第17話「地底GO!GO!GO!」(1968年1月28日)
またまた、読者様のリクエストに応えてお送りする「お前には主体性と言うものがないんか?」シリーズのお時間がやって参りました。
今回取り上げるのは、「ウルトラセブン」の中でも極めてファンキーなタイトルの第17話、脚本は上原正三さんである。
これも、一度スルーしたものだが、その理由については最後に書く。
冒頭、とある鉱山の坑道の奥深くで、数人の作業員が仕事をしている。

その中のひとりは、なんと、モロボシ・ダン瓜二つの顔をしていた。
ダン、
遂に辛抱たまらなくなってアンヌのおっぱいを揉みしだいたり、本人が後ろにいるのに気付かずにキリヤマ隊長の「なにっ!」を真似したりして、ウルトラ警備隊をお払い箱になって肉体労働者に転職した訳ではなく、これは全くの別人で、森次さんによる一人二役なのである。
その名を薩摩次郎と言う。
と、急に地面が激しく揺れ始めたかと思う間もなく、頭上から岩や土砂が雨あられのように降ってくる。作業員たちは慌てて外へ避難する。
薩摩次郎も途中まで逃げて来たが、ペットの「チュー吉」を置き忘れて来たと言って、仲間の止める声も聞かず、作業現場に引き返してしまう。

次郎は帰り道を土砂に塞がれ、袋小路のような空間に閉じ込められてしまうのだが、その際、流れ落ちる土砂の向こうに不気味な目のような二つの光が出現するのが、実に良い絵になっている。
この落盤事故の描写自体、30分の特撮ドラマとは思えないほどリアルである。
本来なら、ウルトラ警備隊が出動するような案件ではないのだが、それではドラマにならないので、「落盤の原因に不審がある」と言う理由で、異例の出動となる。

珍しく、雨の中を突っ走るポインター。
改めて見ると、このポインターにしても素晴らしいデザインだよね。説得力のある近未来的デザインと言うような感じで。
キリヤマたちは、採掘会社の事故対策本部にやってきて、詳しい情報を聞き出す。

キリヤマ「事故発生当時にピカッと光ったと言うんですね」
作業員「ええ、グラッと来て、それからまるで、フラッシュでも焚いたような……」
キリヤマ「それは電気のスパークとは考えられませんか」
作業員「いえ、その点、調べてみたんですが、別に異常は」
社長「今年になって三度目の事故です。それが全部原因が分からんもんで困っとるんです」

ダン「生存者は確認されたんですか?」
作業員「空気だけは送り込んでいます」
このエピソードで、誰もが変だと思うのは、このシーンであろう。
作業員たちは次郎と一緒に仕事をしていて、その顔を良く見知っている筈なのに、彼と瓜二つのダンの顔を見ても、何の反応も示さないからである。
彼らはまた、次郎のことを「ミラクルマン」と呼んでいた。

キリヤマ「ミラクルマン?」
作業員「奇跡の男ですよ」
彼らの話によると、以前、次郎が別の作業員と一緒に山登りをした時、200メートル下の谷底へ落下したにも拘らず、彼はピンピンして帰って来たのだと言う。

その逸話を聞いたダンは、ひとり宙を睨んで(200メートルの谷底に落ちて助かる訳がない。もしかしてあの青年では?)と、心の中でつぶやく。
キリヤマたちはとりあえず、次郎が閉じ込められている坑道に入り、安全に行ける所まで行って見る。
次郎が自分の存在を知らせようとパイプをガンガン叩いている音を、ダンはその鋭敏な聴覚でキャッチする。次郎がまだ生きていることを知って、同僚たちはひとまず安堵する。

ダンは、パイプの中を透視して、一直線に伸びるパイプの向こうにいる次郎を見て、(やっぱりあの青年だ!)と、先程の予感が当たっていたことを知る。
ここで、次郎が遭ったと言う山登り中の事故の模様が回想される。
次郎は、仲間と一緒にザイルで切り立った斜面にぶら下がっていたが、そのままでは仲間もろとも谷底へ落ちてしまうと、自らナイフでザイルを切って、我が身を犠牲にして仲間を助けようとしたのだ。

200メートルの谷底を落ちていく次郎の体を、ちょうどその時、地球にやってきていたウルトラセブンが受け止め、静かに地面に横たえる。
セブン「仲間を救う為にザイルを切った、なんと勇気ある青年だ。そうだ、この男の魂と姿をモデルにしよう」

