第27話「裏切者依田!その人は女教師」(1987年6月25日)
ウェットスーツを着た般若たち三人の忍びが、海から港に潜入し、とある倉庫への奇襲を試みているシーンからスタート。
ただし、これは2年前の回想シーンである。

般若「ここが、影のアジトだというのか?」
矢作「美代が掴んだ情報だ、間違いない。行くぞ!」

だが、二人が隠れ場所から一歩進み出ると、その場に残った般若は「その必要はない!」と、逆に彼らに対して攻撃を仕掛けてくる。
美代「はにゃあ!」 般若「違う! 般若だ!」 美代「あ、ごめんなさい」
じゃなくて、
美代「般若!」
矢作「貴様、なんのつもりだ。裏切る気か? お前、まさか影の忍び側に付いたのでは?」
般若「……」
美代「はにゃあ!」 般若「だから、般若だっつってんだろうがっ!」 美代「あ、ごめんなさい、つい……」
じゃなくて、
美代「般若!」
般若「無駄だ!」
般若が本気なのを見て取ると、二人も本気で立ち向かってくる。しかし、風魔鬼組の頭である般若の実力は彼らより遥かに上で、勝負はあっという間に般若の勝利に終わる。

美代「般若、さよなら、私の愛した人……」
般若に斬られた美代は、そうつぶやいて海へ落ちる。
般若は水中に漂う美代の遺体に、一輪の赤いバラを捧げるのだった。
OPタイトル後、

女子「朝ごはんちゃんと食べてきたー?」
女子「今度先生のところに面倒見に行って上げる」
一転、星流学園の生徒たちの平和な登校風景が繰り広げられる。
般若こと依田先生は意外と女子に人気があるようで、今朝も三人組の女子生徒にまとわりつかれて、迷惑そうな顔をしていた。
依田「およしなさいって! 困りましたね、おっほっほっほっ……こらこらこら」

由真「あーあー、鼻の下伸ばしちゃって、ざまーねーよな」
結花「あらっ? ジェラシー?」
由真「だぁれが? あんなニヤケ教師、冗談じゃねえよ」
そんな依田の後ろ姿を見ながら横並びで歩いている風間三姉妹。

唯「とかなんとか言って由真姉ちゃん、依田のセンコーって良い男だよねっちゅうて、お風呂でうっとりしちょったじゃないねー」
由真「誰が? 何時だよ? いい加減なこと言うなよなー」
唯「ゆっちょったもんね、わち、聞いたモン! よっ! この色気盛り!」
朝っぱらから姉を楽しそうにからかう元気娘・唯。
それにしても、由真と唯が一緒に家のお風呂に入っているところを想像してみたまえ。
誰だって
「ああ、今度生まれてくる時は風間家の浴槽になりたい!」と願わずにはいられないだろう。

だが、そんな明るいムードも、突然現れた若い女性教師の出現によって一変する。
その女教師は結花たちを足早に追い越していくと、校門のところで依田に真っ直ぐな目を向けて挨拶する。
ともみ「山田ともみです、代用教師として赴任して参りました。よろしくお願いします」
依田「依田です」
その顔を見て、依田もニヤケ顔を俄かに引き締める。
しばし無言で見詰めあった後、ともみは一礼して学校の中へ入って行く。
初対面の筈の二人が顔見知りなのは明らかであった。その様子を見ていた唯たちも、当然、彼女が誰で、依田とどんな関係なのだろうと好奇心をそそられていた。
なお、ともみを演じるのは山本博美さんと言って、CanCanと言うアイドルグループでアイドルやってた人らしいが……うーん、全然知らんぞ。

放課後、依田がひとりで帰宅中(高校教師が、生徒たちと一緒にさっさと帰っちゃうと言うのはどう考えてもありえないのだが……)、公園に差し掛かったところで、急に霧が立ち込めてくる。
ま、霧と言うより、近所のおっちゃんが庭でゴミ燃やしているようにしか見えないのだが、ここは霧が出ていると言うことにして上げてつかあさい。
と、霧の中から数本の苦無が飛んでくる。依田はそれをカバンで受けると、素早く物陰に移動する。

