第47話「日本の童謡から 怪獣大将」(1974年2月22日)
のっけから、光太郎がタロウに変身して宇宙へ飛び出し、地球の近くの凍てつく小惑星上で、宇宙怪獣ゴルゴザウルス2世と戦う。
タロウは、怪獣の接近を知って、地球に辿り着く前に迎撃に出たのだ。
2世とあるのは、別の特撮番組「ミラーマン」に出て来たゴルゴザウルスの同種だかららしい。

タロウ、瞬間移動を繰り返すゴルゴザウルス2世に翻弄され、左腕を負傷してしまう。

それでも、目から特殊な光線を発して見えない怪獣の姿を暴き出すと、

テレポーテーション途中の怪獣に手裏剣のようなビームを投げ付け、

見事粉砕する。

ナレ「タロウは左の腕に大怪我をした上に、疲れ切ってしまった。ふるさとウルトラの国に行って休みたいと思った。しかし地球にも新しい危機の影が……早く帰ってZAT隊員東光太郎として働かなければならない。タロウの宇宙での戦いは孤独だった。誰も見ているものはない。誰も知らない戦いだった」
休む間もなく、タロウは地球に向かって飛んでいく。
このナレーションはややくどいが、この後のメインストーリーを効果的に描く為の一種の伏線となっている。

光太郎、左腕を三角巾で吊るしたまま、ZAT本部に顔を出す。
森山「
おはようございます! あら、どうしたの?」
光太郎「いや……」
毎朝、森山いずみ隊員が美しい声で挨拶してくれる職場、何気に最高ですね。

荒垣「東、その腕は何だ?」
光太郎「はい……、風呂場で滑って転んじゃって」
南原「ああ? 馬鹿だな、お前はぁ……」 光太郎「……」
光太郎の下手な言い訳を聞いて、南原が心底馬鹿にし切ったようにその顔をしげしげと眺める
光太郎、その場でタロウに変身して南原にストリウム光線を叩き込みたい衝動に駆られるが、なんとか自制する。
荒垣「ZAT隊員たるもの、何時如何なる時でも、ベストコンディションを保たねばならん!」 光太郎「はい、申し訳ありません」
そう説教する荒垣であったが、この後、スキーで足を骨折して撮影に参加できなくなったそうです。

荒垣たちはレーダーが捉えた東京西部近郊の微弱な怪獣反応への対応について協議していた。
南原「その辺りの住民を避難させましょうか」
荒垣「いや、怪獣の気配だけで住民を避難させるのは混乱を招くばかりだ。よし、警戒態勢に入る。全員で手分けして徹底的にパトロールだ!」
と言う訳で、光太郎は南原と一緒にウルフで地上をパトロールする。

夕方、車が人気のない採石場に入ったところ、砂山の上に立ってひとりで歌を歌っている少年の影があった。
光太郎「何でしょう、あの子?」
気になった二人は車を停めて外へ出る。

少年「お山の大将、月ひとつ~あとから来るもの夜ばかり~♪」
竹刀を肩に担いだベルボトムも粋な美少年であったが、沈んでいく夕陽の光を浴びて歌うその頬には、紛れもない涙が伝い落ちていた。
光太郎「おい、君、君ーっ! 待ちたまえ」
光太郎、にこやかに話しかけるが、少年は慌てて振り返りもせずに走り去ってしまう。
ちなみにこの歌が今回のモチーフになっている「お山の大将」と言う童謡(作詞・西條八十)なのだが、管理人、生まれてこの方一度も聴いたことがない。美空ひばりも同じ歌詞の曲を歌っているようだが……。
それはさておき、ZATの空と陸からのパトロールは夜を徹して行われたが、何の成果もないまま朝を迎える。
南原「ふぁ、ああ……すべて世はこともなし、だなぁ」
光太郎「ええ」
ウルフが小学校の前を通り掛かると、健一がグラウンドから路上へ出たサッカーボールを蹴り返しているところだった。
光太郎、サッカーをしている子供たちの中に、あの「お山の大将」を歌っていた少年の姿を認める。

光太郎「あの子だ! やっぱりこの学校の子だったのか」
健一「沢口竜一君くん、知ってるの?」
光太郎「うん」
南原「昨日泣いてたと言う子かい?」
健一は、竜一くんが泣いたりするもんかと、光太郎の話を真っ向から否定する。

竜一少年、他の子供たちより背が高く、体格も立派で、光太郎たちの見ている前で鮮やかなゴールを決め、まさに「鶏群の一鶴」と言う感じだった。

健一「沢口君にボールが行けば、もう勝負あったさ。それに沢口君は勉強だって一番だし」
南原「でもぉ、泣くことだってあるだろう」
健一「絶対無いよ、先生に叱られてクラス中が泣いた時も、沢口君だけは泣かなかったし……」

