第16話「謎の宇宙物体スノーアート」(1980年7月16日)
科学技術館と言う施設では、いま、「宇宙展」なる特別企画が開催されていた。
人工衛星やロケットなどの展示物もあったが、最も来場者の人気を集めているのが、

サブタイトルにもなっている「スノーアート」と呼ばれる、芸術品のように美しい鉱物であった。

お姉さん「これが、宇宙が創造した最高の芸術品、スノーアートです……」
管理人の目には、そんなものより、このお姉さんの方がよっぽど奇麗に見える。
スノーアートは、宇宙観測船オリオン号が、冥王星と海王星の中間地点で発見して回収した宇宙由来の物体であった。

イトウ「どうしてこんなものに人が集まるのかね」
エミ「あら、チーフ、案外鈍感ねえ。この美しさが分かんないなんて(頭が)おかしいわぁ」
UGMでも、そのスノーアートのことが話題になっていた。
タジマ「そう言うのは美意識が欠如してるって言うんじゃないですか」
イトウ「ああ、そうですよ、どうせ俺はね、
ゴキブリと蝶々の違いも分からない男だよ」
エミたちに馬鹿にされ、イトウはぶすっとした顔で自虐めいた台詞を吐く。
しかし、さすがにゴキブリと蝶々の区別が付かないと言うたとえは変なのでは?

イトウ「美しいものには毒があるって言うからな」
エミ「嘘、美しいものに毒なんてある訳ないでしょう! 誰だって美しいもの見たら心が和む筈です」
胸を反らしてイトウの嫌味に反論するエミ。
向かって左側の胸に、微かに突起のようなものが見えるのだが……。
そこへオオヤマが厳しい表情で入ってきて、エミのおっぱいには目もくれず、計器類の前に立つ。

オオヤマ「やっぱり出てるな」
猛「なんですか、これは」
オオヤマ「ついさっき、電波通信班がキャッチした。発信地はS地区だ」
そのS地区は、奇しくもあの科学技術館がある場所でもあった。
オオヤマは、S地区一体の調査を、イトウとタジマに命じる。

イトウ「どうだ?」
タジマ「やはり発信源はこの中ですね」
だが、科学技術館の館長は、二人の話を聞くと笑って、その音波がスノーアートから出ていることをあっさり教えてくれる。
館長「スノーアートは地球にはない物質で出来てましてね、それが超音波を発信してるんですよ」
イトウ「しかしそんなことはどこにも?」
館長「ええ、まだ発表していません。とにかく、宇宙展が終わるまで一切の調査はお断りです」

館長に勧められ、二人はそのスノーアートの展示室に足を運ぶ。
館長「どうです、スノーアートこそ大宇宙が創造した自然の芸術品です」
イトウ「これが……」
意外なことに、イトウはすっかりスノーアートの虜になってUGMに戻ってくる。

イトウ「あれを見てるとね、魂を吸い込まれそうな、怪しげところがあるんだよな」
タジマ「そうなんだ」
エミ「やっぱり美しいものに毒なんてなかったでしょ?」
エミは得意気に言うが、イトウはスノーアートを前にした時の不思議な気持ちを、なんとか説明しようと苦労していた。
イトウ「心に訴えかけるような……たとえば、スノーアートが何か命令したら、そのまま従ってしまうって感じなんです」
エミ「まさか」
タジマ「いやいや、チーフの言う通りなんだ」
オオヤマは念の為、今度は猛とエミにもう一度スノーアートの調査に行かせる。
ただし、館長からああ言われているので、二人は私服で、一般客を装って科学技術館に向かう。

猛(チーフの言うとおりだ。人間がスノーアートに魅せられるのは、美しいからだけじゃない……何か別の要因が……)
ウルトラマン80である猛は、普通の人間のようにスノーアートに魅了されるようなことはなかったが、さすがに見ただけではスノーアートの正体は見抜けない。
一方、最初からスノーアートに惚れ込んでいたエミは、実物を前にして、まさに魂を抜かれたような恍惚とした表情で見入っていた。
ちなみに、UGMではオオヤマが、イトウの懸念に対して
「(二人から)連絡がないのは上手く行ってる証拠だ」と、暢気に応じるシーンがある。
(真顔で)さすがにそれは違うと思います。
さて、二人は一般客の観覧が終わってからも館内に残って隠れ、夜になるのを待って、本格的なスノーアートの調査に着手する。

だが、エミが手始めに赤外線を照射すると、スノーアートが内側から爆発を起こしてあっという間に崩壊してしまう。

そして、驚いてその場に立ち尽くしているエミの足元に、スノーアートから出て来たガスのようなものがまとわりつき、

その体を芯にして、不気味な怪物が実体化する。
ここの、耳鳴りのようなBGMは、セブンの「狙われた街」で、フルハシたちが特殊なタバコを吸った時のBGMに似ていて、ちょっと懐かしい気分にさせられる。

猛「これは……」
猛が思わず近寄ろうとするが、怪物の放った青白いビームをまともに浴びてぶっ倒れしてしまう。
怪物は窓を突き破って建物の外へ。
同時刻、UGMでは、あの音波に何か意味があることが判明し、その解読が行われていた。

SF作品ではありがちなネタだが、スノーアートは芸術品でもなんでもなく、ルリヤ星人と言う人間型の宇宙人が、デビロンと言う恐ろしい怪物を封じ込めて追放した一種の檻だったことが判明する。
あの音波は、そのルリヤ星人からの警告のメッセージだったのだ。
ルリヤ星人「デビロンは他の生物の体に乗り移り、強力な破壊力の念力と、周囲にいる生物を操るテレパシーを武器にあらゆる生物を自滅させてしまう能力を備えている。(中略)発見者は直ちに、檻ごと宇宙に追放しなさい。デビロンの弱点は体内に瞬間的なエアポケット現象を起こし、呼吸を止められることだけなのだ」

