第24話「裏切ったアンドロイドの星」(1980年9月10日)
今回、なかなかSFマインド溢れる秀逸なストーリーだと思うのだが、
いくらなんでも、この、
ネタバレ全開のサブタイトルはないんじゃないかい?
冒頭、「未確認飛行物体が東京上空に出現!」の知らせを受け、UGMがシルバーガル、スカイハイヤー、エースフライヤー、ノンオイルフライヤーなどでスクランブルを掛けると言う緊迫したシーンから始まる。

高層ビルの上空に静止しているのは、フライングソーサー以外の何物でもなかった。

会社員「あっ、UFOだ!」
オフィス街の人々が、空を指差してしきりに叫んでいる。
しかし、コントやギャグならともかく、実際にドラマで「あっ、UFOだ!」なんていう基本的な台詞が聞けるとは思わなかった。
恐らくこの会社員役のエキストラも、オンエア後、ことあるごとに「俺ってさー『あっ、UFOだ!』ってドラマで言ったことあるよ」と自慢していたに違いない(註・違います)。
オオヤマ「動きに注意しろ、敵かも知れん。警戒を怠るな」
イトウ「了解! おかしな動きを見せたら攻撃するぞ」

やがて円盤がゆっくり降下し始める。
前線のイトウたちは。平日の昼間、台所でゴキブリを見付けた40代専業主婦のようなヤケクソな心境(どんなだ?)で突っ込んでいくが、円盤はすかさず特殊なビームを発射し、三機ともその場に釘付けにする。
そのビームは、単に戦闘機の機能を停止させるだけではなく、その座標空間に静止させるという、明らかに地球を上回るハイパーテクノロジーの産物であった。

オオヤマ「どうしたんだ?」
イトウ「操縦不能なんです!」
エミ「……」
気のせいか、このシーンのエミ隊員、ぽや~んとした感じで、いかにも眠そうに見える。
まな板の上のコイ状態のイトウたちは生きた心地がしなかったが、その時、円盤から奇麗な女性の声が流れてくる。

声「地球の皆さん、驚かないで下さい。私たちは平和を愛するファンタス星人です。皆さんに危害を加えるつもりはありません……」

声「私たちは皆さんに銀河大連邦への参加を求める為」

声「はるばるやって来ました」
オオヤマのアップに続いて、エミ隊員のアップになるが、やっぱり、徹夜明けみたいに目が赤い。
声「銀河大連邦とは平和を愛する星と星の人間が集まり、この宇宙を平和で豊かな楽園にしようという組織です。平和で豊かな楽園、それは皆さんの言葉で言うならユートピアです。この夢と希望に満ちたユートピアを私たちと一緒に建設しようじゃありませんか……」

続いて、円盤の下部から四角い箱のような物が、青い転送ビームによって地上へ降ろされる。
声「これが銀河大連邦の資料……この資料を分析して返事して下さい。私たちは再びここへやってきます」
円盤はそう告げると浮上を開始して、みるみる遠ざかっていく。それと同時に、イトウたちの拘束ビームも解けて、各機は正常な状態に戻る。イトウたちはファイタス星人が残したボックスを回収し、UGM本部へ帰還する。

そのボックスを囲んで、イトウたちが今回のファンタス星人の申し出について討議している。
ハラダやタジマは、ファンタス星人の言葉に懐疑的であったが、M87星人としてファンタス星人が平和で善良な宇宙人であると以前から知っていた猛だけは、
猛「僕は彼らを信じます、現に彼らは友好的だったじゃないですか」
と、明快に賛成意見を述べる。
ハラダ「友好的だって? 俺たちを動けなくなる武器を使ったんだぜ」
猛「でも、危害は加えなかったでしょう? あれは平和的な武器ですよ。ファンタス星人は善良な人たちです」
セラ「矢的隊員は彼らをご存知なんですか?」
猛「いや……そんな気がするってことですよ」
さて、その後、各国首脳が東京に集まってファンタス星人の提案を受け入れるか否か、会議が開かれることになる。UGMは、会議に間に合わせる為、不眠不休であのボックスの分析に取り組む。
夜を徹して分析作業に当たる隊員たちの為に、広報のセラがコーヒーを入れる。

