第8話「死ぬほどつまらない合コン!~こいつほんとに死んでるよ殺人事件」(2006年2月19日)
冒頭、夕暮れの迫る警視庁の(いつも岡野と雷しか居ない)刑事部屋で、珍しく岡野が念入りに身だしなみを整えている。
岡野、交通課の美女たちと合コンの予定があるとのことで、娘ほどの年齢の雷を前にでれでれと笑み崩れていたが、ちょうどそこへ、赤坂のカフェで、合コン中の男性が変死したと言う緊急通報が入る。

岡野「銭形くん、一次会だけでも行っちゃダメかなぁ?」
雷「ダメです。仕事ですよ、岡野さん!」
往生際悪くおねだりする岡野であったが、雷は嬉しそうに微笑むと直ちに出動する。
ああ、ほんと、雷の……小出早織さんの笑顔に癒されるわ~。

さて、現場で合コンの参加者たちから話を聞いている岡野。
光浦朋美と、池田貴理子と言う、分かりやすいネーミングの女性二人がしきりに泣いている。
別に人が死んだからショックを受けているのではなく、今日の合コンでひどい目に遭って悔しいと泣いているのであった。

竹下「真田さん、凄く失礼な態度取ったんです。最初から一言も喋んなくて……相当面食いだったみたいで」
岡野「……あっはは、お気持ちは分からなくてもないですねえ」
男性側の幹事役の竹下の説明に、思わず二人の顔を見直す岡野であった。
その真田と言う男性が、座ったまま死んでいる……と言う状況なのだ。

雷「真田さん、てことは?」
山本「会社の先輩だよ、けど、一緒に飲むのは初めてで」
竹下「メンバーが集まらなくて僕が声を掛けたんです」
竹下によると、真田は最初からほとんど無言だったので、一体いつ死んだのかも分からないと言うのだ。
柴田「死因は薬物による中毒死です。南米産の猛毒ウラリです。ほぼ即死ですね」
雷「だからこんな姿で……」
柴田「ええ、ですが、被害者が使っていた食器類、飲み物、食べ物、どれからもウラリは検出されませんでした」
真面目に捜査している雷たちの会話も上の空で、岡野は先程から心ここにあらずといった様子だったが、不意に勢い良く立ち上がると、少し離れた場所にいる参加者たち……容疑者たちの前に行き、手錠を出して、

岡野「ようし、皆さんに自首するチャンスを与えましょう。やった人は手を挙げて!」
雷「凄い短縮捜査」
岡野の後ろで目を丸くしている雷が可愛いのである!
無論、ながいけんの漫画じゃあるまいし、そんなことで犯人が名乗り出る筈もない。

岡野「ノーバディ? オッケイ……銭形君、これはね、自殺ですよ」
雷「自殺ー? 合コンで?」
柴田「理由はなんですか?」
岡野「死にたくなるほどつまらなかったんですよぉ」
雷「失礼ですよ(ギュウッ)」
岡野「コラッ!」
雷、合コンに行きたいのでとにかく早く事件を片付けたいのが見え見えの岡野の耳たぶを強く引っ張る。
その後、雷は合コンにしては人数が合わないことに気付き、首を傾げていたが、そこへ席を外していたもうひとりの参加者が現れる。
それは、女性側の幹事の佐藤マヤと言う肉感的な美女(あくまで設定)で、

岡野は一目見て彼女のことが好きになってしまう。
岡野「合コンしよう!」
雷「へっ?」
岡野「いや、合コンを再現すれば、誰が、いつ毒を盛ったか分かるじゃないか」
岡野、交通課との合コンの代わりに、あろうことか、事件現場で合コンしようと言い出す。

そんな岡野を見て、呆れたように溜息をつく雷が可愛いのである!
もっとも、事件の解明に役立つかも知れないので、雷も合意して今日の合コンが再現されることになる。

竹下が山本と真田を紹介した後、マヤが光浦と貴理子を紹介する。
マヤ「貴理子さん、ドラマの作家さんです」
貴理子「2時間ミステリー専門、月曜ミステリーで書くこと多いんだけど」
岡野「こんなところに来るなんて作家さんて案外、出会いの場が少ないんですねえ」
岡野の何気ない一言に、一瞬、参加者が固まる。

ここで、その貴理子役の女優さんのプロフィールがバンと出てくるのが、普通のドラマではまずありえない演出である。
ちなみにこの人、千葉雅子さんと言ってほんとに脚本も書いている人なのだ。
特技が「経理事務」と言うのに、涙を誘われる……。
貴理子「大きなお世話よっっっ!!!」 触れられたくないところに触れられた貴理子、全身全霊で絶叫する。
その後も、合コンは続くが、

