第16話「スケバン・ロック」(1984年7月31日)
学園の畑で農作業をしている笙子たち。

弥生「室長、麻里とトキ子の奴、どうしちゃったんだろうねえ、人が変わったみたいに働いているよー」
笙子「あっははっ」
かつてバリバリの不良だった(……って、ここにいるのはみんなそうなんだけど)麻里とトキ子が、熱心に作業に打ち込んでいる姿を見て明るく笑う二人。
一方、景子は妊娠5ヶ月と言うことで、かなりお腹が目立ってきて、作業も大変そうであった。
そんな時でも、同じ作業をしているモナリザ率いる白百合組と笙子たちは険しい視線をぶつけ合い、両グループの緊張感は日増しに高まる一方であった。
さて、全国16億8000万4人の山本理沙ファンの皆様、お待たせしました。

ここで遂に、八千代が愛育女子学園にやってくるのである!
言うまでもないが、前回、善子と八千代はあらぬ盗みの疑いをかけられた怒りから客に暴行を働いてしまい、姉貴分である笙子のいるこの少年院に収容されることになったのだ。
善子は悄然としているが、例によって八千代は遊園地にでも遊びに来たように心から楽しそうな笑みを絶やさない。

園長「大沢善子君に、二宮八千代君だね」
善子「はい」
八千代「ふぁい」
園長「私は君たち二人の調書を読んで残念でならない。君たちは不良の世界から足を洗って……」
とりあえず色気のない制服に着替えた二人が園長室に挨拶に行くと、

園長「……犯人扱いされてしまった。どんなに悔しかったか、私にも十分分かる。
だがぁ、君たちにはそこで耐えて欲しかった。踏み止まって欲しかった。何故ならば……」
入園早々、園長こと説教妖怪のありがたーい説教が待っていた。
一説によると説教妖怪の説教をあまり長い時間聞いていると、遂には耳が腐り、脳が溶けてしまうと言う。
だが、しょっちゅう園長のそばにいて、生徒たちのとばっちりを食っている江田教官は、長年の修練の末、「自由自在に心を無にする」奥義を会得しているのだ。この顔を見れば分かると思うが、いま、江田教官の耳には、園長の長話はただの雑音にしか聞こえていないのである。
また、大磯は普段から何も考えていないので、いくら園長の説教を聞いても平気なのだ。
ところでさっきから私は何を書いているのであろうか? 誰か教えてください。
園長「その事件は社会に生きる君たちにとって
最初の難関、最初の峠であったからである。人生の峠と言うのは……なんたらかんたら」

園長「(中略)それが、人生やり直しができる、と言うことだ!」
長い長い説教を、額縁の言葉で締める園長。
じゃあ最初からそう言え。 
根が真面目な善子は、説教を拝聴すると、「私、ほんとにバカなことをやったと思ってます。あそこでもう少し我慢すれば……」と、素直に反省の弁を述べるが、
八千代「あたしはぜぇんぜん、反省なんかしてないよ先生、どろぼー呼ばわりされて黙ってられるかってんだ! パパもね、良くやったって誉めてくれたよ先生!」 抑揚とゼスチャーたっぷりにタンかを切る八千代。
八千代「パパは若い時すっげー不良でさ、港の労働者から社長! 倉庫会社の社長にのしあがったって男なもんでさ、男は多少若い時にぐれるぐらいでなきゃ、大物にはなれないってんだよ!
江田「あなた女でしょ?」
八千代「それがさ、先生、パパはほんとは男の子が欲しかったもんで、多少勘違いしてるところもあるんだけどね。でもね! 売春とシャブさえやらなきゃあとは何やってもいいってくれたんだよ。人生一回こっきりだもん

好きなように生きないと後悔するもんね」
全く物怖じせず、園長にも匹敵する長台詞を堂々とまくしたてる八千代。
はっきり言って、このシーンは八千代の……山本理沙さんの為だけにある。
ついでに、八千代の父親が社長で、彼女が結構裕福な家庭で育ったことが判明する。
百戦錬磨の江田教官も、さすがに目を白黒させて咄嗟に言葉も出ない。

