第30話「消えた盗んだ出た」(1980年8月23日)
特に理由はないが、久しぶりに「デンジマン」のレビューをするダス。
今回取り上げるのは、かつて全話レビューしていた時にはスルーした第30話である。
どうして最初スルーしたのかについては……察して欲しい。

サブ「ペンチ」
マツ&シロー「ペンチ」
サブ「ドライバー」
マツ&シロー「ドライバー」
サブ「軍手……」
冒頭、とある事務所で、三人の男が床に座り込んで、様々な道具を点呼しながら各自のアタッシェケースに入れていた。

チェックが済んでケースを閉め、二人の部下を見遣るリーダー格の男、サブ。

サブ「……げああっ!」
マツ&シロー「むふっ」
しばらく真剣な顔で見詰め合っていたが、不意にだらしなく相好を崩す。
三人揃って立ち上がり、

サブ「当社は相変わらず不景気ですけど、決して焦らぬよう……それから、くれぐれも人を殺したり、傷付けたりしないよう、注意して下さい。私たちは強盗ではありません。真面目な泥棒さんなんです。清く正しく美しい泥棒さんなんです。では、我が泥棒株式会社の社訓を唱えましょう」

サブ「気をつけよう、指紋足跡命取り」
マツ「気をつけよう、犬のいる家、近所の目」
シロー「気をつけよう、怪しい素振りが命取り」
サブ「気をつけよう、お巡りさんのパトロール」
マツ「気をつけよう、監視カメラと警報機」
シロー「気をつけよう、長居は無用、欲出すな」
サブ「はい、良く出来ました。今日は全国的に金曜日、土日の連休を控えて、貯金を下ろすうちも多いと思われます。絶好の泥棒日和、今日も一日頑張りましょう!」
整列して、額に書かれている6つの社訓をひとりひとり読み上げてから、三人は仕事に出掛ける。
そう、彼らは泥棒を生業としている、れっきとした「会社員」なのだった。
ちなみに一番小柄だが、彼らの兄貴分であるサブを演じているのが、言うまでもなく山田隆夫氏……そう、座布団業界のカリスマ、「笑点」の影の支配者とも呼ばれている、あの男である。
それはさておき、サブは今日の初仕事のターゲットに、白い壁に囲まれた、白塗りの大きな屋敷を選び、正面の門から堂々と入り込む。
屋敷には人っ子一人おらず、サブは誰にも見咎められることなく屋敷内を歩き回るが、ふと、扉にたくさんのクモの巣がかかって、いかにも長い間使われていない感じの部屋の前にやってくる。
サブが鍵穴から中を覗くと、巨大なちょうちんの化け物と、黒い覆面の男たちがいて、暖炉の前でなにやら得体の知れないことをしている最中だった。
そう、ベーダー怪人のチョウチンラーと、戦闘員たちである。

怪人「よし、行け!」
チョウチンラーが指示すると、ひとりの戦闘員が勇ましくも進み出て、

中から瑠璃色の光が溢れる不思議な暖炉の中へペラペラの薄い体になって吸い込まれるように消えてしまう。
いいよね、今ではまず見られない、手作り感濃厚の「特撮」。
しばらくして、いきなり暖炉が爆発し、さらに超音波のような波動が放射される。
怪人「頭が痛い……」
頭を押さえて苦痛を訴える怪人たち。その振動は部屋の外にいるサブにも伝わるほどだった。

振動が収まった後、さっきの戦闘員がペラペラの体で暖炉から出て来て、

無事に実体化する。
怪人「おお、どうであった?」
戦闘員「これが……」
生還した戦闘員、誇らしげに一枚の小判を示す。
怪人「うん、黄金の小判!」
サブも、小判を見て思わず体を動かし、物音を立てて気付かれてしまう。
戦闘員に追いかけられ、脱兎のごとく屋敷から飛び出す。

