第49話「激闘!ダロムの死」(1988年9月18日)
そろそろ終わりが見えてきて、ホッとする同時に一抹の寂しさを感じている管理人であった。
ところで、45話以降、
45話「妖花 ビシュムの死」
46話「壮絶 バラオムの死」
47話「ライダー死す!」
48話「海に追憶の花束を」 49話「激闘!ダロムの死」
と言う風に、48話を除いてキャラクターの名前と「死」と言う文字を組み合わせたサブタイトルで統一されている。本当は、48話がなかったら、奇麗に4話連続となってより一層凄絶かつ厳粛な雰囲気が出せていたのではないかと思う。
もっとも、48話は回想シーンが多い、総集編のようなエピソードであり、元々作られる予定ではなかったが、撮影スケジュールの都合で、急遽追加されたエピソードではないかと思われるから、サブタイトルを統一できなかったのも、スタッフの本意ではなかったのだろう。
さて、クジラ怪人によって海底洞窟の寝台に寝かされていたBLACKの遺体が、クジラ怪人秘伝の「命のエキス」および、日本を離れて行った克美さんと杏子ちゃんが投じた愛の花束の奇跡の力、そしてなにより、BLACKを倒しながら、シャドームーンが奪うことをためらったBLACKの生命の源とも言えるキングストーンの神秘のエネルギーなどの相乗効果によるものか、各部から力強い光を発し始める。
そして仮面ライダーBLACKは、いや、南光太郎は遂に死の淵から生還したのである!
……
無粋なことを言うようだが、やっぱり一度死んだ奴が生き返ったらまずいと思う。
ここは、BLACKが完全には死んでいなかったと言うことにしておこう。

BLACK「クジラ怪人、ありがとう、君のお陰で、僕は蘇った」
なにはともあれ、BLACKは傍らにいたクジラ怪人に礼を言い、がっちりと握手を交わす。

BLACKは光太郎の姿に戻ると、海辺に立ち、可憐な白い花を放り投げる。

海面に揺れる花に、杏子ちゃんや克美さんの懐かしい笑顔が浮かんで消えた。
あの花束のお返しではないが、光太郎はアメリカにトンズラした二人へ惜別の花を捧げたのだ。
光太郎「さよなら、杏子ちゃん、克美さん!」
光太郎の台詞に続いて、ナレーション「杏子と克美に永遠の別れを告げ……」と言うのだが、なんで妙に思い切りよく、「永遠」に別れなければならないのだろう?
日本が平和に戻れば、二人がアメリカから帰ってくるのは分かりきっているのだから、この段階で二度と会うことはないなどと思い詰めるのは、なんか変である。
いや、そもそも、光太郎は二人が日本を脱出したことをどうやって知ったのだろう?
二人は光太郎が死んだと思っているのだから、キャピトラに書置きなど残さなかっただろうし……。
いずれにしても、これ以降、劇中で光太郎と彼女たちが顔を合わせることはないまま、物語は完結してしまう。さすがに、こんな中途半端な別離の描き方には納得できないのだが、今更文句を言ってもしょうがない。
管理人の、オンエア時の終盤の印象があまり芳しくないのは、この辺に原因があるのかも知れない。

さて、光太郎は、今度こそシャドームーンを倒すのだと固く心に誓うと、風をはらんでバイクを走らせ、東京に戻ってくる。
東京は、ゴルゴムの猛攻を受けて廃墟と化し、人影もまばらだった。

そんな中、光太郎は、仮面ライダーごっこをしている子供たちを見掛けるが、BLACKの敗北が既に知れ渡っているのか、BLACK役の子供がワルモノ役の子供たちに負けて、「参りました、助けて下さい、ゴルゴム様~」と、惨めに命乞いをする光景を目の当たりにし、激しく自分を責める。
光太郎(僕がシャドームーンに敗れたばかりに、戦うことに迷ったばかりに……)
と、数人の市民が「ゴルゴム親衛隊だーっ!」などと叫びながら向こうから逃げてくる。
光太郎「ゴルゴム親衛隊?」
初めて聞く名に、険しい顔付きになる光太郎であったが……、
光太郎「なんだ、ただのバカか……」 ただのバカであった。 実際、後の展開からして、彼らはゴルゴムとは無関係で、自分たちで勝手にそう名乗って好き勝手に暴れていたに過ぎなかったようだ。
もっとも、彼らはただ面白がって追い掛け回すだけじゃなく、逃げ遅れた二人の子供に網を投げて、漁でもするように捕まえようとする。
それを止めに入った光太郎が「子供たちにどうするつもりだ?」と問い質すと、