見れば、さっきのともみと言う女性教師が、忍び装束の姿で幾人にも分裂して、こちらを攻撃する姿勢を見せていた。

依田「霧隠れ分身(うつせみ)の術、やはり、ともみ、何故だ?」
再び苦無が依田目掛けて飛んでくる。依田、それをかわしながら藤棚の柱づたいに相手との距離を詰める。
依田「やめろ! 姿を現せ! ワケを言えーっ!」 敵に狙われている癖に、注文の多い依田さん。
ともみ「そんなところに隠れてないで、出て来て戦ったらどうなの? 姉さんの仇!」
依田「……」
ともみ、この場で一気にカタをつけるつもりだったらしいが、ちょうどそこへ唯たち三姉妹がやってきたので、一旦退却する。

唯「今、新任の山田先生が……」
依田「こんなところで道草せず、さっさとおうちに帰りなさい」
唯「ほんでも、いま、襲われちょったじゃろう?」
依田「あなたたちにはカンケーありません」
依田、何事もなかったように振る舞い、彼女たちをこの件に関わらせまいとする。

それでも、しつこく結花たちが詮索しようとすると、
依田「
おだまんなさい! 子供が口を出していいことと、バツなことがあります。これはそのバツのことの方です。
早く帰って勉強なさい!」
般若と言うより依田先生として、いつになく声を荒げて叱り付けると、さっさと行ってしまう。
結花「完全に子供扱いね!」
由真「ったく、何処見てんだよ、花の17才は少女卒業で、乙女街道まっしぐらなのに!」
諦め切れない三人、今度は直接ともみから話を聞こうと、アパートでともみを待ち伏せする。

由真「ちょっとお聞きしたいことがありましてねえ」
ともみ「あなたたちは!」
買い物帰りのともみをアパートの入り口で取り囲み、それぞれ得意の武器を取り出して構える三人姉妹。
客観的に見ると、
完全な不審者であった。
三人は問答無用でともみに攻撃を仕掛ける。ともみも仕込み杖のようなものを取り出して防戦する。

ともみ「あんたたち、忍び?」

結花「風魔小太郎が娘、風間結花!」
由真「同じく、風間由真!」
唯「同じく、風間唯!」
由真「影の忍びと戦うことを宿命付けられたスケバン三姉妹とはあたしらのことさ!」
ともみ「……ぷっ」 由真「なんで笑う!?」 結花&唯(そりゃ笑われるよね。普通……)
じゃなくて、
ともみ「ま、待って!」
唯「どうやって依田先生を風魔の忍びと嗅ぎつけてきたんか、それをはかしちゃる!」
三人は再びともみに向かってそれぞれの武器を投げ付けるが、般若の弟子(後述)だけあって、ともみは唯たちを軽くあしらう。

ともみ「あんたたちが小太郎様の?」
唯「父ちゃんの名前を
気安く呼ぶなー」
いや、ちゃんと「様」つけてますがな……。
ともみ「勘違いしないで、私は影の忍びじゃない! 女教師・山田とは仮の姿、本名、妻風ともみ、風魔一族、妻風十郎太の娘!」
ともみ、自ら正体を明かすとともに、「依田は影の忍びに内通している裏切り者なの」だと説明する。
ともみ「調べてみることね、暗闇指令配下、風魔鬼組・妻風美代が死んだいきさつを! 姉は依田に殺されたのよ! 二人は愛し合った許婚同士だったのに」
ここで、かつて、彼ら姉妹が依田に忍びの訓練を受けていたシーンが流れる。

苦無の投げ方を指導する名目で、堂々と美代の体を触る依田先生。
その後、ともみは険しい目付きで三人を睨み付けると、アパートの中に消える。
三人は、依田が……般若が裏切り者などとはとても信じられなかったが、一方で、ともみの真剣な眼差しを見ると、「もしかして……」と、心が揺れ動くのを抑えられなかった。
それにしても、今更だが、なんで風魔の忍びが暗闇指令の配下になってるんだろう?

