第19回「潜れコセイダー 水中の決死圏」(1978年11月10日)
白亜紀にて、マリとモリィがそれぞれのメカを操り、上空から定期パトロールを行っていた。
その報告にも何の異常もなく、コセイドン号の船内ものんびりしたムードに包まれていた。

アルタシヤ「はい、隊長」
バンノ「いやー、ありがとう、コーヒータイムにしようかぁ」
ビックラジィー「平和じゃ、平和じゃ」
ゴウ「ほんとに静かですね」
テツ「大いに結構ですね」
アルタシヤ「このまま続いてくれるといいわね」
バンノ「そうだなぁ、もう21世紀もご無沙汰だからなぁ」
だが、パンノたちの願いも空しく、そんなことを言っているそばから、マリとモリィがミドリ沼上空で奇怪な出来事に巻き込まれる。
ミドリ沼の水面で、怪しい赤い光が発光しているのを目にしたマリとモリィ、低空飛行で沼に接近するが、

彼らの行動を妨害するかのように、急に沼から乱気流……と言うより、竜巻のような強烈な突風が沼の水と共に吹き上げてきて、ファイタス2号とハクアス2号の機体を巻き込んで激しく揺らす。
二人はなんとかその気流から抜け出して、近くの森の中に緊急着陸する。
マシンから降りて森の中で合流した二人、荒い息をつきながら互いの無事を確認する。
マリ「モリィ!」
モリィ「もう、駄目かと思っちゃったよ」
マリ「あたしもぉ、びっくりしたぁ」
モリィ「でも、変だよな、ミドリ沼の上空には乱気流なんかなかった筈だぞ」
上空を見ても、とても竜巻の起こるような天候には見えず、二人は首を捻る。
彼らは徒歩でミドリ沼に行き、タイムGメンとして調査を開始する。
ミドリ沼、その名の通り、緑豊かな美しい沼だったのだが、今彼らの眼前に広がっているのは、瘴気のような靄が立ち込め、水辺には恐竜の白骨死体が散乱し、まるで別の沼のように荒廃した風景であった。

モリィ「薄気味悪くなっちゃった」
マリ「何よ、モリィ、男の癖にだらしないわよ!」

不穏な雰囲気に怖気づくモリィを一喝した後の、この「ぶにっ」と言う口元が可愛いのである!

マリ「モリィーっ!」
モリィ「うわわわわー」
だが、その直後、マリは水面から顔を出した得体の知れない怪物の頭部を見て悲鳴を上げ、身も世もなくモリィと抱き合う。
蛾次郎さんが羨ましい……。
でも、マリがモリィのことを好きでいつも追い掛け回しているが、モリィは女嫌いでいつも逃げ回っていると言う初期の設定がその後も存在していたら、このシーンなんかもめちゃくちゃ面白いドタバタになっていただろうにと、勿体無い気がする。
特撮番組ではよくあることだが、この「路線変更」と言う奴、ほぼ100パーセントの確率でその作品の価値を下落させている。自分の知る限り、例外は「イナズマン」のハード路線への変更くらいかな。

二人がもう一度水面を見ると、怪物は襲ってくることもなく、そのまま水中に潜ってしまう。
二人は改めて絶叫すると(なんで?)、脱兎のごとく森の方へ逃げ去っていく。
バンノは二人から報告を受けると、直ちにファイタス1号、ハクアス1号をミドリ沼へ急行させる。

ゴウとテツのファイタス1号が沼の周辺を探索している間に、アルタシヤとビックラジィーのハクアス1号は水中探知機を水の中に投下して、水中の調査を開始する。
アルタシヤ「金属の反応する音だわ」
ビックラジィー「沼の中に金属とは、はてー?」
アルタシヤ「水中レーダーで詳しく調べてみるのよ!」

なおも探査を続ける二人だったが、水底から巨大な触手のような物が伸びてきて探知機に巻きつき、電気ショックで破壊してしまう。

続けて、触手は水辺に停止していたハクアス1号の機体に巻きつき、一気に水中に引きずり込もうとする。

アルタシヤからSOSを受けたファイタス1号がすぐ駆けつけて、マグネットロープでハクアス1号を引っ張り出そうとするが、触手の力は凄まじく、ファイタス1号の出力では、ハクアス1号を助け出すどころか、ファイタス1号まで道連れにされそうな状況だった。

テツ「これ以上無理だ。爆発するぞ!」
ゴウ「じゃあどうすりゃいいんだ!」
テツ「……マグネットロープを切ろう。それしかない」
ゴウ「なんだとぉ」
テツ「損害を最小限にとどめる。これが戦いの鉄則だ。アルタシヤ、許してくれ」
ゴウ「やめろ!」
このまま2機とも引き摺り込まれるよりはと、心を鬼にしてマグネットロープを切ろうとするテツと、そんなことをするくらいなら、このまま一緒に水中に沈んだ方がマシだと言うゴウ、二人の性格の違いが明確に描かれた良いシーンだと思う。
だが、二人が睨み合っているうちに、当のアルタシヤがそのことに気付き、自らマグネットロープを外して、ファイタス1号が巻き添えになるのを防ぐ。支えをなくしたハクアス1号は滑り落ちるように水中に沈んでいく。
水中を物凄い勢いで落ちて行くハクアス1号の中で、アルタシヤはあえなく気絶し、水底の岩をくり抜いて作られたゴドメスの秘密基地の中に吸い込まれる。
無論、ファイタス1号にも潜行能力はなく、ゴウが単身水に飛び込もうとするが、さきほどマリたちが見た怪魚が、半魚人のような全身を現して立ちはだかり、激しくゴウを攻撃してくる。
ゴウ、やむなくファイタス1号に引き返す。
CM後、ゴウとテツはコセイドン号に戻ってバンノに報告している。

