第10話「昆虫大パニック!?~恐怖の殺人蚊殺人事件」(2006年3月5日)
この10話、9話にゲスト出演した三人の俳優がそっくりそのまま別の役で出ていると言う、地上波の刑事ドラマならまずありえないキャスティングがされている。
事件は、国際的な蚊の研究者である雉山博士が、ある犯罪に関わる重大な告発をしたいと大々的にマスコミに発表したことから幕を開ける。

雉山「先週はどうも……」
のっけから、楽屋落ち的な台詞を漏らすキジ山博士を演じるのは半海一晃さん。
前回は、死神博士と言う役で出ていたが、この白髪のカツラはその時と同じものみたいだ……。
で、その知らせを受けて、雷と岡野が国際蚊取り研究所なる建物を訪れる。
岡野「えらく蒸すなぁ」
雷「室温28度、湿度80パーセントぉ?」
岡野「えーっ、ウォームビズとかエコライフちゅう言葉を知らないのかね、ここの連中は」
建物の中は、3月初旬とは思えぬ暑さと湿気が保たれていて、二人はすぐコートやマフラーを脱ぐ。
雷「蚊の生態に合わせて、亜熱帯の環境を再現してるらしいですよ」
岡野「カーッ、それにしても告白したい犯罪情報って一体なんなんだろうねえ」

二人は廊下を進んで、「所長室」と書かれた、どう見てもスタジオにしか見えない部屋のドアに辿り着く。
だが、ノックをしても雉山の名前を呼んでも、何の反応もない。
二人が中に入ると、雉山博士らしき人物がこちらに背を向けてパソコンの前に座っているのが見えた。

だが、案の定と言うべきか、既に博士は座ったまま事切れていた。
岡野「ああっ、銭形君!」
雷「亡くなっています」
岡野「おや、この人、先週逮捕した死神博士にそっくりだぞ」
そう、10話では半海さんは犯人役だったが、今回は被害者役と言うように、同じ出演者でも配役上のバランスが考慮されているのだ。
雷、素早く室内の様子に目を配り、博士の足元にたくさんの書類が散乱していること、飲みかけのコーヒーカップが倒れていること、そして、

博士の首筋に、何かに刺されたような赤い腫れがあることにも気付く。
と、プーンと言う蚊の独特の羽音がすぐそばで聞こえる。
雷「蚊? こんな季節に珍しいですね」
岡野「ま、蚊取りセンターだ。蚊の一匹や二匹いるだろう」
岡野は気にも留めず、机の上の固定電話で鑑識の柴田を呼ぼうとする。
何故か今回に限り、岡野はケータイをもっていないらしい……。

だが、電話が繋がる前に、背後からドンドンと何かを叩く音が聞こえてきて、振り返ると、隣接する部屋に二人の白衣の男性がいて、しきりに境の窓ガラスを叩いたり、大声を出したりして、雷たちの注意を引こうとしていた。
何がなんだか分からないまま、二人は現場をそのままにしてとりあえず彼らのいる部屋に移動する。

岡野「あのー、あなた方は?」
二人「シーッ!」
二人は耳を澄まして周囲の様子を窺っていたが、蚊の羽音が聞こえないのを確認すると、ホッと息をつく。

猿谷「助手の猿谷と申します」
犬川「同じく、犬川です」
猿谷役は木下ほうかさんで、前回は被害者の狼男役だった(どんな役やねん)。
で、犬川はOPナレーターも担当している林和義さん。前回は共犯者で、かつ被害者のフランケンシュタイン役だった(だから、どんな役やねん)。
犬川「外は危険なんで、絶対に出ないで下さい」
雷「どういうことですか」
猿谷「雉山博士は殺されました。奴に刺されて」
岡野「奴って誰ですか?」
犬川「……蚊です」
岡野「は……?」
犬川の意外な答えに、二人とも目が点になる。
岡野「ふざけないで下さいよ」
犬川「ふざけてなんかいませんよ!」
彼らの話によると、エクアドル原産の殺人蚊、学名キラー・モスキート(そんな学名、ねえよ)と言う特殊な蚊が、研究室の中を飛び回っているらしい。