唯は、じっとしていられず、暗闇指令にじかに会いに行き、ともみのことを話し、妻風美代なる女性のことを問い質す。
暗闇指令「妻風ともみが、今になって依田の前に姿を現したと言うのか?」
唯「やっぱり本当なんか? なぁ、
暗闇さん、教えちくり。般若は本当に恋人を殺したんか?」
暗闇指令(暗闇さん、て……)

暗闇指令「唯、その話を真に受けるな。妻風ともみは何かの理由でデマを飛ばしているか、さもなければ誤解してるんだ。妻風美代の件に関してお前たちはもう関わり合うな。すべては過ぎ去った過去だ!」
唯「そうはいかんわい、般若は大事なパートナーじゃ。信頼関係が崩れたら、もう一緒には戦えん!」
唯はなおも食い下がるが、
暗闇司令「妻風美代は任務遂行中に敵の手にかかって倒された、言えることはそれだけだ」
唯「それだけじゃ何も分からん!」
暗闇司令「くどい!」
頑なに美代の死について詳説することを拒む暗闇さんであったが、その態度が、何よりも雄弁に事件の裏に何か隠された事情が伏在していることを唯に物語っていた。

さて、依田、公園の橋の上から、美代の面影を思い浮かべながら、あの時のように赤いバラを池に投じる。
少なくとも、依田が美代のことを愛していたことは間違いないようだ。
その足で美代の眠る広大な墓地へ行くと、案の定と言うべきか、ともみが姉の墓の前に立っていた。

ともみ「姉が死んで以来、一度でもここへ来てくれましたか?」
依田「いや、初めてだ」
ともみ「私たち姉妹はあれほどあなたを信じていたのに!」
依田「大人になったな、すっかり奇麗になって……ともみ」

ともみ「兄貴面はよして!」
依田「私は今でもお前の兄貴のつもりだ」
ともみ「裏切り者、私はあなたを殺す!」
依田「どういう意味だ?」
ともみ「あなたは影に内通して、姉と矢作を殺したんだわ! 答えて、何故、許婚だった姉を殺したのか、あなた自身の口から聞きたいのよ!」
依田「……」
ともみ「答えてよ!
答えなさい!」
シリアスなシーンの筈なんだけど、最後の「答えなさい!」が、まるで教師が生徒に言ってるみたいな感じで、ちょっと笑ってしまう。文字では伝わらないが。
依田「お前がそう信じるのなら、それでも良い。だが、ともみ、私は姉さんを裏切ってはいない」
ともみ「嘘つき!」
依田「姉さんは任務遂行中に敵に倒された。それがたったひとつの真実だ」
依田、表情を変えず、淡々と説明する。
ともみ「騙されないわ! 姉を殺したのはあなたです。私と戦いなさい」
依田「何と言われようと、私はお前と戦う気はない」
ともみ、仕込み杖を抜いて依田の顔の前に突きつけたり、苦無を顔のすれすれに投げたりするが、依田はそれをかわそうともせず、まじろぎもせずに立っているだけ。

ともみ「戦ってよ! どうして戦わないの? 姉さんの時みたいに私を殺したらどうなのよ? 戦って!」
依田「……」
ともみ「姉さんは殺したのに、どうして私は殺さないの?」
依田「私は姉さんを殺してはいない」
ともみ「良いわ、あなたがその気なら……」
ともみ、遂に苦無を依田の胸と左足に突き立てる。

ともみ「般若、覚悟!」
その場に膝を付く依田に向かって、ともみが勢い良く斬りかかる。

依田はその期に及んでも一切よけようとも反撃しようともせず、あるいは、ともみに殺されても良いとさえ考えていたのかもしれない。
だが、ともみの剣は、依田の首筋でピタリと止まる。
依田は、ともみの目に涙が浮かんでいるのに気付く。

ともみ「ダメだわー! 姉さん、殺せないわ!」
ともみ、姉の墓に向かって一声投げると、依田を置いてそのまま走り去る。
依田は傷口を押さえてその場に座り込むと、「美代、どうすれば良い?」と、今は亡き婚約者に向かって問い掛けるのだった。
美代(知らんがな……)
ともみが悄然とアパートに帰ってくると、入り口で再び唯が待っていた。唯は、一緒に依田に会いに行こうと訴えるが、突然現れた男に当て身を喰らい、気を失ってともみの部屋に運び込まれる。
その男は、最初に依田と一緒にいた矢作と言うエージェントだった。

