第15話「不良教師」(1985年1月19日)
冒頭から、川浜高校で卒業式が行われている。
なお、第6話の卒業式でははっきり昭和53年度と書いてあり、そこから計算すること、この15話の時点では昭和54年度にならなくてはならないのだが、昨年、つまり昭和54年に亡くなった筈のイソップの墓標が17話に出てくるのだが、それを見ると、没年が昭和56年になっていて、2年のズレが見られる。
つまり、当初の設定では昭和53年スタート(滝沢の赴任した年)だったのが、途中で昭和55年スタートに変わったということなのだ。すなわち、今は昭和57年(昭和56年度)の3月と言うことになる。
いずれにせよ、滝沢にとって、早くも二度目の卒業式と言うことになる訳だ。
それに伴い、ラグビー部では、玉川など、光男と同学年の主力メンバーが卒業する。光男だけは、いかにも作為的な昨年の留年によって、もう1年、在籍することになっているのだ。

また、今年度を以て、滝沢を教師の道に引っ張りこんだ張本人である山城校長が定年を迎え、校長を退任することになる。
校長「(前略)いずれの道を進もうとも、社会は諸君を温かく迎えてくれるとは限りません。今希望に輝いている諸君の瞳も、屈辱にまみれ、絶望に暗く打ちひしがれることもあるでしょう。そう言う折は、是非思い出して欲しいエピソードがございます。それは我がラグビー部のことです!」
校長は、かつて相模一高に109対0と言う大敗を喫したラグビー部が、同じチームを相手に僅差ながら、イソップが死んじゃったよぉ、悲しいよぉ、なんとかしてイソップの遺影に勝利の報告をしてやりてぇよぉ、などと試合中、相手チームに延々言い続けて、相手の戦意を喪失させ、まるでひったくりのように勝利を相模一高から強奪したと言う、途中でかなり管理人の妄想が紛れ込んでしまったが、とにかく、1点差でも勝ちは勝ちぃと言う奇跡を成し遂げたエピソードを卒業生たちに得々と披露する。
それを聞いた卒業生たちは、
卒業生たち「……だから?」 校長「え? いや、だから、つまり、その……」
嘘はさておき、校長は「夢を信じ、仲間を信じ、力を尽くせば、どんな屈辱や絶望のどん底からも這い上がれるということですぅ! 何事も諦めることなく、勇気を奮い起こして頂きたい」と、卒業生たちに最後のメッセージを贈るのだった。

話し終えた後、校長はほかの教師たちと一緒に座っている滝沢に目を注ぐ。
その澄んだ目は
「こういう席で、おまいらの良い話をしてやったんだから……な、分かってるな?」と、露骨に金品を要求していたが、滝沢はその視線を真っ直ぐな目で受け止めつつ、
「ありがとうございました。このお礼は必ず、精神的にさせて頂きます!」と、力強く応じていた。
嘘はさておき、滝沢の後ろに座っている眼鏡の男性教師の目付きが気持ち悪い……。
さて、式の後、校長は一緒に戦ってきた教師たちとがっちり握手をしつつ、別れの挨拶を交わしていた。
その後、外から校長を呼ぶ生徒たちの声が聞こえてくる。式が終わってだいぶ経つのに……と、校長が訝しげに窓際に立つと、卒業生、在校生を問わず、たくさんの生徒が集まって、職員室を見上げていた。

江藤「いや、校長先生の苦労の賜物ですよ」
教頭「夢のような変わりようですな、以前は卒業式となると、決まって春一番だ」
校長と一緒にそれを見ながら、教頭たちが感慨深げにつぶやく。
教頭の言う「春一番」とは、以前は、卒業式になると必ず、誰も呼んでないのにアントニオ猪木の酔っ払いモノマネ芸人が乱入していた……と言うことではなく、

最後にもう一度親睦を深めましょうとばかり、不良たちが教師たちをよってたかってボコボコにしていた風習を、「春一番」と呼んでいたのだ。
もっとも、それは川浜だけの隠語ではなく、校内暴力に悩まされている教育界全般で使われているタームらしい。

生徒たちの作る人垣の前で、校長は加代から花束を手渡される。
校長「私も石をぶつけられながら去ることになると思っておったのだが、私は日本一、幸せな校長です!」
花束を手に、感極まった様子で率直に自分の思いを吐露する校長。
しかし、この感じでは、この2年間で、川浜の不良生徒は奇麗に一掃されたように見えるのだが、滝沢が赴任した時、1年か2年だった不良生徒はまだこの学校に残っている訳で、その生徒たちも全員更生して良い子ちゃんになった……と言うのはいささか信じがたい。
まだこの段階では、不良性を帯びた生徒たちが少しは残っていた方がリアリティがあったと思う。
むしろ、そう言う生徒たちが多少のハニカミを見せつつ、校長を送り出した方が感動的だと思うんだけどね。