セラの言葉に振り向いて、両手を左右に広げるエミ隊員が堪らなく可愛いのです!
まだ新人で、「伸び」をする演技もぎこちないのが、逆に萌えるのだ。

イトウ「夜明けのコーヒーって奴か」
セラ「各国の新聞社から問い合わせが来て大変ですよ、で、どうだったんですか」
イトウ「どの資料も完全に理にかなってる」
ハラダ「この資料通りにいきゃあ、本当に地球は楽園になるよ」
タジマ「うん、ユートビアは近いって感じだな」
最初はファンタス星人に胡散臭い目を向けていたハラダたちだったが、資料を仔細に読み進めた後では、ガラッと態度を転向させていた。
セラ「どういう風に?」
タジマ「まず、俺たちの生活に余裕を持たせる都市を建設するんだ」
エミ「余裕があるってことは、人の心から憎しみとか怒りとかが消えるってことなのよ」
セラ「と言うと、争いごとはなくなりますね!」
エミ「やっぱり矢的隊員の言ったとおりね、彼らの言ったことに嘘はないみたいだわ」
結果的に全員、猛の意見に賛成する形となったが、ひとりオオヤマだけは「ユートピアと言うものは自分たちの手で作り出すものではないか?」と、やんわりと疑義を呈示する。
翌日、予定通り各国の首脳が東京に集まり、UGMの提出した資料を基に会議が行われる。

エミ「私は是非銀河大連邦に参加すべきだと思うわ。だって素晴らしいじゃない? 人類に争いごとがなくなって、それに怪獣も出て来ない世界……夢みたいだわぁ」
猛と連れ立って歩きながら、改めてファンタス星人によってもたらされるユートピアを賛美するエミ。
……しかし、そうなったらUGMも不要になって、あんたら全員クビやで?
猛「僕はキャップの言ったことが気になるんだ。ほんとにそんな世界を与えられるだけでいいんだろうか?」
エミ「あら、ファンタス星人を信じるって言うのは嘘だったの?」
猛「いや、彼らは信じてもいい宇宙人だと思う。しかし……」
エミ「矢的隊員の言いたいことは分かるわ。でも私たちが地球をすぐにユートピアにすることなんて出来ないでしょう? 私たちが自分たちの手でそんな世界を作り出すには、何十年、何百年もかかるんじゃなくって?」
いつになくハイブラウな会話を交わす二人であったが、大方の視聴者の目はエミ隊員のおっぱいに吸い寄せられているので、彼らの議論などあまり耳に入らないのであった。
その時、不意に猛が勢い良く振り返る。誰かに見られているような気がしたと言うのだが、見たところ、怪しい者は誰もいない。

気のせいかと猛たちが立ち去った後、銀色のドローンが姿を見せる。
で、会議の内容は一切すっ飛ばして、全会一致でファンタス星人の提案を受け入れることが決まる。

ちなみに、生中継された(するなよ)会議の模様がテレビに映し出されるが、その席には毎度お馴染み、ウイリー・ドーシーさんらしき人の姿も見える。
関係ないけど、チラッと映る15インチくらいのブラウン管テレビのお値段が、92000円です!
でも、消費税がゼロと言うのは羨ましい……。
人々の間でも、ユートピアの到来が予感されるが、その夜、帰宅途中の猛を再びあのドローンが付け回し、

さらにサングラスをかけた数人の暴漢が現れ、猛に襲い掛かってくる。
ここでは長谷川さん、なかなか本格的なアクションを披露されておられる。

猛がその中のひとりに飛び蹴りを食らわすと、相手は体から火花を発し、

しかも、その腕がちぎれて、ボタッと地面に落ちる。
それは明らかに機械の体だった。
相手が人間ではないと知った猛は、銃を取り出して彼らを全員撃ち倒し、その場から逃げようとしたドローンも逃さず撃ち落とす。

一方、約束どおり再び東京上空に現れたファンタス星人の円盤は、スペースマミーに先導されて防衛軍極東ゾーンの空港に着陸する。
少し緊張して待ち受けるナンゴウたち高官の前に現れたファンタス星人は、

あらかじめ平和な種族だと刷り込まれていなければ、どう逆立ちしてもワルモノにしか見えない悪党ヅラした宇宙人であった。

無論、ナンゴウ長官はあくまでにこやかにリーダー格の宇宙人と握手を交わし、取材陣のカメラが次々シャッター音を響かせる。
リーダー「歓迎、どうもありがとう」
ナンゴウ「皆さん、お待ちしておりました」
UGMの隊員もそれぞれ宇宙人と友好の握手を交わすが、猛はその冷たさに内心驚いていた。
猛(冷たい……ファンタス星人はもっと温かい人たちだと聞いていたが) あの、矢的先生、体表温度と、人柄を表す比喩としての冷温とをごっちゃにしてません?
もっとも、他の隊員も、そのことには気付いていた。

