第25話「立ちつくす三姉妹!生きていた父!?」(1987年6月4日)
夜、森の中を疾走するひとりの忍び。
その前に現れたのは、笠をかぶり、布で顔を隠しているが、明らかにくの一とおぼしき刺客。
両者は無言で激しく格闘するが、最後は忍びが、くの一の投げた馬蹄型の手裏剣で体を木の根元に釘付けにされて勝負あり。
戦いの後、同じ装束をしたくの一が現れ、特別な銅鏡に相手の胸にある梵字を写し、鏡の裏側から針を刺す。
すると、離れた場所にいた忍びも、苦しそうにうめき声を上げてばったり息絶えてしまう。
恐るべき妖術であった。
……と言いたいところが、この場合、既に相手を拘束しているのだから、そんな七面倒臭いことをせずとも、さっさとピストルで撃ち殺せば済む話である(くの一がピストルなんか使うかっ)
タイトルの後、

学校の屋上で、授業中だというのに堂々と日向ぼっこをしている由真を、足の方からまともに映した、ちょっとドキッとするカットから入る。
残念ながら、この時代の制服のスカートは絶望的なまでに長いので、見えてはいけない部分はスカートの裾で完全にガードされている。これが、80年代のドラマのつらいところである。
と、そこへヒデが上がって来て、由真を見付けると慌てて駆け寄り、揺り起こす。

ヒデ「由真姉御、起きて下さいよ」
由真「なんだよー、うるせえなー」
ヒデ「なんだよ、じゃないでしょう。お墓参り行くんでしょう?」
ヒデの言葉に、由真はパッと目を開き、上半身を起こす。
由真「やっべーっ! 授業が終わったら起こしに来いっつっただろう? 姉貴たちは?」
ヒデ「先に行っちゃいましたよ」
由真はすぐに走り出し、非常階段をタカタカ降りて行くが、地上に降りたところで、ふと誰かの視線を感じ、後ろを振り向く。

と、建物の陰に立ってこちらを見ている濃い顔の男性がいた。
驚くべきことに、その濃い顔は、紛れもなく第1話で家と一緒に爆死した(笑)筈の、風間三姉妹の父親・小太郎であった!

由真「おやじっ!」
さすがの由真も一瞬その場に棒立ちになるが、すぐ我にかえってその男を追いかける。
男も、素早く身を翻して走り去ってしまうが、由真は、その手首にかつて父親が使っていたのと同じ腕時計が巻かれているのをしっかり目に留めていた。

同じ頃、学校の近くの公園で、依田先生こと般若は、部下から「地蔵組の飛燕」なる忍びが何者かによって殺されたと言う報告を受け、険しい顔になっていた。
般若「次は水組・水天を狙うという意味か」
部下「はい、それで、水天様が大至急お目に掛かりたいと……」
部下が持参した紙には、地獄の番人である牛頭(ごず)・馬頭(めず)と共に、飛燕とは別の梵字が記されていた。無論、飛燕とは、アバンタイトルで殺されたあの忍びのことである。
風魔の幹部は、それぞれ唯たちと同じように宿命の梵字を体のどこかに持っているのだろう。

さて、結花と唯は由真をほっといて二人だけで父親の墓参りに訪れていた。
線香に火をつけ、手を合わせる彼らの左、他家の墓石の陰に、さっきの小太郎そっくりの男性が「志村、うしろ!」状態で立っていたが、二人は全く気付かない。

結花「唯、どうしたの?」
唯「うん、父ちゃんて、どんげな人やったかなぁと思って……こうやって手を合わせちょっても、わち、父ちゃんのことなんも分からんかい」
手を合わせたまま、神妙な顔付きで述懐する唯。
こうして見ると、浅香唯さんの手は大きいなぁ。

結花「そうねえ、そうだったわねえ。私たちが小さい時からあまり家にいない人だったわ。今考えると、きっと影と戦ってたのね。でも、家に居る時はとっても優しかったよ。私や由真を山登りやキャンプに連れて行ってくれたわ……」
結花の台詞に合わせて、小太郎にまつわるバンクフィルムが一通り流れる。

