第46話「日本の童謡より 白い兎は悪い奴!」(1974年2月15日)
の続きです。

さて、太一少年が朝、プチにエサをやっていると、プチが玄関から出て行ってしまう。
プチを追いかけて道路へ出たところで、大家がやってくるのに気付いて、慌てて車の陰に身を隠す。
横田「あら! まぁだうさぎを飼っとるなぁ、シッシッ! これっ!」
横田、逃げ惑うプチを捕まえようと両手を伸ばすが、その様子を煙突の上から見ていたピッコロによって、プチの姿がパッと消えてしまう。

横田「あれ、いない……コラッ! またうざきを飼ってたな、どこへ隠した?」
太一「知りません!」
横田「なにぃ」
と、ピッコロは、自分の腕に抱いていたプチを、横田の頭上に投げ落とす。

横田「なんか乗っかってるぞ!」

横田「なんだこりゃ? あーっ!」
頭に重みを感じてそれをひょいと掴んで、それが苦手なうさぎだと知って素っ頓狂な声を上げる横田。
大泉さん、可愛い。

横田「どう言う訳だ、こりゃ? あー? いやいやいや! 横目で睨んどるー、おっそろしいーっ!」
横田、うさぎが消えたり飛んだりするのに肝を潰して、その場から逃げ出してしまう。
ちょうどそこへ光太郎たちの乗ったウルフが通りがかり、横田は慌ててそれを呼び止める。

横田「ZATちゃん、大変だ。うさぎが怪獣になっとる!」
言いながら、「シェー」的ポーズを取る横田。これは大泉さんのアドリブかなぁ。
ピッコロ「あれがZATか、こいつは用心しないといかん、折角のお忍びの旅がおじゃんになる」
煙突の上から見ていたピッコロ、そうつぶやいて煙突の中に潜り込む。
「お忍び」と言う台詞から分かるように、ピッコロはピッコラ星(雲)の王子なのである。

光太郎「本当に消えたのかい?」
太一「いいえ、そんなぁ」
横田「ほ、ほんとに消えたんですよ、ZATさん、早く殺してくれ! ああ怖い……」
市民からの訴えを無視することも出来ず、二人は念の為、太一少年に会って確認する。
無論、太一少年はそれを真っ向から否定する。

横田、埒が明かないと見るや、いきなりプチを太一少年から奪うと、

横田「よく見てなさいよ、さぁ、お立会い!」
他の住民たちの前で、プチが瞬間移動するうさぎだと言うことを証明しようと空高く放り投げる。
だが、幸い、ピッコロはZATを警戒して煙突の中に引っ込んでいたので、当然、ただのうさぎに過ぎないプチは重力に逆らえず、そのまま落ちてくる。

光太郎「あっ、おおっ……」
横田「ありゃ?」
北島「おじさん、デタラメ言っちゃ困りますね」
横田「いや、さっきは本当に消えたんだがね」
光太郎、キャッチしたうさぎを太一少年に渡して家に帰らせる。

横田「どうして君たちは撃たなかったかぁ?」
光太郎「いいじゃないですか、大家さん、あの少年は本当に動物が好きなんですよ」
北島「うちの中にうさぎの一匹くらい飼ったって良いじゃないですか」
横田「ようし、もうZATには頼まん! ザット・オーケー!」
ダジャレをかましつつ、横田は気分を害して立ち去る。
動物好きと言われた太一少年だったが、自分の部屋に帰ると、プチをつかまえては「さ、もう誰もいないんだ、また消えて見せてくれ」と、しつこく頼むのだった。
彼は、プチが本当に瞬間移動能力を持つ特別なうさぎだと思い込んでしまっているのだ。
太一少年の願いを感知したピッコロは、煙突から這い出してきて「仕方ないなぁ」と、プチを部屋の中でパッパッと瞬間移動させて見せるのだった。
その後もしつこく延々と「消えて見せろ、ホラホラ!」と強要する太一少年の姿からは、動物愛護精神と言うより、単なる子供らしいエゴと残酷さしか感じ取れないのであった。
もしプチに人間並みの知能があったら、大家より、我儘な飼い主の方を恨んでいたかも知れない。

それはさておき、ピッコロは、その場に残った光太郎の姿を望遠鏡で見て、その正体がタロウであることを見抜く。
ピッコロ「そうか、彼がウルトラ王国の6番目の子、タロウか、ま、こんなところで対立するのはなしにしようぜ!」
ピッコロ、そうつぶやいて煙突の上から飛び立ち、東京上空の遊覧飛行を開始する。
一方、執念深い横田は今度は手を変え、愛想良く太一の母親に近付き、アパートでペットを飼うことを認めると言って彼女を喜ばせる。そして、あらかじめ用意していたうさぎのエサを気前良く母親に上げる。
動物嫌いを公言する横田が「前にうさぎを飼っていた時の残り……」と言ってる時点で、太一少年なら嘘だと気付いていただろうが、母親は何の疑いも持たず、ありがたくそれを頂戴して自宅に持ち帰る。
横田「食べる……コテン! うしししししっ」
同じ頃、太一少年はまだ「さ、消えてみろ!」と罪のないうさぎに要求し続けていた……。
なんか、だんだん大家よりこのガキの方が嫌な奴に見えてくるのは管理人だけではあるまい。

母親「太一、喜びなさいな、うさぎ飼って良いってさ」
太一「大屋さんが?」
母親「そうよ、あんたがあんまり可愛がるんで、かわいそうになったんでしょ」
太一「そうじゃないさ、このうさぎが怖くなったのさ……
消えろ、うさぎ!」
……
嫌な奴どころか、こいつ頭がおかしいのでは?

