第19話「グッバイ・フレンド」(1984年8月21日)
物語も終盤の入り口に差し掛かり、かなりの盛り上がりを見せ始める第19話。
肝心の舞楽に関しては、ほぼ全く、何の進展もないのだが……、気にしない!
前回のラストで、辛抱に辛抱を重ねてきた哲也だったが、遂に妹・葉子に絶縁状を叩き付ける。
哲也「お前なぞ今日限り、妹などとは思わないぞ!」 
哲也「僕はもう手加減はしない。これ以上笙子さんに卑劣な真似を繰り返せば、絶対に許さないぞ!」
モナリザ「……」
哲也「何故黙ってる?」
モナリザ「二言目には笙子、笙子かい、気取りやがって! あたしのほうはあんたとは兄でもない妹でもないととっくに言ってあるよ」
かつてない厳しい兄の言葉に、さすがに一瞬動揺するモナリザだったが、すぐ陣容を立て直して反撃する。

哲也「縁が切れてすっきりしたとでも言いたいのか」
モナリザ「ドブネズミと兄弟の方がマシさっ」 哲也「なにぃっ」
笙子「哲也さん!」
部屋の入り口で二人の険悪なやりとりを見ていた笙子、たまらなくなって二人の間に割って入る。
モナリザ「おい、哲也、あたしが兄さん捨てないでと言って泣いて取り縋るとでも思ってたのかい? 寝惚けんじゃないよ、
コーヒーでツラでも洗ってきな!」
哲也「コ、コーヒー?」
いちいち憎まれ口が独創的なモナリザに、哲也もつい怒気を削がれる(註・信じないように)。

笙子「哲也さんらしくありません、葉子さんと理解しあえるたった一つの道を自分から塞ぐなんて……せめて妹じゃないって言葉だけは取り消してあげてください」
哲也「君は甘過ぎます!
まるで大福だ」
笙子「甘くて何が悪いんですかっ」
モナリザか悠々立ち去った後、廊下で珍しく口論する二人。
甘いとか、甘くないとか、なんとなくモナリザの「コーヒー」に引き摺られているような会話である。

笙子「絆をあっさり捨てる、兄弟ってそんなもんなんですか?」
哲也「もう何も言わないで下さい、君はこれまで長沢真琴にどんなひどい目に遭わされても、僕の妹だと言うことで耐えてくれました。しかしこれからはそんな心遣いは無用です。止むを得ない場合は、あいつを叩きのめしても構いません!」
言い合う二人の背後に、うっそりと立ったのは当少年院の名物・説教妖怪であった。

園長は、二人を来客室に招じ入れ、「暴力は良くないよ」とやんわりと注意した上で、来月、笙子を仮退院させる予定なのだと告げて、二人を驚かせる。
園長「ワシとしては、君のようないい子にはいつまでもここに欲しいんだけども……国民の税金で賄ってる施設であるからして、もうひとりだちできるようになった君をいつまでもここに収容しとくと言う、ふっふぅ、わけには、あっはっはっはっ」
園長は、余計な嫉妬をされるのを防ぐ意味で、しばらくそのことは他の者には伏せておくと温かい気遣いを示す。
笙子「園長先生、ありがとうございます」
園長「礼なら、今までずーっと励まし続けてくれた人に言いなさい」
笙子「哲也さん……」
感極まったように濡れた瞳を真っ直ぐ哲也に注ぐ笙子。
哲也も、さっきの言い争いも忘れて、笑顔で笙子を祝福するのであった。

農作業をしている仲間のもとへ急ぐ笙子、その足取りは今までにないほど弾んでいた。
ついでに乳も弾む……。

笙子は、麻里に仮退院のことをこっそり教える。麻里、我がことのようにそれを喜ぶ。
麻里「あたいもぼやぼやしてらんないね。来年は成人式だしさっ、とにかくおめでとう!」
二人の背後を歩いている八千代の胸に目を奪われる管理人であった。
麻里、「おめでとう!」と言いながら勢い良く笙子の肩を叩く。その勢いが強過ぎて、笙子が手にしていた鉢植えを落として割ってしまう。

近くにいた江田と大磯が血相変えて駆け寄るが、何があったのか把握すると、
大磯「怪我はなかったか?」
江田「今度から気を付けなさい

」
一転、不気味なほど優しい言葉を笙子にかける。
最初の頃の、ムカムカするほど憎たらしい二人が懐かしい……。
ところで、彼らの様子を鷹のように鋭い目で見詰めている者がいた。モナリザである。