矢作「墓地での依田との戦い、見ていたぞ。何故姉の仇を討たない?」
ともみ「わからない! 心のどこかであの人が姉さんを殺したことを信じきれないのかも知れない!」
矢作「しっかりしろ、ともみさん、2年前、依田の裏切りにあって美代さんを殺され、俺は重傷を負った。しかも奴が暗闇指令に嘘の報告をして平然と組織に残ってるのを知った。だから俺はじっと身を伏せて生きてきたんだ。ともみさん、今度こそ姉さんの仇を討つんだ!」
唯、縛られた状態で彼らの会話をすっかり聞いてしまい、ともみがこの矢作と言う男に焚きつけられていることを知る。
その後、ともみは唯を人質にして再び依田を墓地に呼び出す。
依田「そんなに俺が信じられないのなら俺を倒し、お前の気の済むようにするが良い。だがその前に、唯は放せ!」
ともみ「いいえ、その手には乗らない。勝負が済んでから自分の手で取りなさい」
依田「ともみ! そこまで腐っていたのか!」
ともみ「うるさい、姉を殺したのはあなたよ!」
唯を人質に取られては、依田も本気で戦わざるを得なくなる。

が、ともみは依田自身が鍛え上げた忍びであり、当然、その能力は極めて高い。しかも依田はまともに戦える体ではなく、苦戦を強いられる。
ちなみに、山本博美さん、依田の萩原さんと同じくらい(あるいはそれ以上)の背なんだよね。

と、ここで唯が自力で縄を解いて猿轡を外し、「ともみさん、騙されたらいかん! あんたを騙しちょるのは、依田先生じゃない! あんたを唆し、依田先生を倒そうとしちょるのは矢作じゃ! あんたは利用されちょるだけなんじゃ!」と、渾身の力で叫ぶ。
唯「あんた、ほんとは依田先生のことを信じちょるんじゃ! あんたは依田先生のことが好きなんじゃろう! ともみさん、目をさまさんかい! 自分の心の目で見るんじゃ!」
唯の言葉でやっと自分の気持ちに気付いたともみ、戦うのをやめて、「お兄ちゃん……」と呼びながら依田の前に出て来る。

が、墓地にはその矢作もいて、事破れたと見て、いきなり銃を依田目掛けて撃つ。
忍びが銃を撃つなよ……と思ったが、彼については暗闇指令のエージェントとしか言われていないので、忍びではなかったのだろう。

で、お約束の展開だが、咄嗟にともみは依田の前に飛び出し、その銃弾を代わりに浴びる。
矢作は、いましめを解いた唯にあっさり倒される。
依田「ともみ、ともみ!」
ともみ「聞かせて、お兄ちゃんは姉さんを?」
依田「殺してはいないよ。姉さんは敵の手で……」
ともみ「お兄……ちゃん……」
ともみ、依田の言葉を聞くと、安心したように息を引き取る。

依田、ともみの頭をいとおしそうに抱き締めてやる。
依田「そうだ、それがたったひとつの真実だ……」
全てが終わってから、改めて依田、三姉妹が美代とともみの墓を訪れ、手を合わせている。

依田「ともみには話せなかったが、お前たちに聞いて貰おう。2年前、暗闇指令配下のエージェントの正体が敵側に次々に知れ、闇討ちに遭い倒された。内部にスパイがいることは確かだった……」
ここで漸く、依田の口から真実が語られる。
依田は暗闇指令からそのスパイを見付け出すよう命じられたが、スパイはあの矢作、そして寝返って矢作の仲間になっていた美代だったことが判明する。
冒頭の襲撃シーンは、依田が二人を誘い出して倒す為に用意した罠だったのだ。
しかし、美代が寝返った理由について依田が、
「奴に拷問を受け、苦痛に耐えかねて裏切った」と説明してるのは、ちょっとどころか、大いに納得できない。
普通のアクションドラマなら、美代が矢作にドラッグを打たれて意のままになっていたとか、あるいは、もっとややこしい男女間の愛情のもつれで……とかなるんだろうが、あくまでこれは子供向けドラマであり、しかもその辺を詳しく描写する時間的余裕もないので、そんな説明で片付けられているのだろう。
……ところで、何度も「美代は殺してない」とか言いながら、
きっちり殺してるじゃねえか、依田! まぁ、ともみに本当のことを告げられない依田は、そう答えるしかなかったのだろうが。

三姉妹が帰った後、依田は「美代、ともみ、それでも私は戦わなければならない。風魔鬼組の頭・般若、忍びなのだから」と、妻風姉妹の霊に語りかけると、赤いバラを捧げて去って行くのだった。
今回は長台詞が多くて疲れた……。