唯、姉の言葉に耳を傾けていたが、ふとその顔を見て、左目から一筋涙がこぼれているのに気付き、「もういい、もういいよ、結花姉ちゃん! 思い出させてごめん……」と、慌てて姉の腕を掴んで叫ぶ。
結花「ううん、謝るのは私の方よ……私には思い出があるけど、あんたには何もないんだもんね。唯の方がつらい筈なのに……もっと父さんや母さんのこと話してあげたいんだけど」
唯「いいんじゃ、わちは父ちゃんが戦っちょった相手と戦っちょるだけで、それだけでわちは……」
お互い、自分のことより相手の気持ちを尊重して思いやる、うるわしい姉妹愛であった。
結花「唯……」
唯「さ、帰ろう。はよう帰らんと暗くなってしまう」
唯はわざと明るい声で姉を促して、先に墓の前から離れる。
結花はもう一度墓の前にしゃがむが、ここでやっと、さっきからずーっと目に付くように立ってるのになかなか気付いて貰えず、かと言ってこちらから声を掛ける訳にも行かず、不安で内心、泣き出しそうになっていた小太郎ライクな男性の存在に気付く。
男は(内心、ホッとしながら)すぐに向こうへ走り去ってしまう。
ほんと、最後まで誰にも気付かれないままだったら、立ち直れないほどのダメージを受けていたことだろう。
それにしても、その男の行動は、二人を監視したり見守ったりしていると言うより、自分の濃い顔を彼らに見せ付ける為にやっているように見えたが……?
唯「結花姉ちゃん、どげんしたと?」
結花「ううん、なんでもない」
由真なら、即座にべらべら喋ってしまいそうな出来事だったが、慎重で思慮深い結花は、唯には何も言わず、今見たことは差し当たり、自分の胸にしまっておくことにする。

牛頭「外法衆・頭、牛頭」
馬頭「馬頭でございます」
翔「なかなかの使い手のようではないか」
ミヨズ「はい、この二人、風魔・地蔵組・飛燕を倒したそうにございます」
翔「ほー」
牛頭「次は水組・水天を倒してご覧に入れまする」
翔「頼もしいのう」
牛頭「我ら外法衆は、風魔を封じる秘術を受け継いでおりますゆえ」
さて、あの二人組の刺客は、翔の前にかしこまり、自己紹介していた。
彼らは正式に影に属している訳ではないようだが、同じ悪の忍びとして風魔を付け狙っているらしい。

牛頭がそう言って懐から取り出し見せたのは、飛燕の命を奪ったあの銅鏡であった。
翔「それが噂に聞く鏡か!」
牛頭「外法衆に伝わる、裏縫いの鏡」
翔も実際に目にするのは初めてで、珍しく目を見張って驚きの声を上げる。

翔は、白い紙にひとつの梵字を書いてオトヒに渡し、二人に、その秘術を実演してくれるよう頼む。
これに、「勝訴」とか書かれていたら、牛頭・馬頭のラブリー忍者姉妹はどういう反応を示しただろう?

牛頭「はっ」
牛頭はお安い御用です! と言う風に、その鏡にその梵字を写し、その状態のまま、鏡の後ろから針を突き刺す。
すると、飛燕の時と同様、離れた場所にある梵字がパッと血に染まる。
翔「どうじゃろう? 水組の水天などより、その梵字を額に抱く娘を倒さぬか?」
彼らの術を目の当たりにした翔は、破格の待遇を条件に、その梵字を持つ風魔の忍び……すなわち、風間唯の抹殺を依頼する。
さて、そんなことは露知らず、結花と唯が墓参りから自宅へ帰ってくると、由真は仏壇の前に座り込んでクシュンクシュンと鼻を鳴らして泣いているではないか。

結花「どうしたの?」
由真「姉貴、生きてる……見たんだよ、あたし、この目で見たんだ、おやじは、おやじは生きてる!」
由真はぼろぼろと涙をこぼしながら振り向くと、悲痛な叫び声を搾り出す。

