第1話「不思議界」(1984年3月2日)
「宇宙刑事シャイダー」は、「ギャバン」「シャリバン」に続く宇宙刑事シリーズ三作目にして最終作となった特撮ヒーロードラマである。
宇宙刑事シャイダーこと沢村大と、その相棒アニーが、全銀河征服を狙う悪の組織「フーマ」の野望を阻止せんと熾烈な戦いに身を投じながら人間として戦士として成長していく姿を描いている。全49話。
オンエアからつい近年まで、管理人の中での「シャイダー」の評価は低かった。
「ギャバン」「シャリバン」と、どちらもJACの俊傑が主役を務め、多くのシーンで自ら危険なアクションを披露していたが、「シャイダー」では、アクション俳優ではない円谷浩氏が主役に抜擢されたことから、子供の目にもスタントが演じているのがバレバレの場面が多かったせいで、「これは本物ではない」(生意気)と醒めてしまったことが原因だろう。
アニーのパン チラが、社会現象(?)になるほど一般的な人気を博したのも、特撮ファンにとっては逆に面白くないことだった。それに、ギャル軍団の魅力とか、ストーリーの奥深さなんてものは、当時の私のアンテナにはほとんど引っ掛からなかったことも大きい。
で、それからも作品の評価は変わらなかったが、数年前、塚田きよみさんがゲスト出演している回が見たくて、DVDを1枚だけ見て(そのエピソードは既に記事にしている)、さらに数年してから順次DVDを全部集めるに至り、その評価は一変する。
時間を隔て、虚心坦懐に見れば、アクションシーンの物足りなさもさほど気にならないし、アニーやギャル軍団の魅力(特にギャル5)も十分理解できた。それに、ストーリーもかなり面白いことに気付いたのである。
上原正三氏が全ての脚本を書いているせいもあろうが、単発エピソードの平均点では、三部作の中で一番高いかも知れない(その分、バラエティに乏しいきらいはある)。
で、それまでの反動もあり、一時期、毎日のように「シャイダー」のDVDを見るくらいハマった次第。
当然、その時点でレビューする予定だったが、順番としてまず「シャリバン」を終わらせてからにしようと、今まで待っていた訳である。
さて、最初と言うことで、OPから紹介する。

乱反射するアルミホイルのような模様をバックに、バンとタイトルが出る。
OP主題歌「宇宙刑事シャイダー」の、トゥートゥートゥートゥ、トゥルトゥトゥトゥ、トュトュトュトュートュ、トュトュトュトュ……と言う(分かるかっ)、女性コーラスのイントロ。

いきなり、崖から炎上しながら落下する車と、空中に脱出する主人公・沢村大のド迫力アクション。

沢村大は、空中で「焼結」し、シャイダーとなってカメラの前に現れる。

ヘリを使った、これまた迫力のある銃撃シーン。
誰だ? 光溢れる世界に
誰だ? 嵐を起こすのは~♪

そして、アニーの背後から猛スピードで車が突っ込んでくるアクションシーン。
その後は、各種メカの活躍のイメージシーンが続く。
眩しい太陽 隠す黒い雲を吹き払うのさ
愛と勇気で~♪
君も走れ 君も戦え
思い切り明るく 叫べ 笑え(ブルーフラッシュ!)
シャイダー 守ろうぜ
シャイダー 美しい地球を 宇宙刑事シャイダー~♪
曲も悪くない。
しかし、三部作の中では一番パンチが弱いかな。
そして第1話の監督は、特撮モノは初めてと言う「Wの悲劇」「早春物語」の澤井信一郎。

第1話のタイトルはシンプルに「不思議界」。
「シャリバン」の第1話「幻夢」に倣った感じだが、「ギャバン」「シャリバン」と比べて、「シャイダー」は全体的にサブタイトルが短い。前二作にしばしば見られた、ほとんど粗筋のような長ったらしいのはひとつも見られない。

まず、悪の組織「フーマ」の跳梁跋扈が存分に描かれる。
クビライ「破壊せよ、征服せよ、不思議界フーマーのドン、大帝王クビライをして全暗黒銀河の支配者たらしめよ」
クビライの声は、前作に続いて首領を演じることになる飯塚昭三さん。
コム長官の声「不思議界フーマーの不思議ソングは銀河の各惑星に吹き荒れている……」
三部作全てに登場する銀河連邦警察・コム長官の口から、各惑星における、フーマの凄まじい破壊活動の様子が語られる。
ちなみに、最初だけ、ナレーションもコム長官もクビライも「フーマー」と長音を付けて発音している。

オメガ惑星が地割れを起こす気合の入った特撮シーン。
コム長官「マウント惑星は、超強力爆弾で砕け去り、消滅してしまった……」
そこは、宇宙刑事の訓練学校の教室だったのだが、モニタースクリーンから喋っているコム長官の言葉に、生徒たちの視線が一斉にあるひとりの人物に集まる。