一方、近くの公園では、デンジレッドこと赤城一平がひとり、空手の稽古をしていた。
彼の背後から「助けて~」と、サブの悲鳴が聞こえてくる。

赤城「ベーダー!」
振り向けば、サブが戦闘員に追いつかれて取り囲まれているところだった。
それにしても、久しぶりに見たが、赤城の顔は濃いなぁ。まぁ、「ゴレンジャー」から連綿と続く「レッドはおっさん顔」と言う伝統は、この赤城が最後になってしまうのだが(その後、「ライブマン」で復活する)。
赤城、事情は分からないまま、とりあえず戦闘員たちをぶちのめす。

サブ「とうっ、とうっ、君、怪我はないか? だいじょぶか、じゃ、さらば!」
赤城「お、おい!」
サブ、赤城に礼も言わずにさっさとトンズラし、赤城もしつこく追いかけて事情を聞こうとするが、
サブ「そりゃね、助けて貰ったのは感謝してますよ。だけど、そんな恩着せがましい態度、僕ちゃん嫌いだな、ね、人助けってのはもっと粋でなくちゃ」
真面目な赤城を口先で煙に巻いて、サブが向かった先は、意外にも病院であった。

サブ「やあ」
ゆかり「サブちゃん」
サブが笑顔でとある病室のドアを開けると、パジャマ姿の若い女性がいて、マツとシローの姿もあった。

マツ「どうしたの、兄貴」
シロー「遅いじゃないですかっ」
サブ「いや、ちょっとドジ踏んじゃってよ……いや、大したことじゃねえんだ」
ここに集まる約束だったのだろう、二人はすぐ立ち上がって、遅刻したサブを小声で咎める。

ゆかり「サブちゃん、私のことなんかより、お仕事の方、ちゃんとやって」
サブ「ゆかりちゃん、僕たちは何もして上げられない、出来ることといえば面会日に顔を揃えることぐらいですよ。一日も早く良くなって下さい」
ゆかり「ありがとう、その気持ちだけで……」
サブ、ゆかりの枕元に座って、普段の軽薄さのカケラもない真摯な態度で彼女を励ます。
ゆかりを演じるのは成瀬静江さん。
なんと言うか、その、可愛くないこともないとは言い切れないような気がしないでもない、コメントに困る微妙なルックスの女優さんである。
これがたとえば、丘野かおりさんクラスの美少女だったら、管理人も最初からスルーしようなどとは思わなかっただろう。こういうキャスティング、非常に大事である。
病室を出て、神妙な顔付きで廊下を歩く三人組。
彼らが泥棒稼業に精を出しているのは、どうやら彼女の為らしい。

マツ「兄貴、『僕たちは何もして上げられない……』ってとこ、良かったッスよ~」
シロー「粋だったなぁ、このぉ!」

サブ「そうでしょう」
マツ「ひゃああああー」
マツの星純夫さん、役者として実に特徴的な良い顔してるよね。
上機嫌のサブであったが、角を曲がると、また道着姿の赤城の姿が目に飛び込んできてギョッとする。赤城、サブを追いかけて病院の廊下で待っていたらしい。
サブたちは逃げ出し、とりあえず会社の事務所に身を潜めるが、赤城は執念深く追ってきて、建物の外をうろうろしている。
赤城はレッドに変身して、そのスーパー能力で建物内部を透視し、サブが例の屋敷で見た出来事についてマツとシローに話しているのを盗聴する。
一方、チョウチンラーはベーダー城に帰還し、さきほど手に入れた小判をヘドリアン女王に献上していた。
ケラー「本物の小判です」
ミラー「金杉家の開かずの間に四次元の入り口があったということは本当だったのです」

ヘドリアン女王「四次元だと? 我らが住む超異次元のほかに、四次元などと言う世界があるのか?」
ケラー「はい、人間どもにとっては超異次元より信じやすい世界です」
ヘドラー将軍「四次元空間とはなかなか摩訶不思議なところだそうで……このような小判が山のようにあるそうです」
ヘドリアン女王「素晴らしい! チョウチンラー、ベーダー城を黄金で埋め尽くせ!」
その後、サブたちがまたあの屋敷へ入り込もうとするが、敷地内には既に戦闘員たちが待ち構えていた。
赤城たちも彼らを尾行していて、サブたちの悲鳴を聞くや否や、変身しながら塀を飛び越していく。

