「仮面ライダーBLACK」セレクション 第27話「火を噴く危険道路」前編

仮面ライダーBLACK SONG & BGM COLLECTION [ 川村栄二 ] 価格：3838円（税込、送料無料)

　第27話「火を噴く危険道路」（1988年4月17日）

　とある平和な住宅街。

　
　家並みを見下ろす高台に現れたのは、ゴルゴムのイラガ怪人。

　口から特殊な糸を四方八方に吐き出し、電線に絡ませてそのエネルギーを吸収する。

　
　ラジカセから音楽を流してひとりで踊り狂っていた女の子、突然ラジカセが止まったのでぶーぶー文句を言う。
　母親「停電かしら？」

　怪人の糸は街のいたるところに張り巡らされ、

　
　その要所要所にイラガ怪人がトゲを突き立てると、エネルギーが凝縮して白い繭のようなものに変化する。

　そのうちのひとつは、その家の外壁にあり、ちょうど台所の真裏に位置していた。

　
　電気は止まったが、ガスは生きており、母親が料理の為にガスコンロをつけていたのだが、その熱エネルギーに反応し、強力な爆発を起こす。

　そう、この繭は付近のあらゆるエネルギーに反応して爆発する特殊な繭なのだった。

　
　母親と娘は慌てて家の外へ飛び出し、父親の車で避難しようとするが、父親がエンジンをかけた瞬間、同様の現象が起こる。

　たまたま近くを走っていた光太郎、すぐ現場へ急行するが、

　
　その途中の道路上にも繭がびっしりと生えており、バイクのエネルギーに反応して次々地雷のように炸裂する。

　
　至近距離での爆発。

　フルフェイスとは言え、なかなか怖いよね。

　バイクから飛び降りた光太郎に、すかさずイラガ怪人が襲い掛かる。

　
　何はともあれ、「変身！」する光太郎。

　
　ベルトのイメージ映像と共に「変身！ライダーブラック」のイントロが流れ始めるが、

　
　完全に変身シークエンスが終わる前に、そばにあった繭がキングストーンのエネルギーに反応し、爆発を起こす。

　張り切って歌い出したコーラスのお姉さんたちも「あーあーあーあーあーあーあーあーあっ？」と言う風に、途中で気分を害して帰ってしまう。

　光太郎「変身が出来ない。この繭が爆発して変身を妨げるのかっ」
　怪人「どうだ、変身できまいっ」

　だが、戦いの最中、エネルギー供給源であった電柱を怪人自ら倒してしまった為、繭も消滅してしまう。
　光太郎、それを見るや、今度こそきっちりライダーに変身し、怪人を撃退する。

　さて、いつものように三神官が作戦の要諦を子供にも分かりやすく説明してくれる。

　バラオム「イラガ怪人の繭は動力エネルギー、熱エネルギーなど、あらゆるエネルギーに反応して爆発を引き起こす。変身エネルギーとて同じこと」

　
　ビシュム「あの繭がある限り、南光太郎は仮面ライダーに変身することが出来ないのです！」
　ダロム「電気、ガス、石油、人間どもの文明は全てそれらのエネルギーに頼っている」
　ビシュム「電気も火も、車も機械も全て使えなくなった時、人間は弱い者から順に滅びて行きましょう」
　バラオム「だが、それだけではない、変身不能となった南光太郎を倒し、キングストーンを奪い返す、またとない好機！」

　
　盛り上がる三人だったが、嫌な気配を感じて一斉に振り向く。

　
　そう、いつも仲間はずれにされて可哀想なビルゲニアさんであった。

　ビル「これは驚きましたな、大神官ともあろう方々がなにやら姑息な計画を練っておられる」
　バラオム「なにぃ」
　ダロム「我らの計画に口を挟む権利はあるまい」
　ビル「ふんっ、勝手になさると良い、お手並み拝見とでも申し上げておきましょう」

