第17話「デッド・ヒート」(1984年8月7日)
気が付けば、楽しい楽しい少年院編も、残り僅かとなりました。
前回の続きから、夜の中庭で、白百合組と対峙している謎の美少女。

モナリザ「笙子、決着を付ける時が来たようだね。誰も手を出すんじゃないよ、これは私と笙子の勝負なんだ」
時を同じくして、笙子奪還を狙う朝男たちもバイクを連ねて少年院へ急行していた。

睨み合う両雄であったが、ここで笙子(八千代だけど)が意外な行動に出る。
カミソリを持った右手を素早く振り下ろし、モナリザの頭巾を切り裂いたのだ。
管理人はこの時ほど、透視能力が欲しいと思ったことはなかった……。

八千代「なんだい、なんだい、誰だと思ったら4号室の長沢真琴じゃないか。実は久樹葉子、哲也さんの妹だね」
声を聞いて、モナリザもそれが笙子でないことに気付く。

お返しとばかり、今度は八千代の頭巾を切り裂き、素顔を暴く。

モナリザ「お前はカミソリ・ヤチだね」
八千代「ああそうだよ、あたいはカミソリ・ヤチさ、あんたも昔はカミソリ・マコと呼ばれていたそうじゃないか。ふーん、これで分かったよ、笙子姉貴はあんたをやっつけると哲也さんを悲しませることになるから、それで手が出せなかったんだ。だが私はそうはいかないよ、あんたが哲也さんの妹であろうとなかろうと、そんなことは知っちゃいねえよ!」
ちなみに八千代は1枚刃だが、モナリザは2枚刃である。そんなところに格の違いが表れている。
威勢の良い八千代だったが、モナリザの「フクロにしてやりな」と言う言葉に、「なにぃ、きたねえぞ!」と顔色を変える。
八千代のような小物を相手に、タイマンはやれないと言うモナリザの判断であった。

たちまちモナリザの部下に取り囲まれ、しばかれ、「ああんっ」と色っぽい声を出す八千代。

モナリザ「八千代、二度と世間に出られないような顔にしてやるよ」
八千代「やめろ、やめろ、やめてぇーっ!」 カミソリを構えて不気味な笑みを浮かべるモナリザを前に、身も世もなく絶叫する八千代。
モナリザなら本当に顔をずたずたにしかねないと恐怖したのであろう。
もっとも、本当にそんなことをしたら、さすがにモナリザもただでは済まず、少年刑務所などに移されてしまうだろうから、脅しだったのかもしれない。モナリザの狙いはあくまで笙子だからね。

が、ここでやっと八千代の無謀を知った笙子たちが駆けつけ、八千代を助ける。
その上で、また八千代のほっぺを叩く笙子。
笙子「バカッ、まだわかんないのかい、こんなことをしてあたいが喜ぶとでも思ってんのかい?」
八千代「だって姉貴……、相模悪竜会の会長だった曽我笙子がこんな奴らのいびりに泣きを見せるなんて悲しいよー」
笙子「八千代、私は別に泣きなんて見せてないよ。私はどんなことがあっても耐えてみせるって、哲也さんに約束したんだ!」
笙子に叱られて泣きそうな顔になる八千代が可愛いのである!
モナリザ「笙子、お前からの決闘状、私はここに持ってるよ」
八千代「それはあたいが書いたんだ」
モナリザ「誰が書こうと関係ないね。私はこれを笙子からの決闘状として受け取ったんだ。言い訳は利かないよ」
笙子「モナリザ、私はやらない。私はあんたとはやらないんだ」 モナリザ「みんな笙子たちを病院送りにしてやりな」