テツ「その後、水中レーダーで探したんですが、ハクアス1号は何処にも」
バンノ「そうか」
モリィ「多分、沼の底の土の中に飲み込まれてしまったんじゃないかと……そうなるととても助かりませんねえ」
バンノ「おい、モリィ」
マリ「アルタシヤが……? ああっ」
モリィの無神経な発言に、マリは思わず両手で顔を覆って泣き出す。

ゴウ「馬鹿言え、アルタシヤたちが死んでたまるか! 絶対に生きてる筈だ」
テツ「ゴウ、我々だって信じたい。だが何の連絡もない以上、最悪の事態も……」
ゴウ「テツ!」
バンノ「ミドリ沼には何か秘密が隠されているのかも知れんぞ」
モリィ「だから、空からの偵察を防ぐ為に乱気流起こしたんですね」
バンノ「沼の底には、ゴドメス星人の秘密基地があるのかも知れんぞ」
しかし、潜水艦のようなマシンのないコセイドン隊には、それが分かっていてもどうすることも出来ない。

そのアルタシヤ、ビックラジィーと一緒に鎖で縛られて、ハクアス1号に乗せられたまま、基地の中に監禁されていた。
アルタシヤ「じい、じい」
ビックラジィー「姫、しっかりするのですぞ」
こういうシーンのお約束だが、アルタシヤの体に巻きつく二本の鎖は、慎重にアルタシヤの乳首付近を避けて、紳士的な軌道を描いている。

と、そこへ、高笑いを響かせながら、ジェリコが入ってくる。

アルタシヤ「何者です?」

ジェリコ「ゴドメス軍司令、ジェリコだ! この秘密基地を足がかりにして白亜紀を手中に収めて見せるぞ」

ジェリコ「なははははは……
って、おい、まだ喋ってる途中でしょうがあっ!」
敢えて言う必要はないと思うが、途中から嘘である。
アルタシヤ(自己紹介に来たのね……) 敢えて言う必要はないと思うが、全部嘘である。
でも、実際、このシーンのジェリコ司令はほんとに自己紹介に来ただけとしか思えない。
それに、人質にしたアルタシヤを活用しようともせず、折角鹵獲したハクアス1号を放置しているなど、今回のジェリコ司令官の行動には多くの疑問符が付く。
だいたい、沼の底にある基地を侵略拠点にするなど、不便でしょうがないだろう。
結局、ジェリコ司令官が無能だったと言うことか。
さて、コセイドン号ではハクアス1号救出の為に討議が重ねられていたが、最後は予定調和的に、ゴウが「自分がコセイダーになって敵地に乗り込みませう」と言うことになる。
ま、それは良いんだけど、次の20回でも似たような展開になるのは芸がない。

で、色々あって、コセイダーはミドリ沼の中に飛び込み、迎撃に出た恐獣ピラギアと一騎打ちになる。
しかし、水中での戦いは初めてのコセイダーは、当然のごとく苦戦に陥る。

ただ、ここでナレーターが「コセイダーは水の圧力に負けて……」などと、その原因を説明しているのがちょっと解せない。
だって、圧力も何も、コセイダーは酸素ボンベを持ってないのだから、とっくの昔に呼吸が続かなくなっている筈だからである。
この辺は、もうちょっとリアルに描いて欲しかったところだ。
コセイダー、絶体絶命のピンチに追い込まれるが、「気合」で乗り切り、遂にピラギアを撃破する。
続いて基地の中に入り込み、ゴドメス兵やジェリコと切り結ぶコセイダー。

ジェリコは、ついさっき「白亜紀を手中に収めて見せる」などと豪語していたのが情けなくなるほどに弱く、エネルギーを消耗したコセイダーにあっさり倒されてしまう。
ジェリコ「ふう……あと、あと5秒でお前も道連れだ!」
それでも、瀕死の体で自爆スイッチを入れるという、「悪の組織」の大幹部としては由緒正しい行動に出るが、
コセイダー「時間よー、止まれっ!」 コセイダーが特撮ヒーロー界隈でも有数の卑怯技を持っていることを度忘れすると言うチョンボをしでかす。
そう、コセイダー相手にタイマーは禁物なのである。
よって、ここは、「スイッチ押したら即座に爆破」が正しい選択であった。
コセイダーは時間を止めている間にハクアス1号を発見し、その操縦席に滑り込む。そして時間を再び動かす。
そう、基地が爆発する衝撃で、ハクアス1号を外へ脱出させようと言う作戦なのだ。

ぶくぶく泡立つ水面を見ながら、心配そうにミドリ沼を見守っているマリ。

基地が爆発したのを見て、思わず緊張がほぐれるマリ。

最後、無事にハクアス1号が浮上してきたのを見て、満面の笑みを弾けさせるマリ。
……以上、表情豊かなマリのアップでした。
いやー、なんか最近、アルタシヤよりマリの方が可愛く思えるんだよね。

事件解決後、すっかり元通り奇麗になったミドリ沼のほとりでしばしの息抜きをしているバンノたち。

みんなで無理矢理アルタシヤをトリケラトプス(小)の背中に乗っける。
アルタシヤ「じい、助けてぇー、あーっ!」

アルタシヤ「怖いー、おっこちそーっ! あああーっ!」
アルタシヤの村野さんも、マリの川崎さんも素で楽しそうなのが実に微笑ましい。

最後は、アルタシヤの飛び切りキュートな笑顔を貼って終わりにしましょう。
……と言う訳で、ストーリーは平凡だが、女の子たちの魅力が存分に味わえる一本でした。