第19話「友よ安らかに眠れ」(1985年2月16日)
の続きです。

乱闘騒ぎの後、大木と直、滝沢、加代、圭子、そして光男(なんで?)たち関係者だけが部室に移動し、落ち着いて話し合う場が設けられる。
大木「先生よ、何故こいつが憎いか話すぜ、8年前だ。おやじは小さな雑貨屋をしていた……」
大木の語りに合わせて、毎度お馴染み回想シーンとなる。

大木「家の前には原っぱがあって俺はいつもそこで遊んでた。そんなある日だ、それは私鉄の駅を作ってその辺りをターミナルにする為の調査だった」

大木「後で分かったんだが、名村財閥の総帥、名村謙三の命令だった」
ちなみにこれ↑が、少年時代の大木である。
死ぬほど(松村雄基さんに)似てねえ。
目の前に大きなスーパーをおっ建てられた大木の雑貨屋は、当然、あっという間に閉店に追い込まれる。
だが、問題は名村謙三の手先が、大木の父親の足元を見て、その土地を二束三文で買い叩いたことであった。店も土地も失った大木の父親は酒びたりになった挙句、首吊り自殺をしたと言う。

大木「その為に、貧乏のどん底に叩き込まれて俺がどんな思いを……いや、俺のことは良い、お袋がどんな苦労を舐めて来たと思う? 何もかもこいつのオヤジのせいなんだ!」
何度も警察沙汰を起こしてそのお袋さんの心臓に負担をかけるほど心配をさせていたことはきっちり棚の上に上げて、名村謙三の悪行を糾弾する大木。

直「大木、俺もお前のおやじさんを気の毒だとは思う。だからと言って俺にどうしようがあるよ? おやじさんを生き返らせろとでも言うのか」
大木「よせよ、逃げ口上は! そりゃお前は直接関係ねえ、だけどなぁ、頭では分かっていても、てめえが仇の名村のせがれかと思うと、俺の心臓が納得しねえんだよ! いいか、二度とここへ来るな」
直「兄貴が妹に会いに来て、何が悪いんだ?」
大木「てめえ!」
落ち着いたかと見えた大木は、直の開き直った言葉に再びカッとなってテーブルを乗り越えて直に掴み掛かる。

滝沢と加代が必死に二人の間に割って入って止めようとする。
大木「俺の気持ちはわかんねえよ」
加代「いいえ、分かるわ、良く分かるわ。ビンボーの苦しさ、親のいなかったつらさ、大木君とこと同じだもの! だから、仲良くしてくれとは言わないわ、でも、殴り合いだけはやめて欲しいの、直さんも、ね?」
大木「だけどよ!」
滝沢「大木、お前こないだなんて言ったんだ、山崎のして欲しいことはなんでもしてやる、そう言ったんじゃなかったのか?」
この前の歓送会の時のことを引っ張り出して、大木を説得しようとする滝沢。
しかし、今まで何度となく自分の言葉を違えて来た滝沢に言われてもねえ……。
それでも、しばし加代の真剣な眼差しを見詰めていた大木は、俄かに落ち着きを取り戻すと、「分かった、俺と名村を二人きりにしてくれ。腹をぶち割って話してみてえだけだ」と、滝沢に頼み込む。

だが、大木が素直に直と話し合う筈もなく、二人きりになると、「タイマン、受けるだろうな?」と、逆に一対一の決闘を申し出るのだった。
直「ああ、そんなもんでお前の恨みとやらが水に流せるんならな」
大木「明日の朝8時、富士見河原だ」

ところが、ちょうどその時、清美と明子が、大木たちが遅いので部室の裏手に回って窓から覗き込んでいたのだ。

明子「えーっ、タイマンだよ!」
驚いて振り向いた清美の顔が可愛いのである!