と、誰も呼んでないのに新楽の下田夫妻も駆けつけ、校長に温かい言葉をかける。
その場にいた全員が、
(店は良いのかい?)と、内心ツッコミを入れていたのは言うまでもない。
ちなみに、しばらく顔を見せなかった夕子、和田アキ子さんのスケジュールが空いたので、やっと大阪から戻ってきたらしい。
校長「じゃあ、皆さん、これで」
深々と頭を下げる校長に、教師、生徒たちが惜しみない拍手を送る。

さらに、門に向かって歩き出した校長のバックで、誰からともなく「あおげば尊し~♪」と、定番の卒業ソングを歌い出す。そして、歌いながら、校長の後に続いてゆっくり歩いていく。
まぁ、この曲自体は名曲なので、この程度なら許容範囲の恥ずかし演出だったが、

門の手前まで来ると、向こうからラグビー部員たちが駆けて来て、校長を中心に円陣を作ると、
光男「よし、行くぞ、校長ーっ! ファイッ!」
部員「オーッ!」
光男「ファイッ!」
部員「オーッ!」
光男「ファイッ!」
部員「オーッ!」
光男「校長ーっ! ファイッ!」
部員「オーッ!」
などと、意味不明の掛け声を張り上げて、管理人を居ても立っても居られないほどの恥ずかしさに叩き込むのでありました。
そもそも「校長ファイト」ってなんだよ……
月曜から金曜まで、校長と不良生徒が戦う5分間の帯番組か?
で、円陣を解いた後、大木たちも一緒に「あおげば尊し」を歌いだすのがこれまたハズカティー!
校長(滝沢君、後は頼むよ!)
滝沢(分かってます、校長先生!) そして、なんと、校長と滝沢が互いにテレパシー能力を持っていたことが判明する。
そう、実は彼ら、幻魔から地球を守る宿命のもとに生まれたサイオニクス戦士だったのである!
だから、滝沢は「あなたに代わって私がこの地球を守り抜きます!」と言いたかったのである!
ま、与太話はともかく、校長と滝沢が見詰め合ったまま、目に涙を滲ませている様子は、はたから見ていてかなり不気味であったことは間違いない。
ここでOPですが、なんと、今回チェックしてて気付いたのだが、タイトルバックの、あの、伝説的なスカートめくりのカットがなくなっていた。いや、実際はもっと前からタイトルバックが一部変えられ、その一環としてスカートめくりも消されていたようだ。
やっぱり、視聴者からクレームがついたんだろうか?
うーん、折角だから、もう一度貼っておこうかしら。……え、要らん? そうですか。

……と思ったけど、やっぱり貼るわ。
あっ、やめて、石を投げないで下さい! もうしませんから!
え、さて、OPが終わると、早くも新年度(昭和57年度?)の4月になっており、グラウンドで、ラグビー部の新入部員たちが自己紹介しているシーンとなる。
昨年、相模一高に劇的な勝利を収めた川浜だが、公式戦ではまだ一勝もしていないので、新入部員も僅か7名に過ぎない。

平山「小松中学出身、平山誠です」
その中に、ひときわ背が高く、眼光の鋭い、そして見事なケツアゴの兆候が見える顔立ちの平山と言う生徒がいたが、彼こそ、去年(2016)亡くなった平尾誠二氏がモデルになっているキャラクターなのだ。
演じるのは、日本有数のケツアゴ俳優(頭のおかしい管理人が勝手に言ってるだけですので気にしないで下さい)四方堂亘さんである。
また、他にも日本一ビンボーな高校生として有名な清川や、入試の成績がトップだったと言う文武両道の栗原などもいて、なかなか個性的な顔ぶれであった。

部員「一番~?」
栗原がトップ合格だと知った上級生たち、反射的に光男の顔を見直しているのは、
「ああ、同じラグビー部員でも、留年してる奴、トップ合格した奴、様々だなぁ」 と、しみじみ感心しているのである。

もっとも、光男は光男で、それを聞いても別にひがむでもなく、「俺がキャプテンの森田光男、人望があるからキャブテンに選ばれたって訳だ!」と、悪びれずに自己紹介するあたり、皮肉ではなくその図太さに感心させられる。
大木「……と言うよりは、落第して一年年取ってるから、顔を立てたってわけ」
すかさず大木がそばからまぜっかえすが、光男は咳払いして誤魔化すと、お互いを知る為に、とりあえず一緒に練習しようと提案し、早速全員でグラウンドを駆け回ることになる。
ところで、川浜ラグビー部に新たに加わったのはその7人だけではなかった。

