第15話「逆襲サボテグロン」(1971年7月10日放送)
前回の続きから、2号ライダー(この時点ではまだ1号とか2号と言う呼び方は存在しないのだが)と怪人サボテグロンの戦いが繰り広げられている。
ライダーは、
「ライダーファイト!」(掛け声)
「ライダージャンプ!」(ジャンプ)
「ライダーキック!」(キック)
と言うように、とりあえず頭に「ライダー」付けときゃ何とかなるだろうと言わんばかりの豪快さで、サボテグロンを退ける。

立花「あのシャボテンの化け物、一巻の終わりかな」
ライダー「いや、サボテグロンは死なない、地の底を這って逃げていくのが私には聞こえる。立花さん、滝君、サボテグロンが生き続ける限り、いや、ショッカーの世界征服がある限り、私と協力して頂けますか?」
滝「勿論」
立花「当たり前だ!」
ライダー「ありがとう」
拳を握り締めて共闘を誓う三傑。
ここで一転、一文字隼人がショッカーの手術台に縛り付けられて、改造人間手術を施されている回想シーンになる。
医者「名前、一文字隼人。特技、スポーツ万能。中でも柔道六段、空手五段。この男を改造人間に作り変えて、仮面ライダーと戦わせるのだ」

隼人「う、やめろ、やめてくれーっ!」
迫り来る冷たいメスの光を見て、思わず絶叫を放つ。
自分の叫び声で、ガバッと身を起こして悪夢から目覚める一文字隼人。

隼人「なってねえなぁ、改造人間にされちまったこの体のことはもう諦めてるつもりなんだが……一文字隼人よ、しっかりしろや、今のお前は仮面ライダーと戦う為に作られた。ところが本郷ライダーに助けられて、今じゃ俺自身が仮面ライダーなんだ」
自分のおなかの大きなベルトに触れながら、自分に言い聞かせるようにつぶやく。
彼が本郷に助けられた際の詳しい経緯などについては一切説明がないが、ショッカーは1号ライダーとほぼ同じ能力を持つ改造人間を作り、ライダーにぶつけようと考えたらしいが、洗脳手術される前にその1号ライダーに助け出されたと言うことだろう。
……だから、なんで最初に洗脳手術してからボディを改造しないの?
1号ライダーの時の教訓を、
全く生かしていないショッカーのトンチキぶりにはあきれ返って言葉もない。

部屋のドアをノックする音がする。
隼人、抜き足差し足で玄関に向かい、ドアを開けると同時に足を出し、

何も知らずに入ってきたマリを派手に転倒させる。
マリ「いやーん! なにすんのよ」
マリはカメラマンである隼人に、自分をモデルに使ってくれないかと頼みに来たのだ。
ちなみに、何故マリが隼人のマンションを知ったかと言うと、
「私って勘が働くのよ」だって。
さすがにそれはどうかと思う(真顔で)
ここは普通に、「立花会長から聞いた」で、良いじゃないか。
隼人はマリの頼みをにべもなく断るが、部屋の前に置いてあった誰かからの贈り物を二人で開けることになる。

隼人「メキシコの華!」
マリ「わーっ、ステキ! 私も欲しいわ」
マリがサボテンに伸ばした手を隼人は素早く掴んで止める。
隼人「ストップ、動かないで」
マリ「どうして」
隼人「このトゲに触ったら、死ぬぞ」
隼人は窓からサボテンを放り出す。サボテンは激しく爆発する。
ここでマリが、レーシングクラブにも同じような包装の箱が届いていたことを思い出し、隼人はクラブへ急行する。……電話すればいいのでは?

何も知らない史郎たちは早くも箱を開けていた。
史郎「サボテンだぁ。しゃれたプレゼントだな。会長も隅に置けねえや」
ひろみ「うっふ、史郎君、マスター起こして来たら?」
ユリ、何気なくサボテンを放り投げるが(人のプレゼント投げるなよ)、間一髪で隼人がそれをキャッチし、事なきを得る。
隼人「あー、あぶねえ、あぶねえ」
やがておやっさんも、歯を磨きながら起きて来る。
立花「だ、誰がこんなもの持ち込んだんだ?」
その問い掛けに答えるように、店の外に停まっていた怪しいバイクが走り出す。

女の子の中では唯一バイクに乗れるミチが、マリを後ろに乗せてそのバイクを追跡する。
……ルリ子さんと違って、貼ってもあまり楽しくないのは何故だろう?

が、途中で戦闘員たちが待ち伏せており、二人に迫る。
30秒後……、

まだ二人にかすり傷ひとつ付けられない戦闘員の皆さん。
世界征服、か……(遠い目)
それを離れたところから見ている一文字隼人。
2回目の変身シーンとなるが、

1回目の反省を踏まえて、まず上着の前を開いて、ベルトを露出させる。
ここでまず「変身!」と一声。

その上で、両腕を右側へ伸ばし、

それを左側に動かしながら、力を込める。
ベルトの風車のシャッターが開き、「とおっ」と真上にジャンプすると、風車が風を受けて仮面ライダーに変身すると言う形になる。

ライダー「なーるほど、ショッカーは血も涙もないと聞いていたが、女まで殺そうとするとは本当だな」
ライダーはサクッと戦闘員を倒すと、あのバイク男を捕まえる。
物陰に隠れて顔を伏せていた二人に変身を解いた隼人が、バイク男を背負ったまま声をかける。