セブンは即座に次郎とそっくり同じ姿形に変身する。
その服装は、第1話で初めてダンがフルハシたちの前に現れた時と同じものだった。
ダン(こうして、ウルトラ警備隊、モロボシ・ダンが誕生したのだ。彼は僕の分身だ。なんとしても助け出さねば!)
人知れずそう決意したダンは、やおらキリヤマの前に進み出て、

ダン「隊長、地底に行かせて下さい!」
キリヤマ「よし! マグマライザー、出動要請!」

こうして、マグマライザーのコンテナを積んだホーク3号が飛来して、会社の敷地内に着陸する。
手前のクレーンや建物のミニチュアセットがいつもながら素晴らしい。

キリヤマ「まず、地底1000メートルまで遮二無二潜る。あとは平行移動しながら事故現場に接近する。それともうひとつ大事なことは謎の地震源を探り出すことだ。地底はいわば未知の世界だ。何が潜んでるか分からん。十分注意して行動してくれ。……行け!」
隊員「はいっ!」

キリヤマ隊長の訓辞を受けて、フルハシを除く4人が元気良くマグマライザーに向かって走り出す。
キャプではちょっと分かりにくいが、画面右側に見えるのが、合成されたマグマライザーなのである。
あまりに見事なので、パッと見、実景にしか見えない。

操縦席に乗り込む4人を外側から捉えた映像。
アマギが何か喋っているのだが、マグマライザーのタービン音に掻き消されて聞こえないと言う演出が、心憎い。
ダンたちは地上に残ったキリヤマと細かく連絡を取り合いながら、マグマライザー前方の巨大ドリルを回転させて、近くの柔らかそうな山肌から地中に入って行く。

アンヌ「深度600メートル、進路に異常ありませんか」
キリヤマ「進路異常なし」
アンヌ「進路異常なし」
ダン「了解!」

ダン「前方、花崗岩地帯」
アマギ「前方、障害爆破!」
アマギ隊員がレバーを動かすと、前方から黄色いビームが発射され、固い岩盤に穴が開き、マグマライザーはそれを潜り抜けてさらに奥へ進む。

アンヌ「深度1000メートル」
キリヤマ「よし、水平移動、北西15度へ進路」
ダンが機体の操縦、アマギが武器などの操作、アンヌが位置情報の把握と本部との連絡係と言う風に、しっかり役割分担がされているのも実にリアルである。
で、我らがソガ隊員は何の係なんだろう? BGMの選曲係か、おやつを配る係だろうか(註1)
(註1……本当は、地下は暗くて寂しいので、ひとりでも多く乗員が居た方が良いからと言うことで、にぎやかしで乗ってるらしい)
……などと、管理人がしょうもないギャグを一生懸命考えているうちに、マグマライザーは突然、細長いトンネルのような空間に入り込んでしまう。
あちこちに鍾乳洞のような石筍があって、凸凹した洞穴が闇の奥へ続いている。
ソガ「火山帯の風穴じゃないのか?」
と、対策本部に、次郎のいる場所に空気を送り続けていた空気孔が塞がってしまったと、作業員が血相変えて知らせに来る。
キリヤマ「いいか、ガスの発生を考えると、せいぜいあと30分だ。火山の風穴があるならその中を突っ走れ。とにかく現場へ急行するんだ!」
キリヤマの声に尻を蹴飛ばされるようにして、マグマライザーは洞窟の中を猛スピードで走り出す。
だが、再び固い岩盤に行く手を遮られる。
ダン「前方に障害物!」
アマギ「よし、
朝までぶっ飛ばそう!」

アマギが、さっきと同じようにレーザービームで破壊しようとするが、今度はビクともしない。

ここ、レーザーが跳ね返されて、火花となって機体に掛かっているところなど、実に描写が細かい。

マグマライザーが立ち往生していると、背後で何か大きなものが動く音が聞こえてくる。
ダン「しまった、罠だ!」
ダン、慌ててレバーを入れ直してマグマライザーをバックさせるが、天井からギロチンのように降りてきたシャッターに退路を閉ざされてしまう。
アマギ「どうする?」
ソガ「なんとか脱出しなきゃ!」
予想外の事態に、不安と緊張のないまぜになった目を見交わすダンたち。背後では、アンヌが「本部、応答願います!」と繰り返し叫んでいるが、シャッターで電波が遮断されているのか、何度呼びかけてもキリヤマの応答はない。
もっとも、この状況では、本部と連絡がついてもどうしようもないのだが。
後編に続く。