第21話「永遠に輝け!!宇宙Gメン85」(1980年8月20日)
19話、20話は、どちらも一度はレビューしようとしたのだが、途中でどうにもつまらなくなったので中止。
やっぱり「学園篇」と比べると、ドラマとしての「楽しさ」が段違いに稀薄なのである。
15話や16話などは、エミ隊員が活躍しているのでなんとか見れるのだが……。

その頃、世界各地で、一夜にして都市が破壊され住民が殺されるというえげつない事件が頻発していた。

被害を受けた街はまるで戦災を受けたような完全な廃墟と化していた。
冒頭から気合の入ったミニチュアセットが映し出され、スタッフの苦労が偲ばれるのだが、これで視聴率が
7.8パーセントなのだから、酒でも飲まなきゃやってられない気分になっただろう。

さて、その問題についてUGM本部で行われた国際会議に出席していたオオヤマ隊長が、新たな情報を手に日本支部に帰ってくる。
オオヤマ「一連の事件はどうやら異星人による攻撃らしい」
猛「怪獣の仕業とは考えられないんですか?」
オオヤマ「怪獣ならもっと無差別な破壊行為をするんじゃないかと言う意見が大勢を占めてな……」
猛「しかし、それだけで決め付ける訳には……」
オオヤマ「いや、他にも証拠らしいものがある。実は事件直後、現場に駆けつけたものが異星人の姿を見掛けてるんだ。これがその時写した写真だ」

そう言いながら、オオヤマはスライドで、その証拠写真をみんなに見せる。
猛「L85星人!」
それを見るや否や、猛は思わず声を上げる。
もっとも、それに対して誰も反応しないので、これは猛が心の中で叫んだ台詞だったらしい。

猛「この星人は友好的で平和を愛する高等生物です。無益な破壊や殺戮をする筈がありませんよ!」
猛、自信たっぷりに断言するが、
イトウ「どうしてお前にそんなことが分かるんだ?」 と、イトウから愚直過ぎるツッコミを入れられて、思わず固まる。
猛「……どうしてって、僕の勘です」
タジマ「矢的、UGMの隊員が勘で物を言っちゃ困るな」
猛、自分も異星人だから……と説明したいのは山々だったが、それは出来ない相談なのだった。
しかし、後に分かるように、破壊活動を行っていたのは普通の怪獣であったのだから、どうして今まで誰もそれを目撃しなかったのか、大いに疑問である。
ちょうどその時、丹ノ沢の美ヶ谷に宇宙船が着陸したとの目撃情報が入った為、オオヤマとエミを除く4人がその調査に出動することになる。

作戦室を出た猛であったが、向こうから来た制服姿の女性隊員と擦れ違った瞬間、何か違和感を感じて「あのう、君!」と、呼び止める。

ユリ子「はぁ?」
猛の声に立ち止まって振り向いたその顔は、なんと、「学園篇」のマスコット的キャラ、用務員のノンちゃんではないか。

猛「やっぱり、ノンちゃん!」
たちまち朗らかな笑顔になって、嬉しそうにその名を叫ぶ猛。
UGMではついぞ見せたことのない、「矢的先生」としての眩しい笑顔であった。
そうなのだ。我々が見たかったのは、猛のこういう顔だったのだと、今更のように「学園篇」の、あの春風のように優しい雰囲気が懐かしく思い起こされるのだった。
しかし、

ユリ子「あたし、地球防衛軍気象班のキャスター、小坂ユリ子ですけど」
猛「あ……、そうですか。ユリちゃん?」
ユリ子「今日の天気は曇りのち晴れ、頑張って下さい」
結局それはノンちゃんではなく、彼女と瓜二つの別人だったのだ。
猛「はー、世の中には似た人がいるもんだな」
猛、感心したようにつぶやくと、慌ててイトウたちを追いかける。
……と言う訳で、ちょっと嬉しいことに、白坂紀子さんだけ、「UGM篇」に引っ越してきた訳なのだ。UGMのお天気お姉さんと言う感じで、マスコット的キャラクターと言う点ではノンちゃんと大差はない。
やはり、この辺でスタッフもUGMの面子があまりに男臭いことに気付き、テコ入れの意味も込めて奇麗どころを追加しようと考えたのだろう。どうせなら、京子先生の浅野真弓さんも、UGM所属の女医みたいなキャラで再登場させて欲しかったところだ。別に毎週じゃなくてもいいから。
それはともかく、イトウたちは宇宙船が着陸したという山の中へ赴き、手分けをして捜索を開始する。