モナリザの命令に、エリカが一番前にいた善子に丸太棒で殴りかかる。
剛勇の善子は丸太棒を奪い取ると、逆にエリカを殴り飛ばす。
そんなもんで思いっきり殴ったら、確実に大怪我すると思うんですが……。
善子「笙子の代わりにあたいが受けようじゃないか」
麻里「あたいも受けて立とうじゃねえか」
八千代「もう止まらないよ、姉貴、この際白百合組と綺麗に片をつけようじゃないか」
戦意旺盛な仲間たちの前に立ち、両手を広げてやめさせようとする笙子だったが、その無防備な後頭部に、モナリザの部下の一人が強烈な一撃を喰らわす。

痛みに頭を押さえていた笙子、振り向くと、ゆっくりと進み出て、
「どうしても馬鹿をやらなきゃ収まらないのかい、受けて立とうじゃないか!」 一同(今、やらないって言ってたのにぃーっ!) それはともかく、お互い、狼のような物凄い目付きで睨み合う笙子とモナリザ。
管理人(おそるおそる)「あのう、舞楽の話は……」
笙子&モナリザ「うるせえっ!(バコッ)」
で、例によって、抗争に加わらなかった弥生たちから話を聞いた教師たちが総出でこちらにやってくる。
モナリザたちも驚くが、彼ら以上にビビッたのが、塀の外にバイクを停めて、今まさに笙子を拉致しようと身構えていた朝男たちであった。

朝男「待て!」
山崎「ちっくしょう、誰か、チクリやがったんだよ」
マコ「これじゃ手が出せねえよ」
朝男「ちっくしょう、どういうこったい!」
山崎「会長、どうする?」
日本一カッコイイ朝男の下した結論は……、
朝男「ようし、今日は引き揚げる!」 (ハイ皆さん御一緒に)
ええーっ、帰っちゃうのーっ? 折角大金ばら撒いて兵隊を集めたと言うのに……、ここぞと言う時に決断力のない朝男であった。
あと、そんなにたくさんのバイクが塀の外を爆走しているのに、笙子たちが全然気付かないと言うのも考えれば変である。
一方、塀の向こうにいる笙子たちには逃げ場がない。

で、彼らが懲罰回避のために取った作戦は、みんなで手を合わせて祈る姿を見せると言う、意外なものだった。
江田「あなたたち、こんなところで何をしてるんですか」
モナリザ「私たちみんな景子が無事退院できるように天に祈ってるんです」
江田「まぁ……あなたたちの気持ちは大変嬉しく思いますけど……」
大磯「気持ちは分かるが規則は規則だ。全員直ちに宿舎に戻れ」
妊婦の景子は、16話で大怪我をして、現在入院中なのだ。
モナリザを先頭に、ぞろぞろ引き揚げていく生徒たち。
作戦成功! と言いたいところであったが、

笙子だけ、江田と大磯に呼び止められ、さっき受けた額の傷について問い詰められる。
笙子「これは……」
江田「言い訳は結構、私たちが何も知らないと思ったら大きな間違いですよ」

江田「何が景子さんの無事を祈っていた、ですか……私はもう10年もこの仕事を務めている女なのよ。私たちは白百合組の存在も、影の総番長が長沢真琴らしいと言うことも、ちゃんと知ってるんです」
彼らは全て承知で、モナリザたちの嘘に引っ掛かったふりをしていたようだ。
まぁ、最初に弥生たちが彼らの争いのことを大磯に知らせに行ってるんだから、当たり前だけどね。
二人は、喧嘩をしたければすれば良いが、何か問題を起こしたらモナリザは確実に少年刑務所に送られることになるぞよと、笙子に釘を刺すのだった。
翌朝(?)、景子は危険状態を脱し、母子とも安全だと医者に太鼓判を押される。
そのことはダメケイから笙子たちに伝えられる。
また、ヒロシの勤め先の酒屋の主人が保護者代わりとなって、景子を店に住まわせてくれることになったとも。

笙子「それじゃ景子はヒロシさんと一緒に……」
ダメケイ「そういうことだ」
友人の無事と来るべき幸せを我が事のように喜ぶ笙子たち。

麻里、カメラを意識したような動き方でススッとダメケイの前に移動する。
麻里「最高さ、父親と一緒に住めるのが子供は一番幸せなんだ!」
八千代(人の顔の上で話すな) 父親を失い、母親の再婚相手と折り合いが悪くて家を出て不良に走った麻里の言葉には実感がこもっていて、その気持ちは笙子にも痛いほど分かるのだった。

