第20話「トロイ作戦1対1」(1975年2月17日)
冒頭、花倉刑事や健一と、休暇を楽しんでいる嵐田陽。

もっとも、2月のクソ寒い時季だというのに海パン一丁でサザエ採りと言う、楽しんでいると言うより、罰ゲームに近いことをしている。
花倉「どうだい、収穫は?」
陽「からっきし、ダメ」
健一「サザエどころか、ハマグリひとつ取れやしないよ」
海から上がって、焚き火で体を温めながらぼやいていると、

アクアラングを背負って、ウエットスーツを着た見知らぬ男が、サザエを山ほど持って海から出てくる。
陽「すいません、ちょっと」
男「なんだい」
陽「このサザエ、何処で獲ったんですか? 俺が潜った時は何処にも……」
男「はははは、素人にはそう簡単に取れるもんじゃないよ」
さっさと行こうとする男を、陽は慌てて呼びとめる。

陽「あ、ちょっと! それ売って貰えないでしょうか」
花倉「おい、陽坊!」
陽「だってあれだけ大口叩いたんだ、今更手ぶらで帰れないよ……お願いします」
頭を下げて丁寧に頼む陽だったが、

男の答えは
閃光のような右ストレート! 
豪快に浅瀬に突っ込む陽。
特撮ヒーロー多しと言えども、
「サザエを売って貰おうとしたらいきなりぶん殴られた」主人公は彼だけである。

江戸っ子気質で血気盛んな陽は、ダイバーとマジ喧嘩をおっぱじめる。
特撮ヒーロー多しと言えども……(以下略)

男「待った!」
陽「ナニが待っただよ! ふざけやがって」
男「もうこのくらいで良いだろう」 それ、先に手を出した人の言う台詞じゃありませんぜ。 男「俺は戦うのが好きなんだ。ただそれだけさ。このサザエ、みんな売ってやるよ」
しかも、きっちり金を取るつもりらしい。普通は、「みんなやるよ」だろう。
とにかく、陽はサザエを男から買うと、さも自分が獲ったような顔でその場でつぼ焼きにする。

大量のサザエを見て、ガンさんたちも歓声を上げる。
愛「ほんとにあんたたちが採ったの?」
健一「だからここにあるんじゃないかー」
岩井「俺はこのサザエって奴に目がなくてねー、この磯の香りがたまらんのよー」
嬉しそうにサザエを鼻に近付けるガンさんだったが、「なんだかきな臭いんだ」と異常に気付く。
譲司「そう言われてみれば……」
愛「なんだか火薬みたいなニオイが……」
岩井「陽、危ない、離れるんだ!」

少し離れたところでサザエを焼いていた陽、怪訝な顔で振り返る。
陽「離れろ?」
岩井「そのサザエには火薬が仕込まれてるんだーっ!」

ハッとした陽が立ち上がった瞬間、サザエが爆発する。
特撮ヒーロー多しと言えど、
「サザエが爆発して死にそうになった」主人公も彼くらいのものだろう。
ちなみにこのオンエアをたまたま見ていた長谷川町子さんが、「よりによってサザエで殺されかけてんじゃねえよっ!」と爆笑したと言うのは、嘘のような、今作った嘘である。
陽は死にはしなかったが、結構な傷を負う。
無論、それは手の込んだいたずらではなく、ロボット帝国による嵐田陽・暗殺作戦だった。

