第34話「強敵!メカシンカ」(1983年9月24日)
前回、最後の進化獣が倒されてから、ジャシンカはすっかり鳴りを潜めていた。久しぶりに訪れた平穏な日々を、北斗たちは子供たちと存分にエンジョイしていた。
だが、その期間、ジャシンカでは、カー将軍が恐るべき研究に没頭していたのである。
そして遂にその研究が実を結び、カー将軍は帝王アトンに報告しにやってくる。

カー「帝王アトン様、進化獣より遥かに強力なメカシンカを作ることに成功致しました!」
アトン「なぁにっ、メカシンカ?」
カー「これまでのプログレッサーは生命体のみを進化させましたが、メカプログレッサーは金属原子をも反応させてメカで強化された進化獣、メカシンカを作ることが出来るのです!」
メギド「おっほう!」
カー将軍の頼もしい言葉に、メギドとキメラも期待に目を輝かせて顔を見合す。

カー「メカシンカ、融合、合体、開始!」
早速、記念すべき最初のメカシンカの製造が、カー将軍の号令によって開始される。

いくつかの工程を経て誕生したのは、ミサイルとザリガニを融合合体させた、その名もずばりミサイルザリガニであった。
今までの進化獣は、○○シンカと言うネーミングだったが、メカシンカは、○○+○○と、素材となったアイテムや生物の名前をくっつけた形式になる。

ミサイルザリガニは、直ちに地上へ出ると、ビルの屋上からせわしく活動する人間社会を見渡す。
ミサイルザリガニ「動いとる、動いておる、みんな忙しそうに働いておる。そんなに急いで何処へ行くんだ? よし、ザリガニミサイル発射!」
ミサイルザリガニは、背中に付いている特殊なミサイルを、電車や車、そして歩行者など、動いているものならなんにでも片っ端から撃ち込み、そのエネルギーを根こそぎ奪って動きを止めてしまう。
北斗は、子供たちを引率して山にキャンプに来ていたが、夢野司令からその事件のことを知らされ、東京に戻らなくてはならなくなる。

北斗「みんな、聞いてくれ、怪我人が出たのでちょっと戻らなきゃいけないんだ」
子供「僕たちを置いてっちゃうのぉ?」

エミ「いや、いや、エミも行く!」
アイコ「エミちゃん、弾さんは人を助けに行かなくちゃならないの、我儘を言っちゃいけないわ」
甘えん坊のエミが北斗の体にしがみつくが、年嵩のアイコが優しく言い聞かせる。

北斗「よし、俺が戻ってくるまでにご飯を炊いといてくれるかな?」
子供たち「いいともーっ!」 ここで、29話に続く、「笑っていいとも」ネタが炸裂する。
局が違うのに2度も出てくるとは、いかに当時、そのフレーズが流行っていたかが分かる。
東京に戻ったダイナマンだが、ミサイルザリガニに不意打ちを喰らい、各マシンから放り出され、マシンのエネルギーも奪い取られてしまう。
ミサイルザリガニと5人は場所を移して戦いを始めようとするが、その時、地面が揺れて地割れが起き、その裂け目から爆炎が吹き上がったかと思うと、それが収縮して人間の姿に変わる。

カー「ぬはぁははははっ、ぬははははははーっ」
せんだみつおのような高笑いを響かせて、彼らの前に颯爽と現れたのは、他ならぬカー将軍であった。

悠々とマントを翻しながら歩いてくるカー将軍の勇姿。
悪役ながら、実にかっこいいコスチュームである。
レッドが「何者だ?」と叫ぶと、カー将軍の前にメギドとキメラが現れ、

メギド「メカシンカをお作りになった有尾人一の科学者、7本尻尾のカー将軍だ!」
レッド「カー将軍?」
5人がカー将軍の姿を見るのは、これが初めてのことであった。
その威風堂々としたたたずまいに、5人も思わずたじろぎ、身構える。
キメラ「偉大なる軍神でもあらせられる。ミサイルザリガニがダイナマンを倒すのはご覧においでになったのよ」
王族のメギドたちでさえ、畏まってその露払い役を務めている辺り、カー将軍の大物感が実に良く出ているシーンである。それにしても、特撮ドラマの歴史上、これだけ何度も悪の首領や大幹部を演じられたのは(声優は別にして)石橋雅史さんだけだろうなぁ。
……あ、でも、曽我町子さんがいたか。
ダイナマンは、何も考えずに彼らに向かって突進する。

が、ミサイルザリガニのミサイルをまともに浴びてしまい、その場で石になったように釘付けになる。
カー「ミサイルザリガニのミサイルは、少しでも動くものがあれば自動的に命中する。そしてメカと言わず人間、そのショックで一瞬にしてエネルギーを失ってしまうのだ」
メギド「ダイナマン、立ちん坊とは不様な姿よなぁ」
動けないダイナマンにザリガニミサイルが猛然と迫るが、レッドが「みんな、最後の力を振り絞るんだ!」と檄を飛ばすと、5人は「気合」で、金縛り状態から脱する。
そして必殺技「スーパーダイナマイト」を繰り出すが、進化獣とは比べ物にならないほど強靭なメカシンカのボディに弾き返されてしまう。
各々のシンボルカラーのエネルギーに包まれた状態で、空中へ放り出される5人。