この時、あきらの上着がちょっと浮き上がって、普段は見えない脇などがモロ見えになるのがちょっと嬉しいボーナスショット。
庭で、5人と戦闘員との乱戦になるが、その隙にサブはひとりであの部屋に忍び込む。
だが、追いかけてきたチョウチンラーに驚いて思わず瑠璃色の暖炉の中へ飛び込んでしまい、ペラペラになって四次元に吸い込まれる。
しかも、続いてやってきたレッドとチョウチンラーの戦いの余波で、瑠璃色の暖炉が衝撃を受けて、普通の暖炉に戻ってしまう。

チョウチンラー「しまったぁ~、四次元の入り口が消えた!」
レッド「なにぃ?」
チョウチンラーは慌てふためいて退散する。
戦いの後、デンジマンは家の中で縛り上げられていた金杉家の人々を見付け、救出する。

赤城「おたくの、あの暖炉はなんですか」
金杉「黄金の通路じゃ。黄金を持ち帰れると代々言い伝えられてきたのじゃ。だが、我が金杉家では入ることを禁じ、開かずの間として守ってきたのじゃ。なのにベーダーが……」
ベーダーは何処からかこの噂を聞きつけ、金杉家を占拠してお宝探しを行っていたらしい。
みんなは改めて問題の暖炉の前に立つ。
黄山「昔の人も、その不思議な入り口に気が付いて小判を隠したと考えられるな」
マツ「ところで、サブ兄貴は戻れるのかな?」
黄山「肝心の入り口がなくなっちまってんじゃなー」

マツ「じゃあ、閉じ込められて出て来れないのかよー!」
シロー「一生出れないのかよー」
黄山「そりゃ分からないよ。四次元空間のことは現代の科学では良くわかんないんだ」
頼りない黄山の言葉に、二人は青くなって暖炉に取り縋り、「兄貴ぃ~!」と大声で叫ぶ。
しかし、それを見る赤城たちの目は冷ややかで、
赤城「泥棒なんかするからだ」
緑川「これに懲りたら、警察に自首するんだな」
マツ「冗談じゃねえや、誰が自首なんか……俺たちはな、そんじょそこらの泥棒さんとはワケが違うぞ。貧しい人からは盗まないし」
シロー「物凄く真面目な泥棒さんなんだぞ」
マツ&シロー「ねっ」
二人は反省するどころか、自分たちは「義賊」なのだと誇らしげに言ってのける始末。

青梅「ぶ~ぶぶっ」
それを見た5人は「ダメだこりゃ」と言うような呆れ顔になる。
で、問題のサブは、四次元の世界で大量の小判を手にして、ほくほく顔で走り回っていたが、転倒した拍子に、その一枚が偶然にもゆかりのベッドの上に落ちてくる。

不思議そうにその小判を手に取り、しげしげと眺めるゆかり。
その時、何処からか「ゆかりちゃーん!」と言う、サブの声が聞こえてくる。
ゆかり「サブちゃん、サブちゃんなの?」

サブちゃん「え、呼んだかい?」
ゆかり「呼んでない」
サブちゃん「とりあえず、『与作』歌おうか?」
ゆかり「結構です」
サブちゃん「そうかい、じゃあ、鼻の穴から波動砲出そうか?」
ゆかり「出さんでいい」
(な、なんだ今の幻影は?)
そこへマツとシローがやってくる。二人は小判を見ると目の色変えてそれに飛びつく。