あのダイバーが、ロボット帝国海軍の優秀な軍人、ハイム中尉であることは、すぐ視聴者にも明かされる。
海軍参謀スーカンは、作戦の失敗を責めるが、根っからの軍人であるハイムは暗殺などと言う卑劣な手段よりも、彼の愛機シーヘルツェンUでマッハバロンと真っ向から戦うことを望んでいた。
スーカン「ならん、次は予定通りトロイ作戦を実行するのだ」
ハイム「トロイ作戦も一種の暗殺計画、何故マッハバロンと真っ正面から戦わせてくれないのですか?」
スーカン「くどい、このスーカンの命令が聞けんと言うのか。なによりもまず嵐田陽を消し去るのだ。そうなればマッハバロンと言えども、ただのデク人形に過ぎんからなぁっ」
上官の命令には逆らえず、ハイムは仕方なくトロイ作戦を実施する為、シーヘルツェンUに乗って出撃する。
だが、そのロボットは簡単にKSSバードに撃破される。それは最初から倒されることを想定して作られたまがいもので、無傷で残った頭部を、KSSが回収することを見越していたのだ。
果たして、ガンさんが「ちょうど良い機会だからロボット帝国のロボットを調べるんだ」と言い出し、陽のマッハバロンにKSS本部へ運び込ませる。
陽はブツブツ文句を垂れながら頭部を回収し、マッハトリガー(車)の中で「首を拾いに行っただけなんて、全くついてないぜ今日は」と、疲れもあってうとうとする。
と、搬送されたロボットの頭部から、その中に隠れていたハイムと3人の兵士が出てくる。そう、これが「トロイの木馬」作戦の要諦なのだ。

ハイムは、無防備で寝ている陽に近付いて射殺しようとするが、ちょうどその時、マッハトリガーのサイドミラーに映るマッハバロンの威容がハイムの目に飛び込んでくる。

任務も忘れてその姿に見惚れてしまうハイム。
(マッハバロン、実物は初めて見るが聞きしに勝る素晴らしいロボットだ……俺はこいつと戦いたい……)
ハイムが突っ立っている間に、陽が目を覚まして3人の兵士を撃ち殺す。
ハイム「待て、嵐田陽、俺は貴様を殺す気はない」
陽「貴様はいつかの……これは何の真似だ? 何故俺を助けた」
ハイム「貴様がいなくてはマッハバロンを操縦するものがいなくなるからな」
そこへ、トロイ作戦に気付いたガンさんたちが現れるが、ハイムは陽に銃を突きつけて、KSS本部から出て行こうとする。
陽自身の口添えもあり、村野博士は「逃がしてくれたら陽を解放する」と言うハイムの言葉を信じ、ハイムが基地を出て行くのを黙って見送る。

約束どおり、基地から離れたところでハイムは陽を自由にする。
ハイム「俺を信用してくれて礼を言うぞ。嵐田陽、マッハバロンとの一対一の戦い、改めて申し込む。俺はこれからロボット帝国に引き返し、本物のシーヘルツェンUに乗って必ず戻ってくる。貴様もマッハバロンで待て」
陽「どうしても戦わなくてはならんのか」
ハイム「貴様はKSSの隊員、俺はロボット帝国の軍人だ」
陽はいきなりハイムを平手打ちする。
陽「戦う前に借りは返しておくぜ!」
笑みを浮かべて見詰め合うふたりの間には、友情に近いものが芽生えていた。
ロボット帝国に戻ったハイムは、命令違反の咎で即座に解体処分を宣告される。が、あくまでマッハバロンと戦いたいハイムはなんとか脱走して、シーヘルツェンUで出撃する。

遂に始まるマッハバロンとシーヘルツェンUの決闘。

お互い隙がなく、睨み合ったままあっという間に夜になる。

岩場から健一たちが声援を送る。
健一「頑張れ、マッハバロンーっ!」
……
夜っつっただろうがっ! フィルターの掛け忘れかしら?
とにかく、漸く本格的な戦いに移行すると同時に、OPテーマ曲が流れ出し、めちゃくちゃ燃えるシーンとなっております。
ハイムの操るシーヘルツェンUは強敵で、マッハバロンと互角の戦いを繰り広げる。
陽「ハイム!」
ハイム「嵐田陽、貴様なかなかやるな」
陽「貴様もな、だが遠慮はしないぞ」
ハイム「望むところだ」
最後に、「ヘンセングラー!(?)」「マッハコレダー!」と、それぞれの必殺技を同時に放つ両者。
ハイムは一瞬、勝利を確信するが、次の瞬間、シーヘルツェンUが爆発を起こす。

マッハコレダーによって、ハイムごとガラスの彫像のようになってしまったシーヘルツェンUの無残な姿が、戦いの虚しさを何よりも雄弁に物語っていた……。

見物していた健一たちは歓声を上げるが、陽の顔には微塵も喜びは見られなかった。

朝日を背に立ち尽くすマッハバロンの荘厳な姿を映しつつ、幕。