第22話「勝ってから泣け」(1985年3月9日)
の続きです。
滝沢と山城は、以前のように小さな居酒屋に行く。

山城「自信喪失?」
滝沢「ええ、今のメンバーのほとんどがこの間の全国大会を経験した連中なんですよ。しかも初めて全国大会に出て三回戦まで行った。本来なら物凄く自信を持ってる筈なんです、それが逆に縮こまってしまって……」
二人があれこれ話していると(特に面白くないのでカット)、見知らぬ外国人の男性が入ってくる。

山城「紹介しよう、ひょんなことから知り合ったんだが、横浜の外語学校の教師をしているマーク・ジョンソンさんだ」
マーク「こんばんは、よろしく」
滝沢「よろしく、滝沢です」

マーク「あなたを良く知ってます。元オールジャパン、名フランカー、ロングキッカーの賢治でしょう」
滝沢「はあ」
山城「ジョンソンさんは横浜のラグビークラブのメンバーなんだ」
マーク「私たちのクラブ、若い人からお年寄りまで色んな人が入っています。どうですか、一度一緒にプレーしましょう」
突然の誘いに戸惑う滝沢であったが、山城の「たまにはラグビーを楽しめ」と言う言葉に背中を押される形で、日曜日、滝沢はマークたちのラグビークラブを訪ね、実に久しぶりに一プレーヤーとして思いっきりボールを追いかけて心地よい汗を流したのだった。
試合後、マークは、自分がかつてウェールズの代表チームのメンバーで、1973年に滝沢がオールジャパンのひとりとしてウェールズを訪れたときもその中にいたと打ち明ける。ただし、試合には出れず、スタンドから滝沢のプレーを見ていたのだと言う。
マーク「あの日から、僕はいつか君と一緒にプレーしてみたいと思ってたんだ。その夢が今日かなった」
滝沢「マーク」
マーク「ありがとう、賢治」
数日後、今度はマークが臨時コーチのような形で川浜を訪れる。
滝沢、行き詰まりを感じている自分の指導方法のヒントになればと思ってその指導ぶりを見ていたのだが、選手の欠点やミスを一切指摘しないマークの指導方法にかえって不満を感じるのだった。

マーク「君たち、疲れたら休みなさい」
矢木「え、休んでも良いんですか」
マーク「オフコース」
内田「けど、100本スクラムのうち、まだ30本しか」
マーク「100本? イッツ・クレイジー! ラグビーは、もっと楽しくやりましょう。OK?」
選手たち「はいっ!」
時折笑い声さえ聞こえる、生温くて仕方のないマークの指導に滝沢は苛立ちを隠せない。
さすがにその場では何も言わなかったが、その晩、マークを自宅の夕食に招いた席では、

マーク「間違ってる? 僕が」
滝沢「そうだ、お年寄りのいる君たちのようなクラブだったら、ラグビーを楽しむのも良いだろう、しかし、うちの生徒たちはまだまだ未熟な若者だ。今のうちに鍛えるだけ鍛えておかなければ良いラガーマンにはなれない。君のやり方だと彼らを甘やかしてるだけだよ」
マーク「確かにハードトレーニングは必要だ。だけど、君のやり方はまるでバトルだ」
滝沢「バトルじゃいけないのか? ラグビーは格闘技だ。ファイティングスピリットのない奴にラグビーなんかは出来やしないんだよ」
マーク「しかし、ラグビーはスポーツだ。バトルではない!」
節子もゆかりもそっちのけでラグビーの指導方針について延々と激論をかわすのだった。

ナレ「二人の激論は果てしなく続いた。それは意見こそ違え、共にラグビーを愛するが故の議論だった」
そして滝沢が我にかえると、節子さんはゆかりを連れて実家に帰っていたそうです。
「ラグビーボールと結婚しな!」と言う置き手紙を残して……。
嘘はさておき、