イトウ「随分、冷たい手をしていたな」
タジマ「僕たちより体温が低いんでしょう」
イトウ「なるほど」
……いや、イトウさん、「なるほど」じゃなくて。
猛、ファンタス星人に対する疑惑がむくむく膨らんできて、咄嗟に、セラに頼んで調印式の会場に連れて行ってもらう。

部屋の隅からファンタス星人をじっと見詰めている猛、ここで、モロボシ・ダンのような透視能力を使い、彼らの体を調べてみた。
果たして、彼らは人間ではなく、昨夜猛を襲ったのと同じ、アンドロイドだった。

猛「待て!」
猛はためらわずに立ち上がって叫ぶと、つかつかとファンタス星人に歩み寄り、サインしようとしていた手をむんずと掴む。
猛「お前たち、ファンタス星人じゃないな?」
ファンタス星人「何を言う?
早見優!」
当然、猛は警備員に取り押さえられ、問答無用でしょっ引かれる。
そして調印式は無事に終了する。

とりあえず基地内の監獄にぶち込まれた猛、「おーい! 誰かーっ!」と、「ウルトラセブン」第5話のモロボシ・ダンよろしく、何度も叫び続けていた。
ダンは、セブンに変身して監獄を抜け出したが、猛は、いま80に変身したら自分の正体がばれてしまうと、変身するのを躊躇する。

と、そこへ二人のファンタス星人が銃を持ってやってくる。
ファンタス星人「ウルトラマン80、覚悟してもらおうか」
猛「お前たちは何者だ」
ファンタス星人「ごらんの通り、ファンタス星人」
猛「嘘だ、お前たちはアンドロイドだ。本当のファンタス星人はどうした?」
ファンタス星人「ふぁっふぁっふぁっ、彼らは滅んだ。我々は彼らが作り出したアンドロイドだ。彼らは我々に全ての仕事を任せて、自分たちは遊び呆けた。つまり、自分たちの科学力に溺れ過ぎていたのだ。だから滅んだんだ」
猛「違う、お前たちが滅ぼしたんだ!」
ファンタス星人「我々を奴隷のように扱った報いだ。我々は生物、特に人間と言う動物を軽蔑しておる。これからは我々アンドロイドの世界だ。
人間などあさはかな生き物じゃないかね。ちょっと甘い夢を見せてやるとすぐその気になる」
偽のファンタス星人の口から語られたのは、「ウルトラセブン」の「第四惑星の悪夢」を思わせるような、衝撃的な事実だった。
でも、猛が咄嗟に彼らに反論できなかったように、彼らの言葉が、人間の本質的な問題点を的確に衝いていることは認めねばなるまい。
ファンタス星人は猛を銃殺しようとするが、そこへ、ファンタス星人の正体に気付いたUGMが助けに来る。猛は濡れ衣も晴れ、無事、監獄から出される。

一方、ファンタス星人のリーダー格は円盤に逃げ帰ると、「奴隷作戦は中止だ。地球人を皆殺しにしろ!」と部下に命令する。
円盤は再び浮上すると、下部から徐々に突起物がせり出し、

それから二本の足のようなものが生えて、戦闘円盤ロボフォーにチェンジする。

防衛軍の戦車が砲撃を開始するが、地球を遥かに凌駕する科学力を持ったファンタス星人の敵ではなく、ビームを浴びて次々と吹っ飛んでいく。
で、色々あって猛が80に変身して、円盤型ロボットと言う珍しい敵を相手に奮闘する。
80は苦戦するが、最後は円盤をビームで撃ち落とし、ファンタス星人は全滅する。
しかし、東京のど真ん中であんな巨大な円盤を撃墜してるのはさすがにちょっと配慮が足りないのでは? ドラマでは一切言及されてないが、実際は数千人単位の死傷者が出たのではないだろうか?
で、事件解決後、もう少しで人類全体が宇宙人の奴隷にされかかったと言うのに、最高責任者のナンゴウ長官が放った台詞が、
ナンゴウ「いやー、危うく騙されるところだったなぁ」 と言う、責任感の微塵も感じられない軽いノリだったのには大笑い。
いや、「危うく」じゃなくて、完全に騙されていたと思いますが。
猛「キャップの言うとおり、ユートピアは自分たちの手で作り出すものだったんですね」
ナンゴウ「何十年掛かろうと、何百年掛かろうとな」
学校のホームルームみたいに、事件の総括をする隊員たちを映しつつ、幕。
最初に書いたように、サブタイトルでネタバレしちゃってるのが実に惜しい、なかなか奥の深いストーリーであった。