第22話「惑星が並ぶ日 なにかが起こる」(1980年8月27日)
「学園篇」では、生徒たちの個人的な悩みや、猛と京子先生の淡い恋の行方など、極めて身近な問題がテーマとして扱われていたが、その反動でもあるまいが、路線変更後の「UGM篇」においては、やたらスケールのでかい話が多い気がする。
しかし、同時に、19話や20話、そしてこの22話など、スケールを大きくし過ぎて、アイディアを番組の中で消化し切れていないエピソードも目立つ。
ストーリーがただ筋を追うだけで精一杯であっても、キャラクターが魅力的ならば、まだ見れるんだけどね。
さて、冒頭、中部山岳地帯の大ヶ岳が謎の大爆発を起こす。オオヤマは直ちに猛たち4人に出動を命じる。

ユリ子「あ、矢的隊員、今日の天気は晴れのち曇り、頑張って!」
いつものように、廊下で擦れ違ったUGMのお天気お姉さんのユリ子が明るく猛に声を掛ける。
ほんと癒される笑顔だが、例によって彼女の出番はこれだけ。
本部に残ったオオヤマが、ニシハラ科学主任とゴルフの話をしていると(註・してません)、モニターの前に座っていたエミが、おっぱいをぶるるんさせながら(註・させてません)叫ぶ。

エミ「キャップ、未確認飛行物体です!」
大きなボールのような物体が雲を突き抜け上昇していく様子を呆気に取られて見詰める三人。
オオヤマ「これは一体……」

その球体は、最後には眩しく光る太陽を遮るような配置になり、人工的な日蝕が起きる。
……いや、日蝕ってこういう風にして発生するんじゃないと思うんですが。
つまり、たとえば、地上にいる人がサングラスを太陽にかざせば、その人の目には世界は暗くなるが、周りにいる人たちには何の関係もないのと一緒で(たとえが変かな)。
ニシハラ「人工衛星だ。何者かが火山爆発を起こして、その威力で、この球体を打ち上げたに違いありません」
エミ「誰が何の為にですか?」
ニシハラ「とにかく、この球体が日蝕を起こしてることは確かです」
山の麓でキャンプをしていた数人の男女が、急に辺りが暗くなったので騒いでいる。そこへUGMのメンバーが駆けつけ、みんなを安心させる。
猛たちは森の中を走っていく白い仮面と白いローブをまとった怪しい集団を目撃し、追跡する。
だが、それは猛たちを洞窟の中におびき寄せる為の罠だった。4人はまんまとその罠にかかり、落とし穴に落ちて、意識を失う。

猛たちが目を覚ますと、彼らはがらんとした神殿のような建物の中にいて、柱に鎖で縛り付けられていた。
4人が目を覚ますのを待っていたかのように、銃を持ったさっきの連中が出て来て、4人に銃口を向ける。
イトウ「俺たちを殺す気か?」
イーナス「お待ちなさい!」
と、彼らの背後から、ひとりだけ素顔を晒している女性が凛とした声を発して処刑を止める。

女王然とした威厳を持つその女性は、静かに彼らの前までやってくると、イトウ、猛の順にその顔をテストするように見ていく。
イトウに対しては「ブサイク!」と言うだけだったが(註・言ってません)、猛の顔を見ると、無言で彼を指差し、仮面の男たちに猛の鎖を解いて連れてくるよう命じる。

猛、がらんとした玉座のようなところへ連れて行かれる。女性は、手を振って部下たちを下がらせる。
猛、ヘルメットを脱いで、「あなたは一体何者なんだ?」と尋ねる。
イーナス「早くお帰りなさい」
猛「帰る?」
イーナス「宇宙へです。あなたは他の三人とは違い、地球人ではありませんね」
いきなり正体を見抜かれて、さすがの猛もギョッとする。

猛「何故それが?」
イーナス「分かります、心の目で見るから……地球人とは違うあなたの心も見えます。私はイーナス」
猛「え、良いナス?」 イーナス「死刑!」 じゃなくて、
猛「あなたたちも宇宙から?」
イーナス「いいえ、私たちは地球人」
猛「えっ、地球人?」
イーナス「地上に住む人々以上に地球人なのです。地上には約40億の人々が住んでいます。地下にも同じくらいの生命があるのです」
女王イーナスを演じるのは美女シリーズ「悪魔のような美女」で、はかなげなヌードを披露されていた加山麗子さん。
イーナスは、自分たちが、はるか昔、氷河期を避けて地下に逃れた者たちの子孫だと説明する。
……ま、要するに今回は「ノンマルトの使者」みたいなプロットなのである。
はっきり言って、ドラマとしての出来はこちらの方が大きく劣っているが。