モナリザ「笙子の奴、仮退院が近いよ」
エリカ「えっ、組長、どこから聞き込んだのさ」
モナリザ「仮退院が近付くと、教官はたいていのことは大目に見だすからね、私の目に狂いはないよ」
少年院のヌシのような存在のモナリザ、過去の経験から、自信たっぷりに断言する。
モナリザがこのまま黙って笙子をシャバに逃がすとは思えないのであった。
OP後、

舞台は一変、カメラは、あるカラオケバーで中年の客と「銀座の恋の物語」をデュエットしている恭子さんの姿を映し出す。
そう、恭子さんが自分が死なせてしまったと思い込んでいる(と言うより、思いたい)子供の外道両親に強いられて、彼らの経営する店でホステスのようなことをしているのだ。
それにしても、展開が急だね。この間まで保母さんやってたのに。
しかも、その店と言うのが……、

客「釣りはいいよ」
男「お客さん、ヒトケタ違いますよ、
5万4000円です」
そう、ここは
ぼったくりカラオケバーなのだった。
しかしまぁ、岡田奈々さんとデュエットできると考えれば、妥当な料金設定かもしれない。
客「5万? ビール200本だよ!」
男「いや、だいぶ勉強させて貰ってるんですが……」
じゃなくて、
客「5万? ビール2本だよ! このアマ、よくもうまいこと言って引っ張り込みやがったな!」
激昂した客は、何故かバーテンではなく、恭子さんに突っかかる。

奥のブースにいた女(子供の母親)が出てきて、客をぶっ飛ばす。
女「うちの
看板ガールを傷モンにする気かいっ」
註・「看板ガール」とは、「看板娘」のナウい言い方である。

結局、その客は有り金のみならず、腕時計まで取られてしまう。
……ケーサツに行くべきだと思うんですが。

その後も、自ら店先で客引きなどをしている恭子さん。
ちなみに、店の名前は「七色テープ」と、これまたナウい。
例によって男谷が現れ、「あんないかがわしい店で働いていたら、身も心もボロボロにされてしまいますよ!」と、彼女を葉山家に連れ戻そうとする。
あの二人が目敏く嗅ぎつけてやってくるが、
男谷「どうしてもと言うのなら、君たちを不法監禁罪で告発する!」 珍しく(と言うか、ほぼ初めて)、弁護士らしい台詞を放つ男谷。
二人はあくまで恭子さんの自由意志だと強弁しつつも、常に持ち歩いているらしい亡児の写真を恭子さんに見せ付け、恭子さんの動揺を誘う。

結局、恭子さんは「逃げる訳には行かないんです」と、男谷に告げ、店に戻ることになる。
男「さ、ショウバイ、ショウバイ!」
男谷「もう少し話をさせてくれ、客としてなら文句はないだろう」
強引に恭子さんを奪い去る度胸もない男谷、財布から数枚の札を出して女に握らせる。

カウンターで話す二人。
恭子「私のことなら大丈夫です、少しは苦労して前ほどひ弱なお嬢さんじゃないつもりですし……でも、寂しい時はまたふと聞いてみたくなりますわ……朱雀の調べだけは」
男谷「朱雀と言うと哲也の笙の名ですね?」
恭子「私の青春はね、あの笙の音に励まされて過ぎたわ……でも、昔の夢ね」
積もる悲しみごと、酒をガッコガッコ煽る恭子さん。
とりあえず、酒だけは以前より強くなったと見える。
さて、再び少年院。

麻里「笙子はいつの間にかシャキッとしてるしさ、あたいはいまだにハンチクだ、何故だ。何が違うんだ? あたいは一晩マジに考えたんだよ。したら分かったんだよ!」
麻里の独演会が開かれている。
しかし、こういう「寅さんのアリア」的な演技、かなり難しいんだよね。

おっさんのように自分の膝をバシッと叩き、「何もかも笙子の真似をすりゃいいんだってね」
さと子「笙子の真似?」
麻里「笙子を支えてきたのは哲也さんの愛情だろう。愛情のこもった笙の音色だろ? だからあたいもいっちょあやかって……」
トキ子「笙を好きになろうってえのかい?」
弥生「おっどろいた、学園一の音痴がねえ」
弥生がまぜっかえすと、トキ子たちが手を叩いて笑う。
とにかく(スタッフの言いなりと言う感じもするが)麻里は笙を好きになることに決めたのだった。
その2へ続く。