第6話「百年に一度の瞬間移動~ハロウィンの動く城殺人事件」(2004年11月7日)
当時、公開間近だった「ハウルの動く城」のパロディ的なストーリー。
冒頭、Y県印賀里村の森の中で高村たちの乗るレンタカーが道を失って立ち往生している。
三人はファンタジー作家羽潤真知子(以下、面倒臭いのでハウルと書く)からハロウィンの仮装パーティーの招待状を受け取っていたのだ。

当然、三人とも仮装しているのだが、高村がドラキュラ、柴田がライオン、そして零は赤ずきんちゃん。
柴田は、ハウルの書いた「ハロウィンの動く城」は、100年に1度、午前0時に地殻変動が起こり、家が瞬間移動すると言うこの村の言い伝えに基づいているのだと力説するが、高村は頭から信じようとしない。
零「高村さんだって結構楽しんでません?」
高村「まーさーかー、君たちのことが心配で嫌々付き合ってるんだよ」
零「わざわざドラキュラの歯まで買って?」

高村「……それをどうして知ってるんだよ?」
零「見ちゃいました、学校の帰りに……」
高村「がうーっ!」
零「なななーっ」(?)
牙を剥いて襲い掛かるポーズを取る高村に、零が素で笑いながら指で十字架を作る。

とにかく、道に迷っていた三人のところへ、桑原陽子(通称ソフィー)と言うメイドの格好をしたメイドがやってくる。
三人はソフィーに案内されて、無事にハウルの屋敷へ到着する。

ハウルはとんがり帽子を被って魔女に扮装していた。
ハウルを演じるのは、このシリーズにはちょいちょい出ている滝本ゆにさん。

他に、こんな人も……。

零「ガリレオ!」
高村「ガリレオ」
柴田「ガリレオです、近代科学の父!」
この何処がガリレオなのか、分かりやすく説明して欲しいのである。
古代戸丸(こだい とまる)と言うのは一瞬何から来ているのかわからなかったが、古代進の裏返しらしい。
古代「家が瞬間移動するなど、ナンセンスもいいところだーっ」
ハウル「ふん、午前0時になれば分かることよ」

柴田「私、ハウル先生の大ファンでありまして、今宵、このハロウィンパーティーに招待された次第であります」
ハウル「招いた覚えなんかないわよ」
柴田「? でも、こうして招待状が……」
柴田が招待状を取り出すまで、ずっと零が笑っているのが、ドラマ演出的にはどう考えてもおかしいのだが、まぁ、可愛いのでよしとするか。

光一「違うのー、僕が招待したんだよ、ママ」
柴田「あ、あなたは?」
光一「海賊でスイマセン、息子の光一です」
ハウル「どうして勝手なことするのよー」
光一「古代教授との言い争いにピリオドを打つためにも、第三者に立ち会ってもらおうと思ったんです」
その後、あまり気勢の上がらないハロウィンパーティーとなる。
パーティーと言うより、午前0時に何が起きるのか確かめる為、時間潰しをしているような感じであった。

零「テレポーテーションの研究?」
古代「それが私の専門分野だ。テレポーテーション、すなわち瞬間移動は理論上でこそ可能だが、現実にはありえない。なのにあの女、小説の話題づくりのために……」

古代「家が動くとぬかし、私のことを頭の固い計算機だと罵った!」
話しているうちに興奮した古代教授、自らカツラを外してツルピカはげ丸君になって、零をびっくりさせていた。
古代「だから私はマスコミの前で、あの女は大嘘つきだと言ってやったんだよ!」
古代教授の剣幕に首を竦める零が可愛いのである。

高村「なるほど、それが喧嘩の原因ですか」
零「教授、テレポーテーションの研究って波動関数のこと?」
古代「良く知ってるね、きみぃ、中学を出たらうちの大学に来たまえ」
零「折角ですけど、あたし、警察が好きなんですよ」
古代教授、ここへ来る途中熊から買ったと言うパンプキンパイで、零を釣ろうとする。

零「わー、パンプキンパイだーっ」
子供のように目を輝かせる零が可愛いのである。ま、実際、子供だけどね。
古代「うちの大学へ来なさい」
零「うーん、どっしようかなぁー」
古代がケーキサーバーでパイを切り分けようとした時、突然ハウルが大きな声を上げる。
ハウル「瞬間移動の兆候が現れたわ」
高村「むわぁた、むわぁた」
などとやっていると、今度は家の電気がパッと消える。
ハウル「どうやら時空が歪み始めたようね、ソフィー、車に懐中電灯があるから取ってきて」
ソフィー「車に?」
ハウル「もたもたしないで早く行きなさい!」
ハウルの言う車が何処にあるのか分からないのだが、ここは彼女の別荘らしく、途中で車を置いてきているのだろう。
とにかく、ソフィーが懐中電灯を取りに出て行った後、時計とにらめっこをしながら午前0時が訪れるのを待つ零たち。
ソフィーがなかなか帰ってこないので、高村たち三人が捜しに向かう。
三人は森の中でソフィーと会い、光一もやってくる。
ちょうどその時、午前0時となり、何事か起こるのではないかと身構える一同。
果たして、0時と共に地面が地震のように揺れ動く。
揺れはすぐおさまったが、ソフィーが転んで足を捻挫してしまう。後から行くと言うソフィーを置いて、4人は屋敷から続いている電飾の光を頼りに屋敷へ戻ることにする。
だが……、

