第17話「最後のグラウンド」(1985年2月2日)
の続きです。
翌日、滝沢は早速そのアイディアを実行に移す。

滝沢「今日からお前たち全員に、日記を書くことを命じる」
大木「冗談じゃねえよ、そんな女みたいな真似、出来ねえよ」
加代「あらぁ、日記書くのがどうして女みたいなの?」
大木「そりゃあ……とにかく俺は字ぃ書くの苦手だからよ」
それにしても、画面が真っ黒だね。
光男「先生、なんで急にそんなこと思い付いたんですか?」
光男の核心を衝く質問に対し滝沢は、

娘の絵日記からヒントを得たとはおくびにも出さず、
滝沢「自分を見詰め直す為だ!」 いけしゃあしゃあと言うのだった。

滝沢「それからもうひとつ、日記ならお前たち普段口に出して言えないことも素直に書ける筈だ。たとえば、今のラグビー部のありかたに対する不平や不満なんかもな!」
滝沢、そう説明しながら、さっさとノートを配り始める。

滝沢「俺は今まで最善と思う方針でお前たちを指導してきた、しかし……」
清美「あっ、配ります!」
滝沢「人間にはどうしてもひとよりよがりというものがある。俺がベストだと信じていることでも、お前たちの間には俺に対して批判的なものもいるかもしれん、そういうお前たちの素直な声が聞きたいんだ」
すかさず滝沢の手からノートを取って、配るのを手伝う清美が可愛いのである!

だが、部員たちはその日記を滝沢に読まれると知って、ますます気が進まなさそうな顔になる。
栗原「日記と言うのは本来人に見せないものでしょう。それを先生に読まれると思ったらカッコイイことしか書かなくなると思います」
滝沢「まぁまぁ、それでも構わん。初めはカッコつけるつもりで書いていてもそのうち必ず本心が出てくるもんだ。
勿論、俺はそれを読んだからといって、お前たちに対する態度を変えたりはせん。たとえどんなにボロクソに書かれてもな!」
滝沢の最後の言葉を翻訳すると、「ボロクソに書いたら殺すぞ」と言う意味になる。

清美「ねーねーねーねーねーねー、交換日記ってのはどう?」
大木「交換日記ぃ?」
明子「あー、あれ結構面白いよ。意外と本音が出ちゃってさ」
台詞を言う前に唇を舌で湿らせている清美が可愛いのである!
滝沢は清美のアイディアを採用し、「滝沢と部員たちとの愛の交換日記」を強引にスタートさせる。
その日から、滝沢には、教師として、監督しての仕事に加え、毎日30冊ものノートを読んでは、その返事を書くという気の遠くなるような仕事を抱えるようになる。
ま、ドラマではそのふりをしているだけだから良いけど、実際にそんなことを始めたら、とてもじゃないが身が持たないと思うよ。
ナレーションの「誤字脱字のたぐいも呆れるほどであった……」と言う台詞にあわせて、

ある部員の日記の文面がチラッと映るのだが、仔細に見ると、
交換→交渙 本音→本根 不満→不万 などと言う、
「お前、むりやり間違えてるだろ?」と、突っ込みたくなるような誤字が散見される。
しかも「1年の時はリンチみたいなことを……」と言う内容から、3年生だと言うことが分かる(滝沢が赴任した時の暴力的なラグビー部のことを知っているのは当時の1年生で現在の3年生、そして留年している光男しかいないからである)。
高3で、「不万」とか書いてて、よく前回の中間テストを切り抜けられたな……。
さて、最初は当たり障りのない内容だった部員たちの日記だが、徐々に本音が垣間見えるようになる。
ある日、田村と言う部員は、日記の中で、自分はしょっちゅう滝沢に叱られていて、そのうちスタンドオフのポジションを1年の平山に奪われるのではないかと言う不安を吐露していた。
滝沢は「スタンドオフって何?」と思いながら、返事をしたためる。

滝沢「君は強くなりたい、うまくなりたい、そればかりを考えてるんじゃないかな?(中略)ランニングやタイヤ引きのウェイトトレーニングを人一倍やるしかない」
ラグビーのことについてはすらすらと答えを出せる滝沢であった。
日記を返した翌日、滝沢が学校に行くと、

田村は、滝沢に言われたとおり、タイヤ引きを黙々と行っているのだった。チーン。

それを見た滝沢は、
(気の毒に……)と、心の中でつぶやくのだった。
……じゃなくて、その素直で真摯な姿勢に感動しているのである。
しかし、滝沢、こんなこと(註・人に言われたことをすぐ実行しちゃう)になるんだったら、
「足腰を鍛えるにはフラフープしかないよ! 決まりだよ!」 と書いておくんだったと、ちょっぴり後悔するのだった。
一方、光男は、大木の態度について率直に不満をぶちまけていた。
たとえば、練習の合間、圭子が大木にレモンの輪切り(?)を渡そうとすると、それを乱暴に振り払うとか、大木の圭子および光男に対する拗ねた子供のような態度が事細かに書いてあった。
また、光男は、滝沢がそんな大木の肩ばかり持っていると、滝沢に対する批判も記していた。
さっきは何を書いてもOKだとか言ってたくせに、それを読んだ滝沢は直接光男を呼び出して説教する。