母親「これ、エサだって」
太一「大屋さんが?」
母親「そうよ」
太一「いよいよ逆に、ご機嫌取りかぁ」 ……
あ、やっぱり単なる嫌な奴だった。
人間たちのやりとりなど無視して、ムサムサ野菜を食べているプチが可愛いのである!

だがその夜、大家特製の毒入りエサを食べたプチは、あっけなく天に召される。
太一「ちくしょう、エサに毒が入っていたんだ!」
プチを抱いて怒りの叫びを上げる太一少年であったが、その死んだ筈のプチが鼻をヒクヒクさせているのには気付かないふりをして上げて欲しい。
ピッコロは、そろそろ地球を離れようとしていたところだったが、プチの肉体の異変を敏感にキャッチして、我が身に起こったことのように苦しがっていた。

ピッコロ「あんな小さな動物に毒を盛るなんて……くそう、人間めーっ!」

ピッコロは地上に降りると、たちまち巨大化して手にした木槌をゴルフのクラブのように振り回して、手当たり次第にコンビナートやビルを破壊し始める。

太一少年は、自分の代わりにピッコロが恨みを晴らしてくれているんだと、逃げようともせずにピッコロに声援を送っていた。
光太郎「ダメだ、怪獣は人間の心につけこむんだ、ひとりでも怪獣の味方をすると大変なことになるぞ」
太一「プチは死んだ、殺されたんだ。こんな地球、どうなったって良いんだ!」 光太郎「……」
光太郎は聞き分けのないお子様に蹴りを入れると(註・入れてません)、北島隊員と共にピッコロのすぐ目の前にやってくる。

ピッコロ「さあ、来い! ウルトラマンタロウ!」
光太郎「えっ」
北島「……?」
目の良いピッコロ、光太郎に気付くと、大きな声でそんなことを叫ぶ。
不意に本名(?)を呼ばれて、さすがの光太郎も一瞬固まってしまう。
住民「ZATの人がウルトラマンタロウだって」
住民「そんな馬鹿なことないよ」
住民「だってほら、言ってるよ~」
光太郎「違う、僕は違うよ」
近くにいた住民たちががやがや言いながら、光太郎たちに疑惑の目を向ける。
……いや、恐ろしい怪獣が目の前にいるというのにそんな暢気なこと言ってる場合じゃないと思うんですが。
光太郎、狼狽して否定すると、そそくさとビルの陰に逃げ込む。
北島隊員からすれば、まるっきり「そうです、僕がタロウです」と白状しているような行動だったが、これ以降も、別に北島隊員がそんな疑いを持っているような素振りは見せない。
光太郎、物陰でタロウに変身すると、ピッコロの前に立つ。

ピッコロ「ウルトラマンタロウ、こんな下らぬ星、腐った心の地球人、ようく守っているな?」
タロウ「一体、何処の宇宙人だ?」
ピッコロ「俺はピッコラ星雲のプリンス、ピッコロだ! ちょっと遊びに来たつもりが、地球が嫌いになった。みんな、やっつけてやる!」
タロウとピッコロは、既に半ば廃墟と化した街で激闘を繰り広げる。
暗かった空が赤く染まり始めた頃、

タロウ「分かったぞ、君が怒った訳が。それは勿論、一部には心の汚い人(例・太一)もいる。しかし多くの人間はみな美しい心を持っている」
ピッコロ「嘘つけー、地球なんか嫌いだー、地球人は汚い」
タロウ「その汚さも、美しい心を引き立てる為にあるんだ!」
ピッコロ「嘘だー」
タロウ「少ない悪人の為に多くの良い人を見捨てる訳にはいかないんだーっ!」

なおも駄々っ子のようにタロウに立ち向かってくるピッコロだったが、さすがにタロウには勝てず、最後は力を使い果たしてへたり込んでしまう。
それにしても、戦っているうちに徐々に明るくなる空とか、手前の公園の噴水とか、相変わらず信じ難いほど作り込まれたミニチュアセットである。
こうして45話と同様、タロウは怪獣を殺さず、そのまま宇宙へ放り出してやるのだった。
しかし、ピッコロはかなりの広範囲を破壊して、少なからず死人も出ていると思われるのに、何のお咎めもなく帰ることを許されるというのは、さすがに甘過ぎるのでは?
立ち去る前に、ピッコロが超能力で街を元通りに直す……みたいなシーンが欲しかった。

事件解決後、アパートの屋上でたくさんの人々が思い思いに色んな動物を可愛がっている。
動物嫌いだった横田も、まるで人が変わったように犬とじゃれている。
今回の一件で反省して、全面的に動物を飼うことを許可し、自ら動物好きに転向したのだろう。

ま、それは良いのだが、太一少年が何事もなかったようにプチを抱いているのはどういうことなのだろう?
死んだんじゃなかったの?
これも、タロウがリライブ光線で生き返らせるシーンが欲しかった。

そしてZATでは、荒垣たちがハーシー彗星にまたがって去っていくピッコロの姿を見送っていた。
光太郎「気ままなプリンスですねえ」
荒垣「ああ、でも人は悪くなかったな」
光太郎「え、人ですか……?」

荒垣「……あっ!」
森山「あはは、あはははっ」
光太郎「やだなぁ、副隊長!」
荒垣の言い間違い(?)に、隊員たちがどっと笑いさんざめく姿を映しつつ、幕となる。
それにしても、顔を上に向けて口を開けたまま笑う森山いずみ隊員が死ぬほど可愛いのである!

折角なので、右を向いて笑っている森山さん、

そして正面を向いて笑っている森山さんの画像を貼って、めでたくお開きにしたい。
と言う訳で、もうちょっと彼女の出番が多かったらなぁと言う気がするが、なかなかの佳作であった。