ミミー「アニー……」
コム長官の娘であるミミーが、その人物に近付き、声を掛ける。

アニー「なくなってしまった。
冷蔵庫のプリンが故郷が……」
茫然とした顔で立ち上がったその女性こそ、日本中にパン チラ旋風を巻き起こすことになるアニー(森永奈緒美)であった。アニーは、マウント惑星の出身だったのだ。
コム長官「諸君、惨状はご覧の通りだ。暗黒銀河、最大にして最悪の侵略者、憎むべきフーマーのドン、クビライが諸君の故郷に対して無差別攻撃を開始した。その強敵に対し、訓練半ばの諸君に対して急ぎ宇宙刑事として出発せよと言わねばならん」

コム長官の訓示を真剣な面持ちで聞いている宇宙刑事の卵たち。真ん中に座っているのが大ちゃんである。

ただ、ここは宇宙の各地から訓練生が集まっていると言うことで、
鳥頭なんかも混じっている。
大「長官、戦います!」
アニー「行きます!」
長官の言葉に、次々と立ち上がって勇ましく応じる訓練生。
得体の知れない生き物「ワウーッ!」 いやー、これが地球に派遣されなくてほんとに良かった……。
コム長官「ありがとう諸君、私は全宇宙に誇らかに宣言する、ただいまここに、新たなる宇宙刑事が誕生した!」
堂々と胸を張って、半人前の宇宙刑事を大量に現場に送り込みますよ、とのたまうコム長官、イ、イカれてるぜぇっ。

コム長官、これも三作品すべてに登場するマリーンを従え、左右に整列する宇宙刑事たちに、ひとりひとり声を掛け、握手をかわす。
「頑張るんだゾ」
「無謀に突っ走るなヨ」
「ヒロイズムは捨てて、地道に務めるんダ」
「期待しているゾ」
「……ま、とにかく頑張れや」
途中から飽きるコム長官であったが、嘘でい。

コム長官「君の故郷、地球にもフーマーの手が伸びている」
大「戦います」
コム長官「今日から君は、宇宙刑事シャイダーだ!」
何故か、大には名前まで付けてくれるコム長官であった。
大「宇宙刑事シャイダー」 この台詞が、棒読みと言うか、何と言うか……、実際に聞いて貰わないと分からないと思うが。
大ちゃんを演じるのは円谷一の息子さん、故・円谷浩氏。
うーむ、もう亡くなってから15年になるのか……。
コム長官(西沢利明)の方がずっと長生きするなんて、この時誰が想像できただろう?

その後、大が「ハイッ! レーザーガン発射の要諦は……今日でこの教室ともお別れかぁ」などと、「ひとり授業ゴッコ」をして遊んでいると、ミミーがやってくる。

ミミー「お願いがあるの」
大「なんでしょう」
ミミーは廊下に控えていたアニーを呼ぶと、一緒に地球へ連れて行って欲しいと頼む。
宇宙刑事の卵たちは、原則として生まれ故郷の惑星へ派遣されることになっているのだろうが、既に故郷が消滅してしまったアニーには、赴くべき任地がないのだった。
アニー「連れてって下さい、私はフーマーが憎い。フーマーと戦いたい」
大「つらい戦いだ」
アニー「じゃ、やめます」
……じゃなくて、
アニー「戦います」

と言う訳で、二人はパートナーとなり、超次元戦闘母艦バビロスに乗り込み、地球へ出発することとなる。
大「エネルギーチャージャー」
アニー「オーケイ」
大「コンバーターシステム」
アニー「オーケイ」
このアニーの「オーケイ」と言う声も、なんか変なんだよね。くぐもっていると言うか……。別人?
大「バビロス、テイクオフ!」

スーパー戦隊の出撃シーンのように、バード星の訓練学校(あるいは銀河パトロール基地?)から発進するバビロス。

ワープをして、あっという間に青い地球に到達するバビロス。
ちなみに二人に支給されたバビロスは他の宇宙刑事とは違い、実験段階の最新兵器だったのではないかと管理人は睨んでいる。なにしろ、物語後半、フーマが全軍をもってしてもバビロスにはかないまへんと、
自分たちで認めているくらいだから、こんなものが、あのたくさんの宇宙刑事ひとりひとりに配備されていたら、フーマなど1クールも持たずに壊滅させられていたに違いないからである。

地球……日本に降り立つ新米宇宙刑事ふたり。
何故日本なのか? 沢村大が日本人だからと言うのもあるが、これは日本で作られたドラマだからである(当たり前だハゲ)。
大「アニー、これが地球だ」
アニー「良く似ている、私の故郷に」
大「フーマーの勝手にはさせない」
二人は固く手を握り、一緒に戦い抜くことを誓うのだった。
その2へ続く。