イーナス「地底崩壊の日が刻一刻と近付いているのです」
猛「どういうことなんですか」
イーナス「地上の人々が、原因です。彼らは石油を掘ります、金や銀を掘ります、地下水をくみ上げます。その為に地層が崩れ、地底が次第に歪み始めたのです。2年後には確実に崩れ去ってしまうのです」
猛「2年後と言うと?」
イーナス「惑星直列の年です」

イーナス「太陽系9つの惑星が一直線に並ぶ、惑星直列!」
イーナスは壁のスクリーンに太陽系の模式図を表示して、「惑星直列」について解説する。
惑星直列、すなわちグランドクロス、SF映画などでちょくちょく題材にされる天体現象で、実際に2年後の1982年に、そう言う現象が観測されたらしい。だが、仮に惑星直列が起きても、地球への影響は極めて軽微で、イーナスが続けて言う、
「並んだ惑星の引力が作用しあって太陽黒点の動きが活発になり、その結果、帯電粒子を含んだ風が地球に押し寄せてきます。すると地球は気流が乱され、天変地異、異常気象や大地震が起こります。そうなれば既に歪みを生じている地底は崩壊するばかり」と言うような事態には
まずならないそうです。
もっとも、惑星直列が起きようと起きまいと、現状ではいずれ地底帝国が崩壊してしまうのは確かであったろう。

イーナス「私たちは運命の日が来る前に、地上に脱出しようと考えました。でも地下に住む私たちにとって地上の最大の問題は太陽の光があることでした」
猛「人工衛星を起こして日蝕を起こしたのはあなたたちだったんですね?」
イーナス「そうです、光をなくし、闇の世界を築く為に試験的に打ち上げたのです」
彼らは第二、第三の人工衛星を打ち上げて、やがては世界中を暗黒の世界に塗り替えるつもりなのだ。
猛「でも、地上の人々の生活はどうなるんです? お願いします。地上の人々と話し合って下さい」
イーナス「でも、どうすれば?」
猛「僕があなたたちのことを地上の人々に話します、話し合えるようにします。平和を愛するあなたたち、40億の地底の人々の為でもあると思います」
しかし、太陽の光も差さない地底世界で、40億もの人間が暮らしていると言うのは、いくらフィクションとは言え説得力のカケラもない話だ。
せめて40万人くらいにしておけば、以降の展開にも多少の現実味があったと思うのだが……。
とにかく、猛はイーナスの許可を得て、オオヤマに連絡して事情を話す。
過去のウルトラシリーズでは、まず主人公が上司(隊長)にそんな突飛な話を信じさせるのに多大な労力と時間を費やすのが常であったが、

オオヤマ「話は分かった、しかし、矢的……」
ええーっ、分かっちゃったのぉー? と、思わずびっくりしてしまうほどに、1980年代の隊長は物分りが良いのだった。
だが、オオヤマは、既にあの人工衛星に対する攻撃命令が下されていると告げる。
オオヤマ「出来る限りの手は打ってみる。すぐにこっちへ戻ってきてくれ。直接、説明が聞きたい」
猛「はい、わかりました」
即答したものの、地底人があっさり猛を解放するとは思えない……と思いきや、次のシーンでは戦闘機に乗った猛が鼻歌交じりでUGMへ向かっている姿が映し出され、これまた拍子抜けしてしまう。
まぁ、イトウたちは依然として人質だから、猛を解放しても無茶なことはしないだろうと考えたのだろう。

エミ「キャップ、人工衛星の組成データが出ました。超合金、厚さ1メートルの球体内部は空洞です。内部にはコンピューター及び制動機が設置されています」
オオヤマ、説明を聞きながら、抜かりなくエミの巨乳に視線を注ぐ。

イシジマ「オオヤマ君、君は一体何をモタモタしてるんだ、ミサイル発射時刻じゃないか。西日本では既に32時間も暗闇が続いてるんだ。住民のパニック状態も続いてる。交通事故の被害などが続出してるんだ!」
そこへ、17話にも登場した、ナンゴウ長官とイシジマ副官のコンビが入ってくる。
入ってくるなりイシジマはオオヤマを叱り飛ばすが、ナンゴウは落ち着き払っていた。
少し遅れて猛が帰ってくる。