が、そのメッセージも空しく、既に地球上で復活したデビロンは、夜の街を流星のように飛翔しては、

行く先々で、破壊の限りを尽くしていた。
UGMの司令室は、仲間であるエミが恐ろしい怪物になってしまったことで、重苦しい空気に包まれていた。
猛もイトウたちも、デビロンと一体化したエミを攻撃することなど出来ないと軟弱な台詞を吐く。
しかし、全員が全員、攻撃したくないよぉと言うのも、ちょっと詰まらないね。
コワモテのイトウあたりに、「だが、これ以上被害を広げられない!」みたいな賛成意見を言わせた方がドラマとしては盛り上がるところだ。
もっとも、肝心のオオヤマにしても、「自分も城野隊員を殺そうなどと考えてはいない」と、苦みばしった顔付きで言うくらい、優しいUGMの皆さんなのでありました。
だが、

猛「じゃ、一体、どうしたらいいんです?」
オオヤマ「……」
猛の単刀直入な質問に対し、引き続き苦みばしった顔で無言を貫くというのは、さすがに指揮官として情けないものがあった。
まさか、
「よし、ウルトラマン80が来るまで待とう!」などと、防衛軍の司令官にあるまじきことを考えていたのではあるまいな?

翌日の昼間、一時姿を消していたデビロンが、オフィス街に忽然と出現する。
デビロンは念力で車を浮かせては落としたり、

逃げようとした6人の男に特殊なビームを当て、

地球人に対するイヤガラセとして、この6人を新人アイドルグループとして、某事務所からデビューさせようとしたりする、と言うのは嘘である。

実際には、彼らの精神を操り、人を襲わせたり、なるべく車体に傷が付かないように車を叩かせたり、暴れさせるのであった。

とりあえず、UGMも各戦闘機で出動し、現場付近に着陸する。
手前の鉄工所の作り込みとか、いつものように、特撮スタッフの仕事は鬼気迫るものがあった。

別の空き地では、またしてもデビロンに操られた人々が、なるべく車を壊さないように注意しながらワゴン車の上で騒いだり、バンバン叩いたりしていた。
……あのう、せめて、窓、壊しませんか?
(窓が割れるSEだけは聞こえる)

彼らの目の前には、デビロンが浮かんでいた。
彼らがボーっとそれを見上げていると、デビロンに操られた人々が襲い掛かってくる。

その混乱の中、タジマとハラダがビームを浴びて、市民同様、デビロンの操り人形と化してしまう。
二人は猛とイトウにゾンビのように迫ってくるが、

猛とイトウが両側から、二人の体をサンドイッチするように締めると、あっさり二人は正気に返る。
ナレ「それは、デビロンのエアポケット現象であった」 ……
さっぱり意味が分からんのじゃい!(管理人の魂の叫び)
ま、この設定については考察するだけ時間の無駄と言う気がするので、スルーさせて貰う。

その時、デビロンが動きを止め、その中にエミの姿がおぼろに浮かび上がり、「助けて……苦しい……」と、猛たちに訴えかける。

その後、応援に来た防衛軍兵士が猛たちの制止も構わずデビロンを撃つが、そんなもので倒せたらルリヤ星人があんな苦労する必要もない訳で、デビロンは怯むどころか、逆に巨大化してしまう始末。
それにしても、デビロンのデザインは秀逸である。
デビロンはより強力な念力ビームで、今度はビルを破壊し始める。

猛を除く三人は、再びここで洗脳ビームを受けてしまい、邪悪系の顔になる。
同じ人物が、二回も「宇宙人に操られてます顔」になるのは珍しいケースである。
一方、猛は周囲に人がいなくなった機会を掴んで、80に変身する。

デビロンと戦い始めるが、相手は強大であり、しかもデビロンに操作されているイトウたちが、シルバーガルなどに乗って、こともあろうに80を攻撃してくるので、80は非勢に陥る。

イトウ「げっへっへっへっ……」
さすがにイトウのこの顔はやり過ぎだと思います。

デビロンの中のエミが、80に訴える。
エミ「ウルトラマン80、私を殺して! このままじゃ、人類が滅びてしまう。お願い、私を殺して!」

80「……」
さすがの80も、どうしていいか分からず、苦悩する。
が、この時、ルリヤ星人の「エアポケットがどーのこーの」と言う忠告を思い出し、

80は素早くデビロンの背後に回ってその首を強く絞め上げる。
良く分からないが、

80の作戦は図に当たり、デビロンはエミ隊員から分離して、今度は80に乗り移ろうとする。
……うーん、このマジックペンで書いたようなもじゃもじゃのアニメーション、はっきり言ってNGですね。

80は、デビロンと同化するが、超人的な精神力でデビロンの支配に抗う。

エミ「ウルトラマン80……」
元の姿に戻って草の上に横たわるエミの肢体が美しいのである。
エミやイトウたちの見守る中、80の苦闘は続くが、遂に80はデビロンの意識を封じ込めることに成功する。
その後、80は宇宙へ出て、体内からデビロンの体を分離させてから、サクシウム光線で粉砕する。

(ウルトラマン80の力による)事件解決後、和やかに談笑するUGMの面々。
オオヤマ「俺も城野隊員の顔、忘れるところだったよ」
エミ「あら、キャップ、ひどい。部下の顔を忘れるなんて!」
猛「ほらぁ、そんな顔したら折角のチャーミングな顔が台無しだよ」
エミ「うふふふふ」
例によって、ほんわかムードで終了です。