その叫び声で、大木も二人の存在に気付く。
大木「お前たち」
明子「先輩、よしなよ、タイマンなんて。校長の話、忘れたのかい」
清美「バレたら、ラグビー部は廃部だよ!」
大木「シーッ! 今の話、誰にも言うんじゃねえぞ、もし喋りやがったら、てめえらとは縁を切るからな」

と、滝沢たちが入ってきたので、清美と明子は、急いで顔を引っ込める。
滝沢「どうだ、話は終わったか」
直「ああ、もうゴタゴタは起こさねえ」
直も心得たもので、そんな空々しいことを言って、大木に手を差し伸べる。
大木も不敵な笑いを浮かべながら、その手を握り返す。

圭子「良かった」
加代「……」
お嬢様育ちの圭子は、一方がお兄さんと言うこともあって素直に彼らの和解を信じて晴々とした笑顔を見せるが、大木の性格を知り抜いている滝沢や加代は、疑惑と懸念の入り混じった視線を、偽りの融和を演じる二人に向けるのだった。
あれやこれやあったので、滝沢と加代が並んで帰る頃には、すっかり辺りは夜の闇に包まれていた。
率直に二人のいさかいが再燃することを危惧する加代に対し、滝沢も力強く、二人が傷付け合うような真似は絶対させないと約束して、加代を安心させようとする。
約束か……。
加代、ふと、滝沢の肩に桜の花びらが付いているのに気付き、つまみあげる。

見上げれば、闇の中にひっそりと可憐な桜が花を咲かせていた。
滝沢「おう、夜桜か」

加代「先生!」
夜桜を眺めている滝沢の広い背中に向かって加代が声を掛ける。
加代「桜が奇麗だから、私、ここでお別れします!」
滝沢「元気でな、山崎」
加代「先生も、どうかお元気で」

滝沢「……」
互いの目に、百万言にまさる思いを込めて、長い間無言で見詰め合う二人。
滝沢は相手の気持ちを知っており、加代も自分の気持ちを知られていることを知っていた。
しかし、妻帯者でモラリストの滝沢は、加代の体を抱き締めてやることはどうしても出来ないのだった。
滝沢「じゃあ、花園で会おう」
加代「ええ、花園で……失礼します」
結局、滝沢に出来たのは加代の肩に手を置いて、そんな言葉を交わすことだけだった。
夜道をタッタカ走って行く加代の後ろ姿を見送りながら、滝沢はいかにも寂しそうな顔で歩き出す。
翌日、授業をしていた滝沢のところに、江藤先生が来て「大木がいなくなった」と知らせに来る。
滝沢、血相変えて二人を探しに学校を飛び出す。
……しかし、「いなくなった」と言うことは、大木は学校に一度来たということなのだろう。でも、朝8時の約束なんだから、直接決闘場所に向かうのが普通ではないだろうか。
よって、この場合は、「大木が登校して来ません」の方が適切だったと思う。細かいことだけど。

一方、加代とその家族は新幹線で和歌山に旅立とうとしていた。暇で暇でしょうがない光男と圭子も見送りにホームに来ている。
が、車両に乗り込もうとした間際、加代が「昨日の練習日報書き忘れた」などと、思い出さなくてもいいことを思い出してしまう。
父親「練習日報?」
母親「いいじゃないの、
そんなもの」
母親の言葉は、世間一般の価値観を代弁していたが、
加代「でも、先生に済まないの!」

滝沢「もし、君がこの記録を書くのを一日でも休んでいたら、俺は練習プランを立てることさえ出来なかった」
ここで、今度は加代目線で、前述の、滝沢の満腔からの感謝の言葉が繰り返される。
滝沢がそこまで大袈裟なことを言わなければ、加代も発車直前に学校に引き返そうなどとは思わなかっただろうに……。
加代「悪いけど、1時間だけここで待ってて!」
これから新幹線に乗ろうという家族に向かってとんでもない要求をしてから、加代はプラットホームから走り出す。
しかし、さすがにこの加代の行動は不自然だよね。最悪、和歌山に着いてから昨日の記録を書いて滝沢に郵送すれば済む話なんだから。

さて、その頃、富士見河原では、いかにも送風機で風送ってます! と言うような、猛々しい強風が吹き荒れていた。
大木がやってくると、既に直は先に来て待っていた。

直「遅いぞ、大木!」
大木「うるせえ!」 いや、「うるせえ」って……、遅れてきたんだから、決闘は決闘として、ちゃんと謝りましょう。
しかし、と言うことは、やっぱり大木は一旦学校へ顔を出し、それから決闘場所へ向かったらしい。
あるいは、朝、滝沢に顔を見せて、油断させようとしたのかも知れない。
(じゃあ、最初から9時くらいにしとけっての)