少年院には、景子、ヒロシに加え、酒屋の主人・丸林(神山卓三)も来て、園長に挨拶していた。
園長「あなたのような理解のある方に恵まれて、景子君幸せだ」
江田「丸林さん、景子さんは一度は非行に走りましたがほんとうはとっても優しくて良い子なんですよ」
丸林「分かってます、ヒロシから噂は色々と……」
いかにも人の良さそうな丸林を演じる神山さん、俳優は勿論、「怪物くん」のオオカミ男の声で有名ですね。

ほどなく、景子の仮退院(出所)の日がやってきた。
笙子たち、そして教師たちがその門出を祝福する。教師たちに混じって哲也がフツーの顔で立っているのが妙に笑える。
瀬戸「景子さん、これを、産着を作っておきました」
景子「先生、ありがとうございます」
江田「景子さん、これは私たちからの餞別よ。私が通帳にしておきました」
景子「江田先生!」

江田「頑張るのよっ」
江田教官も、最初はネチネチと笙子いじめに熱を入れていたが、だんだんフツーの良い人になってきちゃったなぁ。それはそれで少し寂しい。
一方、大磯は、
大磯「二度と顔見せんな!」 ……間違えました。
大磯「二度とここへ来るな」

景子「はい、大磯先生、圭太郎先生、ありがとうございました」
後ろの弥生が可愛いのである!

園長「景子君、君が幸せになることが何事にも換えがたい我々の喜びだっ」
てっきり、説教妖怪、最後の長話が始まるのかと思ったら、たった一言だったので拍子抜けしてしまった。

景子「園長先生、私、今まで園長先生は私の本当のお父さんだと思ってきました。これからもそう思って良いでしょうか?」
園長「いいとも」
景子「私、園長先生の教えを決して忘れません。人生やり直しができる……ネバーギブアップ!」
すかさず笙子が「ネバークライ!」と叫び、続いて、みんなと一緒に、「ネバークライ、ネバーギブアップ……」と延々連呼すると言う、割と本気で恥ずかしいシーンとなる。
叫ぶうちに、笙子たちの目に涙が湧いて来るのだった。
もっとも、景子とほとんど絡みのなかった八千代や善子までが泣くのはいささかオーバーだけど、多感な少女ならアリかな。
最後は感極まって、園長に抱き付いて号泣する景子の姿に、大磯までが涙ぐむのだった。
園長「景子君、これからもずーっと、私は君を自分の娘だと思っているよ。ヒロシ君が待ってる、行きなさい」
拍手で送り出された景子の前には、酒屋の軽トラで迎えに来たヒロシの姿があった。

景子「きっと良い家庭を作ってみんなを待ってるよ、私の友達はみんなだけだけもん! みんなだけだもん!」
景子の別れの言葉に、笙子たちが改めて感動の涙を流す。
どうでもいいけど、この前の五月の仮退院の時と比べて、妙にみんなの反応が熱いんだよね。
まぁ、景子は出産、結婚を控えているという違いはあるが。
二人はそのまま丸林酒店に。

主人は快く迎えてくれるが、その奥さんがいかにも二人のことを歓迎していない顔をするのが一抹の不安材料。
のっけから、「お父さんがどうしてもって言うから承知したけど、ほんとは反対なの。少年院にいたなんて口が裂けても言って欲しくないね。そんなことが知れたら商売に差し支えるから」とキツイことを言ってくる。
大映ドラマは、良い奴悪い奴が時代劇みたいにスッキリしてて分かりやすい。
ちなみに奥さんを演じるのは佐々木梨里さん、80年代では口うるさい母親役ばっかりだが、

「男はつらいよ」に出てた頃はなかなか可愛かったのだ。
後編に続く。