第22話「人間牧場」(1968年3月3日)
伊豆の入田浜にある別荘風の建物。

夜、持ち主の(?)石山ルリ子を囲んで誕生パーティーが賑やかに開かれていて、その中にはルリ子の友人のアンヌの姿も見えた。
アンヌ、ラメ入りのドレスがとても似合っていて、主役であるルリ子より明らかに目立っていた。
同じ頃、付近の海面に謎の機体が浮上し、そこから不気味な生き物がぺたぺたと浅瀬を踏んで別荘に接近していた。唯一それに気付いたのは、外につながれているルリ子の愛犬ジョンだけだった。

アンヌが、ルリ子に誕生日プレゼントを渡していると、盛んにジョンの吠え立てる声が聞こえてくる。
最初は猫でも迷い込んだのだろうと笑っていたが、そのうち悲痛な叫び声のような鳴き声がしたので、二人で様子を見に行くことになる。
外へ出た二人が目にしたのは、空っぽの首輪だった。二手に分かれて家の周辺を探すが、

ルリ子の前に緑色に輝く目を持つ怪物が現れ、ルリ子は悲鳴を上げて気絶してしまう。

慌ててアンヌが駆けつけるが、既にルリ子はその怪物に連れ去られた後だった。
どう見ても人間ではない巨大な足跡が砂浜から海へ続いていて、その途中に、アンヌがプレゼントしたばかりのブローチも落ちていた。

異常事態と判断したアンヌは、すぐブーツの中に手を突っ込み……、

ウルトラマンのベータカプセルのようなものを取り出して空にかざす。

スイッチを押すと強烈な閃光が走り、それこそアンヌがウルトラ戦士にでもなりそうな雰囲気だったが、それはただの照明弾に過ぎなかった。
その閃光の中に、急速潜航する宇宙船のような影が映る。

アンヌの連絡を受けて、キリヤマたちがすぐに現地に急行する。
例の奇妙に足跡を全員で見下ろしている図。
ひとりだけ、私服姿のアンヌが混じってるのがなんか良い。
キリヤマたちはポインターで水面を飛びながら近辺の捜索を行うが、何も発見できないまま一旦本部へ戻る。

宇宙船は海中に姿を隠しており、その中で、さらわれたルリ子がレントゲンガンのようなものを照射されていた。
本部に戻ったキリヤマたちに、タケナカ参謀がとあるスライドを見せる。それは、キリヤマたちが発見した足跡と全く同じもので、スイスやアメリカなど、世界各地の牧場や動物園で採取されたものだと言う。
タケナカ「どの事件にも共通して言えることは、そこにいる動物が盗まれていると言うことだよ。だが数は一頭だけだ」
その後、現地に残っていたアマギから、ルリ子が浜辺で発見されたという知らせが入る。
ルリ子は一見無事のようであったが、意識が戻らず、腕に赤い胞子の様なものが付着していた。
ルリ子を調べた博士によると「染色体が猛烈な勢いで減っている」らしい。

ルリ子は、防衛軍のメディカルセンターでアンヌに看護されていたが、不意に呻き声を発する。
アンヌ「ルリ子っ、どうしたの?」

アンヌが驚いてシーツを剥ぐと、いつの間にかルリ子の体表が緑色の胞子で埋め尽くされていた。

さらに、何処から湧いたのか(ほんと、何処から入り込んだのか謎である)、今回の事件の首謀者ブラコ星人が現れる。触角を蠢かして不気味にアンヌに迫る。
アンヌ「ダン、ダン!」
恐れおののくアンヌの悲鳴を聞きつけたダン、