南原「しかし、あんなところでひとりで泣くような弱虫には見えないじゃないか」
光太郎「弱虫じゃないから泣いたんでしょう。僕には分かります。誰にもパスしないでゴールまで突進していく子、勉強も一番、先生に叱られてもひとりだけ泣かなかった」
南原「そうか」
光太郎(食い気味に)「そうですよ! そう言う子だから、あんなところでこっそり泣いていたんでしょう」
放課後、講堂で剣道のクラブ活動に出ていた竜一だったが、そこでも他の生徒とは一線を画し、ひとり黙々と素振りを繰り返していた。

顧問「沢口、少し打ち合ったらどうかね」
竜一「練習にならないから良いです」
顧問「練習にならないからって、自分が強過ぎるって意味か? 慢心しちゃいかんよ。先生が相手になってやる。さぁ来なさい」
顧問の教師は激した口ぶりで言うと、無理やり竜一に打ち合いをさせる。
が、竜一はその顧問すら負かすと、一礼してスタスタと講堂から立ち去ってしまう。

竜一が校舎に入ろうとした時、校舎のそばの花壇の前で、左足にギプスを付けて、松葉杖を突いた女の子が「キャーッ、助けてー、やだー、誰か来てーっ!」と、けたたましい悲鳴を上げながら、その場に尻餅をついていた。
竜一「どうしたんだい?」
礼子「あれ、あれ……」
指差す方を見れば、猫の大きさほどのトカゲとも恐竜ともつかぬ、赤い一つ目の生き物が花壇の中から出て来て、しきりと鳴き声を上げて騒いでいるではないか。
竜一、それを竹刀でバシバシ叩いて殺すが、花壇にはびっしり卵が並んでいて、その中から次々と殻を破って同じ生物が這い出ようとする。

竜一は、血に狂ったように竹刀を何度も何度も振り下ろし、卵を叩き割り、怪物を叩き殺す。
健一「沢口くん、やめろよ、殺さない方がいいよ」
竜一「構やしないんだ!」
心優しい健一が走ってきて殺戮を止めさせようとするが、結局竜一は最後の一匹まで惨たらしく殺し尽くす。
竜一「一昨日は暦の上では啓蟄と言う日だろう。冬篭りした虫や蛙が地面に出てくる日さ」
健一「ふぅーん」
竜一、少し乱れた息を整えると、平然と「啓蟄」の一言で片付けてしまう。

竜一、その女の子、向井礼子の服の汚れを優しく払い落とすと、立ち上がるのを手助けしてやる。

子供「お、沢口君が女の子に親切にしたぞ」
子供「珍しい~」
健一「沢口君は、向井礼子さんが好きらしいぞ」
それを離れたところからありったけの羨望を込めて冷やかしている子供たち。
この画像に付けるタイトルは、
「モテない奴ら」しか思い浮かばない。長生きしろよ!
それにしても、松葉杖を突いてるツインテールの女の子って、74年にしては相当攻めてるなぁ。
ところが、礼子が立ち上がった瞬間、激しく地面が揺れて、

地が裂け、地底から怪獣の背びれのようなものが浮き上がり、校舎を真っ二つに割ってしまう。

ついで、その頭部と思われる部位が、グラウンドの真ん中から出て来る。
つまり、首の長い怪獣が地中に半ば埋まっていて、胴体が校舎の下、首がグラウンドに位置しているのだ。
当然、学校は逃げ惑う教師や生徒たちの悲鳴でパニック状態となる。教師は子供たちを敷地内から出そうとするが、守備範囲の広い怪獣の頭部や尻尾に邪魔され、講堂への避難を余儀なくされる。
すぐにZATの戦闘機が飛来するが、避難している教師や子供たちへ累が及ぶのを恐れ、なかなか本腰を入れて攻撃できず、一旦引き揚げる。

健一「おい、ZATが逃げちゃったぞ。もう僕らダメだ!」
講堂に閉じ込められた子供たち、助けが来ないと知って恐慌を来し、互いに絶望的な視線を見交わす。

礼子「私、足を怪我してるから逃げられないわ。一番先に食べられちゃうわ~」
竜一「向井さん、泣くなよ、僕は死んでも君を守るから。安心してろよ」
礼子「本当?」
礼子の問いに、竜一は端正な顔で頷いてみせるのだった。
その後、竜一はあの怪獣は冬眠の途中だろうから、また居眠りを始めるに違いない。その時が逃げるチャンスだとみんなに説明する。

果たして、怪獣……ゲランと言うのだが、尻尾も首も引っ込めて、いびきを掻きながら眠りに落ちる。
子供たちは抜き足差し足、ゲランを起こさないように静かに講堂を出て渡り廊下を歩き始める。

竜一は親切に、礼子を背中におぶってやっていたのだが、
礼子「早くしてよう! しっかりしてよ! 先生におぶって貰った方が良かったわ!」 竜一(このアマ……)
早くも礼子、生まれついての性悪女の本性を現わす。

おまけに、その松葉杖をバケツに当てて音を立てた上、竜一を転倒させてしまう。
しかし、転んだ瞬間の礼子、笑っているようにしか見えない。
その代わり、割と良い感じのパン チラが発生しているので、ロリコン戦士の方は要チェックです。
その物音でゲランが目を覚まし、再び暴れ出したので、みんなは講堂に引き返す羽目になる。