回転中のピンクのお尻。
これがほんとの
桃尻……す、すいません、言ってみたかっただけなんですぅ!
レッド「スーパーダイナマイトが利かないなんて!」
ブラック「そんな馬鹿なーっ!」
傷付き、地面をのた打ち回る5人を小気味良さそうに見ているカー将軍たち。
カー「分かったか、メカシンカの強さ、ミサイルザリガニのショックを振り切って動いたところまでは誉めてやるが、スーパーダイナマイトが利かなくては、もはやメカシンカの敵ではない!」
絶体絶命のピンチに追い込まれるダイナマンであったが、その時、雲の中からダイジュピターが現れ、カー将軍たちにミサイルを撃つと、ダイナマンを回収して退却する。
夢野「ミサイルザリガニを恐れて、A1地区からD3地区までの広い地域であらゆるものの動きが止まってしまった。みんな家に閉じ篭り、身じろぎひとつしないで息を潜めている状態だ」
夢野司令の言葉に合わせて、活動を止めてしまった街や、屋内に引き篭もっている人々の姿が映し出される。

夢野「君たちは直ちに、スーパーダイナマイトに代わる必殺技を開発するんだ。それ以外にメカシンカを倒す方法はない」
北斗「待って下さい、その前にユタカ君たちを連れ戻さないと」
洋介「しかし、今動けば」
竜「ミサイルザリガニの絶好の餌食でござるぞ」
北斗「子供たちを置いてはいけない!」
北斗は仲間の警告も聞かず、単身、レッドに変身してダイナファルコンで子供たちのところへ向かう。
だが、その動きは即座にミサイルザリガニのレーダーに探知され、ミサイルを撃ち込まれてダイナファルコンから投げ出され、そのまま川へ転落する。
一方、その子供たちは、ご飯もろくに炊けず、腹を空かしていたところへ、ぼしゃぼしゃ雨が降ってきたので、テントの中で心細そうに身を寄せ合っていた。

エミ「寒いよー寒いよー」
男の子「弾さん、何してんだうろ?」
男の子「道に迷ったのかなぁ」
アイコ「馬鹿ねえ、不安になるようなこと言わないでよ!」
男の子「だってえ、こんなになっても来ないなんて」
男の子「来る、弾さんは来る、今まで弾さんが約束を破ったことがあるか?」
そんな状況でも、子供たちの弾への信頼は揺るがない。
なお、未だに男の子たちの顔と名前が一致しない管理人であるが、読者も別に気にしてないと思うので、このままにしておく。
そして、約束どおり、弾は戻ってきた。
ただし、
子供たちのところじゃなくて、司令室にね!(管理人、思わずズッコケる)
弾は体を休めることもせず、「水の中と地下は、ミサイルザリガニのセンサーも勘付かないようだ。俺がダイナファルコンで飛び出し、ミサイルが命中するまで10秒! もう一度、ここでダイナファルコンで飛び出し、さらにマッハダッシュで走ったら……命中するまで25秒、大沢山まで行ける!」と、素早く計算する。
なんだか良く分からないが、とにかくチャーッと走って子供たちのところまで一気に行くつもりらしい。
でも、帰りはどうすんの?

夢野「君はそんなにまでしてあの子たちを……」
北斗「子供たちの夢を壊しちゃいけないと言ったのは、博士じゃないですか!」 夢野「いや、それはそうだが、あの時はだいぶ酔ってたし……」
北斗「……」
どうやら、北斗、夢野が酔っ払ってる時に勢いで口走った言葉を真に受けていたらしい(註・嘘です)。
竜「なに、弾の顔を見て下さいよ、何か成算が合ってのことでござるよ、そうだろう、弾?」
北斗「みんな、命を預けてくれるか?」
竜「ヤだ!」 北斗「……」
嘘です。無言で頷いてるんです。
とにかく、弾の一か八かの作戦は実行に移される。
基地から、レッドファルコン(予備の)で発進し、10秒後にミサイルが命中、続いて、マッハダッシュで走り出し、計算どおり、25秒でミサイルが命中する。
だが、動けない筈のレッドは、勝利を確信するミサイルザリガニに反撃してみせる。
レッド「お前を誘い出す為に、25秒間に全てを賭けたのだ!」 ……
うーむ、さっぱり意味が分からんぞ。
続いて他の4人も何事もなかったように顔を出すので、「命を預けろ」と言うのが一体なんだったのかも分からないのである。
あるいは、その後に繰り広げられる、現時点では勝算のない、メカシンカとの戦いのことを指していたのかも知れない。
いずれにしても、ミサイルが命中したレッドがなんで自由に動き回れるのか、その辺の説明が一言で良いから欲しかったところだ。
で、5人は、ミサイルが動くものに何でも反応する性質を持っていることを利用して、ミサイルをメカシンカ自身に当たるように誘導して、なんとか強敵を撃破するのだった。
それはいいのだが、ラストの巨大ロボットバトルで、巨大化したメカシンカを、従来どおり、「科学剣・稲妻重力落とし」で普通に倒しているのはなんか釈然としない。
たぶん、ダイナマンもカー将軍も夢野司令も釈然としなかったと思うが、「それが大人の世界なんだよ!」と言うことで各自納得したと思われる。

戦いの後、5人はやっと子供たちを迎えに行く。
子供たちが作った焦げた握り飯をみんなで頬張りつつ、35話へ「つづく」のであった。