女「決まってるじゃない、生贄として捧げるのよ! ゴルゴム様に」
光太郎「なにぃ」
女「怪人の餌にして貰うのよ、そうすれば私たちだけは助けて貰えるかも知れないだろ?」
紅一点のロックンロール風(レディース風?)ファッションの女の子が平然と答える。
この女の子、「BLACK」のゲストキャラとしてはなかなかの美形である。もっとも、「BLACK」って基本的にあまり可愛い女の子が出て来ない作品なんだけどね。
光太郎「馬鹿な、罪のない子供たちの命と引き換えに自分たちだけ助かろうなんて、恥ずかしいと思わないのか?」
光太郎は彼らにお仕置きしようとするが、光太郎が強いと知るとばかたちはさっさとジープで逃走する。だが、その様子を、毎度お馴染みコウモリ怪人によって目撃される。
その後、BLACKの遺体を捜してあちこち飛び回っていたダロムは、例の海底洞窟に入り込み、クジラ怪人がBLACKを蘇生させようとしていたことを知り、裏切り者であるクジラ怪人を抹殺しようとする。

岩場でダロムがクジラ怪人を追い詰めていると、コウモリ怪人が飛んできて、
怪人「南光太郎が生きてます!」
ダロム「ええっ! お前しゃべれたの?」 変なところに驚くダロムであった……と言うのは嘘である。
管理人は生まれながらの嘘つきである。
それに、前にも確か人語を話したこと、あったよね?
ダロムはまずクジラ怪人を始末してから……と、引き続き攻撃を加える。

いつも元気なコウモリ怪人も、一緒になってクジラ怪人に飛び掛かる。
ほんと、皆勤賞モノの活躍だよね。
だが、クジラ怪人はなかなかしぶとく、そうこうしているうちに光太郎が駆けつけ(コウモリ怪人を追ってきたのだろう)、BLACKに変身してクジラ怪人を守って戦う。
ダロムはBLACKが以前より強くなっていることに緒戦で気付くと、すぐにコウモリ怪人ともども退却する。

シャドームーン「そうか、やはり生きていたか、ブラックサン!」
ダロム「シャドームーン様、どうか奴めの始末、このダロムに!」
シャドームーン「だが、復活した奴の力は以前を上回っている。倒せるかな、お前に」
ダロム「お任せ下さい、とっておきの策がございます」
ダロムはシャドームーンにBLACKの復活を報告すると同時に、自分がBLACKを倒して見せると豪語する。
シャドームーン「面白い、やってみよ、ダロム、見事、奴の首、討ってみせよ」
ビシュムやバラオムも、同じようなことを言いながら結局敗れてきたことを教訓とせず、変に度量の大きいシャドームーンは、あっさりダロムの願いを聞き入れてしまう。
CM後、光太郎が傷ついたクジラ怪人を支えながら、廃墟を歩いていると(海に還してやれよ……)、スタッフの合図を待っていたように数人の市民が現れ、クジラ怪人に向かって石を投げ始める。

光太郎「やめろ、やめてくれ! クジラ怪人は……」
市民「ゴルゴムの怪人をやっつけろーっ!」 
光太郎「クジラ怪人はゴルゴムを抜け……」
市民「ゴルゴムの怪人をやっつけろーっ!」 
光太郎「抜けたんだ。今はもうゴルゴムじゃ……」
市民「ゴルゴムの怪人をやっつけろーっ!」
光太郎「人の話を聞けーっ!」 市民「……すみません」
光太郎は、人の話を聞かない奴が大嫌いなのです。
光太郎、自分も石をぶつけられながら、必死にクジラ怪人を庇おうとするが、クジラ怪人は「よせよせ」と、光太郎の袖を引っ張る。
理性をなくしている彼らに何を言っても無駄だと言うのであろう。

逃げる二人をしつこく追いかける群衆。
……
笑いながら走るんじゃねえと、何度言わせれば分かるんだぁーっ! (管理人の魂の叫び)
この女の人、さっきも笑いながら石投げてたな。
管理人は、どうせエキストラだからと、適当な仕事をするエキストラが嫌いです。

と、人々の後ろから、さっきのばかたちが得意げな顔で現れる。
どうやら、彼らが人々を焚き付けて、さっきの仕返しとばかり光太郎たちを襲わせたらしい。
だが、今度は彼らの背後からダロムとコウモリ怪人が現れる。

ダロム「逃げることはない、我らは仲間ではないか。えー、ゴルゴム親衛隊の諸君?」
何か魂胆があるのか、親しげな口調で彼らに話しかけるダロム。
その後、コウモリ怪人が幼い女の子を捕まえて空を滑空すると言う騒ぎが起きる。

