クリスマスイブか……(遠い目)
と言う訳で、
第5話「カブト虫殺人事件」をお送りします。
監督は本多猪四郎、脚本は高久進と言うゴールデンコンビによる本作はシリーズ中でも屈指の傑作になっている、と思う。
毛利チームのメンバーは、インターポールが発表した日本に侵入する可能性のある重大犯罪者の写真を見ながら雑談している。
特にその中の「魔術師アルベール」は世界をまたにかける宝石泥棒としてメンバーの関心を惹く。

そこへ
「予言者モハメッドアリ」と言う訳の分からないコードネームを持つ少年ジュンから、
「東京股旅ライダー」こと三郎へ奇妙な通信が入る。

ジュン「カブト虫が人を殺す。それも金色に光るカブト虫なんだ。カブト虫は宝石を狙ってる。信じるものは救われる。これがモハメッドアリの言葉だ」
ジュンを演じるのはご存知、川口英樹氏。ジュンは具体的な場所と名前を告げ、今夜その人物の持つ宝石が狙われると断言する。
三郎と吾郎はその言葉を信じるが、無論、他のメンバーは本気にしない。
岩城「その少年はどういう子なんだい」
ナミ「三郎君の知ってる子で、テレパシーの能力を持ってるらしいの」
岩城はとりあえず、その狙われている富永と言う金持ちへ警告してきたらどうだと提案する。三郎と吾郎はその言葉に従うが、富永はまともに相手にしてくれず、二人は富永の用心棒のような男に追い払われてしまう。

富永はそれでも気になって金庫を開けて、宝石のコレクションを確認する。それをダクトから見ている金色のカブト虫。
そしてその夜、予言者の言葉が現実となる。屋敷の見回りをしていた用心棒が、空を飛ぶ金色のカブト虫により殺され、富永が駆けつけた時には宝石も盗まれていた。彼はダクトを逃げて行くカブト虫を目撃したが……。
岩城たちはジュンのマンションへ行き、彼から直接話を聞くことにする。

ジュン「何故事件が予告できるかって言うんだろう? だからさ、それはテレパシーなんだ」
三郎「そうなんだ。ジュンは何百万人の中でたった一人生まれるか生まれないかの素質を持ってるんだ」
ジュン「ありがとう、君だけだよ僕を信じてくれるのは」
三郎「俺たち友達だもんな」
意気投合してがっちり握手を交わすふたりに、岩城もナミも呆れ顔。

と、牛乳瓶の底メガネをかけた家政婦(中北千枝子)がナミを手招きしてキッチンへ移動し、何事かと尋ねる。
家政婦「お父さんはずっと海外に出張中だし、お母さんはデザイナーで夜遅くにならないと帰らないんですよ」
ナミ「じゃあ、あなたがずっとジュンちゃんの世話を?」
家政婦「ええ、あたしだけじゃ寂しいんでしょうねえ。いつもひとりで空想しているらしいですわ」
ナミ「空想だけだったら問題ないんですけど、予言どおり、現実に事件が起こってるんです」
本部へ戻った岩城たちは毛利博士もまじえて、今度の事件について話し合う。

岩城「ジュンはエジプト王家の墓を守るコガネムシが金色のカブト虫にになり、復讐してると言うんですよ」
毛利「復讐?」
ナミ「ピラミッドに隠された王様の墓は、泥棒に荒らされて(発音がおかしい)宝石はみんな盗まれたでしょう? その盗まれた宝石を取り戻すために金色のカブト虫が日本に飛んできたって言ってるの」
毛利は無論、そんな説は問題にしないが、ジュンが嘘をついているのではなく、今度の事件には何か裏があるのではないかと目を光らす。
そこへまたジュンの予言がもたらされる。今度は加賀見と言う富豪の持つ「エジプトの星」と言う貴重な宝石が狙われると。
岩城たちは加賀見邸を訪れ、宝石が狙われていると警告する。加賀見は念の為、金庫を開けて宝石のコレクションが無事なのを確認するが、例によって金色のカブト虫がダクトからその様子を見ていた……。
岩城は金庫のそばへ陣取り、ナミと一平は屋敷の周りに赤外線警報機を取り付けた上で、警備していたが、夜、警報機が鳴り響く。全員で侵入者を探すが、

「非常ベルの原因はあれよ」
ナミ、生垣のところにいた黒猫を見付けて抱きかかえる。
可愛い女の子が猫を抱くと、鬼に金棒ですね。
だがその隙にアルセーヌ・ルパンのようないでたちのアルベールらしき怪人が邸内に入り込み、まんまと宝石を盗んでしまう。さらに加賀見氏がカブト虫に殺されそうになるが、岩城がカブト虫を叩き落して事なきを得る。
毛利がカブト虫を調べると、極めて精巧なロボットで、目には小型カメラ、角には毒が塗ってあった。つまり、アルベールは事前にそのカブト虫で金庫のダイヤルコンビネーションを調べておき、カブト虫で人を襲わせ、その隙に宝石を盗んでいたのだ。

毛利たちがジュンの部屋を調べると、ベッドの下にテープレコーダーが仕込まれていた。それには男の声で、カブト虫が宝石を狙っていると言う内容が吹き込まれていた。
毛利「このテープレコーダーでジュンをテレパシーの暗示に掛けていたんだ」 岩城「はぁ……」
(←あんまり分かってない) 毛利「ここに住んでいるのは?」
岩城「母親と家政婦ですが、母親は夜遅くならないと帰ってきません」
毛利「じゃあ犯人はその家政婦だ!」
毛利はあっさり断定すると、テープにある細工をして引き揚げる。

家政婦、ジュンがぐっすり寝ているところを見計らい、次の犯行の予言を吹き込んだテープを聞かせようとするが、いつの間にか、毛利の声で「ジュン、君は騙されている。君の前にいる家政婦がこのテープレコーダーを使って……」と、彼女の仕業だと暴露する内容に変わっていた。
テープを止めようと全力でパニクる家政婦。 いかにも機械に弱い中年女性っぽいリアクションだが、ただ、後で分かるように彼女の正体は魔術師アルベールなのだ。意外な事態ではあろうが、ここまで狼狽しなくてもいいんじゃないの。まあ、アルベール、身も心もおばさんになりきっていたのだろう。
その騒ぎに目を覚ましたジュンに、家政婦は犯行のからくりを得々と話す。つまり、ジュンに予言を吹き込み、それが毛利チームに伝わって、彼らが宝石の持ち主に警告すると、持ち主は気になって金庫を開けてみる。アルベールは潜ませておいたカブト虫でその組み合わせを盗み見る、と言う段取りである。

家政婦は、ジュンを車のトランクに詰めて廃墟へ行き、彼を殺そうとする。
正体を現したアルベール、声は、小川真司さんじゃないかと思うが、よく分からない。
しかし、マンションを監視していた毛利チームが駆けつけ、彼を追い詰める。アルベールは結局屋上から足を踏み外して転落してしまう。この転落シーンはかなり間抜けで、涙を誘う。
その生死は不明だが、最後に毛利が「アルベールを追い詰めた」と言っているから、一命はとりとめたのかも知れない。