得意の(註・得意じゃないです)「おっ」顔をしてメディカルルームへ急ぐ。

ダンが駆けつけると、アンヌは尻を向けて倒れていた。
ブラコ星人はダンを見ると、体の横に隠していた腕を出してダンと格闘する。
ルリ子の愛犬ジョンを殴り殺したブラコ星人は怪力の持ち主で、さしものダンも苦戦する。
と、横合いからビームが飛んできて、ブラコ星人を射殺する。
ダン「隊長ぉっ」
キリヤマ「ダン、だいじょぶか?」
ダン「油断しました。しかし、アンヌ隊員が……」
二人の目の前でアンヌの体がルリ子と同じように緑色に染まる。
博士がブラコ星人の死体を解剖した結果、あの胞子がブラコ星人の食糧であることが判明する。
さらに、博士は胞子に女性ホルモンを投与して、

胞子が動物の心臓のように脈打つのを二人に見せる。
胞子は、特に人間の女性のホルモンによって活性化するらしい。
ブラコ星人が各地で色んな動物を捕まえていたのは、胞子を植えつけるのに最適な動物を調べる為にサンプリングしていたのだ。

それは良いのだが、(スタッフが)調子に乗って胞子がどんどん膨らませた結果、特撮のネタが割れてしまうのが悲しい。

ダン「まるで人間牧場ですね」
博士「全くその通り。あの宇宙人にとって女性の体は食糧である胞子を育てる絶好の牧場と言う訳です」
キリヤマ「このままでは地球上の女性全てが人間牧場にされるおそれがありますね」
博士「人類の危機です。こうなったからにはあの二人を隔離して他の女性に空気伝染するのを防ぐべきです」
何でも知ってる博士によると、アンヌたちを救うには「放射線α73」を患者に照射すれば助かるらしい。
だが、その「放射線α73」(を出す放射性物質)は、土星の鉱石にしか含まれていないと言う。
ダンはすぐホーク2号で土星へ飛ぼうとするが、
博士「待って下さい、ホーク2号でどんなに急いでも3日はかかります。患者の生命はあと15時間持つかどうかです」
博士の無情の宣告に、ダンもキリヤマも言葉を失う。
しかし、3日で土星を往復できるって、物凄い性能だよね。

作戦室の星図に描かれた土星を深刻な顔で見詰めているダン。
悩んでないで、すぐ変身して土星に行けば良いのにと思うが……。
その頃、海中からブラコ星人の無数の円盤が浮上し、編隊を組んでホーク1号と交戦していた。
ダンもすぐホーク3号で応援に向かうが、
ダン(時間がない。こうなったら非常手段だ!)

心の中で叫ぶと、いきなり円盤群の中へキリモミ回転しながら突っ込む。
当然、円盤に攻撃されて落下するが、

その爆煙の下から颯爽とウルトラセブンが登場!
セブンになってしまえば楽勝! と言いたいが、円盤群の陣形攻撃はなかなか厄介で、

セブンも強力な磁力網で一時拘束されてしまう。
ここで、作戦室のキリヤマが「セブンは土星に行こうとしている」とフルハシに告げるのだが、まるでセブンの正体がダンだと知ってるような口ぶりである。

その磁力網を、ホーク1号が突撃して断ち切る線画の美しさ!

自由になったセブンが、ホーク1号に向かって敬礼して見せるのも小粋な演出。
セブンは円盤の始末をホーク1号に任せて土星へ向かう。
ウルトラヒーローから絶大な信頼を寄せられているウルトラ警備隊。どっかのMACとはえらい違いだ。
この後、セブンが土星と間違えて木星に行ってしまい、「あれ?」と首を傾げるユーモラスなシーンが……ない。

セブンの持ち帰った「放射線α73」によって、アンヌとルリ子は命を取りとめる。
喜ぶキリヤマたちだったが、アマギたちが沈痛な面持ちでやってきて、ダンが行方不明だと告げる。
キリヤマ「なに、ダンのことだ。きっと何処かで生きているさっ」 いや、「いるさっ」じゃなくて、
ちゃんと探さんかい! もっとも、キリヤマがダンの正体を知っていたのだとすれば、その無責任な態度も頷けるのだが。

既にダンは作戦室に戻っていた。

星図の前に腰掛け、本物の絵描きのように熱心に土星の輪を書き足しているダンの姿を映しつつ、終了。