光男「間違ってる? 俺の方が悪いっつんですか?」
滝沢「いや、お前は誤解をしてるって言ってるんだ。森田、俺は誰もえこひいきしたりはせん、昨日お前を叱ったのは、明らかにお前の方がミスをしたからだ」
滝沢は、光男にキャプテンとしての自覚を持って、大木の態度にも我慢するよう諭すが、光男は無言で滝沢の前から立ち去って行く。
それがきっかけで、光男は日記を提出しなくなる。
そして問題の大木は、

「別に書くことなし」→「別になし」→「なし」と言う風に、日記を書く気をまったく見せないのだった。
なんか、「ドラえもん」の、何のエピソードか忘れたが、のび太が付けてた日記を思い出すなぁ。
のび太の場合、最初の1月1日は詳しく書いていたが、2日になると「朝起きて昼寝して夜寝た」、3日に「昨日と同じ」、4日目以降は白紙と言う、絵に描いたような三日坊主ぶりを披露していた。
滝沢はそんな手抜き日記に対しても、丹念に返事を書く。
滝沢「君はいつも書くことは何もないと言っている。本当に何もないのだろうか。人間として生まれてきた以上、日々の暮らしの中で感じることが何もないとは先生には信じられない」

滝沢の声「君は名村財閥と君の家との詳しい係わり合いも話したがらないし、圭子君に対しても決して心を開こうとしない」
それでも、大木は滝沢の返事だけは読んでいた。

滝沢の声「イソップが死んでしまった今、君はもはや誰にも心を開くつもりはないのか?」
イソップと言う文字を見て、大木はふと懐かしいイソップの元気な姿を思い描く。
イソップ「大木く~ん! 回想シーンのたびに僕を生き返らせるのやめてくれるー?」 滝沢の返事は「先生はイソップの代わりには成り得ないのだろうか」と言う問い掛けで結ばれていた。

滝沢の文章に触発されたのか、放課後、大木はとある墓地に足を運ぶ。
無論、大木がしゃがんだのは、イソップの眠る墓の前だった。
大木、タバコを一服吸い付けると、「線香ねえからよ、これで勘弁しな」と、線香代わりに立てようとする。
その時、大木の背後から「線香ならあるぞ」と、滝沢の声が飛んでくる。
大木「待ち伏せかよ」
滝沢「人聞きの悪いこと言うな」
滝沢、花と線香を供え、手を合わせてから、一応教師なのでタバコとライターを没収する。

滝沢「お前、タバコやめられないのか」
大木「無理だよ、俺には……タバコのことじゃねえ、先生、名村のこと話したくて待ってたんだろ? その為に日記にあんな誘い水掛けたんだろ?」
相変わらず台詞のひとつひとつから知性が滲み出るのを抑えられない大木アニキであった。
大木「言いたいことは言ってやるよ、俺は森田キャプテンに別に恨みはねえ、富田圭子にだって冷たく当たるのは筋違いだし、男らしくねえってことは分かってるんだ。けど、俺は神様じゃねえからよ、あの女が名村の血を引いていると知ってしまった以上、今までみてえに平気じゃいられねえんだ」
滝沢にと言うより、地下のイソップに言うように、自分の思いを淡々と述べる大木。
滝沢「大助……」
大木「大丈夫、心配するなって……試合になれば何もかも忘れて勝つことに全力尽くすからよ」
滝沢「本当に出来るのか?」
大木「やるっきゃねえだろ。その為にやりたくもねえ試験勉強もしたし、毎日足腰立たなくなるほど練習もしてるんだ、これで負けたら、アホみたいなもんだぜ」
滝沢、大木の言葉を聞いても不安を完全に拭うことが出来なかった。
結局、交換日記作戦が効を奏さないまま、大木と光男のわだかまりを残したまま、神奈川県の予選大会の日がやってくる。
しかし、日頃、滝沢の厳しい指導の下、「足腰立たなくなるほど練習」している川浜は、滝沢の心配をよそに、一回戦、二回戦を危なげなく突破する。