貴理子「幾つに見える、私?」
竹下「業界の人は年齢不詳だからな、24くらいかな」
貴理子「
ほんとっ? もうちょっと上なんだけど」
竹下「じゃあ、25かな」
貴理子「あーっ、惜しいんだけど! やっぱ教えなーい」
竹下「え」
貴理子「謎はミステリーの基本よ」
山本「うざっ」
雷「あたしから見ても、ウザいかも……」 部外者の立場で見ていた雷が、ぼそっとつぶやくほどに、それはそれはつまらない、地獄のような合コンであった。
だが、そんな中、貴理子が、そのタイミングで「恥ずかしくねえのかよ、こんなとこ来て」と真田が苦々しくつぶやいていたことを思い出す。
貴理子「どういう意味か知らないけど」
岡野「いい年して合コンなんてって意味でしょう」
雷「じゃあ、この時もまだ生きてたんだ……」
その後、席替えをして王様ゲームとなる。
合コンを正確に再現する為に、(電話を掛けに)退席していたと言う設定のマヤが戻ってくると、途端に退屈そうだった岡野が目を輝かせてテーブルに戻り、マヤにべたべたとまとわりつく。

王様ゲームなどに興味のない雷が、真田役の岡野がかけていたサングラスに自分の顔を映し、前髪を触っているのが可愛いのである!

さらに、自分の顔を映していた雷が何かに気付いたように小首を傾げる仕草が可愛いのである!
とにかく、雷もテーブルの横に座って、王様ゲームが再現される。

竹下「3番が1番の人に氷を口移ししなさいってやったんだけど……」
岡野「それでこそ幹事さん、王様ゲームのことを良くご存知だ」
「良い仕事してるねえ」とばかりに、竹下を誉める岡野。
雷「サイテー」 横を向いて、いかにも潔癖な女子高生としての感想をつぶやく雷。
で、3番がマヤ、1番が岡野、つまり真田と言う組み合わせになる。

雷「やったんですか、口移し?」
岡野「さ、再現しましょう、ね」
雷「必要ありません」
それも実際にやろうと、マヤの口に氷を入れようとする岡野だったが、雷がピシャリと止める。
それにしても、そう言うストーリーとは言え、今回の岡野のデレデレぶりはちょっと見ていてムカつく。
あの、凛々しかったトミーの面影は、いずこへ?

凛々しかった頃のトミー
「不良少女とよばれて」より 閑話休題。
雷「でも、真田さん、ムッとしてたんですよね、嫌がったんじゃないですか?」
マヤ「うーん、全然!」
意外にも、真田は別に嫌がるでもなくマヤから口移しで氷を受け取ったと言う。

その後、再びカウンターで話し合っている岡野と雷。
岡野「まさか、マヤヤちゃんを疑ってるの? それはありえないよ。だって氷に毒が入っていたら、彼女自身も死んじゃうんですからね」
雷「わかってます。でもあれしかないんですよ、毒を飲ませるチャンスは……でも意外だったな。真田さんが口移しをしたなんて」
岡野「男なんてそんなもんですよ。いくらムッとしていてもねえ、あのマヤヤちゃんの口移しを断れる人間なんていませんよ」
雷「それは岡野さんだからです」
岡野「失敬な、私だって断ることはありますよ!」

岡野「銭形君は何が言いたいの?」
雷「私は真田さんは彼女たちにムッとしてたんじゃなくて、何か別に理由があったんじゃないかって気がするんです」

と、彼らの横を通り掛かった貴理子が、「あの人は若くて美人以外は見下す最低の男よ」と死者を鞭打つ。
貴理子「2時間ドラマだったらね、犯人脅迫して、9時50分ごろ刺されるバーテン! って感じの男なんだから!」

雷は、その貴理子から、王様ゲームの後に竹下がトイレに行ったことを知ると、その中を調べてステンレスのボトルを発見する。
ボトルの中にはドライアイスの塊が入っていた。

雷はそのボトルを竹下の前に置き、王様ゲームで使われた氷は、あらかじめ竹下が用意していた特別な氷だったのではないかと指摘する。
だが、竹下は、もし氷に毒が入っていたらマヤも死んでいた筈だし、王様ゲームで特定の人物を狙って指名することは不可能だと、雷に反論する。
と、ここで岡野がしゃしゃり出てきて、「謎は分かったよ、ワトソン君」と雷の決め台詞を横取りし、やはり真田は自殺だったのだと言い出し、強引に捜査を切り上げてなんとしても交通課との合コンに行こうとする。

