劇場版「スケバン刑事」（1987年）DVD その4

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　折しも、三晃学園では、成績優秀者の卒業を祝う小宴が開かれていた。

　
　服部「卒業生の諸君、諸君の真剣な自己改革の努力が実り、こうして巣立ちの日を迎えることが出来た。私としては我がことのように嬉しい。……やれっ」

　服部がテーブルの上のパイナップルを放り投げて号令すると、卒業生達が一斉に短剣を投げ付け、

　
　パイナップルを串刺しにする。

　服部「見事だ！」

　いや、「見事だ！」じゃなくて……、ここは大道芸人の養成所か？

　服部「かつて私は北時宗と呼ばれた時代があった。真に国家を改革する夢に燃えていた。その情熱の炎は愚劣な体制に叩き潰された！　だが、私は生きている。私の信念は死ななかった。君たちの胸の中で燃え盛っているのだ。私には強力な援助者がある。国家の中枢にいる人物だ。その人物が君たちの力を活かしてくれるだろう。そしてテロとクーデターの後に東京に戒厳令を施行して、この腐り切った社会体制を根本的に覆すのだ！　そして真の理想国家を建設するのだ。諸君、その日の為に乾杯だ！」

　個性に乏しいアジ演説をかます服部。

　
　村松「学則復唱！」
　生徒「正しい人間になります。規律に絶対服従します。自分では判断しません。私は服部校長先生のしもべです」
　村松「永遠にしもべです」
　生徒「永遠にしもべです！」
　服部「乾杯！」

　服部の号令で、グラスを飲み干してそれを床に叩き付ける二・二六事件の亡霊のような生徒たち。

　服部「プロムナイトの祝いに、私から諸君に楽しいイベントをプレゼントしよう！」

　そう言えば、「少女コマンドーいづみ」にもプロムナイトのエピソードがあったな。

　服部の言う「楽しいイベント」とは、豪華賞品の当たるビンゴゲームではなく（ほんとはそれをやろうとして、部下に止められた）、学園に侵入しているサキたちを彼らの腕試しで狩ることだった。

　そう、服部はサキたちの動きをとっくの昔に知っていたのだ。

　お京と唯は、見張り塔を制圧するが、すぐにサーチライトを向けられて拘束される。

　
　雪乃はひとりで本土からの電源ケーブルを切断しようとしていたところを待ち構えていた兵士に捕らえられる。

　
　サキとめぐみは、生徒たちの閉じ込められている監獄へ行き、彼らを解放しようとするが、

　
　その生徒たちは、服部の部下が化けていたものだった。

　幹部「よく知らせてくれたな」
　幹部がめぐみにねぎらいの言葉を掛ける。そう、めぐみがサキたちの動きを彼らに知らせていたのだ。

　サキ「そうか、ヘリに襲われた時、なんであそこが敵に知れたんかと思うたけんど、これで分かったちゃ」

　
　めぐみ「悪かったなんて思わないわ。たったひとりの兄ちゃんを助けるためだもん」
　サキ（いっぺん殺したろか、このアマ）
　幹部「これが大人の知恵だ。所詮お前らなど、敵ではない」

　恐らく、喜久男が脱走した後、学園の方からめぐみに接触し、和夫たちのことを知らせてくれたら喜久男を助けてやると取り引きを持ちかけていたのだろう。

　めぐみは喜久男のいる地下の治療室へ向かう。

　サキは、別の監獄フロアへ連れて行かれる。先に捕まったお京たちも柱に縛り付けられていた。
　お京「サキ、お前もかよ！」
　唯「二代目ぇ！」

　続いて、卒業生達を従えて服部が現れる。しゃがんで、サキの美しい顎をくいと持ち上げる。

　
　服部「良い目だ。初めて会った時よりも……だがその手の目には飽きたよ。加藤喜久男や、萩原和夫と同じだ。別の世界へ始末してしまう以外、ない！」

　めぐみ、人気のない治療室へ足を踏み入れ、きょろきょろと兄の姿を探していたが、奥の部屋にそれらしい背中を見付け、急いで駆け寄る。

　だが、

　
　兄の顔を見ためぐみは凍り付く。

　
　喜久男は既に廃人と化していた……。

　いわゆるロボトミー手術でも受けたのだろう。

　服部の言う「別の世界」とは、このことを指していたのだ。

　
　サキ「若者たちをこがいな目に遭わせて一体どうしようっちゅんじゃ？」
　服部「分からんのか？　若さは宝だ。だがその宝の価値を君たちは知らん！　自らの不蒙にも気付かない羊より、飢えた狼のほうがマシだ！　私が彼らを作り直してやるのだ」
　サキ「大きなお世話じゃ」
　服部「つぁーっ、救いがたいのは思い上がった羊だ」

　服部は、卒業生達にサキを嬲り殺させようとするが、
　サキ「おんしゃは偽善者じゃ。自分はいつも安全なところから人の犠牲だけを要求する。一度でも自分自身で戦こうたことがあるんか、どうじゃっ？」

　服部に操られている彼らと戦いたくないサキは、そう言って服部を挑発する。

　服部はその挑発に乗り、生徒たちを制してサキと一騎打ちの勝負に応じる。

　
　しかし、得意のヨーヨーではなく、鉄球付きのヌンチャクで戦うサキは、服部に一方的に倒されてしまう。

　
　お京や監禁されている生徒たちの目の前で屈辱の敗北を喫したサキ、仲間たちの必死の呼びかけを遠く聞きながら、そのまま意識を失う。

　
　悔しさのあまり涙を流すお京が可愛いのである！

　戦いの後、服部は村松に「麻宮サキに例の処置を。危険な存在だ」と耳打ちする。

　
　村松は治療室のベッドにサキを縛り付け、直ちに「処置」を施そうとする。
　村松「分相応をわきまえないからですよ。麻宮君、分かって欲しいのは、私の本意ではないと言うことだ」
　サキ「やめてーっ、おまん、なにをするんじゃっ」
　村松「さようなら、麻宮君」
　サキ「やめとうせーっ！」

　なにやら得体の知れない注射を打たれようとして、さすがのサキも必死でもがく。
　サキ、人生最大のピンチであったが、その時、何者かが村松の背中をナイフで刺し貫く。

　村松はあえなく絶命。意外にも、ナイフを刺したのはめぐみだった。

　
　サキ「めぐみっ！」
　めぐみ「兄ちゃんが……」
　めぐみ、サキの拘束を外すと、泣きながらサキに抱き付く。

　めぐみ「兄ちゃんが、兄ちゃんが……」
　震える声を上げながら、変わり果てた喜久男を指差すめぐみ。

　
　サキ「……」
　服部たちの非道な行いを目の当たりにして、サキの闘志が再び燃え上がる。

　そして、ここで西脇から貰った新しい装備を装着して行く。

　まず、セーラー服の襟をはねあげ、プロテクターを付ける。

　
　胸部にも同様のプロテクターを付け、その下から二つに分かれた究極のヨーヨーを取り出し、

　
　蓋をスライドさせて、三つのくぼみに弾丸のようなチップを埋め込んで行く。

　劇中で特に説明はされていないが、これは重量を増やして威力を高めている、と言うことだろうか？　それとも成型炸薬のようなものか？

　いずれにしても、チップを嵌めるのは、なかなか楽しそうな作業である。

　
　通常の倍の厚みのある究極のヨーヨーをしならせながら、サキの細い足がお京たちの閉じ込められている重営倉へゆっくり近付いて行く。

　その5へ続く。