選手たちの快進撃に、手を叩いて喜ぶ清美が可愛いので思わず画像を二枚貼ってしまう管理人であった。
それは良いんだけど、

ちょっとだけ映し出されるスコアボードの手書きの文字がまた怪しいことに気付いてしまった。
以前は、部室に貼ってあったポスターの「打倒相模一高」の、「打」の手偏がちゃんと撥ねてないと指摘したが、今度は逆に、「横浜」の「横」や「高校」の「校」の木偏を、撥ねてはいけないのに撥ねてしまっているのだ。
他にもトーナメント表の各学校の名前にも、ちょっとおかしいのを見付けたが、ま、小姑みたいな細かいツッコミはほどほどにしておこう。
とにかく、この日は3戦3勝して準決勝に進む。
しかし、高校ラグビーって、一日に3試合もするの? さすがにちょっとハード過ぎるのでは?
あるいは、実際は別の日に行われているのかも知れない。
その日(?)の夜、新楽で滝沢が飯を食っていると、兼ねてから大木と光男のことを気に掛けていた大三郎が、「心配するほどのことはなかったみたいですね」と、滝沢の心を見透かしたようなことを言う。

夕子「うちもねえ、一時はどうなることかと気を揉んでましたんや」
大三郎「それがスポーツの良いとこよ。この分だと花園も夢じゃねえな」
二人はまるでもう優勝が決まったかのような口ぶりであった。
それにしても、いつもながら、油じみひとつない、全然汚れてない白衣が眩しいぜ。
さて、ポンポンと日は進んで、川浜は準決勝にも勝ち、遂に全国大会出場の切符を賭けて、決勝戦を戦うこととなる。
試合の相手は、因縁の相模一高であった。

観客席には、圭子や滝沢の同僚教師たちの姿もあり、最後には岩佐校長もふらっとやってくる。

選手たちは自信満々という感じでストレッチなどをしていたが、順当に勝ち上がってきたにも拘らず、滝沢は険しい表情を崩さない。
滝沢は、選手たちの好調ぶりの裏に、一度歯車が狂えばたちどころにチーム全体が崩れてしまいそうな危なっかしさを感じていたのだ。
さて、試合開始のホイッスルが鳴る。
序盤は川浜優勢のうちに進むが、相模一高も粘り、試合は6対3、川浜の僅差のリードで前半を折り返す。
ハーフタイム、相変わらず大木と光男の関係は険悪で、ろくに目も合わそうとしない。

大木「あーあー、それにしてもよ、もう少し点取れると思ったんだけどな」
高杉「バード(?)がだらしないんだ、もっとちゃんと押してくれないから」
マルモ「何言ってんだ、お前、最初に点取ったの俺たちフォワードじゃねえかよ!」
大木「バックスに回したってろくに前に進めねえからな」
平山「冗談じゃないっすよ、そっちがボールなかなか回してくれないんじゃないすか」
しかも、大木たちフォワードと、バックスの間でいさかいが起こるほどチーム全体がぎくしゃくしていた。

滝沢「やめんか、お前ら相手を甘く見過ぎてるんじゃないのか、相手は相模一高だぞ」
光男「そんなことは分かってますよ」
滝沢「分かってんだったら、もっと気合入れて行け! 後半は風下になる、相手はハイパントを多く使ってくるぞ、いいな?」
おお、滝沢が珍しく(と言うか初めて)専門的なアドバイスをしています。
ハイパントと言うのは、要するにボールを高く蹴ることである。

勝又「ハイパントだ、パントを上げて敵の後ろを衝くんだ、今日の川浜は個人プレーが目立つ。守りに回ったら必ずミスが出る」
一方の相模一高も、勝又監督が的確なアドバイスを与えていた。
しかも、滝沢が自分のチームのことで頭一杯なのに対し、勝又は相手チームの状態も鋭く見抜いていた。
この時点で、勝負の行方は決まったと言っても良いだろう。
後半戦が始まるが、滝沢の予測どおり、相模一高はハイパント攻撃を仕掛けて、川浜の陣形を揺さぶる。
川浜は相手の出方を承知していながら、それに対処できず、ひたすら翻弄される。

あっという間に逆転し、歓喜に沸く相模一高ベンチ。
折角なので、加代たちと違ってあまり画面に映ることもない、相模一高の人の良さそうな女子マネージャーの画像を貼っておこう。
そう言えば、何故か今回、加代はベンチにいないんだよね(岩崎さん、当時、他にもたくさんのドラマに出ていたようだ)。
滝沢が恐れていたように、見せ掛けだけのチームワークで勝ち進んできた川浜は、一度守勢に回るとあっという間にバラバラになり、15人の選手がひたすら個人プレーに走るようになってしまった。
そして、大木が暴走してチャンスを潰したのを光男が叱れば、

今度は、PKを外した光男に大木が「下手糞ーっ!」と罵声を浴びせると言う風に、もはやチームとは呼べない険悪な雰囲気となる。
チームを立て直す余裕もないまま、試合は終わる。39対15と言う川浜の完敗であった。
その3へ続く。