その後も時折姿を見せるマークの指導の影響か、ラグビー部に活気、あるいは明るさが戻ってきた。
楽しそうな選手たちの様子に、滝沢も清美たちもつい笑みがこぼれる。

甘利「随分楽しそうですね」
滝沢「エンジョイラグビーですよ。スポーツはすべからく楽しむべし、これがマークの考え方なんです」
甘利「なるほど、分かる気がするな。今までのラグビー部は強くなること、勝つことだけを目的にあまりに目を吊り上げ過ぎてたような気がするんですよ。あんまり緊張状態が続くと、決して良い結果は出ないんじゃないかと思うんですが」
滝沢「僕もマークのやり方を見て大いに反省してるところです、しかし、緩めっぱなしでもまずい」
甘利「そうですよ、締めるべきところはちゃんと締めなきゃ」
滝沢「だから僕は今までどおり締める方に回って、あいつらを怒鳴りまくることにしました。だって急にニコニコして猫撫でなんか声出したらこれまたおかしなもんでしょ」
マークの「寛」に対し、自分は「厳」として、いわば憎まれ役を買って出ることを決意する滝沢であった。
……が、この後、生徒たちの強い要望で滝沢はラグビー部の監督をマークと交代させられたそうです。
「スクール☆ウォーズ」 ~完~ ……え、くだらんこと言ってないで話を進めろ? 分かりました。
さて、あっという間に時は過ぎ、なんと、それから1分もしないうちに秋になっちゃうのである!
学園生活が一切描かれないと言うのはさすがにどうかと思うが、なにしろ大木や光男と言った目立つキャラがいなくなっちゃったので、仕方ないのかなぁ。
秋の国体に、川浜は神奈川県の代表チームとしてラグビー少年部門に出場する。
そして、順調に勝ち進んだ川浜は、決勝であの城南工大と対戦する。
まるでドラマのような筋書きだが、こればドラマなので当然のことだった。
試合の模様(ラジオ)を大木は仙台の会社の食堂で、

節子さんは自宅で聞いていたが、そこへ下田が出前を届けに来る。
前半は互いに無得点だったが、後半、川浜が先制のトライを決める。
その後も追加点を重ね、

清美「やったーっ!」
川浜ベンチはもう試合に勝ったように沸いていた。

下田「うん、10対0、こいつは絶対いただきですよ! やれよーっ!」
いや、なんで節子さんと一緒にラーメン食ってんだ、コイツ? 店は良いのか?
あと、出前持ってきたのが試合開始間もなくだったから、もう完全にラーメン伸び切ってるぞ。
とにかく、このシーンは「スクール~」の中でも屈指の謎と言われている場面である。
節子さんが新楽へ150円のラーメン食べに行って、一緒に聞いている……と言うのなら分かるんだけどね。
その後、城南も4点返して10対4となる。
残り時間僅かとなって、川浜の勝利は確実と思われたその時、城南の選手がノックオンと言う反則を犯し、それを見た川浜の選手たちは、みんなそれで試合終了だと思い込む。
ところが、鳴る筈のホイッスルが鳴らず、試合はそのまま続行され、川浜の一瞬の心理的空白に、城南が再びトライをねじ込んでしまう。
さらにゴールキックも曽根に見事に決められ、土壇場で10対10の同点に追いつかれる。
同時に審判のホイッスルが鳴り、そのまま試合は終わる。
結果は、引き分けで、どちらも優勝なのだが、当然、両チームの反応は対照的だった。
まるで勝ったように喜びを爆発させる城南と、茫然とした表情でその場に立ち尽くす川浜。

ラジオを聴いていた川浜ゆかりの人たちも、がっかりしていた。
……って、下田、試合終了まで滝沢の家にいたのかよ! ほんと、こいつが店を空けている間に、建物取り壊して更地にしといてやりたくなる。

平山「俺のミスです、ノックオンだと思って、止まってしまった。俺が悪かったんです」
清川「お前一人が悪いんじゃない。俺たちだって動かなかったんだーっ!」
試合後、案の定、ロッカールームはむさ苦しい野郎たちの涙と怒号が交じり合う大反省会会場に変貌する。

滝沢「やめろ」
平山「先生!」
滝沢「もういいからやめろ。そうだ、この試合に勝てなかったのはお前たち全員が土壇場で致命的なミスを犯したからだ。じゃあそのミスとは何だ? 技術か? 勇気か? それも違うな。お前たちは十分なファイトを持って戦った。じゃあ一体何が足りなかったんだ? 執着心だ」
平山「執着心?」
滝沢「そうだ、ボールが生きてる限りはそのボールを追いかけると言う執着心を忘れた為だお前たちはあの一瞬、敵がノックオンを犯したと思って動きを止めた。だが判定を下すのはレフェリーだ、お前たちじゃない。笛が鳴るまでは絶対に動きを止めるな、その鉄則を忘れた結果がこれなんだ! いいから泣くな!」

滝沢「お前たちは良い経験をした。ラグビーだけじゃない、お前たちがこれから生きてく上でこの経験は貴重な財産になる筈だ。ラグビーは人生そのものだ。ボールに対する執着心が勝利を呼ぶように、最後まで諦めない執着心が人生には必要なんだ。分かったな? それじゃ涙を拭け。お前たちの戦いはこれで終わったわけじゃない。まだ花園がある! 俺たちの最終目標は花園ラグビー場の全国大会だ。その日まで、涙はしまっとけ! いいか、泣くのは花園だ。花園で勝ってから泣け!」
選手「はいっ!」

滝沢の渾身の檄に、ケツアゴ平山もようやく爛々と眼を輝かせるのだった……と言うところで終わり。
……うーん、やっぱり、大木や光男がいないと、こう言うシーンもあまり面白くならないんだよね。
今更だけど、大木がいる間に全国大会優勝を成し遂げさせた方が良かったんじゃないのかなぁ?
さて次回、いよいよ、我らがダメ人間・下田大三郎に鉄槌が下されることになります。乞うご期待!