イシジマ「君か、大法螺吹きは?」
猛「私の報告は法螺でも嘘でもありません!」
イシジマ「だったらなお、こちらが先手を打つ必要がある! 人工衛星を打ち上げるような科学力をもってるやつらだ、まごまごしてたらやられてしまう」
猛「それじゃあ戦争じゃないですか!」
イシジマ「戦争はもう始まってる!」
UGMでは珍しいタカ派のイシジマと、激しく言い争う猛。
ナンゴウはあくまで猛たちの肩を持つ姿勢を示すが、そこへ国家最高会議からの通達が来る。
ナンゴウ「国家最高会議の結論が出た。ミサイル発射は中止できない……」

猛「えっ、キャップ!」
オオヤマ「国家最高会議長に会ってみる」
猛「僕は地底に戻ります、戦争だけは避けてください」
ナンゴウ「オオヤマ君、ここは私が引き受ける。どんなことがあってもミサイル発射のボタンは押させない」
上層部からの結論を聞いても、ナンゴウ長官の態度は変わらず、力強く約束してくれる。
……しかし、ここまで物分りが良い上司と言うのも、ドラマとしては逆に物足りない感じがするなぁ。
オオヤマ「長官!」
オオヤマ、ナンゴウに感謝のまなざしを向けて一礼すると、猛とともに足早に作戦室を出て行く。
オオヤマは、国家最高会議へ、猛は、地底世界へとんぼ返りする。

イーナス「どうでしたか?」
猛「時間を下さい、突然現れたあなた方に地上の人は驚いてるんです。冷静になるまでの時間を下さい、必ず話し合いに応ずる筈です。少なくとも地上の人々からは攻撃はしません」
イーナス「信じています」
で、イーナスはイーナスで妙に物分りが良いナスなのだった。
まぁ、この場合、地上の人々を、と言うより、「ウルトラマン80を信じています」と言いたかったのだろう。
それにしても、折角加山さんが演じているのに、こんな露出度の低い衣装はつまらないよね。
猛「地球上には夜と昼があります。夜と昼とを住み分けて仲良くやっていける筈です」
イーナス「私もそうなるように信じたいと思います」
猛はさらに、地上人と地底人が交替制で地上に住んだらどうかと言う提案をするが、ちょっと考えればそれが不可能な案であることくらい分かりそうなものなのに、イーナスも、後ろで聞いているイトウたちも、何の反論もしないと言うのは物足りない。
これも、さっき言ったように地底人の人口が40万くらいだったら、まだ説得力があるんだけどね。

オオヤマ「議長、ここでミサイルを発射することが、人類の破滅につながるかも知れないんです!」
議長「……」
一方、オオヤマは国会内の国家最高会議に出向き、議長(首相?)に向かって熱弁を振るっていた。
ここも、オオヤマが一方的に喋るだけで、議長や出席者が何の反論もしないと言うのが物足りない。
とにかく、今回は、何もかもが物足りないエピソードなのだった。
オオヤマ「少なくとも我々の知らなかった我々の兄弟、地底に住む人たちの破滅に繋がるんです!」
オオヤマの熱弁を黙って聞いていた議長は、「分かった、ミサイルの発射は中止だ!」と、これまたあっさりオオヤマの訴えを受け入れてくれる。

オオヤマの声「長官、オオヤマです、ミサイルの発射は中止されました」
ナンゴウ「そうか……そりゃ良かった」
オオヤマから知らせを受けて、ナンゴウもエミも愁眉を開く。
猛も、戦争が回避されたと叫び、イトウたちや地底人たちを喜ばせる。
だが……、

モニターで見た地底人の恐ろしげな様子……と言っても、さっきのキャンパーたちに絡んでただけだが……が脳裏から離れないイシジマは、不意にエミの銃を奪い、抵抗するエミを殴り倒す。
そう言う状況でも、四つん這いになったエミ隊員のお尻をしっかり目に焼き付けておくナンゴウであった。
イシジマは彼を止めようとする隊員たちを次々と殴り倒す。
イシジマ「我慢できない、殺される前に殺すんだ。殺し尽くすんだーっ!」
ナンゴウ「馬鹿な真似はよせ!」
イシジマ「やられてしまう。このままでは地底人にやられてしまう!」
ナンゴウ「目を覚ませ、イシジマ!」
地底人に対する恐怖で半狂乱になったイシジマ、あろうことか、ナンゴウ長官に発砲する。ナンゴウ、右肩を撃たれてその場に倒れる。