マツ「兄貴が言ってた小判じゃないのか、これ?」
ゆかり「サブちゃん? そう言えばサブちゃんはどうしたの?」
マツ「……ちょっと仕事が忙しくて来れないんだよな」
ゆかり「なにか、悪いことがあったんじゃないのかしら?」
ゆかりは、さきほど確かにサブの声が聞こえたと告げる。それを聞いて、一緒に来ていた赤城は腕組みをして考え込む。
ゆかり「ねえ、マッちゃん、シローちゃん、会社が倒産したって言ってたわね、今度はどんな会社で働いてるの?」
マツ&シロー「あ……」
ゆかり「もしかしたら、そっと入院費を出してくれている人たちって、マッちゃんたちじゃないの?」
マツ「い……、そんな話知らないッスよ」
シロー「知らないよ」
ゆかり「そうねー、いくら働いてると言ってもそんなにお金が続く訳ないものね」
シロー「そうだよ」
ゆかり「でも、サブちゃんの言ってた小判てどういう意味なの?」
ゆかりにあれこれ聞かれ、返事に窮する二人を見て、赤城がふらりと歩み寄って助け舟を出す。

赤城「それはね、天使の奇跡だよ。僕はサブちゃんの知り合いだけど、サブちゃんは天使に祈る人に小判が恵まれる奇跡が起こると言う話をしていたのさ! なぁ、そうだろう?」
マツ「そ、そ、そーなんだよ、な?」
シロー「う、うん」
ゆかり「まさか、そんなことが……」
赤城「この世の中には不思議なことがあるものさ」
その時、再びサブの声が頭上から降ってくる。
サブの声によると、四次元の別の入り口が富士山の洞窟にあるらしい。
マツとシローは急いでその洞窟へサブを迎えに行こうとするが、赤城がそれを引き止める。

マツ「兄貴が小判を持って帰るんだよ~」
赤城「バカ、奇跡は一度しか起こらないんだぞ! ……君たちが泥棒をしているワケは分かった」
マツ「ゆかりちゃんは同じ会社に勤めていたんだ。手術するには金が要るんだよー!」
シロー「もっとお金が要るんだよー!」
赤城は口々に喚く二人を「バキヤロウ!」と地面に投げ飛ばす。
赤城「一度の奇跡なら、彼女も信じてくれる。後は、デンジマンに任せろ!」
こうして、デンジマンは富士山へ向かい、四次元の世界からサブを助け出す。そして、レッドとチョウチンラーの戦いの影響で、その入り口も消えてしまい、四次元へは二度と行けなくなる。
後は、いつもの戦闘ルーティンとなって、事件解決。

サブ「ゆかりちゃん、僕たちしばらくヨーロッパへ働きに行くことになったの」
ゆかり「えーっ?」
サブ「後のことは赤城さんが色々相談に乗ってくれるから……」
三人は赤城と一緒にゆかりにしばしの別れの挨拶を言いに来る。
……にしても、「ヨーロッパへ働きに行く」って、もう少しもっともらしい嘘がつけんのか?

サブ「それじゃあ、気をつけてね……さようなら……僕のこと忘れないでね!」
ゆかり「うん」
名残惜しそうに三回もゆかりと手を握るサブ。
これは、山田隆夫のアドリブだったのか、三回目ではゆかりが素で笑っているように見えるが……。
笑顔で病室を出て行くサブたち。無論、彼らはこれから警察に自首するつもりなのだ。

ゆかり「頑張るわ、私には天使がついてるんだもの」
だが、天使のように純真なゆかりは、そんなことを疑う様子もなく、天使の像に力強く語りかけるのだった。

エピローグ。
早くも刑務所に収監されて、野外の農作業に駆り出されているサブたちを赤城たちが道路から見下ろしている。

5人は、自信をなくしたり、失敗したり、落ち込んだりした時には、何時もここへ来て囚人たちの様子を眺め、
「ああ、あいつらに比べたら、俺たちはまだマシだよな!」 と、自分たちを慰め、優越感に浸ることにしているのである(註・断じて嘘です)
ナレ「泥棒天使は刑務所でも一番真面目に務めを果たしていた。この分なら晴れて出所の日も近いだろう。その日まで、さらば、泥棒天使!」
それにしても、やっぱりあきらは奇麗だねっと。