ここは、ちゃんと子役を吊って撮影しているのがえらい。
光太郎は、クジラ怪人と一緒に工事車両の陰に隠れていたが、少女の母親の助けを求める声を聞いてその場を離れる。

だが、それは光太郎をその場から引き離す為の囮であった。
すぐにダロムの意を受けた親衛隊が動けないクジラ怪人の前にやってくる。
女「大人しくしな、お前をあの光太郎って奴から引き離せば助けて貰えるんだ。あたしたちだけ特別にね」
クジラ怪人は立ち上がるが、両手を差し出して、「お縄を頂戴」みたいなポーズを取り、無抵抗で彼らに縛られて何処かへ連れて行かれる。
ナレーションは「自分の命と引き換えに助かる命があるなら本望……」と、クジラ怪人の気持ちを代弁するが、普通、こんなばかたちの為に命を差し出そうと考えるだろうか?
一方、光太郎はBLACKに変身してコウモリ怪人から少女を助け出すが、元の場所に戻ってみると既にクジラ怪人の姿は消えていた。
さて、親衛隊は、クジラ怪人をダロムに差し出し、あわれ、クジラ怪人は倉庫の天井からさかさまに吊り下げられる。
女「言われたとおり、連れてきました。助けて貰えるんでしょ?」
ダロム「そうはいかん」
男「約束が違うぞ!」
ダロムは聞く耳を持たず、コウモリ怪人に彼らを襲わせる。

ダロム「用は済んだ、一足先に眠らせろ!」

だが、そこへBLACKがバトルホッパーで壁を突き破って飛び込んで来る。

ダロム、頭から伸びる一対の触手から特殊な素材のロープを出して、BLACKの体を縛り上げる。
更に、得意の念力でBLACKの体をギリギリ締め上げる。
ダロム「仮面ライダー、今度こそ貴様の最後だ! コウモリ怪人!」
動けないBLACKに宙を飛ぶコウモリ怪人が襲い掛かる。

女「負けないで、仮面ライダー!」
男「頑張れ、仮面ライダー!」
ここに来て、親衛隊の皆さんが口々に仮面ライダーを応援し始める。
……いや、応援してないで、自分たちで何とかしろよ。
ストーリーの流れからして、ここは親衛隊の皆さんに行動でその改心を証明して欲しかったところだ。捨て身でコウモリ怪人にぶつかっていくとかね。
それはともかく、このまま行けば、ヒラ怪人なのに仮面ライダーを倒してしまった初の怪人としてコウモリ怪人の名は悪の組織の歴史に燦然と輝き続けることになったのだが……。
ここで、クジラ怪人が特殊な音波を発して、超音波を利用して空を飛んでいるコウモリ怪人の動きを乱す。
その隙にBLACKはいましめを解き、クジラ怪人を助けて、倉庫の外へ。

そして、遂にBLACKとダロムの最終決戦が始まる!

コウモリ怪人は、分相応の相手……ばかたちをしつこく追い掛け回していたが、ここでもクジラ怪人の特殊な潮を浴びて、戦闘能力を失ってしまう。
クジラ怪人、ちょっと目立ち過ぎじゃないか?

BLACKは、ダロムの攻撃を受けてもたじろぐことなく向かっていく。

自身が言うように、完全に吹っ切れたのか、その威風堂々とした歩みに、コウモリ怪人はおろか、ダロムさえ気を呑まれて立ち尽くしている。
目障りなコウモリ怪人を右回し蹴りで一蹴すると、

ダロムがさっきと同じ触手を伸ばそうとするのを予測して、素早く「キングストーンフラッシュ!」を放つ。
このシーンは短いけど、西部劇の一対一の対決のような緊張感がある。
出来ればもう少しじっくりと描いて欲しかったところだ。
ダロム、「キングストーンフラッシュ」をまともに浴びて、大きくのけぞってよろめく。

BLACK、いつものように腕がぶるぶる震えるほど力を込めてから、必殺のライダーパンチ、ライダーキックをダロムの体に叩き込む。

三大怪人のリーダー格であったダロムであるが、何故か最後の死に様は他の二人に比べてもパッとしないものだった。
「シャドームーン様、ばんざーい!」みたいな定番の台詞もなく、(場所の問題もあるが)爆発も実にしょぼいものだった。
正直、ちょっとがっかりだな。
戦いの後、ばかたち改め若者たちはクジラ怪人に駆け寄り、その体を気遣う。
女「クジラ怪人、ごめんなさい……」

そんな彼らの様子をBLACKが屋上から満足にそうに見つめている。
女「仮面ライダー、私たちも戦います。あなたがいる限り……」
BLACK「でも、キングストーンフラッシュ!」 若者たち「ギャーッ!」
……嘘です。

一方、コウモリ怪人はしぶとく生き残ってシャドームーンの前に戻っていた。
シャドームーン「なにっ、大怪人ダロムが死んだ? むぅ」
まさか、コウモリ怪人が三大怪人よりも長生きするとは……と驚いたのも束の間、クジラ怪人の潮や、ライダーの回し蹴りのせいか、ここで遂にコウモリ怪人にもお迎えが来る。
コウモリ怪人はシャドームーンの目の前で燃え上がり、消滅する……。
シャドームーン「ブラックサン、私はここに宣言する、必ずやこの手で貴様を倒し、次期創世王の座に就いて見せる!」 と言う訳で、遂にシャドームーンはカーラとマーラを除くとひとりぼっちになってしまった。
一応、この後、トゲウオ怪人と言うゴルゴム最後の怪人が登場するんだけどね。
いよいよ高まる最終決戦の機運……50話へ続く!