第16話「闇に光る目」(1968年1月21日)
読者様からのリクエストにお応えしてお送りする「お前には主体性と言うものがないんか」シリーズのお時間がやって参りました。
今日紹介するのは第16話「闇に光る目」であります。

ファーストカットから、ぐるぐる回転している地球防衛軍のレーダーアンテナの素晴らしいミニチュア。
通信員「違うんです、さくら9号の回収作業をしているかどうかを聞いてるんですよ!」
司令室では、イライラした口調で通信員がどこかと交信していた。
通信員「……そうです。ええ、そうですか、それではさらに調査をして詳細は後で報告します」
マナベ「確かにさくら9号なのか?」
通信員「ええ、この発信音はさくら9号のサイクルです」
マナベ「宇宙局の方は?」
通信員「は、この3ヶ月間、一切、アンノン星計画は中断されていますが」

キリヤマ「それはそうだ。計画再開の折は、我々にも連絡が入る筈ですから」
マナベ「じゃあ行方不明の宇宙船が、何故今頃、誰の手で帰って来るんだ?」
不思議そうに顔を見合わせるキリヤマとマナベ参謀。
アンノン星調査の為に打ち上げられて、消息を絶っていた無人宇宙船さくら9号が、突然、地球に帰還しつつあるとの情報を受けて、地球防衛軍はその対応に追われていた。

キリヤマはとりあえず、フルハシとソガをホーク1号で、さくら9号の着陸予測地点へ向かわせる。
彼らがその空域に達した時、ちょうど逆噴射を掛けながらさくら9号らしきロケットが降下してくる。
フルハシ「間違いなくさくら9号だと思われます」
キリヤマ「落下地点は?」
フルハシ「この分だと、
地獄山近辺だと思われます」
ソガ(なんちゅう名前じゃ)

キリヤマ「推定落下地点は地獄山だ」
アマギ「隊長、間違って落ちたら宇宙局の基地が危ないじゃないですか」
マナベ「そればかりじゃない、宇宙船の中に何が潜んでいるか分からんだろ。万一細菌でも詰め込んでいたら大変なことになる」
珍しく、マナベ、アマギ、アンヌが並んでいる。
こうして見ると、やっぱりアマギの古谷敏さんはウルトラマンの中に入ってたんだなぁと実感する。
立っているものは親でも使う主義のキリヤマは、ちょうどパトロールから戻ってきたダン、アマギ、アンヌ、ついでにマナベをさくら9号の回収に向かわせる(マナベ「なんでワシまでーっ!」)。
……嘘である。

ポインターでふもとまでやってきた三人、地獄山の谷を覗き込みつつ、さくら9号の着陸地点へ急ぐ。
谷底からはもうもうと硫黄を含んだガスが噴き出していることから、地獄山は活火山なのだろう。

さくら9号を発見して、アマギたちが近付こうとするのを、ダンが制する。
ダン「待て、様子が変だ」
アンヌ「ダン!」

と、ロケットの表面が発光したかと思うと、さくら9号は轟音と共に木っ端微塵に爆発してしまう。

アマギ「おかしいなぁ」
アンヌ「落下のショックで爆発しなかったものがどうして?」
アマギ「我々の姿を見て自爆したんじゃないのか?」
ダン「誰か乗り込んで来た奴がいるんだろうか」
アマギ「バカ言え、何もそれらしいものは見当たらないじゃないか」
……うーむ、このクソ真面目な三人組では、ギャグが浮かんで来ない。
今になって、ソガ隊員の有り難さが痛いほど分かる管理人であった。
と、ダンが何かに気付いたように立ち上がる。

ダン「なんだ、あの音は」
アンヌ「煙の噴き出す音でしょ?」
ダン「キリキリ(キーキー?)言ってる」
アマギ「え……、ダン、何も聞こえないじゃないか」
その音はウルトラセブンであるダンにしか聞こえないようだった。

ダンが、ひとりで歩き出し、山肌に近付くと、岩の表面に緑色の巨大な目が出現する。しかし、ダンはそれに気付かない。
この「絵」が、実に雰囲気があって良いのである。これは全部、実景……か?