子供「沢口君が悪いんだ!」
健一「そうだよ、沢口君があの怪獣の卵を叩き潰したから、親が怒って出て来たんだ!」
子供「さっきだって、バケツに躓いて音を立てたじゃないかーっ」
ひとまず落ち着くと、子供の間から澎湃として竜一に対する非難の声が上がりだす。
怪獣の子供を殺したのも元はと言えば礼子を助ける為だったし、、バケツに躓いたのも礼子の松葉杖だったのだが、無論、根っからの性悪女である礼子(註・あくまで管理人の偏見です)は、こんな時でも竜一を庇おうとみんなの矢面に立つようなことはしない。
それどころか、尻馬に乗って、
「そうよ、沢口君が悪いのよ。自分ばかり強くて勉強が出来ると思ってみんなのこと考えないからこんなことになるのよ」と、自ら罵声を浴びせる始末であった。

みんなからの不当とも言える非難を背中で受けて、悔しそうに唇を噛む竜一だったが、さすがに「お山の大将」を自任しているだけあって、涙ひとつこぼさず耐える。
……ま、とりあえず礼子の頭に竹刀を叩き込みたいところであったろうが。
と、何かを思いついたように、急に講堂から出て行く竜一。
ほどなく、顧問が子供たちに見せていた日本刀を手にした竜一の姿が、講堂の横手の倉庫から現われる。
そう、その日本刀でひと思いに憎たらしい礼子を……じゃなくて、無謀にも、ゲランに斬りかかろうと言うのだ。

刀を抜き、気合を発しながらゲラン目掛けて突進し、その目にぶすりと突き立てる。さらに、地面に刀を逆様に立てて後退し、追いかけてきたゲランに足を踏み抜かせる。
その勇気と行動力は、確かに並みの子供とは違っていたが、さすがに怪獣を倒すのは無理であった。
竜一がゲランに迫られ食い殺されそうになった時、捨て身でグラウンドに降りていた光太郎がタロウに変身し、バトル開始となる。

ゲランが口から巨大な炎を吐き、
タロウ「ウオッチッチッ!」 完全によけ損ねたタロウの尻に火が付く。
スタッフ、大笑い。

他にも、炎が直撃して校舎が爆発するなど、学校を舞台にしたミニチュアセットの作り込みの素晴らしさと相俟って、なかなか見応えのあるシーンとなっている。
しかし、いくらなんでも校舎の数が多過ぎるような気もするが……。
しばし激闘が続くが、

ほどなく、タロウはゲランが自分の産んだ卵を守る為に戦っていたことに気付く。
タロウ、そんなゲランを殺すに偲びず、

卵と一緒にゲランを凍らせて、そのまま宇宙へ破棄すると言う、いまいち釈然としない処置を下すのだった。
ナレーターは、「長い長い冬眠を続けさせることにした……」とあっさり片付けているが、これって、ひと思いに殺すより、よっぽど残酷な処刑方法ではないのか?
彼らが平和に暮らしていける星へ運んでやるとか、そう言うアフターフォローが欲しかった。

ほとんどありえない体験をした健一たちが、三々五々帰宅している。
子供「カッコイイ~」
健一「向井さん、竜ちゃんと一緒に帰るんじゃないの?」
礼子「そんなことないわ」
一時、非難の的となった竜一であったが、事件が終わった後では、我が身を捨てての勇敢な行為がますますそのモテ株を上げたようであった。

子供「でも、竜ちゃんカッコイイじゃないか」
礼子「ダメよ、あんな人をハラハラさせるような人は!」 さっきはあんなこと言ってたくせに、今度はまるっきり彼女気取りのコーマン発言をかます礼子。
うむ、成長したらどんなビッチになるか、今から楽しみな逸材である。
竜一は彼らの会話など意に介さず、真っ直ぐ前を向いて帰っていく。

帰途、光太郎が最初に見掛けた同じ砂山に上がり、「お山の大将」を歌おうとした時、背後から
変な人たちが「お山の大将」を合唱しながら近付いてくる。
今回、クソの役にも立たなかったZATの皆さんです!

ZAT「赤い夕陽の丘の上、お山の大将、おれひとり~♪」
森山隊員のストッキングに包まれた細い脚、最高ですね。
光太郎「竜一君」
竜一「僕はタロウが好きさ、いつもたったひとりで戦うもんね」
光太郎「だけど、たまには人の前で大声で泣いてみるのもさっぱりするものだぜ」
無論、光太郎は孤高な道を行く竜一少年の姿に、冒頭の戦いのように時には誰にも知られず孤独な戦いに身を投じなければならない自分自身の姿を重ねて見ていたのだ。

しかし、竜一は気丈に笑って見せると、「さよなら!」と、元気に駆け下りていく。
森山隊員のストッキングに包まれた細い脚、最高ですね。……あ、さっきも言ったか。

荒垣「頑固な子だ。いや、男だな」
森山隊員のパンツが見えそうで見えない絶妙なアングルが最高なのです!