第3話「動きはじめた影!三代目の一番手柄」(1986年11月13日)
ここは若者の街、巣鴨……間違えました、原宿。

ナウなヤングたちが踊り狂っているあるディスコ、何処からともなく白い煙が人の形のように立ち昇り、いつの間にか照明が消え、客たちが踊るのをやめてその場に崩れるように座り込む。
その後に現れたのは、この場に似つかわしくない黒装束のザ・忍者であった。
忍者「眠れ、我が子らよ、その心の奥深くに留めよ、目覚めしのち、今がことは忘れても、さだめの時来たればそれぞれにおいて動きあるべし……」
忍者は眠ったように動かない女の子たちの髪を掴んで立ち上がらせながら、そんなことを語りかけ、ついでに尻を触るのだった(註・だった、じゃねえよ)。
OPタイトル後、

暗闇指令が自分のオフィスに三人を呼びつけ、最近発生した事故について説明している。
暗闇「高校生のバイクライダーが、高速道路上で暴走を始め、十数台の車やトラックを巻き込んだ大事故になった。死者は13人、重軽傷者は22人……こちらはガソリンスタンドの店員がいきなり自分の店に火を放った為に起きた大爆発事故だ」

暗闇指令「調査の結果、この14に及ぶ事件の原因を作ったものたちは、すべてがある一夜、同じ
ですこに居合わせたことが判明した。般若、この先はお前が説明しろ」

暗闇指令の言葉を受け、三人の師匠であり後見役である般若がフツーに現れてフツーに説明する。
般若「若者たちは全て特有の症状を示している。瞳孔の濁り……傀儡の術に操られておるのだっ」
結花「傀儡の術?」
般若「人操りの術、忍びの技の中でも恐るべき高度な技……恐らく
ですこの一夜、優れた術者が若者たちに術をかけたものと……」
しかし、上司が「暗闇指令」に「般若」って……やな職場。
三人に与えられたスケバン刑事としての最初の使命は、その術者の正体を探り出すことであった。

いつも元気一杯の唯は、「やるやる、そんなもん目じゃないわ! 三代目スケバン刑事の一番手柄、見てんやい!」とヨーヨーを突き出して見せるが、

クールな二人の姉は唯を置いてさっさと行ってしまう。
三人は早速原宿へ行き、捜査を開始するが、歩きながら些細なことですぐ喧嘩を始める唯と由真。

長女の結花がいつものように止めに入るが、
結花「私だって由真に負けず劣らず、父さんを死に追いやった原因のあんたが憎いんだ。これ以上あんたの顔を見ていたら、自分でもどうなるか分からないっ」
と、由真以上に険しい目を向ける。

唯「なんかーっ、父さんが死んだのはうちのせいと違うわいっ!」
姉たちの背中に怒鳴り返すが、二人は振り向きもせずにさっさと行ってしまう。
その場にしょんぼりと立ち尽くす唯はいかにも哀れであった。
しかしまぁ、実際、小太郎の爆死については詳しいことは何も分かってないのだから、唯にその責任を求めるのは公平に見て言い掛かり以外の何物でもない。むしろ、二人が唯を迎えに外出していた為、自宅の爆発に巻き込まれるのを免れたわけで、唯は命の恩人ってことになるんじゃないの?
とにかく、結花と由真、唯はそれぞれ独自に情報を集めて原宿を歩き回る。

休憩がてら、オープンカフェでそれぞれ得た情報を確認している結花と由真。
二人とも、問題の夜に、黄色い煙を出す花火が打ち上げられたと言う目撃情報を掴んでいた。
結花「由真、昔父さんにトビヒコのことを教えられたの覚えてない?」
大西結花さん、目がキラッキラしてるね。

結花の言葉で、2話と同じく、二人が幼い頃の回想シーンが流れる。
結花「私たちは単なる花火だと思ってたけど……」
その時小太郎は、煙(火薬)の色によって意味することが違うのだと二人に教えてくれたのだ。
赤……危険より身を守れ
青……集合せよ
黄……速やかに任務を遂行すべし

結花「今思えば、あれは忍者の通信方法だったのかもしれない」
由真「じゃあ、みんなが見たって言うのはその……炎の色は黄色だったと言うことは……任務を遂行しろと言う指令が忍者に出されたんだ」
若干タレ目の由真さん。
こうして見ると、二人とも全然顔立ちが違いますね。
私は、どうしてつい最近まで二人の区別がつかなかったのだろう? 謎である。
二人は、再び傀儡使いが動き出すときに打ち上げられるはずのトビヒコを見張ることにする。

一方の唯、夜になるのを待って問題のディスコに正面から乗り込もうとするが……
店員「中学生は困るよ」
唯「うちは三代目スケバン刑事じゃ。捜査せんにゃならんのじゃ、いれちゃんさいっ!」
唯の方言といでたちを見て、店員は無遠慮に大笑いする。
だが、ちょうど近くにいた常連客らしい早苗と言う女性の口添えで、なんとか店内に潜り込むことが出来た。

宮崎の田舎から出てきたばかりの唯にとっては、そこは全く理解しがたい場所だった。
唯「うわー、なんやこの音はー」
早苗「あんたほんとにディスコ初めてなの?」
唯「こんげやかましいとこで、ゆーらゆーら体ゆすぶって、なぁーんが楽しいとやー」
唯の宮崎弁、台詞を聞き書きする管理人にとっては地獄である。
早苗は唯のキャラを面白がって、たちまち仲良くなる。
その早苗の世話で、客たちから話を聞くことが出来た。
唯「なんでもええけ、気が付いたことがあったら教えちくり」 地獄なのだが、この唯の台詞としゃべり方はめっちゃ可愛い。

