、この13話で一旦終わった筈なのに、急遽2話分のエピソードが追加されたことである。だから、本来はこの13話が最終回となる予定だったのだ。
さて、飛葉ちゃんといづみの戦いに巻き込まれ、佐織は大怪我をしてしまい、更に、敵のアジトを突き止めようとした恵子も、彼らの手に落ちてしまうと言う、かつてない厳しい局面の中で、物語はスタートする。

石津「諸君、今、時は満ちつつある。やがて続々と生み出されるバイオフィードバック戦士たちを先頭に、我が軍は日本の国防を影から支配する。そして近い将来、全国の防衛網は我々の支配下に置かれるだろう。真に選ばれた者のみが、21世紀を動かすことが出来る。諸君、その胸にしっかりと刻み込んでおいて貰いたい。21世紀は我々の手で動かすのだと言うことを!」
「謎の組織」の集会所で、若い将校たちを相手に演説をぶっている石津おじさん。

引き続き病院のベッドで眠っている佐織の枕元に立つ健と藤原。
藤原「こんなことになるんなら、早いとこ、なんとでも理由をつけていづみをブタ箱にぶち込んでおくんだったな」
健「無理するなよ」
藤原「ええっ?」
健「藤原さんは分かってる筈だよ、いづみだって、ほんとは普通の女の子だってこと、だから追いかけ続けてんでしょ、今時珍しい普通の女の子助けたくって……」
藤原と健の過去の関係も、結局語られることがないままだった。
さて、いづみはバイクにまたがり、藤原から得た手掛かりを元に恵子の行方を探していた。
どんどん山の奥へ入って行き、道端にサイリウムライトが落ちているのを見付ける。
いづみ「恵子……」
恵子が車で運ばれる途中(自分から車に忍び込んだんだけどね)、目印として残しておいたものだった。

その恵子は、石津の楽しい楽しい実験室で、額に電極を付けられて「う、う~ん」と色っぽく喘いでいた。
石津は、自ら飛び込んできた「素材」に、マスプロタイプのバイオフィードバック戦士としての調製を行っているのだ。

モニタールームから、実験の様子を眺めている石津おじさん。
部屋の奥のスクリーンに、こちらに向かっているいづみの姿が映し出される。
石津「いづみぃ……、神崎部隊を出動!」

落葉の積もる林の中、いづみの前に立ちはだかったのが、石津配下の精鋭・神崎部隊であった。
神崎「俺たちを相手に勝ち目はないぞ……」
中川家の親戚にいそうな神崎を演じるのは手塚秀彰さん。

いづみ、無言で恵子のメッセージが書かれたリボンを額に巻く。
神崎「死ぬ気か?」
無言でファイティングポーズを取るいづみ。
石津が最後に差し向けただけあり、神崎部隊は強く、いづみはあっという間に追い詰められてしまう。

木の幹に押さえつけられたいづみの顔面に神崎の鋭いパンチが飛んでくるが、その手首に横から飛んで来たロープの付いた手錠がカチャッと嵌まる。

振り向けば、いづみを追ってきた藤原が立っていた。
藤原「やったぜぇ、いづみぃ、これがお前の敵かぁ?」
いづみを麗子先輩殺害犯人として長い間追い続けてきた藤原、ここでやっと、いづみが無実だったと確信する。
藤原、大人気なくも、ニューナンブM60で神崎の部下を次々射殺する(死んでないけど)。
だが、弾切れになると、もろくも神崎に瞬殺される。

いづみ、サバイバル・ソーを構えると、神崎を、ハイレベルなバトルの末に倒す。
その一部始終は石津たちも目の当たりにしていた。
滝沢「司令官、いづみが神崎部隊を全滅させました。しかもバイオフィードバックを使わずに」
石津「全部隊を投入しろ、重火器の使用も許可する」
いづみを食い止める為にはなりふり構っていられない石津であった。