そう、嬉しいことに、大木の子分と言うか、親衛隊のような女の子の清美と明子も川浜に進学し、同時にラグビー部のマネージャーになったのだ。
加代「練習スケジュールの作成でしょ、道具の手入れ、後片付け、グラウンドの整備、部の会計……」
加代がマネージャーのするべきことを列挙し、それを二人が、一生懸命ノートに取っている。
……って、あれ、加代って卒業したんじゃなかったの? 滝沢が赴任した時点で2年だと思っていたが、どうやらまだ1年生だったようだ。
最初、山城校長が「加代は2年休学してる」と滝沢に言っていたので、つい、2年生なんだろうと連想してしまっていたらしい。
つまり、加代は今、3年生だが、今年度中に20歳になる訳か。
しかし、キャプテンが19歳で、マネージャーが20歳の高校ラグビー部って、なんかヤだなぁ……。

明子「ちょっ、ちょっと待って下さい、マネージャーの仕事ってそんなにあるの?」
加代「そうよ、それからー、スパイクの手入れでしょ、テーピングでしょ、それからー」
清美「もっもう結構です、こりゃタコのはっちゃんみたいに手が八本要るわ」
とめどなく項目を挙げていく加代を慌てて押し止めると、困惑した顔を付き合わせる二人。
ラグビーが好きと言うより、大木先輩が好きと言うだけでマネージャーを志願した二人、早くも音を上げそうになっていた。
と、ちょうどその愛しの大木先輩が他の選手と衝突して仰向けにぶっ倒れるという事態になる。

当然、二人は先を争うようにして大木のところへ駆け寄ろうとするが、

清美「先輩!」
急ぐあまり、清美は、足元のタイヤに足を引っ掛け、

芝生に顔から突っ込むようにして倒れ、そのまま動かなくなってしまう。
いいなぁ、この豪快なドジッ子ぶり。

大木の方は介抱の必要もなくすぐ立ち上がるが、清美の異変に気付いて、こちらにやってくる。
大木「何やってんだ、お前ら」
明子「先輩、清美、気を失っちゃったんです」
大木「しょうがない、おい、どけ」
お人形さんのように抱き起こされている清美がめっちゃ可愛い。
しかも、しかも、

男子部員たちが見ている中、大木はかまわずその奇麗な顔に、やかんの水を思いっきりぶっかけてしまうのである!

清美「ぷっふ……」
清美、そのショックですぐ目を覚まし、子犬のように顔をぶるぶる震わせる。
この時、山本理沙さん、スッピンを全国に晒すことになって恥ずかしかったか、それとも、「美味しい」と思っていたか、それは定かではないが、いやぁ、いいものを見させて頂きました。
これが、倒れたのが明子だったら、このシーンごと削除してやったところだ。

そしてこのタイミングで、今回の主役とも言うべき新キャラクター、山城に代わる校長として赴任してきた岩佐校長の初登場となる。
岩佐校長を演じるのは、大映ドラマの守護神、大映ドラマのヌシ、大映ドラマの地縛霊、大映ドラマのアブドーラ・ザ・ブッチャー、大映ドラマの八宝菜などと呼ばれている(呼ばれてへん! 呼ばれてへん!)名古屋章さんであった。

その岩佐、着任の挨拶の席で、のっけから「この川浜高校は実にダメな学校である!」と嘆いてみせ、さらに「学校とは何だね、君、答えたまえ」と、横柄な態度で、江藤先生に質問する。
江藤「うー、そりゃあ、勉強をするところ……」
岩佐「そう、その通り! しかるに生徒たちの成績はどうだ? 県下でもCクラスである! こぉこ数年来、東大への合格者はひとりもいない! 暴力事件さえ起きなければ優秀な高校と言えるのかね?」
岩佐は、校内暴力の追放だけでは満足せず、学校全体の成績の向上を第一目標として宣揚する。
それは良いのだが、

岩佐「学業の向上を阻んでいる要因は何か? 異性、ファッション、漫画への興味もさることながら、クラブ活動もまたそのひとつだと私はそう考えている。今日グラウンドで、ラグビー部の運動を見ながら、私はつくづくそう思った。ボール遊びをしたり、女子マネージャーとなにやら騒いでる。そう言う暇があるなら、英語の単語をひとつ覚える、その方が遥かにマシだと……」
岩佐はラグビー部を引き合いに出して、クラブ活動全般に対する敵意を剥き出しにする。
滝沢「校長先生、子供たちは学業とクラブ活動を両立させようと必死にやっています!」
滝沢、すぐ立ち上がって反論する。
……でもねえ、そのラグビー部の
キャプテンが留年してるので、説得力があまりないのが残念だった。
続けて、
滝沢「現に今年入った栗原のように成績がトップだって言う子さえいるんです!」 と言い立てるのだが、これってなんか変じゃないか? これは単に、成績トップの子が入部したというだけであって、部員が学業と部活動を両立させているという証拠にはならないよね。
たとえば、「大木と言う部員は、入部以来、ずっと成績上位をキープしています」みたいなことなら反論になるんだけどね。
岩佐は、滝沢の言葉になど耳を貸さず、テストで平均点を下回ったら、その生徒のクラブ活動を禁止するという厳しいルールを強権的に決めてしまう。
その2へ続く。