大磯「何をバカなこと言ってるんだ。
お前ひとりで生きてるんじゃないぞ」
何を勘違いしたのか、イケメンの顔になって(なってないけど)急に教師らしい台詞を放つ大磯であった。
八千代「そんなこと分かってるよ! あたしだってさ、年が来たらかっこいい男をお婿さんにして社長夫人にばっちりおさまっちまうんだから安心してよ!」
全然分かってない八千代。だが、そこが可愛い! え? 急にでかい声出すな? 園長の癖が移ったかな。

園長「園の規則によりこれから
十日間! 君たち二人は単独室に入ってもらう。そこで君はぁぁぁ、すこおし頭を冷やした方がいいなぁー」
職権で堂々とボディタッチできる園長が羨ましい。
ただし、続いて大磯が二人の肩に手を回して独房へ連れて行こうとすると、

八千代「気安く触らないでよ!
あたしまだバージンなんだ」
と、拒絶される。
このドラマ、基本的に性的な話題は出てこない作風なので、唐突にこんな台詞が出てくるとちょっドキッとする。しかも、劇中ベスト3に入る美少女の口から出るとね。

八千代「あっ、先生、まさか役得で女の子の体を触って喜んでる変態だったりして?」
大磯「ばっばかもの!」
八千代の遠慮のない指摘に、珍しくうろたえる大磯。
荒っぽい、正統派のヤンキーを扱うのは得意だが、八千代のような「新人類」は苦手らしい。
で、八千代に言われた手前、二人のシャツを引っ張るようにして部屋の外へ連れて行く。
園長「ふーっふふふふっ!」 彼らがいなくなった直後、突然狂ったように笑い出す園長。
説教のし過ぎで遂にぶっ壊れたのかと思ったが、そうではなかった。
江田「何が可笑しいんですか」
園長「え、失敬失敬、んふーっ、しかしとびきり元気のいい女の子が入ってきたもんだね」
園長、八千代の天性の明るさと度胸が気に入ったらしい。
だが、江田教官は、笙子の部下だった彼らが加わると、白百合組との対立が激化するのではないかと心配していた。
学園内の情報伝達速度は高く、二人が独房に入れられる頃には、笙子たちもモナリザたちもそのことを知る。
麻里は、モナリザに善子と八千代について「二人とも笙子の為なら平気で命を投げ出す女だからね」とややオーバーに教えてやる。

それを聞いたモナリザの部下のひとりが言う「ちくしょう、兵隊呼びやがったんだ」と言う台詞、完全に発想がヤクザですね。
モナリザは、八千代が自分と同じように「カミソリヤチ」と呼ばれていることを聞くと、不敵な笑みを刻む。
さて、時間は瞬く間に流れ、10日の独房生活を終えた八千代たちが大部屋に移される日がやってくる。
ここでも、二人の態度は対照的で、善子は神妙な顔で正座を崩さないが、

八千代は、腕立て伏せをしてトレーニングに余念がなかった。
いやー、それにしても可愛い女の子の腕立て伏せは良いですなぁ(性的な意味で)。
独房から解放される時も、

八千代「やっほーっ! やっと出れるんだねセンセ、ありがとう~」
その場でジャンプして全身で喜びを表し、

八千代「うーんうっ

」
さらには感激のあまりキスまでサービスしてしまう八千代。
八千代、卑怯なほど可愛いぜ。
大磯も、八千代の前では形無しで、ドアを開けた時点でかなりユーウツな顔をしているのがお分かり頂けるだろうか?(政宗一成風)
二人はすぐ他の生徒たちに紹介され、別々の部屋に配属される。
まぁ、さすがに笙子たちの部屋に加入するのはわざとらしいので、善子は1号室、八千代は2号室へ(笙子は3号室)。

顔合わせが済むと、二人は真っ先に笙子の前に立つ。
笙子はすぐ二人のほっぺを軽く平手打ちすると、
笙子「どうして我慢できなかったんだ? 下らない大人の為に大切な夢を捨ててもいいのかい?」
親分として、叱らずにはいられない笙子であった。
善子は涙ぐみながら反省するが、八千代は「姉貴、今更そんなこと言ってもはじまらねえよ」とあっさり風味。しかも、続けて
「鑑別所で仕入れたネタなんだけど、ここは白百合組とか言う影番が仕切っていて、姉貴に冷たい仕打ちをしてるって言うじゃないか」と、大きな声でここではタブーになっていることを口にする。
笙子は慌てて白百合組などという組織は存在しないと否定するが……、
八千代「姉貴、隠さなくても良いよ」