ある筈の屋敷が、玄関先のガイコツを残して消えているではないか。

零「れれっ? 消えちゃった」
高村「僕の予想していた通りだ」
高村の言葉に思わず猛スピードで振り返る零と柴田。
高村「僕はテレポーテーションを信じてないふりをして君たちを欺いてたんだよ」
零「何のために欺いたんですか?」(素朴なツッコミ)
さらに、そこから見える全然別のところに、ハウルの屋敷があるのに光一が気付いて叫ぶ。
零「嘘でしょ?」
さすがの零もこの怪異現象には仰天する。
とりあえず屋敷へ戻ると、ハウルが胸にケーキサーバーを刺されて死んでいた。
高村は、当然、ハウルと一緒に家に残っていた古代教授を疑う。
零「そもそもこの家動いたのかな?」
高村「見てたでしょう、そのつぶらな瞳で」
零「誰も動いた瞬間を見たわけじゃありませんし……」
などと話していると、再び地響きが起こる。今度もすぐ揺れは収まるが、窓から外を見た柴田が驚きの声を上げる。

柴田「い、家が戻ってる! 元通り家の前に電飾が付いてます!」
ソフィー「戻ったわ!」
高村「バックトゥザフューチャー!」

騒ぐ大人たちをよそに、零は「ませり! 悪の数字……」と、事件のヒントを得た時の決まり文句をつぶやいていた。
その後、クマに扮したパイ売り(佐藤二朗)が脈絡もなく登場する。

パイ売り「くすん、くすん、こんにちは、パイを持ってきたよ」
高村「わぁはーっ」(とその場でジャンプする)
パイ売り「……飛んだよ。30分遅れちゃった、これね、地図持ってたんだけど、この地図が全く使えない、全く使えないから、ハイこれサービス、あげる……」

パイ売り「タダでも不満? じゃあ、シャケもあげるよーっ!」
零「クマ君、クマ君、そのシャケどうしたの?」
パイ売り「
チッ、なぁにぃ、この野郎! ここに来る時、こうやって手掴みで捕まえたの……」
脈絡もなく切れるパイ売り。二朗さんのやりたい放題の世界である。

パイ売りの地図を見た零、やっと事件の謎を解く。
零「分かったーっ、謎は解けたよ、ワトソン君!」
パイ売り「クマ君だよ」
以下、ネタバレあり。 零、真犯人をお仕置してから、事件の謎解きを行う。
真犯人はソフィーだった。

零「ハウル先生を殺したのはあなたです。あなたはハウル先生が仕組んだ瞬間移動のトリックを使って殺したんです。古代教授に罪を着せて」
ソフィー「何の根拠があって、そんなことを?」
零「シャケです、パイ屋さんが手掴みで捕ったシャケ、あれはダムの放流によってシャケが浅瀬に乗り上げた証拠です。ソフィーさん、この村の上流におっきなダムがありますよね。ダムは定期的に川に水を放流する、放流する際に鳴らす警報はここまで届かない。だけど水が流れる時に激しい地響きが起こるんです」

零「この家は移動していません。そのことに気付かせてくれたのはコレ、この玉は地響きが起こる前も後も、同じように床を転がりました。この家はダムの影響で元々傾いていたんです。ハウル先生は話題づくりのためにみんなを騙すつもりだったんです」
ソフィー「地響きが起こる前、突然停電したじゃない?」
零「ブレーカーにタイマーがつけてありました。地響きが起こる時間に合わせて付いたり消えたりするように」
光一「でも、外へ出た時、家は確かに無くなってたはず……」

零「あれはハウル先生が仕組んだ電飾のトリックです、この家と道を結ぶ電飾は2ヶ所あったんです」
高村「銭形君の睨んだとおり、別の電飾が見付かったよ」
柴田「はっはっはっはっはっ」
零「うふふっ、ふふっ」
トリックを説明する為に柴田が笑いながらホワイトボードを運んでくると、何故か零も笑い出す。
これってNGじゃないかと思うのだが、それもまたこのドラマの楽しみの一つである。

零「停電した後、私たちはAと言う電飾の灯りを頼ってソフィーさんを捜しに行きました。そしてここで地響きに気を取られていた間に……」

零「ハウル先生はAの電飾を消してBの電飾を点灯させたんです。灯りだけが頼りだけだった私たちはトリックに騙され、別の方向へ誘導されてしまった。ハウル先生はこの家と同じ広さの空き地を用意しておいたんです」
高村「ご丁寧にこの家と同じ表札とカボチャも用意してね」
ソフィーはそのトリックをあらかじめ知っていて、足を捻挫したふりをしてひとりになると、すぐ屋敷に戻ってハウルを殺し、その後、零たちが死体を発見した後に、さも外から帰ってきたように現れたのだ。
この手のトリックとしてもかなりプリミティブであるが、お膳立てを全て被害者が調えていたという点がユニークかな。
翌朝、引き揚げようとレンタカーまで戻った三人だが、今度は車が消えていた。ただし、瞬間移動ではなく、駐車違反でレッカー移動されていたのだ。

高村「オーマイガー、こっから歩いて帰れって言うの?」
零「だったらぁ、ゆっくりお魚釣りして帰りたい。ね、ね、いいでしょ、高村さん」