由真「見たんだよ、見たんだよ、姉貴!」
そして結花の膝に顔を埋めて、幼子のように泣きじゃくる……、普段の由真からはおよそ懸け離れたしおらしい態度に、結花と唯も咄嗟に言うべき言葉が見付からず、困惑する。
結花が、由真を好きなだけ泣かせてやりつつ、ぼんやりと暗い眼差しを仏壇に向けると、

そこには、遺影にしては生命力のありすぎるおやじ(伊藤敏八)が、
「仕事の後のビールが旨い!」とでも言いたそうな顔でこちらを見ていた。チーン。
その夜、唯が同居を始めて以来の物静かな時間が風間家を包んでいた。
唯は唯で、まだ見ぬ父親の面影を心に描き(遺影はうんざりするほど見てるが、唯は生きている小太郎と会ったことがないのだ)、

結花と由真は、布団を並べて横になり、天井を見上げながらこの問題について話していた。
学校での出来事を熱っぽく語る由真の話を黙って聞いていた結花も、やがてぽつりと「私も見たのよ、お墓のそばで……」と、打ち明ける。それを聞いた由真、興奮気味に布団の上に起き直る。
由真「じゃあ、やっぱりおやじは生きてるんだね?」
結花「さあ、それはどうかなぁ……あの時のこと、もう一度思い出して御覧なさい」
姉に言われて、由真は反射的に、第1話の小太郎の爆死シーン(笑)を思い出し、またしても涙を溢れさせる。
確かにあの時、偽装ではなく父親は死んだ筈ではないかと結花は冷静に指摘する。

由真「だって、姉貴だって今日……」
結花「見たわ、だけど自信がないの、私にはあれが父さんだって言い切る自信が……」
由真「そんな、おやじの背中忘れたって言うのかよ」
結花「覚えてるわ、はっきりと……今でもこの手に父さんの背中の温かさが蘇ってくるわ」
結花はそう言いつつ、もし父親が生きていたのだとしても、今まで何の連絡もなかったと言うことは何か深い事情がある筈なのだから、今の状態のまま耐えるしかないと、いかにも忍びらしいことを言う。
……もっとも、小太郎に深い事情があるのなら、なおさら、向こうからわざわざ顔を見せに来るというのは明らかに不自然なんだけどね。
結花は最後に、すべてのことが影の仕組んだ罠だという可能性にも言及する。
由真「そんな……もういい、もういいよっ」
感情に左右されず、あくまで理性的な姉の態度に、由真は気分を害したように叫ぶと、布団を頭から被って一方的に議論を打ち切ってしまう。

翌日、久しぶりに登場の小坂先生(紀ノ川瞳)が、女の子らしい字で黒板にある名前を書いていた。
本当は、般若が担任なのだが、今日は休みと言うことで小坂先生が教壇に立っているのだ。
管理人、こんな色っぽい美人教師が準レギュラーでいると言うのに、ろくにカメラの前に立たせなかった当時のスタッフの見識を疑う。

もっとも今回は、その横に彼女の美貌すら吹っ飛んでしまいそうなキャピキャピした美少女が立っていた。
学園ドラマのマストアイテム、転校生である。
小坂「西村かおるさんです」
かおる「西村かおると申します。どうぞよろしく!」
「3」のゲストの中でもぶっちぎりに可愛い西村かおる、演じるのは「ポニーテールはふり向かない」「機動刑事ジバン」などの榎田路子さん。
ドラマではこういう時、ほんとは大して可愛くもないのに「そう言う設定だから」と言うだけで、ちやほやされるケースがあるが、彼女の場合、教室の奥の方からゴロウの「奇麗だなー!」と言う歓声が上がるのも納得の可愛らしさである。
一方、由真の方は、授業も上の空で人目も気にせず四六時中泣きべそをかいている状態で、同じクラスの結花(彼女は留年しているのだ)が心配する。
休み時間、かおるが屋上の手すりにもたれて何か物思いに耽っているのを、唯が嬉しそうな顔で抜き足差し足忍び足で、音もなく背後から近付き、背中をドンと押してやろうとするが(ちょっと危険な行為)、