神崎部隊を排除したいづみ、傷付いて倒れ込む藤原を潤んだ瞳で見詰める。

藤原「へっへ、そんな大きな目で俺を見詰めるなよ」
照れたように笑うと、藤原は内ポケットから石津の写真を取り出して見せる。
藤原「石津麟一郎、湾岸を牛耳る、石津産業の社長……かっては国防省のエリート将校だった。奴はその頃、今の軍事力ではポスト核戦争の国防は出来ないと考えた。はじめは国を思う、純真な気持ちだったかも知れん。だが、異常なほど軍事にのめり込むうちに、奴はかつてのナチスのような怪物に変わってしまった」

藤原「大学で研究した生化学を使い、石津グループと言う自分の企業グループを隠れ蓑に、奴は超兵士を作り出そうとした」
いづみ「その為に私が?」
藤原「奴は今や、その軍事力で日本を影から支配しようとしている。恐ろしい野望に満ちた、化け物だ。放っておけば多くの若者が犠牲になり、やがて日本そのものが大変なことになる」
いづみ「藤原さん!」
いづみ、初めて藤原のことをさん付けで呼ぶ。
藤原「ああ、それからな、ちびっこい、あの、佐織って、あいつから伝言だ。『いづみさん、頑張って』ってよ……死ぬんじゃねえぞ、いづみ! その手に取り戻してみせろ、奪われたお前の青春って奴をな!」
いづみ「ありがとう……」

実験室では、相変わらず恵子が「う、うーん」と色っぽく喘いでいた。

その姿態を思う存分、こころゆくまま、一瞬たりとも目を離さず凝視している石津おじさん。

ふとカメラに向かって、
「これも仕事なんですよ」と言い訳……しない。
そばの滝沢に振り向いたのである。
滝沢「いづみはバイオフィードバックを発動せず、この建物まで辿り着きました。その上っ……」
石津「どうしたっ?」
滝沢「何故か我が全軍が退却しました!」
思いがけぬ事態に、さすがの石津も動揺を隠せないようだったが、やかで、腹心の神崎や下にいる科学者たちに「諸君、今までの協力には感謝する。退去してくれ」と、基地から去るよう厳命する。

もっとも、この異変は手負いのいづみにとっては恵みの雨だった。
これまでの戦いで痛めた足を引き摺りながら、誰も居ない基地の中を進むいづみ。
幸い、あちこちに親切なガイドプレートが付いているので、迷わず目的の部屋に向かうことが出来た。

途中、隔壁を敵から奪って来たバズーカ砲で破壊する。

いづみ、実験室の手前の廊下まで来るが、その部屋からスッと出てくる迷彩服の女兵士。

他ならぬ、恵子であった。
スピーカーから石津の声が響く。
「プロトタイプいづみ、君の仲間のバイオフィードバック戦士を紹介しよう」
恵子、いづみの目の前で「バイオフィードバック発動」を行う。
僅か半日で戦士としては素人同然の恵子をバイオフィードバック戦士に仕立ててしまうのだから、石津たちの技術も格段の進歩を遂げたようだ。
洗脳された恵子、ナイフを手にいづみに襲い掛かってくる。

二人は戦いながら、実験室へ移動する。
が、いづみは親友の恵子と本気で戦うことなど出来ず、ほとんど無抵抗のままぐいぐい首を絞められる。
いづみ「恵子になら……殺されてもいいわ。今までありがとう」

