第20話「ネバー・ドロップ」(1984年8月28日)
モナリザ、護送車に乗ろうとした笙子を呼びとめる。
モナリザ「待ってよ笙子、その車に乗るのはお前じゃないよ」
モナリザ「園長先生、カリウムを盗み、作業小屋に火をかけたのは私です。山吹麻里を死に追いやった責任も私にあります」 土壇場でのモナリザの自白に、その場の誰もが驚き、固まる。
園長はこの瞬間、自分が「賭け」に勝ったことを知ったのである。
園長「良く言ってくれた! 私がそう言ってくれるのをずーっと待ち望んでいたんだ!」
哲也「葉子……」
笙子「葉子さん、何を言うの、やったのは私なの、私がやったのよ!」
それでもまだ罪を被ろうとする笙子……ちょっと面倒臭い。

モナリザ、構わず笙子を押しのけて護送車に乗り込む。このまま家裁に行くつもりらしい。
……実際は、「真琴君、手続きとかあるんで、もう一回降りてくれるかな?」と言うブサイクな展開になったと思われるが、これは大映ドラマなので、このまま家裁へ行っちゃって良いんです!
モナリザ「勘違いするんじゃないよ、私はお前の情けに負けて名乗り上げたんじゃない、自分の罪を他人になすりつけたとあっちゃあ、かつてカミソリマコと呼ばれた私の格が落ちるからねえ」
潔く罪を認めても、そんなふてぶてしいことを嘯くあたりは、いかにもモナリザらしい。

それでも、最後は「笙子、お前と会えて楽しかったよ」と心から告げる。
激闘と愛憎の果てに、モナリザは笙子を親友のように思うようになっていたのだろう。
ケンシロウが殴り殺して来た相手を「強敵(とも)」と呼ぶのと同じですね(それは違うと思う)。
哲也「葉子、ありがとう、どんな審判が下ろうと父も母も僕もこれからは何事も君と一緒だと言うことを忘れないでくれ。今度こそ、お父さんやお母さんの面会に応じてくれよな」
ややどさくさ紛れに、哲也がそんなことを言うが、モナリザはただ笑みを浮かべながら無言を貫く。
笙子「葉子さん、哲也さんと和解すると言って! お父さんとお母さんを許すと言って!」
去り際、笙子が車の窓に縋って懸命に叫ぶが、モナリザは最後まで何も言おうとしなかった。
まぁ、今回の件は、あくまでモナリザ、笙子、そして麻里の関係においての改心であって、哲也の両親とは関係ないからね。
哲也はともかく、両親に対するモナリザの冷たさは今後も続くことになる。

で、モナリザは少年刑務所への送致が決定する。
その護送車の中で「憎しみを光に溶かす? そんなことができるもんかっ」と笙子の言葉を思い出して独り言をつぶやくモナリザであった。
さて、闇の支配者とも言うべき存在だったモナリザがいなくなった愛育では、

一揆が発生していた……。
じゃなくて、八千代たちが白百合組を追い掛け回しているのだ。
絶対的リーダーを失った白百合組は、すっかり戦意を喪失していた。
八千代「やいやいやいやい、笙子姉貴が少刑送りになったら毎日が楽しみなんつったのはどこのどいつだい? 面出しな、このスコップではったおしてやるよ!」 トキ子たち先輩を差し置いて、切れの良いタンカを切る八千代。
番組としては今回が最後だが、この後、愛育のムードメーカー的存在として活躍したことだろう。
前後から挟まれて、泣きそうな顔をして立ち尽くすエリカたち。
白百合組として傍若無人に振る舞っていた姿が嘘のような惨めさであった。
で、例によって良識が服を着て歩いているような笙子が止めに入る。
笙子「仕返しはやめようって約束したじゃないか」
八千代「そりゃ約束はしたけどさ」(註1)
トキ子「こいつら今までやりたい放題だったんだよ、少しは泣きを見せてやんないとさ」
(註1……くどいようだが、このドラマにおける「約束」とは破られる為に存在しているのである)
ここでエリカが、ついさっきまで泣きそうになっていたのに、
「あたいたちだって収まらないね、やるからにはとことんやろうじゃないか」 と、急に強気になるのがなんとなく変な感じ。
笙子「どうしてもやらなきゃおさまらないってのかい、そうだよね、今までいがみ合ってきたんだ、急に仲良くなろうったって無理なモンだよ。いいさ、やろうじゃねえか!」
笙子の言葉に、思わずたじろぐエリカたち。
多分、穏健派の笙子が八千代たちを宥めてくれると踏んで、エリカもあんなことを口走ったのだろうが、予想に反して笙子が好戦的なことを言い出したので、焦ったのだろう。

その様子を遠くから見ていたダメケイと瀬戸先生。
思わず瀬戸先生が駆け寄ろうとするが、ダメケイが引き止める。
ダメケイ「景子先生、ここは笙子君に任せましょう」 要するに、仲裁に入るのが
面倒臭いらしい。
しかし結局、ダメケイと瀬戸先生の仲は全然進展しないままだったなぁ。ちょっと詰まらない。