隼人「これに懲りて出過ぎた真似はやめるんだな」
ミチ「うん」
マリ「はいっ……うふふふっ」
返事をした後、ペロッと舌を出す山本リンダさんが可愛いのである。
だが、「勘が働く」と言っていた割に、ライダーの正体が隼人だとは露ほども気付かないのであった。

バイク男もただの戦闘員であったが、隼人たちは、彼をぐるぐる巻きにしてレーシングクラブの一室に座らせている。
史郎「図々しいですぜ、捕まったくせにうんともすんとも言わないなんて」
立花「隼人、いや仮面ライダーの話じゃ、コイツは戦闘用の改造人間だそうだ。恐らく万一の場合を考えて言葉は出せんように作られてるんだろう」
史郎「うわー、イヤだイヤだ、ショッカーが世界征服したら人間は全部こんな風になっちまうんですかね」
おぞけをふるって捕虜から離れる史郎を、パイプを吹かしながらおやっさんがからかう。
立花「ま、お前なんぞは何の能力もないから
掃除用の改造人間かな」
史郎「変な冗談はやめて下さいよ」
おやっさんは隼人に会いに行くからと史郎を見張りに残して行ってしまう。
戦闘員と二人きりにされて、いかにも不安そうな顔をする史郎。
おやっさんと入れ替わりに何者かがドアを開けようとする気配がして、ヘタレの史郎はてっきりショッカーがやってきたのだとビビリまくる。

が、現れたのはマリたちライダーガールだった。
ユリ「ねえ、史郎君、私たちも一緒に見張ってて上げようか」
史郎「助かったー、パーの女の子でもいないよりマシだ」
三人「ええっ?」

史郎「え? い、いや……」
全力で誤魔化す史郎。
ユリたちは改めて戦闘員の顔をしげしげと見詰め、口々に好き勝手なことを言う。
ミチ「凄い顔してるでしょ」
ユリ「よく見れば、気味の悪い顔ねえ」
マリ「今時流行りの顔じゃないわ~」

縛られた状態で、年頃の女の子たちにボロクソ言われても何も言い返せず、じっと耐えるしかない戦闘員。
「仮面ライダー」に出てくる戦闘員の中でも、もっとも惨めな目に遭った戦闘員と言えるだろう。
(ま、この人がドMだったら、逆にゾクゾクするほど嬉しい時間だったかも知れないが)
直後、床を突き破ってサボテグロンが登場する。
その姿を見て、史郎以下、マリ、ミチが次々と気絶する。
女の子が、怪物を見て失神すると言うベタな演出、今となっては懐かしい。

空手の得意なユリだけは勇ましく両手を構えるが、すぐ「こわいー、ママー」と、可愛らしいことを言って史郎たちの仲間入りをする。

で、サボちゃん、ここに来たのはわざわざその戦闘員を助ける為だったことが判明する。
サボ「間抜け、本来は貴様を消すところだが、Z作戦計画に一人でも戦闘員が必要だ。今回だけは助けてやる」
ライダーに捕まった戦闘員を、怪人が自ら助け出すと言う、極めて珍しいシーンである。
さて、滝は単身、シャボテン公園内のアジトへの潜入を目論んでいた。

正面は警備が厳しいので、海に面した裏側にまわり、崖の間にかけられた橋にぶら下がっている滝。
これは……俳優本人がやってるのかなぁ? どっちにしても凄いけどね。
滝は橋の上で戦闘員たちと戦い、そのひとりの衣装を身に付けて戦闘員に成り済まし、堂々と正面からアジトへ入り込む。そして、何食わぬ顔でサボテグロン主催のZ作戦計画の説明会に出席する。
マスクさえ付ければ、ライダーや滝が戦闘員に化けてアジトへ入り込むことが可能になると言う、新しい戦闘員の制服の欠陥が早くも露呈した訳であるが、ショッカーは最後までそれを是正することはなかった。
ま、第1クールでも本郷が戦闘員に化けると言うシチュエーションがあったけどね。

サボ「日本有数の佐久間ダムの完全なる破壊、あ、それがZ作戦計画だ。この佐久間ダムが破壊されればその下流にある天竜市の機能が停止する。その混乱に乗じて天竜市を占領するのだ、これを日本におけるショッカーの橋頭堡とし……」
荒削りながら、なかなか筋道だった計画であった。

滝「幹部、破壊工作に使用する武器は?」
サボ「
イーッヒヒヒヒッー! メキシコから運んだメキシコの華!」
奇声を発してから、滝に答えるサボちゃん。
ここでやっと「貴様、監視員なのにどうして作戦部に居る?」と気付くのだった。
サボちゃんは滝をすぐ殺そうとするが、例によって首領が
「待て! いつでも殺せる!」と、余計な口を出して、それを邪魔する。
で、ライダーをおびき出す為の囮として監禁しようとするが、既に潜入していたライダーが滝を助け、アジトを徹底的に破壊され、Z作戦計画は脆くも崩れ去るという、この後、何度となく繰り返される失敗パターンのさきがけとなる。
首領は学習機能がないので、この先、滝やおやっさんを捕まえる度に「いつでも殺せる」と言い続けることになる。
後は、ライダーとサボテグロンが戦ってライダーが勝って事件解決。

滝に手を振って、サイクロンで颯爽と走り去る仮面ライダーであった。