やがて、ハラダとタジマの前に、スライドで見た例の宇宙人らしきものが現れる。
向こうもそれに気付いて慌てて逃げ出すが、タジマの撃った銃がその腕に命中する。
宇宙人はそのまま姿を消すが、

雑草に埋もれるようにして立っている廃屋の中で、猛に発見される。
猛、咄嗟に銃口を宇宙人に向けるが、

ザッカル「撃つな、ウルトラマン80!」
猛「どうして僕のことを? お前は一体何者だ?」
いきなり正体を指摘されて驚く猛だったが、相手が重傷を負っていることを知り、とにかくその傷の手当てをしてやる。

イトウ「矢的、エイリアンを発見したか?」
猛「……」
イトウ「応答しろ、矢的」
猛「こちら矢的です」
イトウ「聞こえてるなら早く返事ぐらいしろ」
猛「すいません」
イトウ「それでエイリアンの手掛かりは?」
猛「はい、それが……」
「横にいます!」と言いかけて、その宇宙人が訴えかけるような眼差しをこちらに向けているのに気付き、口ごもる。
イトウ「どうしたんだ、矢的」
猛「まだ見付かりません!」
イトウ「バカモン、もったいぶらずにさっさと答えろ!」
猛「申し訳ありません!」
いちいちガミガミとうるさいイトウに対し、猛は
「クソ、こないだまで怪獣だった癖に……」(第17話・第18話参照)と、心の中で毒づいたと言う。
猛が見逃してくれたので、宇宙人は全身から力を抜く。猛、じっくりと話を聞こうとするが、

オオヤマ「怪獣らしい巨大生物が地下を移動中、ポイントQ3、急いでくれ!」
相変わらず圧倒的な存在感を誇るバストの横で、オオヤマ隊長がなんか言ってきたので、宇宙人をそこに残し、イトウたちとともに戦闘機で急行する。

今まで一切目撃例がなかったのに、何故か今回はあっさり正体を明らかにしたのは、怪獣ガモスであった。
ガモスは、建物を突き破って登場すると、口から白い泡状の液体を撒き散らす。

それを浴びた住民は、

一瞬で解けてしまう。
ここ、幼い子供を抱いた母親まで容赦なく殺しているのが割とハードである。
そして、左下の黄色い服の女性は、どう見ても自分からその位置に倒れ込んでいるとしか見えないのである。

猛「ちっくしょう、なんてひどいことを!」
イトウ「ハラダ、レーザーショック砲で怪獣を他の場所に追い出すんだ」
ハラダ「了解」
タジマ「見てろぉ、怪獣め!」
タジマ隊員、このタイミングでその笑顔はちょっとまずいのでは?
まぁ、闘志を燃やすとそう言う顔になっちゃう人なのかもしれない。

猛「垂直降下でミサイルをぶち込むぞ!」

怪獣の頭上で機体を垂直にして、ミサイルを発射する猛。
相変わらず神業的な操演である。

脳天にミサイルの直撃を受け、思わずその場に崩れ落ちるガモス。
(後の80との戦いで見せた無敵ぶりを見ると、これくらいでダメージを受けるのはちょっと解せないのだが)

イトウ「いいぞ、その調子だ、矢的」
猛「はい、ありがとうございやす!」
さっきの「ちっくしょう!」は何処へやら、イトウに誉められるとたちまちえびす顔を晒す猛。
タジマと同様、この満面の笑みはちょっと変な気がする。
猛、さらに攻撃を加えようとするが、その時、宇宙人の声が頭の中に響く。