その直前、気配に気付いたかおるがパッと鋭い目付きで振り返る。
唯、鋭い視線に射竦められて思わず固まる。

が、かおるもすぐに明るい笑顔になって「風間さん」と、唯を安心させようとする。
いやー、ほんと、画像の貼り甲斐のある美しさである。

唯「どげんしたと? こんなげなところにひとりで」
かおる「なんか教室に居づらくて……」
唯「誰か、いじめたと?」
かおる「そんなんじゃないんだけど」
優しい唯は、来たばかりのかおるを気遣い、自分のアンパンを分けてやったりする。
しかし、どう見ても唯と同学年には見えんな……。でも、女優さんの年齢は同じなんだけどね。

唯、自分がスケバンであり、姉たちも同様、スケバンであることを告げ、かおるをびっくりさせていた。
そんな唯を見詰めるかおるの目付きには、やはり何かただならぬものがあった……。
ま、特に唯の額に視線が向けられているので、彼女こそ他ならぬ刺客シスターズの妹・馬頭であることは視聴者にもすぐ分かるようになっている。

さて、結花は休み時間に由真を校外へ連れ出すと、訳も言わずにいきなりその顔を引っ叩く。
由真「なんなんだよ、いきなりぃ」
結花「あんたがしっかりしないからよ! 良い? 父さんは死んだの、もうこの世には居ないの!」
由真「そんなぁ、だって姉貴も……」
言い返そうとする由真を再び結花が殴る。今度は由真がそのまま地面に倒れてしまうほど強烈な一撃だった。

結花「私たちにはやらなきゃいけないことがある筈でしょ! しっかりしなさいよ! あんたが分かるまで何度だって叩くわよ!」
そこへ唯が飛び込んできて、結花に抱き付くようにして止めようとする。
由真は「姉貴は冷てえよ!」と、目を潤ませながら叫ぶと、そのまま走り去ってしまう。
唯「由真姉ちゃん! ……ほんとじゃ、ほんとに結花姉ちゃんはつめたか!」
唯、怒りの形相で結花を振り向くが、見れば結花も目から涙を流しているではないか。
唯「結花姉ちゃん……」
結花「私だって、父さんのことは……でも」
由真はそのまま学校に戻らず、ひとり、父親の眠っている筈の墓に向かう。
物陰から、その様子をじっと見ている牛頭、馬頭。

牛頭「唯の額の梵字、怒った時に現れるそうだ。ならば唯を怒らせて見るのも手かも知れん」
彼らが「裏縫いの鏡」で風魔を殺す為には、その体にある梵字を鏡に写さないといけないのだ。
二人はそれぞれ武器を手に由真に襲い掛かる。
由真も応戦するが、二人は今まで戦ってきた敵の中でも最強クラスの敵であった。

馬蹄型の手裏剣をまともに背中に打ち込まれ、意識を失って倒れ込む。
絶体絶命のピンチであったが、そこへ、白い行者姿の男と数人の忍びが現れ、由真を守って二人に攻撃を仕掛けてくる。
忍びは無論、風魔の下忍たちであったろうが、姉妹は凄まじい体術を駆使して彼らを次々と片付けていく。

その隙に、行者姿の男は由真を背中におぶって走り出す。
微かに意識のある由真には、その逞しい背中に体を預けて揺られているうちに、

あたかも、父親の背中におんぶされているような懐かしさが感じられるのだった。
それにしても、尻フェチにとってはなかなか目の保養になるカットです。

由真「おやじ、助けてくれたんだね……」
夢現の境にある由真、途切れ途切れの声でつぶやくが、由真を背負っているのは紛れもなく、小太郎の濃い顔であった。
さて、二人はなんとか牛頭たちの追撃を免れるものの、由真はかなりの重傷で、即病院に収容される。結花たちが急いで枕元に駆けつける。病室には般若の姿もあった。

結花「何、何が言いたいの?」
由真「おやじ、おやじが……」
由真が苦しげな声と目線で示した方を、結花と唯が振り向けば、果たして、そこには小太郎と瓜二つの濃い顔が立っていた。
果たしてこの男は本物の小太郎なのか、それとも……と言う謎をキープしたまま、26話へ続く。