カメラが回転しながら二人の姿を映すと同時に、恵子の脳裏に今までのいづみとの数々の思い出が甦っていた。

カメラが止まると同時に、恵子もいつしか正気を取り戻していた。
いづみ「恵子っ!」
恵子「いづみ……」
二人の友情が、冷徹な科学に打ち勝った、感動的なシーンである。
散文的には、恵子の洗脳が完全でなかったということも理由として考えられるが。
恵子は自分を取り戻すが、バイオフィードバックの反動か、その場に倒れてしまう。
石津、モニタールームからゆっくり出てきて、いづみの前に立つ。
石津「かつて兵士たちの先頭に立つことを夢見て、自らにバイオフィードバックを施した男がいた。しかし、まだ研究は十分ではなく、男は研究者として生きる道を選ぶしかなかった。いづみ、お前はその時からの私の見果てぬ夢だった。だがそれも、今は幻と消えた……」 突然の告白を始める石津。石津はもっと以前に、自らを実験台にしてバイオフィードバック戦士を作り出そうとして挫折していたらしい。
いづみ「悲しい夢……」
石津「黙れっ!」 少女の心ない一言が、日焼け中年の怒りに火を付けた!
石津、サングラスを外すと、元祖「バイオフィードバック」を発動させる。
石津の強烈なパンチを喰らい、恵子のそばにうつ伏せに倒れるいづみ。
恵子「いづみ、あいつを倒して……あんな奴にやられたまんまじゃ、悔しいよ」
意識朦朧としながら、いづみに囁きかける恵子。
恵子の声が届いたのか、いづみがパチッと目を開く。それを見て、恵子も笑みを浮かべる。

いづみ、再び立ち上がると、凛とした眼差しを石津に向ける。

それを見て、石津もニッと微笑む。
自分が長年追い求めた「夢」を遂に探し当てたように……

ここでやっといづみが本家「バイオフィードバック」を発動させる。
髪がふわりと逆立ち、恵子のリボンが千切れ飛ぶ。
さっきいづみが撃ったバズーカのによる火災が建物じゅうに広がりつつあった。
実験室にも、徐々に火が回ってくる。
そんな中で、互いにバイオフィードバック戦士と化した石津といづみの頂上決戦が開始される。
ベストコンディションだったら、いづみの圧勝だったろうが、なにしろいづみは既に何人もの敵と戦い、消耗していた。足の怪我もあり、元気一杯の石津おじさんに苦戦する。
それでも、最後はいづみが勝利を掴む。

背中合わせの状態で、いづみのサバイバル・ソーが石津の胴体をぎりぎり締め上げる。
いづみ「傷付き倒れていった若者たちへ……石津麟一郎、これが私のラストバトル!」 いづみ、チェーンを解くと、棒立ちの石津に凄まじい右回し蹴りを叩き込む。
石津、廊下まで吹っ飛ばされ、炎の中に立ち尽くす。
石津「それでこそ、最終兵器だ。私の見果てぬ夢だ。お前の幸運を祈る……」 石津はそう告げると、ばったりと倒れて火に包まれる。
本来なら、このまま死んだ筈なのだが……

いづみ「戻ろう、恵子、佐織や健のいるところに、今度こそ普通の女の子になって一緒に生きよう!」
いづみ、恵子の体を抱き起こし、優しく囁きかける。
ここで場面が変わり、暗い部屋で大物っぽく葉巻を吹かしている人物のシルエット。
後に分かるが、彼こそ「謎の組織」の一番えらい人、竜崎だったのだ。

竜崎「久しぶりだ、石津君、今日の会議でバイオフィードバックプロジェクトは中止と決定した……」
だが、石津のオフィスでは留守番電話のテープが虚しく回っているだけだった。

数日後(いや、もっとか?)、セーラー服を着て登校しているいづみ。
……いや、あんたもう卒業したんじゃなかったの?

橋の上で立ち止まり、1話から持っている逆回転時計を見詰める。
いづみ(私の時は……)
その時計は、「謎の組織」の策略によって殺人犯の汚名を着せられ、青春の3年間を奪われたいづみの人生を象徴するアイテムだったのだ。

そこへ、すっかり元気になった佐織と恵子がやってくる。
恵子「もうこれ捨てちゃないよ」
朝の挨拶をすると、恵子、いきなりそれを川に投げ捨ててしまう。
いくらなんでも乱暴で、いづみもちょっと驚くが、同時に重荷を捨てたようなスッキリした顔になる。
佐織「いづみ先輩、はいプレゼント」
佐織、かねてから用意していた女の子らしい、スヌーピーの腕時計をいづみに渡す。
いづみ「ありがとう」
いづみも、屈託のない笑顔で礼を言う。

はしゃぎながら学校へ向かう三人の姿を映しつつ、「完」ではなく、「つづく」のであった。