と言っても、笙子はこんなところで乱闘するほど馬鹿ではない。下手をすると、モナリザの後を追うことになる。
笙子「勝負はタイマンで決めようじゃないか、エリカ、民子、優子、ゆかり、出な!」
笙子は、白百合組の幹部を名指しすると共に、八千代、善子、トキ子、そして自分を含めた4人を選び出す。
笙子「勝負は一発張り手、1センチでも動いた方が負けだよ。私たちから行くけど良いかい?」
エリカ「ああ、良いさ」
それが決まりなのか、4人は「バカヤロー!」と叫びながら目の前の相手を引っ叩く。
続いて、エリカたちが笙子たちをビンタする。
……で、
笙子「さすが白百合組だよ。動いた奴はひとりもいないじゃないか」
エリカ「そっちもひとりもいないじゃないか」
笙子「この勝負は分けだよ、みんな、それで良いね? エリカ、昔のことは忘れようじゃないか。白百合組は今日を限りになくなったんだ!」
互いに健闘を褒め称え、気持ちがほぐれたところで一気に笙子が手打ちに持って行く。
こうして、愛育女子学園に影を落としていた白百合組は、あっけなく雲散霧消してしまうこととなる。
しかし、だからと言って、
ナレ「その日を境に、相模愛育女子学園に争いごとがなくなった」 ……と言うのも、あまりに簡単過ぎる話だと思うのだ。

そして次のシーンでは、驚いたことに、早くも少年鑑別所から出てくる朝男の姿があった。
ひと夏棒に振ったと言っているから、2ヶ月くらいはいたのだろうが、あれだけ長い間逃走を重ね、笙子の拉致事件やら起こしてきたと言うのに、少年院にすら送られないと言うのはあまりに処分が軽過ぎる。
ついでに、モナリザも、びっくりするくらい早く少年刑務所から出てきてしまうのだ。これはまぁ、主要キャラクターにいつまでも塀の向こうにいられては困ると言うドラマ上の都合ではあるのだが、他の例と比べて不公平感は否めない。
朝男の部下の麻里なんか、明らかに朝男より罪は軽く、その上、自首したにも拘らず、きっちり少年院送りだったからね。
だから、

鑑別所の前で出迎えてくれた優しい長谷川哲夫パパに朝男がした、「大金をばら撒いて俺を出したんじゃないだろうな?」と言う冗談交じりの問い掛けが、真実っぽく響いてしまうのである。

哲夫「バカなこと言っちゃ行かん。私はね、お前と私のこと、すべてありのまま、検事さんや審議官に話してお前に関して全責任を負うと誓ったんだ。それを認めてくれたんだと思うよ」
朝男「あんたが俺の全責任をね……まぁ、なんでもいいや、ひと夏棒に振っちまったが、とにかく助かったぜ」
哲夫パパは(視聴者に)言い訳するように説明しているが、哲夫パパの存在が朝男の軽い処分(と言っても、無罪放免じゃなくて保護観察処分だと思うけどね)につながったのは確かだろう。
少年院にいた女の子たち、笙子や八千代はともかく、朝男のように立派な親がいない者が多かった。ちゃんとした保護者の在否が、彼女たちの処分に影響することはありうるだろう。
ちょっとまとめてみると、
・モナリザ……偽名を使い、両親のことを話さなかった
・五月……小さい頃、両親を失う
・トキ子……母親と二人暮しだったが、笙子との抗争の中で亡くしている
・麻里……母親は健在だが、再婚相手に気兼ねして、麻里とは疎遠だった
・景子……両親ともいない
閑話休題、

朝男も、少しは成長したのか、(パパのお金で)事業を始めたいと抱負を語る。
さらに、事業を始める前に(パパのお金で)海外へ行って見聞を広めてきてはどうかと言う提案にも、
朝男「外国かぁ、そいつも悪くねえなぁ」
と、満更でもない様子であった。
大人になったと言えるのかもしれないが、
こんな素直な朝男は朝男じゃねえ! ここは是非
「新・東京流星会を立ち上げ、東京、いや関東一円を支配して見せるぜぇ」とか言って、哲夫パパを困らせて欲しかった。

それはそれとして、麻里とモナリザと言う、ある意味トラブルメーカーがいなくなって平和な日々が続いている愛育女子学園。
たくさんの女の子たちと一緒に過ごせて、しかもお金まで貰えると言う大磯が羨ましい……。

羨ましい……。
剣道や哲也の音楽など、授業風景が映し出され、

さりげなく、江田先生のジャズダンスレッスンなんかも出てくる。
トレパン姿の女の子たち、さぞや可愛かったと思われるのに、笙子を除いて誰もアップにしてくれないのがとても悔やまれる。

ちなみにその笙子、妙に疲れたような虚ろな表情で体を動かしていた。
いとうまい子さん、相当スケジュールがきつかったと察せられる。
さて、朝男は哲夫パパと一緒に成田にやってくる。

哲夫「帰ってきたら一緒に仕事をしよう、ははははっ」
朝男「フッ、親父の金で外国留学するなんざぁゾッとしねえぜ」
哲夫「なぁっにを、バカなことを言ってるんだ?」
朝男、何を思ったか、チケットを取り出すと、ビリビリに引き裂いてしまう。

朝男「悪いがな親父、今更あんたの敷いたレールの上に乗っかる訳にはいかねえよ。俺は俺、あんたはあんただ。外国行くんなら、自分で稼いだ金ででけえ面して行ってやるよ」
哲夫「……」
朝男「情けない面するなよ。俺の人生だ。もう粗末になんてしやしねえよ。それによー、どんな外国より日本の方が面白れぜ。あばよ、親父、元気でな!」
あれこれ理由を並べる朝男であったが、たぶん、直前になって飛行機に乗るのが怖くなったのであろう。

敬礼して、さっさと空港を出て行く朝男。
哲夫(今度からは、キャンセルはもっと早めに言ってね……) これが哲夫パパの見納めになる……んだっけ?
朝男はタクシーに乗り込み、「横浜!」と一言。
朝男(笙子、俺はやるぜ、今度は事業とやらに俺を賭けて見るよ。何処まで行けるかわからねえが、俺は今とっても素敵な気持ちだぜ。今度会う時を楽しみにしててくれ)
心の中で笙子に語りかける朝男。
……で、朝男はあっさりと実業家として成功を収めちゃうんだよね。
(さすがに)
ふざけんなよ! その3へ続く。