サッカルの声「待て、攻撃を中止しろ」
猛「その声はさっきのL85星人、何故邪魔をする?」
ザッカルの声「答える必要はない」
猛「じゃあこっちも攻撃を止めないぞ!」
その声を無視して攻撃を続行しようとするが、ザッカルの放つ強力なテレパシーに妨害された猛は、トドメを刺す機会を逃したばかりか、戦闘機に乗ったまま行方不明になる。
ちなみにザッカルが何故、猛の邪魔をしたのか? 初見ではてっきり、ガモスには何か秘密(強力な隠し武器など)があって、それで猛を救う為にわざと攻撃をストップさせたのかと思ったのだが、後にそれが、
「俺の手柄を横取りされたくないから」 と言う、サイテーの動機に基づく行為だったことが判明する。
もっとも、ザッカルには、どうしても自分の手でガモスを討ち取りたいという特別な理由があったのだが。
オオヤマは、イトウたちから「猛が戦闘中、勝手にトンズラしますた」と言う噴飯モノの報告を受けても眉ひとつ動かさず、ハラダとタジマにパトロールを、イトウには猛の捜索を命じるのだった。
これがMACのダン隊長だったら、
「ぬわあにぃ、ゲンが逃げとわぁあああ?」(訳・なに、ゲンが逃げた?)と、夜叉みたいな顔になって叫んで、スチール製の杖で他の隊員をしばき倒しているところだ。
さて、その猛が向かった先は、言うまでもなくさっきの廃屋であった。

ザッカルは近くの小川の水を飲んでいたが、猛はすぐにその居場所を突き止め、互いに空をポンポン飛び跳ねながら格闘戦となる。
これは、どちらもタダモノではないということを印象付けたかったのだろうが、正直なくても良いシーンだ。
ザッカルは負傷していることもあり、勝負は猛の勝利に終わる。

猛「貴様、あの怪獣の仲間だな。だからテレパシーで僕の脳波を?」
ザッカル「違う。君の邪魔をしたのは他に理由があったからだ」

激昂する猛に、ザッカルはやむなくバッジのようなものを取り出して見せ、身分を明かす。
猛「そのバッジは確か宇宙Gメンのバッジじゃ?」
宇宙Gメンとは、アンドロメダ系宇宙人が中心となって結成された宇宙怪獣専門の捜査官のことなのである。
ザッカル「ワシの名はザッカル、君のことはM78星雲のウルトラの戦士たちから聞いていた」
猛「そのあなたが何故怪獣の手助けなんか」
ザッカル「そうじゃない、ワシはガモスを捕らえに来たのだ。奴は指名手配ナンバー2の凶悪な怪獣でな、宇宙のあちこちでさんざん破壊と殺戮を行った挙句、とうとう、この地球へ現れたんだ」
ザッカルは、いざとなれば「命を賭けた最後の手段」を使ってでも、ガモスを捕まえて見せると意気込む。
ちなみにザッカルを演じているのは、「ウルトラマンレオ」のブラック指令役で強烈な印象を特撮ファンに残した大林丈史さん。
正直、今回のストーリーも(第5話の「まぼろしの街」を書いた山浦弘靖さんにしては)イマイチなのだが、なんとか最後まで見れるのは、大林さんの重厚な演技力と存在感に負うところが大きい。

その時、頭上をイトウの乗る戦闘機が轟音を響かせて飛んでいく。
猛、ザッカルのことをイトウたちに説明するのは難しいので、一緒に草むらに姿を隠す。
猛「この体じゃ、ガモスを捕まえるのは無理です。僕が代わりに」
ザッカル「余計なことはするな!」
猛「何故、そうまでしてガモスを?」
ザッカル「……」
猛「ワケを話してください、お互い、宇宙のたくさんの
子供や母親たちの為に戦う仲間でしょう?」
オンエアの際、猛の台詞を聞いた世のお父さんたちが「ワシらはどうでもいいんかい!」と一斉にツッコミを入れたと言う。
深読みし過ぎかもしれないが、なんとなくこの台詞からは、「学園篇」の名残が感じられる。
ザッカル「実はな、ワシの妻も息子もガモスの為に……」