　三人の前では倣岸に憎まれ口を叩くビルであったが、自分の部屋に戻ると「なんで素直に仲間に入れてくださいって言えないの？　バカ、バカ、ビルのバカーッ！」と魂の叫びを漏らしていたと言う（註・言うかっ）。

　さて、光太郎、何事もなかったように克美さんの店に顔を出す（金払ったことない）。

　
　光太郎「やっ」
　克美「光太郎さん！」
　杏子「良かった、来てくれて！」
　克美「うふふ、行こ、行こ」

　光太郎を見るなり、克美と杏子が興奮気味に声を上げる。

　
　光太郎「なんだよ？」
　杏子「いいから、いいから！」
　克美「ともかく一緒に来て！」

　腹立たしいほど爽やかな笑顔を浮かべたまま、少し警戒する光太郎。
　二人は、強引に光太郎を引っ張って、あるところに連れて行く。

　そこは病院の一室で、久男と言う少年が入院していた。

　克美「久男君、こんにちは！」
　克美が声をかけるが、子供はすねたようにベッドに寝たまま顔を背ける。

　
　杏子「久男君、心臓と性格が悪いの……それで手術を……でも、とても怖がってて」
　光太郎（なんか嫌な予感がする……）

　特撮ヒーローものとしては、伝統芸とも言えるベタベタな設定である。
　と言うことは……、この段階で、ほぼどんな展開になるのか読めて、若干ユーウツになる光太郎であった。

　そう、定番のアレですね。

　それはともかく、克美、壁に貼ってある仮面ライダーBLACKのイラストを光太郎に示し、
　克美「久男君、仮面ライダーBLACKがだーい好きなのよねー！」

　光太郎の耳元でわざとらしく声を張り上げる。光太郎もすぐ克美の意を察し、

　
　光太郎「残念だなー、折角仮面ライダーの言伝を持ってきたのに」
　久男「えーっ？」

　光太郎の言葉に、思わず振り向く久男。

　杏子「内緒なんだけど、光太郎さんは仮面ライダーの友達なのよー」
　久男「お兄ちゃんが？」
　光太郎「君にこう伝えてくれって……仮面ライダーBLACKはいつも君を見守ってくれている。勇気を出して頑張れ、早く元気になって仮面ライダーのように強くなれってね」
　久男「うん、ボク頑張るよ」
　母親「ありがとうございます！」

　だが、その頃、病院を含む地区一帯に電力を供給していた水力発電所がイラガ怪人の襲撃を受けていた。

　今度はより広範囲に糸と繭をばらまくため、水力発電所のエネルギーを利用しようと言うのだ。
　イラガ怪人の糸は、ダムからあっという間に市街地にまで伸び、大量の繭が作り出される。

　
　克美を残して、光太郎と杏子が病院から出てくると、早くも街はパニック状態に陥っていた。

　車をはじめとする動力源に繭が反応し、あちこちで爆発が起こっていた。

　克美「光太郎さーん、大変なの、病院で爆発があって……」
　光太郎「なんだって？」

　慌てて病院へ戻ると、病院は停電になっており、しかも爆発のショックで久男少年は危険な状態になっていた。医者が言うには、1時間以内に手術をしないと危ないらしい。

　光太郎「先生、この地域の電気は何処から？」
　医者「確か、川北ダムです」
　光太郎「大丈夫、久男君は必ず助ける！」

　こうして、「ウルトラセブン」の「勇気ある戦い」などをはじめとする、定番プロットがスタートする。

　すなわち、

　1　主人公の知り合いの子供が手術をしなければ助からない
　2　悪の組織の企みによって、何らかのアクシデント（停電、輸血用血液の不足など）が発生する
　3　主人公が限られた時間内にそれを克服し、子供の命を救おうとする……

　と言う奴である。

　特撮ヒーローにとってはこれを乗り越えて初めて本物のヒーローと認められる、一種の通過儀礼のような使命なのである。

　後編に続く。