大木「さあ、どっちかが死ぬまでやろうぜ!」
直「こないだおめえがぶっ壊した俺のギターみてえにバラバラにしてやるぜ!」
互いに吠え立ててから、タイマン開始。
もっとも、二人とも別に武器などは持参していないようなので、死人が出る心配はなさそうである。
一方、その頃、ラグビー部の扉の外では、清美と明子がなにやら険悪なムードで話していた。

明子「清美ぃ、あたいが先生に話そうとした時、なんで止めたんだよ! 名村直はともかく、大木の兄貴にもしものことがあったらあんたのせいだからね!」
清美「今頃、ガーガー言っても遅いよ、とっくに血を見ちゃってるよ、あのふたり」
高校生になってすっかりスケバン魂を失った明子は、大木の言いつけに背いても、タイマンのことを滝沢たちに話そうとしたのだが、まだ不良っぽさが抜けない清美は、結果がどうなろうと大木との約束の方を優先させるべきだと、それを妨げたらしい。

明子「薄情者!」
カッとなった明子、清美の襟を掴んでいきなり平手打ちする。
その瞬間、清美のセーラー服の胸元がちょっと開くのが嬉しい管理人であった。

清美「何すんのよーっ!」
清美もすぐさまやり返すが、清美のビンタの方が5倍は威力がありそうである。
そのまま女子高生同士のキャットファイトに雪崩れ込んで、全国の好き者たちをヒーヒー言わせるかと思いきや、

いきなり扉が開いて加代が現れ、二人の間に割って入りながら、「今の話、ほんとなの? 大木君と直さんが
私の為に決闘してるのね?」と、問い質す。
偶然にも程があるが、日報を書きに部室に戻っていた加代、二人の会話を立ち聞きして、大木たちのタイマンのことを知ってしまう。

延々どつき合いをしている大木と直。
今まで川浜最強の名をほしいままにしてきた大木を相手に互角に殴り合うとは、直もかなりの強者であった。
それにしても、この場所をこのアングルで見ると、「セーラー服反逆同盟」第6話の戦闘シーンを思い起こさずにはいられない管理人であった。
そこで戦っていた一人は他ならぬ山本理沙さんだったのだが、考えたら、「セーラー服~」って、「スクール~」の終わった翌年に放送が始まってるんだよね。
で、その両作品の、気が遠くなるほど長ったらしい画像付きレビューを書いている奴って、世界中で俺一人だろうなぁ(しみじみ)

このまま二人を戦わせていたら、ラグビー部が廃部に追い込まれてしまうと言うナレーションをバックに、清美と明子を従えて、全力疾走している加代。
……乳がぶるんぶるん揺れますねぇ。実に素晴らしい眺めですねぇ。

清美「あ、先輩、あっちの歩道橋、渡ろ!」
加代「大丈夫!」
一刻も早く喧嘩をやめさせなければ……と言う思いに駆られて冷静さを失った加代、急がば回れと言う清美の言葉も聞かず、途切れることなく続く車の流れに身を躍らせる。

4車線の真ん中あたりで、けたたましいクラクションが鳴って、視聴者はハッとするが、

そのトラックは急ブレーキを掛けて寸前で停まり、事無きを得る。
……しかし、これはホラー映画とかでよくある、一旦安心させておいてその次のショックシーンの効果を高める為の演出テクニックなのである。
加代、運転手に一礼して、再び走り出そうとする。

だが、そのトラックの向こうに飛び出した瞬間、

もう一台の車がまともに突っ込んでくる。
加代「あっ!」
ドンと言う鈍い音と、急ブレーキの音が重なる。
清美&明子「あ゛あ゛ーっ!」 目の前で加代が車に轢かれたのを見て、清美と明子は目玉が飛び出さんばかりに目を見開いて絶叫する。

乾いた音を立てて、加代の靴がアスファルトの上に落ちるイメージショット。
果たして加代の運命は……?
その3へ続く。