雷&岡野「殺人蚊ぁ?」
驚いてガラス越しに研究室の方を見る二人。
サブタイトルが表示された後、雷が改めて事情を訊いている。
雷「つまりキラー・モスキートは猛毒を持ってる、そういうことですか?」
猿谷「ええ、野生のグリズリーでさえ刺されると数秒で死に至ると……」
岡野「それじゃあ、人間なんてひとたまりもないじゃないか! どうしてそんなものが?」
猿谷「研究の為に南米エクアドルから一匹だけ取り寄せたんですが、そいつが逃げ出してしまって……」
岡野は直ちに本庁に電話して救援を頼もうとするが、ケータイ電話はコートに入れたまま、所長室に置いて来てしまったことに気付く。
……って、あれ、ケータイ持ってたの? じゃあなんでさっき、固定電話で電話しようとしていたのだろう?
とにかく、電話は殺人蚊のいる部屋にしかなく、猿谷たちもケータイは持ってないらしい。
ま、実際は持っていたのかもしれないが、彼らは警察に応援を頼まれると困る事情があったので、持っていたとしても雷たちには黙っていただろう。

岡野「そうだ、銭形君、君のケータイを貸してくれ」
雷「それが……」
岡野に頼まれた雷、困ったような愛想笑いを浮かべると、所長室の中を指差す。見れば、ソファの上に、マフラーと一緒に雷のケータイが置かれていた。

岡野「君もかーっ!」
と、ここで急に部屋が真っ暗になる。
建物が古く、よくブレーカーが落ちるらしい。
電気が復旧するとすぐ、犬川が研究室に入ろうと言い出し、それを必死に猿谷が止める。
雷「どうしたんですか?」
猿谷「彼が、殺人蚊を説得する! そう言ってるんです」
雷「説得?」
犬川「インドではハブとマングースの仲裁をしたことがあるんですよ」

雷「ええーっ?」

犬川「では、では、行って参ります!」
急にバックに悲愴な音楽が流れ出して、犬川もこれから死地に赴こうとする兵士のように感極まった調子で軍隊式の敬礼をする。

釣られて思わず敬礼を返す三人。

雷だけ途中で我に返って、怪訝そうな目で自分の手を見上げる。
とにかく、犬川は決死の覚悟で研究室に飛び込み、自分も蚊のような鳴き声を出して、キラー・モスキートとコミュニケートしようとする。
一時は、キラー・モスキートが犬川の説得に応じて作戦は成功したかと思われたが、結局犬川は首筋をぶすりと刺されて、あっさり死亡する。

雷「あっ!」
と、ここでまた停電になって辺りが闇に包まれる。
いい年して、殺人蚊への恐怖と暗所恐怖症とで、半ばパニック状態になってへたり込む岡野を、女子高生の雷がそばについて、しきりに励ましている。

岡野「ああ、なんとか、早く明るくしてくれよー」
雷「岡野さん、大丈夫ですよ!」
どさくさ紛れに、雷の柔らかな手を握り締める岡野。

やがて、再び部屋が明るくなる。
中年オヤジにセクハラまがいのことをされても、全然気にしない雷の優しい性格が管理人は大好きである。
これが性格の悪い宮崎あおいの愛(註1)だったら……
(註1……あくまでキャラクターとしての愛の性格が悪いと言っているのであって、演じている宮崎あおいの性格が悪いと言っている訳ではない)

雷が立ち上がった後、岡野は雷の手の感触を自分の頬に当て、パッと恍惚の表情になる。
ちなみに、今回、岡野の右手に絆創膏が巻いてあるのだが、ストーリーの中で触れられることはないので、純粋に、国広さんが怪我をしていたのだろう。
後編に続く。