怖いものしらずで、空気を読むような真似はしない八千代、その場で白百合組を探し出そうとする。
外の世界では敵対していたトキ子と麻里を見掛けて、
「白百合組ってのはお前たちかい?」
笙子「八千代、麻里もトキ子も今では私の友達なんだ」
八千代「なんだいなんだい、冗談じゃねえな、折角タイマン楽しみにして来たのにさ」
山本さん、他の子たちと並ぶと、違う時代から来た人のような新鮮なキャラクターに映る。80年代と言うより、90年代っぽい。
あれこれあった後、二人はそれぞれ割り当てられた部屋で自己紹介をする。
1号室は白百合組の幹部が室長をしていて、善子は入室早々、先住者たちからフクロ叩きにされる。

が、途中で反撃に転じ、室長の首を絞めながら、
「やめて下さい、私、頭に血が昇るとつい馬鹿力が出ちまうんですよ。出入りで相手の骨を何度も折ったこともあるし……」
と、タダモノではない片鱗を覗かせる。
しかし、「出入り」て……。

その頃、八千代は、「お控えなさいまし、早速のお控えありがとうございます。私、生国と発しますは……」などと、ヤクザの仁義を切って、
盛大に滑っていた。 
職員会議。
ダメケイ「まずいことになりました。今までタブーだった白百合組と言う名を二宮が口に出してしまった」
園長「圭太郎、それはむしろ我々にとって歓迎すべきことではないのかねえ」
ダメケイ「おじさ……園長!」
忘れがちな設定だが、ダメケイは園長の甥なのだった。
園長「今まで白百合組は闇の組織として当学園を支配しその名を口にすることすらタブーとされてきた。だが一度その名が表面化すると、タブーはタブーでなくなり、闇の組織としての神通力も失せてしまうものだ。やがて構成しているものもはっきりするだろう」
大磯「そこを狙って一挙に叩き潰そうと言う訳ですか?」
園長「誤解せんで欲しい。わしは別に白百合組をぶっ潰そうと言ってる訳ではない」
園長は、彼らの手で白百合組を潰すことは可能だが、それより少女たち自身の手で、白百合組という「悪」を打ち破って欲しいのだと言う持論を述べる。
要するに、何もしないと言うことですね。 音楽の授業。
八千代と善子は、当然、少年院で初めて哲也と顔を合わすことになる。

善子は面目なさそうに顔を伏せるが、
八千代「哲也さん、あたしあたし、八千代よ!」
哲也「君たち……」
八千代「そんな暗い顔しないでよ、あたいもヨッコも元気だよ。笙子姉貴を助けて白百合組をひねり潰そうと張り切ってんだ!」
眩しいほどの若さが漲る八千代、いるだけでその場でパッと明るくなるような女の子だね。
それはそれとして、今日は妙に空席が目立つ。笙子たち3号室の生徒以外、ほとんど姿が見えない。
哲也「誰か呼んで来てくれないか」
弥生「呼んでも来ないよ先生、どうも白百合組からボイコット命令が出てるらしいんだぁ」
哲也「白百合組?」
みどり「ここを裏で取り仕切ってる影番グループだよ。そいつら笙子を目の仇にしてるんだ。哲也先生は笙子のイイ人だから……」
哲也はめげずに、モナリザたちのいる部屋に行き、授業に出るよう促す。
最初は動こうとしない彼女たちだったが、ダメケイが来て「ボイコットする者は懲罰房行きだ」と脅すと、ぞろぞろと教室へ向かうのだった。骨のない連中である。

哲也「葉子、渡したいものだがあるんだ。お母さんが君の為に作ったパジャマだ」
風呂敷包みの中から、信子が作ったと言う黄色いパジャマを出して渡すが、

モナリザは、その場でパジャマをびりびりに引き裂いてしまうのだった。
しかし、パジャマってそんなに簡単には千切れないと思うけどね。信子の縫製が甘かったのかもしれない。
モナリザ「あたしの母さんは海で死んだ母さんだけさ。笙子、あんたの母親になる女がね、このパジャマをあんたにとさ!」
さらに、心配になって入り口から覗き込んでいた笙子に、パジャマの切れ端を投げ付けるのだった。
後編に続く。