また、この「瞳」の造型がとても奇麗で、まるで宝石のようだ。

アマギ「ダン、何かあったか?」
ダン「ここまで来たら聞こえなくなった」
アマギ「空耳だったんだよ」
アンヌ「格別変わったものもないじゃない?」
だが、再びさっきのシグナルのような音が聞こえてくると、二人はヘルメットを抱えて苦しみ出す。

一方、地獄山からとことこ降りてきたヒロシと言う少年が、手に奇妙な形をした白い石を抱えているのを見て、他の子供たちがわらわらと集まってくる。
この、画面左手の疎林に、白濁したような霧が掛かっていて、これまた「絵」になってるんだよね。

ケン「おい、イヤに奇麗な石じゃないか」
ヒロシ「地獄山で拾ったんだ」
ケン「欲しいなぁ、俺にくれるだろう?」
ヒロシ「嫌だよ、ケンちゃんだって拾ってくれば良いじゃないか」
子供「おい、また泣きたいのかー」
ケン「それさえくれれば遊んでやるよ、いいだろう」
ヒロシ「嫌だよー」
いつも泣き虫と他の子供たちからバカにされているらしいヒロシだったが、いつになくきっぱりとガキ大将の要求を拒否する。
それでも子供たちが強引にその石をヒロシの手からもぎ取ろうとするが、

今度は、彼らのそばの木の幹に「目」が出現し、あの独特の音を放射する。
ヒロシを除く子供たちはたちまち頭を押さえて苦しみ出し、その場に倒れ込んでしまう。ヒロシがその場を逃げ出した後、ダンたちのポインターが通り掛かり、子供たちに駆け寄る。

ダン、あの音の発信源と思われる方へ銃を撃つが、ビームが命中した瞬間、あの「目」は消失し、ただの木の幹に戻ってしまう。
三人は、とにかく子供たちを近くの病院へ連れて行く。

アンヌ「あの子たち、ヒロシって言う子と地獄山で拾ってきた石の取り合いをしている時にやられたそうよ」
ダン「なに、石?」
アマギ「子供たちには石でも宝石のような価値与えるもんらしいからな」

さて、ヒロシ少年が勉強部屋であの石を磨いていると、急に照明が消え、ドアも開かなくなってしまう。
ヒロシ「ママー! ママー!」
声「坊や、そんなことをしても無駄だ」
ヒロシ「お前は誰だ? 僕に何の用があるんだ?」
声「ふっふっふっふっふっ、私の体を返しに貰いに来た」
ヒロシ「そんなもの知らないよ」
アンノンの声を演じているのは、メトロン星人の中江真司さん!
やっぱり、こういう知的な宇宙人の声には中江さんの落ち着いた声音が良く似合う。
今度は部屋の壁に「目」が開き、ヒロシ少年をびっくりさせる。

声「私の体はそこにある。君の机の上だ」
ヒロシ「これは僕が拾った石だ!」
声「それは宇宙船を爆破する時に一緒に飛ばしてしまった私の体だ。それを誰にも気付かれないように地獄山の煙の中へ落としてくれ」
アンノンは、「君を一番強い子にしてあげる」などと言葉巧みにヒロシを誘惑し、地獄山へ向かわせる。
その後、ダンはあの奇妙な石に謎が隠されていると睨み、ヒロシ少年の家に行く。ダンは、ヒロシが地獄山へ向かったことを知ると、地元住民を動員して山狩りを行う。
ヒロシ少年、松明を持った村人たちを遠くに見て、足が止まる。
声「どうした、行くんだ、行け、私にはあの硫黄と熱が必要なのだ」
ヒロシ「でも、あの人たちが……」
声「心配することはない、坊やを捕まえようとする奴は私が倒す」
その言葉どおり、アンノンはヒロシの前に立ちはだかる村人たちを、巨大な「目」のひと睨みで次々と昏倒させていく。

谷にかかる鉄橋を渡っていたヒロシ、ふと立ち止まって声に問い掛ける。
ヒロシ「ねえ、どうしてみんなが僕を捕まえようとするのー? ねえ?」
声「どうやら私のしようとしていることが怖くなったからだろう」
ヒロシ「何をしようとしてるの?」
声「我々の星の平和を二度と荒らしに来ないようにする為だ。君だって君をいじめる子はやっつけてやりたいだろう?」
ヒロシ「いやだ、いやだ、僕、帰る!」
ヒロシ、急に怖くなって石をその場に投げ捨てる。
声「坊や、約束を破ることは出来ない。それに強い子にもなれないぞ」
ヒロシ「……」
ヒロシ、仕方なく石を拾い上げ、再び歩き出す。
その後、色々とどうでもいいシーンがあって、遂にあの石は、地獄山の谷に落とされ、噴き上げる硫黄とマグマの熱によって、巨大な怪獣アンノンの姿になる。
キリヤマ、フルハシ、ソガの三人はホーク1号で攻撃した後、地上に降りて銃で攻撃する。しかし、頑丈な岩で出来たアンノンには全く通じない。