雷「謎は分かった、じゃないでしょ、解けた、でしょ? ……解けた? 溶けた? 謎は解けたよ、ワトソン君!」
だが、怪我の功名と言う奴で、雷は岡野の何気ない一言から、遂に真相に辿り着くのだった。
以下、解決編となります。一応、
ネタバレ注意! 雷が、クーラーボックスを抱えてやってきて、みんなをテーブルに座らせてもう一度王様ゲームをやろうと言い出す。ただし、今度は自分が竹下の席、竹下を岡野(真田)の席に座らせる。

雷「私が王様です。それでは、うーん、3番の人が1番の人に、氷を口移しして下さい」
頬杖を付いて考え込んでいた雷、不意にニッコリすると、さっきと同じ命令を出す。
3番はマヤ、1番は竹下と言うことで、雷が持って来た氷が、マヤの口から竹下の口の中へ移動する。
何気なくその氷を噛み砕いた竹下は、急に顔をしかめてテーブルの上に氷を吐き出してしまう。
竹下「何この味?」
雷「その氷の中にはお酢が入っています」

雷「あなたが口移しに使った氷と同じ、二重構造にして……あなたは氷をくりぬいて、この中に毒液を入れていた。だから最初に氷を含んだ人間は死にません。氷を噛むか、飲み込んだ人間が死ぬんです」
スクリーンに画像を映し出して、事件の謎解きを始める雷。
しかし、竹下は余裕の表情を崩さず、「どうやって真田さんを指名できるの?」とさっきと同じ反論をする。
雷「至って簡単です、私だってあなたを狙って指名できたんですから」
竹下「……」
雷「あなたは何度席替えしても、自分が真田さんの正面に来るようにしました……そのガラスに映った真田さんの番号を見る為です」
そう、真田の席の後ろのガラスはピカピカに光っていて、鏡のように物が映り込むようになっていて、正面に座った竹下には、参加者の手にした番号を簡単に盗み見ることが出来たのだ。
雷、そのことに、サングラスに自分の顔を映している時に気付いたのだ。
そこへ、柴田が血相変えてやってきて、雷に間違えて氷を渡してしまったと大声で叫ぶ。

柴田「お酢じゃなくて、被害者が飲んだものと同じ毒入りのものを渡してしまいました!」
雷「えーっ、どうしよう、ごめんなさい!」
スクリーンにギョッとする竹下の顔が大写しになり、雷、思わず殺人犯に謝ってしまう。
竹下「早く、救急車ーっ!」
柴田「落ち着いて、今、解毒剤を手配します」
竹下「何言ってんだよ、ウラリに解毒剤はないよ!」
竹下の一言を聞いた途端、柴田が不気味な笑みを浮かべて雷の方を見る。
雷も笑って頷くと、ここで、狼狽する竹下の頭上にお仕置きの雷を落とす。

雷「やっぱりあなたが犯人だったんですね。大丈夫ですよ、あの氷に毒なんか入ってませんから」
竹下「えっ」
雷「あなた、今、ウラリに解毒剤なんかないって言いましたよね? 真田さんがウラリで死んだことをどうして知ってるんですか。私は毒としか言ってません」
ここで、序盤のシーンが繰り返され、雷は竹下たちには毒としか説明していなかったことが示される。
雷「真田さんがウラリで死んだことを知ってるのは犯人だけです」
竹下「くそっ」
雷は柴田に協力して貰い、犯人の失言を誘う為、そんな芝居をしていたのだ。
もっとも、ウラリは無味無臭なのだから、竹下ならそれが嘘だとすぐ見抜いた筈である。
それ以前に、ほんとにウラリなら、とっくの昔に竹下は死んでないとおかしいのだし。
とにかく、竹下も遂に観念し、会社の金を使い込んだことを真田に知られたので殺したのだと動機を告白する。

雷「思ったとおり、真田さんは彼女たちにムッとしてたんじゃなかったんですね。竹下さんに怒ってたんです。横領の可能性があるのに合コンなんかしてって……」
いつものように夜の歩道を帰る道すがら、雷が真田の態度について補足説明を加える。
そこへ岡野のケータイに、無事、交通課との合コンが終了したとの連絡が入る。
本気で悔しがる岡野を後ろから「やれやれ」と言う表情で見ている雷が可愛いのである!

そしてラスト、
カメラに向かって敬礼する雷が性懲りもなく可愛いのであった! ……と言う訳で、トリックは平凡だが、雷の可愛らしさと細かいギャグ満載のなかなか楽しいエピソードでありました。