第16話「悪魔のレスラー ピラザウルス」(1971年7月17日)
の続きです。
マヤ、試合会場からひとりで出てくると、隼人がその前を遮るように現れる。

一文字「ちょっと……」
マヤ「何か」
一文字「変わったカメラをお持ちですね。ちょっと拝見したいんですが……」
マヤ「折角ですが、急いでますので」
初対面の女性の手をいきなりつかんで、馴れ馴れしく話しかける隼人。
しかし、この段階で隼人がマヤのことを怪しむのは、ちょっと不可解な気もする。
あまりにしつこくねだる隼人にマヤが切れて、鋭いエルボーを隼人の腹に叩き込んで走り去ってしまう。
だが、隼人はどさくさに紛れてマヤのカメラを手に入れていた。
隼人「ただのカメラじゃないと睨んだが、狙いはピッタリだ」
マヤ、駐車場の(草鹿の)車に乗って走り出すが、

それを早くもライダーに変身した隼人が追跡する。
いくらなんでも変身が早過ぎるが、この時点では佐々木剛さんがバイクの免許を持っていなかったので、こうせざるを得なかったのだろう。
マヤから通信を受けたジョーと戦闘員たちが、マヤを追うライダーの前に割り込んで妨害する。
ライダー「ショッカーの改造人間とも見えんが?」
ジョー「俺はハリケーン・ジョー、ショッカーの改造人間どものトレーナー、そして幹部のガードマンよ、貴様のお手並み拝見するぜぇ」
ライダーは彼らと戦うが、ジョーはマヤが逃げおおせたのを確認すると、すぐに部下を退却させる。
ライダー「そうか、尾行をまくために一芝居打ったな!」 打ってるかなぁ……? 堂々と尾行を邪魔していたと思うが。
とにかく、ライダーを振り切ったマヤは、海まで出て、草鹿の車をそのまま海へ落とす。

マヤ「これで草鹿昇は自動車事故で死んだ……」
ところが、振り切った筈のライダーがほどなく追いついてくる。なんだかなぁ。
マヤはさっさと姿を消すが、ライダーはマヤが丸めて捨てて行った草鹿と弟・清が一緒に映っている写真を拾い上げる。
その清、レーシングクラブの事務所で待ちくたびれてうたた寝していた。
兄の草鹿が、試合の後、清を迎えに来ることになっていのだろう。

ひろみ「坊や、坊や、もう帰ったら? お兄さん、来そうもないし」

滝「ようし、俺が送ってってやろう」
滝、清の体を持ち上げて、肩に乗せてやる。
清「変だなー、兄ちゃんは約束破ったことないのにー、プロレス会場に行ってみる」
滝「よしよし」
滝は、清を肩車したまま、画面の外へ出る。
ま、それは良いんだけど、

次のカットで、そのまんまの格好で試合会場の控え室に入ってくるのが、さすがにちょっとどうかと思う。
車にせよ、バイクにせよ、滝がレーシングクラブから試合会場に来るまでに、絶対一度は清を降ろしている筈で、試合会場に着いてから改めて肩車をすると言うのは明らかに変である。
これじゃあ、いかにも同じ撮影所のセットで撮ってます、と言う感じになる。
控え室には誰もいなかった。
清は、兄の身に何か異変が起こったに違いないと滝に訴える。
草鹿は、その頃、早くもショッカーのアジトで改造手術を受けさせられていた。

草鹿「清、清ぃ~」
頭部に透明なヘルメットのような物を被せられた草鹿、がくっと意識を失う。
科学者「これで草鹿昇の全ての記憶は消えました」
首領「くそ、最初からこうすれば良かったのだ……」 (註・嘘です。正解は「よし、これより改造手術にかかれ」でした)
先に体を改造してから、その後、洗脳手術をしようとして逃げられ、仮面ライダーと言う最大の敵を自ら作ってしまうと言う過去の失敗(しかも2回)を教訓に、今回は最初に人間の時の記憶を消している。
続いて肉体の手術が行なわれるが、こちらもドームのような装置で草鹿の体を覆って、光を注ぐだけと言う、キユーピー3分クッキングのような手軽さであった。
番組的には、子供への配慮として、メスや血を出さずに改造の過程を描きたかっのだろう。
設定的に見ても、危険の少ない非切開型の改造方法を開発していたと思われる。
ただし、この方法では、割と簡単に怪人が元の人格・肉体に戻ってしまうと言う欠陥があることが、後に判明する。