キリヤマ「お前は地球に何しに来たんだ?」
戦いの最中、不意にキリヤマが撃つのをやめ、怪獣に向かって話しかける。
……でも、ここまでのシーンで、キリヤマに、怪獣に高い知性があると思わせるような描写はなかったので、ここで急にキリヤマがアンノンとコミュニケートしようとするのは、ちょっと違和感を覚える。

それはともかく、のたのたした動きと、小さな点のような目が可愛いアンノンは、キリヤマの問い掛けに、「我々のアンノン星を攻撃してきた、地球を破滅させに、だ!」と、即答する。
キリヤマ「攻撃だって? それは違う、我々が宇宙船を打ち上げたのは、宇宙の平和利用の為だったんだ」
アンノン「地球人の言うことは信じられない!」 アンノンはキリヤマの釈明を一蹴すると、再び攻撃してくる。
……ま、後に水爆8000個分と言う、ふざけた超兵器を開発して、惑星ひとつ吹っ飛ばしちゃう種族だからねえ。アンノンがキリヤマの言葉を信じられなかったのも無理はない。
そこへセブンが飛んで来て、いつものバトルとなる。

アンノンの放つビームを、バリヤーで防ぐセブン。
「ウルトラセブン」としては珍しく、手抜きの特撮だ。

それでも、互いにビームを撃ち合って、

それが空中でぶつかって消滅する光学処理なんかは、相変わらずの美しさ。
他にも、セブンがアンノンの体をパンチすると、火花が飛ぶのも、鉱物らしくてナイスである。

セブンは、逃げようとしたアンノンに、リング状のビームを注いで動きを止め、ついでその体をウルトラ念力で持ち上げる。
ここで、セブンがアンノンをぶっ殺していたら、「ノンマルトの使者」みたいに後味の悪い感じになっていたと思うが、

セブン「アンノン、キリヤマの言ったことは嘘ではない。地球人は決して君の星を侵略したのではないのだ」
アンノン「本当なのだな?」
セブン「私も同じ宇宙人、嘘は言わない」
アンノン「ようし、セブンの言うことは信用しよう。しかしアンノン星はいかなる星からの侵略目標にもさせない」
と、セブンがアンノンを説得して、納得して宇宙に帰ってもらうのが大変清々しい決着となっている。
アンノンの本体は、光の球となって岩の体から抜け、宇宙へ飛んで行く。それと同時に、怪獣の体はガラガラと音を立てて崩れ落ちる(オフカメラのSEだけで済ませているのが惜しい)。
事件解決後、ダンたちがポインターでヒロシを駐在所まで連れて帰ると、母親やガキ大将たちが総出で待っていた。ヒロシは、恥ずかしいのか、目を伏せてそこを動こうとしない。

ダン「ヒロシ君、本当に強い子はみんなと仲良くできる子なんだよ」
アンヌ「さあ、いきなさい」(註1)
ダンやアンヌにかわるがわる励まされて、やっとヒロシも笑顔を見せて子供たちに駆け寄り、子供たちもさっきとは打って変わってヒロシ少年の無事を喜ぶのだった。

ちなみに最後にやっと気付いたけど、ヒロシの母親を演じているのは、「ウルトラマンタロウ」41話でも母親役で出ている北川恭子さんだった。
そう言えば「タロウ」の41話も、精神体が壁に乗り移って実体化すると言う、似たような話だったな。
以上、肉体を持たない宇宙人が石に乗り移って怪獣になる……と言うアイディアは面白いのだが、エピソード自体はあまり面白くない16話であった。
まぁ、面白くないと思ったから最初、スルーした訳だが。
理由としては、いちいちダンやアンヌがキリヤマに連絡するシーンをはじめとして、余計な、どうでも良いようなシーンが多過ぎると感じた。そのせいでテンポが悪くなってるし、会話にもあまり工夫がなかった。
(註1……世の中には、アンヌに同じことを言われたい男性が多数いるようです)