イシジマ「ミサイル発射、ミサイル発射ーっ!」
通信機に向かって絶叫するイシジマ。
考えたら、今回のエピソードは「ノンマルトの使者」のような征服者と先住民の争いと言うより、冷戦時代の米ソの首脳部の、「敵にミサイルを撃たれる前にこちらがミサイルを撃たなければ……」と言う切羽詰った心理状態を表現したかったのかも知れない。
ミサイルによって人工衛星は爆破され、日蝕も解除される。
イシジマはさらに、血走った目で、中部山岳エリアに対して防衛軍による総攻撃を命じる。

エミ「何を言うんです、チーフや、矢的隊員たちが……」
イシジマ「ミサイル発射ーっ! 地球防衛軍全軍出撃ーっ!」
エミが起き上がり、必死にイシジマから銃を奪い返そうとする。
こんな制服越しでも、その豊満なボディが目に浮かぶようである。
二人の争う声に、ナンゴウも目を覚まし、すかさずイシジマを麻酔銃で撃ち倒す。

イーナス「人工衛星が爆破されたわ!」
猛「そんな」
イーナス「地上からの攻撃だわ」
猛「何かの間違いです。僕をもう一度地上にやらせてください」
猛、諦めずにイーナスに訴えるが、イーナスは悲しそうに首を横に振るだけ。
同時に、頭上で、怪獣の鳴き声のような音が響き渡る。
イーナス「ゴモラ! 今の攻撃で目を覚ましたんだわ」
猛「なんのことですか?」
イーナス「昔、やはり地底に潜った動物が、地熱や
なんかの影響で怪獣に育ってしまったんです」
こんなシリアスな場面なのに、「なんかの」と言う言い草はないのでわ?
やがて、天井を突き破って巨大な怪獣の足が降ってくる。
イーナスの口ぶりでは、別に彼らはゴモラを使って地上を攻撃させようなどと考えていた訳ではないらしい。
要するに、ラストの80とのバトルの為に、強引に引っ張り出されたような怪獣なのだった。

混乱の中、イーナスは「さよーならー」と、猛に向かって緊張感のない別れの言葉を発しながら、何処かへ行ってしまう。
そして、激しい空爆を加える戦闘機の群れに対し、地底人の怒りが乗り移ったかのように、ゴモラ2世が猛々しい形相で、地上に現れる。
……が、

肝心の造型が、いまひとつパッとしないゴモラ2世なのだった(あくまで管理人の主観です)。
目に力がないと言うか……、初代ゴモラの秀逸なデザインとはくらぶべくもない。

また、別に地底人に改造された訳でもないのに、手首からミサイルを発射して戦闘機を撃ち落としたりするのもやや興醒めである。
で、まあ、順調に戦闘機が全滅した後、瓦礫に埋もれていた猛が80に変身し、

空中に舞い上がってから、得意の飛び蹴りをその顔面に落とす。
だが、ゴモラの名を受け継ぐだけあり、80の蹴りを何発も喰らってもビクともしない。

反撃に転じると、角から三日月形のビームを出したり、青白いリングビームで80の体を拘束したり、角の先端からオレンジ色の電撃ビームを放ったり、ゴモラには似つかわしくないような、多彩なビーム攻撃を見せる。
しかし、最後はあっさり逆転されて、80のサクシウム光線を頭に受けて絶命する。

今回は爆発したり消えたりせず、ゴモラ2世の巨体がずぶずぶとそのまま地中に沈んでいく様子が映される。
これによって大ヶ岳そのものが崩れて行き、大量の土砂が洞窟や、その奥の居住区を跡形もなく押し潰してしまう。

イトウ「彼女たちはまた地底の奥深くへ帰っていった」
ハラダ「しかし、2年後に確実に惑星は直列します」
タジマ「それまでに彼らは再び攻撃してくるのでは?」
猛「いえ、地球は人間だけのものじゃありません」
イトウ「そうだ、今度は仲間として地底のイーナスたちと会いたいものだな」
こうして根本的な問題は解決しないまま、なんとなく事件は終息してしまう。
猛は、心の中で(惑星直列の被害を防がねば……)と誓うのであった。
誓うだけなら金はかからない。
……以上、最初に書いたように、話のスケールはやけにでかいが、それが優れたドラマとして成立しているとは言い難い内容だった。