首領「マヤ、ハリケーン・ジョー、改造手術は成功した。後は改造人間としての機能を100パーセント発揮できるようにお前たちが指揮するのだ」
マヤ「はい、必ず改造人間のチャンピオンになれるよう、教育します」
マヤとジョーは、ピラザウルスを実験場へ連れて行き、その能力をテストする。

マヤ「撃て!」
その堅牢な肉体は、至近距離からバズーカ砲を浴びてもビクともしない。
マヤ「お前は絶対に死なない、改造人間のチャンピオンよ!」

翌日、やっとレーシングクラブらしいことをしている立花藤兵衛と、マリたち三人娘。
立花「さあ、誰から行く?」
だが、進んでレーシングクラブに加入したと言うのに、尻込みして一番手を譲り合う始末。

おやっさんがいい加減ムカムカしてマシンガンで皆殺しにしてやろうかと思っていると、背後から隼人がバイクにまたがって現れる。
立花「どうした、隼人? 今日はカメラマンじゃなくレーサーか」
隼人「ま、そう言う訳、ちょっとタイムを計ってもらいたいんですがね」
立花「素人相手にしてる暇はないんだよ」
本郷猛と言う一流レーサーを育てた経験を持つおやっさん、冷たく隼人を突き放す。
が、女の子たちに「会長って冷たいわね」と言われ、仕方なく隼人のタイムを計ってやることにする。
隼人「ほんじゃ、ま、軽く一周」
暢気な調子で走り出す隼人。
ここは、とりあえず一周完走し、本郷には及ばないが、それに近いタイムを出しておやっさんや女の子たちをあっと言わせる、隼人の「タダモノではない」感じを出した方が良かったと思うが、残念ながら、隼人は途中でピラちゃんの襲撃を受け、タイムどころではなくなってしまう。
隼人、巨大な岩を投げつけられ、バイクから飛び降り、素早くライダーに変身する。
ライダー「ショッカーの改造人間、性懲りもなく挑戦かぁっ」
ピラ「挑戦ではない、仮面ライダー、お前は俺のテストに選ばれたのだ」
最強のレスラーを基に作られただけあり、ピラザウルスはライダーを上回る強さを見せる。

ライダーの必殺技「ライダーキック」も、

「ウルトラキック」と言う、プロレス技のようなキックで切り返し、ライダーを崖から蹴飛ばして、水溜りの中へ沈めるのだった。
ライダーはそのまま浮かんで来ない。
マヤ「お前の鋼鉄を砕くパンチを受けた仮面ライダーは体内の構造を破壊されたらしいわ」
一方、いつまで経っても隼人が戻らないので、おやっさんたちはレーシングクラブへ戻っていた。
立花「みんな元気出せ、はは、隼人はきっと無事に戻って来るさ」
ミチ「そうね、景気付けにゴーゴーでもやりましょうか」
ユリ「賛成!」
ミチ、立ち上がると、テレビのスイッチを入れる。
当時はそんな感じだったのか、アングラバーのようなところでゴーゴーを踊っている若者たちの姿が映し出される。

で、女の子たちはそれをBGMにしてゴーゴーを踊り出すのだったが、今回はひろみちゃんまで加わるのが妙におかしいと言うか、可愛いと言うか。
なにしろ、島田陽子さんがゴーゴーだもんね。
滝が陰鬱な顔で現れ、
「みんな良く平気でいられるな。人間ひとりがどうなったかって言うのに……」となじるようにつぶやく。
ひとりだけ踊りに加わらなかったマリも同調し、チャンネルを変える。
と、偶然(じゃないけど)、またプロレスの中継をやっていた。
みんなもなんとなく見るが、そこにサタンマスクと言う、謎の覆面レスラーが登場する。
観客席には清もいたのだが、清にはサタンマスクの覆面の中の目を見ただけで、それが兄の草鹿昇だと言うことが分かってしまった。
試合の後、清はそれを確かめようとサタンマスクに会うが、サタンマスクは清をその場で殺そうとする。
投げられた清の体をキャッチしたのは、他ならぬ仮面ライダーであった。
サタンマスクはピラザウルスの姿になり、仮面ライダーを追う。
ピラザウルス、ハリケーン・ジョーと戦うライダーの姿を映しつつ、17話へ続くのだ。