唯は彼らから仕入れた情報を真に受けて、翌日、公園でたむろしている連中のところへやってくる。
唯「おまんらのなかに捜しちょる忍者がおると聞いて来た、どいつか?」
男「なぁに、寝惚けちょんだ、チビ」
そう言う男を演じているのは「スケバン刑事2」にもちらほら出ていた久保寺健之さんですね。
「不良少女」で朝男の腹心・山崎やってた人。
彼らはほんとに事件とは何の関係もないので、喧嘩腰となる。
唯は、宮崎で大スケバンとして鳴らしていた時の調子のまま、力ずくで彼らの口を割ろうとする。

全員で捕まえようと飛び掛かった彼らの背中の上を、ひょいひょいと駆け抜ける唯。
自信満々の唯だったが、ヨーヨーをまったく使いこなせず、一方的にボコボコにされる。

唯、気がつくと早苗の仕事場で横になっていた。

唯「早苗さんが助けてくれたんかい」
早苗「あんたって無茶な人ね~」
唯「あっちゃ~、カッコ悪いとこ見られてしもうた」
その後、一層打ち解けて互いの身の上話などする二人。
早苗は、三島と言う売り出し中のファッションデザイナーの内弟子をしながら、一流デザイナーになる夢を持っていた。
唯も、自分がスケバン刑事であること、姉二人もスケバン刑事であることなどを早苗に話す。
早苗「あんたと、姉さん二人……」
十郎「それだけ分かれば十分だっ」
突然男の声がして、蜘蛛の糸のように飛んで来たロープが、唯の体に巻きついて自由を奪う。

十郎「三島秀雄こと、忍者・音羽の十郎、お前のようなオッチョコチョイを差し向けてくるとは……」
そう、早苗も「影」のひとりで、唯のことをさりげなく探っていたのだ。
十郎はその場で唯を始末しようとするが、ちょうどその時、夜空に黄色(と言うか緑色)の軌跡を描いてトビヒコが舞い上がる。
十郎は唯の始末を早苗に任せ、操り人形と化した若者たちに、結花と由真を待ち受けて殺せと命じる。

早苗は、しかし、唯と二人きりになると唯のいましめを解いてくれる。
唯「なんで?」
早苗「助けて、私、普通の高校生だった、陰星が出たあの夜までは……いきなり現れた音羽の十郎にお前は忍びの末裔だと言われて……掟に縛られて手先にされたの……でも、こんな恐ろしいことに手を貸すの、怖い」
唯「じゃあ、お前もわちと同じか? 陰星かなんか知らんけど、人の運命を勝手に……許せんわい」
早苗「私、抜けたい」
唯「分かった、まかしやっ」
一方、十郎はまた別の若者たちに「身も心も解放して
りずむに身を任せた若者ども、うぬらほど我が傀儡の術を仕掛けるのに絶好のものはない。その心の底に我が声を聞け、そしてうぬらが身辺に混乱の毒を流すのだ!」と、術をかけていた。
そこへ唯と早苗がそれを阻止せんと現れるが、早苗はあっさり十郎に殺されてしまう。

怒りに燃える唯の額に、またあの梵字が浮かび上がる。
唯「音羽の十郎、許さんかいね」

唯は十郎を追って店の外へ出て、「三代目スケバン刑事・麻宮サキ! 人の世に邪悪をなす闇の住人ども、許さんかいねっ」と桜の代紋を示す。
しかし、忍者にそんなもん見せてもなぁ……。
十郎「その腕、そのざまでようほざくわっ、死ね」
スケバン刑事としてはまだ半人前以下の唯、まともに戦っていれば殺されていたと思われるが、そこへ結花と由真が加勢に来る。
3対1の戦いとなるが、そこでも唯は使いこなせないヨーヨーを味方に当てたりして、邪魔者扱いされる。
それでも「わちは、わちは、早苗の仇をとらにゃいかんのじゃ!」と気合を入れ直し、空に飛んだ十郎にヨーヨーをヒットさせる。
姉二人の攻撃も食らい、陸橋の上から転落する十郎。だが、三人が駆けつけると、姿が消えていた。

結花「あの傷で……」
由真「凄い」
結花「悔しいけど任務は失敗ね」
唯「悔しい! わちは悔しい、わちは早苗を救えんじゃった、十郎を倒すこともできんかった……何がスケバン刑事じゃ、何が一番手柄じゃ」
涙を流して悔しがる唯の肩に置いた手に、微かに力を込める結花であった。

一方、十郎は、平安貴族の部屋みたいなアジトへ戻り、任務の失敗を報告していた。
奥に鎮座している少女が、翔(林美穂)と言い、事実上の「影」の頭領である。
ただし、途中までははっきりと顔も見せない。
林美穂さんは、「スケバン刑事」で、サキ(斉藤由貴)の少女時代を演じていた人。

翔「ミヨズ!」
その左右に侍る美女。
ミヨズを演じるのが屋敷かおりさんで、

翔「オトヒメ! ……忘れたかえ、十郎、忍びの掟?」
オトヒを演じるのが森村聡美さん。どちらもなかなかの美形である。
ちなみに1話だけ、翔が「オトヒメ」と呼んでいる。
翔の指示を待つまでもなく、ミヨズとオトヒによって、十郎はあっさり始末される。
それが忍者の掟なのだ!
おまけ 以前、「セーラー服反逆同盟」のホームページ用に、関連記事の掲載されている昔の雑誌などをたくさん集めていたのだが、その中の一冊(アクションカメラ1986年12月号)に、同時期に放送していたこの「スケバン刑事3」と比較して紹介した記事があった。
そんなに大したことは書かれていないのだが、
・1話の爆破シーンは200万円かかった
・サキの使うヨーヨーは1つ400円
・ヨーヨーは1話で10個くらい壊れる
などと言う制作サイドからの情報が貴重かもしれない。