ここで、ちゃんと別の惑星でザッカルの妻子がガモスに殺されるシーンが回想される。

ザッカル「ワシは妻や息子に誓ったんだ。この手で必ず仇を討ってやると……あれからもう20年、ワシは一日も休まずガモスを追って来た。ガモスを捕らえることだけがワシの唯一の生き甲斐だったのだ。しかし月日と言うのは酷いものだ。あと二日でワシはGメンをやめねばならぬ。Gメンの資格を失えば、もはやガモスを追って宇宙を旅することはできん。あと二日、あと二日でなんとしてでもガモスを捕らえねばならぬのだ!」
などとやってると、再びガモスが地上に出現する。
猛「やっぱりこの体じゃ無理ですよ。後は僕が引き受けますから」
ザッカル「ウルトラマン80、君は立派な若者だな、ワシも君のような息子が欲しかったよ……だがな、君でもガモスを倒すのは難しいぞ」
猛(いや、さっき倒せそうだったのをあなたに邪魔されたんですが……) ザッカル「ガモスの弱点はこのワシしか知らんのだ」
猛「構いません、全力を挙げて戦うだけです」
ザッカル「そうか、そこまで決心しているのか、分かった、後は君に任せよう」
ザッカルの言葉にホッとして歩き出す猛だったが、その後頭部をザッカルに殴られて気絶する。
ま、この手のストーリーでは定番中の定番の展開ですね。

さて、UGMの各戦闘機も出撃し、シルバーガルはガモスの周りを旋回しつつ、溶解液に対する中和剤を散布するが(この特撮がまた素晴らしい)、何の効き目もない。

あれこれやってると、見慣れない宇宙船……ザッカルの宇宙船が飛んで来て、着陸する。

ザッカルは宇宙船から出てくると、みるみる強大化して毛むくじゃらの巨人に変身し、ガモスとがっぷり組み合う。

ガモスは、前屈みになって尻尾を立てると、尻尾に生えている巨大な棘をミサイルのように撃ってくる。

実際、それはミサイルのように爆発して、ザッカルを苦しめる。
ザッカル、なんでガモスの弱点(後述)を衝かないのか、謎であるが、その余裕もなかったのだろう。

ザッカルに向かっていくガモス。
デザインと言い、隙のない強さと言い、80に登場する怪獣の中でもピカイチだね。

ここでやっと猛が目を覚まし、80に変身して飛んでくる。
ガモスに強烈な飛び蹴りをお見舞いしてから、

既に瀕死の状態のザッカルを抱き起こす。
80(命を賭けた手段とは自分を巨大化して戦う、捨て身の戦法だったのか……)
宇宙Gメンとしての、いや、戦士としてのザッカルの心意気に身を震わせて立ち上がった80、折りよくOPテーマ曲が流れ出したので、勇気100倍、強敵ガモスに立ち向かう。

ザッカルの怒りが乗り移ったかのような激しいチョップが、ガモスの脳天に炸裂する。
しかし、やはりガモスは強靭で、少々の攻撃にもビクともせず、すぐさま反撃に転じる。

そして、尻尾ミサイルを避けたところに、必殺の溶解液を浴びてしまい、80は絶体絶命のピンチに陥る。
ナレ「ザッカルの言ったとおり、ガモスは恐ろしく強力な怪獣であった!」 見りゃあ分かるよ! このままでは80の敗北は必至であったが、
ザッカル「ウルトラマン80、ガモスの弱点は高周波の音だ!」
ザッカルの叫びを聞くと、80は大きく頷き、

体を高速で回転させて溶解液を飛ばしつつ、高周波の音を出してガモスを押さえ込む。
そして必殺のバックルビームを叩き込み、遂にガモスを倒すのだった。
イトウ「キャップ、ウルトラマン80が怪獣を倒しました」
スカイハイヤーで上空を飛び回っていたイトウ、誇らしげに本部に報告する。
エミ「良かった! 良かった! キャップ、良かったですね!」 目をキラキラさせて歓喜の叫びを上げるエミ隊員が可愛いのである。

ザッカル「ありがとう、ウルトラマン80、これで心安らかに妻や息子の元へいける……」
ザッカルは宿敵ガモスの死を見届けると、80に見取られながら静かに息を引き取る。

80は、ザッカルの体を持ち上げて宇宙へ飛んで行き、

ほどよいところでその体をポイと投げ捨てるのだった。
邪魔だからね(註・違います)。
ナレ「愛する家族の為に、そして宇宙の全ての母や子の為に戦った宇宙Gメン、その名は永遠に輝くであろう!」
……と言う訳で、「UGM篇」の中ではなかなかの佳作であった。
ちなみにタイトルが「Gメン80」ではなく「Gメン85」なのは、元ネタが「Gメン75」だからだろうか。