第14話「一年目の奇跡」(1985年1月12日)
の続きです。
OP後、まず目に飛び込んでくるのは試合の様子ではなく、

大きなお寺で行われているイソップの通夜の模様であった。
大映ドラマは数あれど、こんなに盛大な葬式のシーンが出てくると言うのは他ではちょっと記憶がない。
これだけの規模の葬儀をやるというからには、イソップの家は経済的にかなり裕福なのだろう……でも、今まで出て来た家の感じでは、あまり金持ちそうでもなかったが。まぁ、一人息子の葬式だから、両親もフンパツしたのだろう。
全然関係ないが、日本の、葬式にやたら金を掛ける習慣、頼むからなくなって欲しい。
葬儀屋と坊主が喜ぶだけの散財など、真っ平御免である。ケッ。
(管理人さんが、何か嫌なことを思い出された様子です……落ち着くまでしばらくお待ち下さい)

(落ち着いた)早々と来て、イソップの遺影に手を合わせている節子さん。
考えたら、節子さんって、娘は幼稚園だし、パートもしてないし、毎日かなり暇なんだろうなぁ。
そんな変化のない日々の中、よく家に遊びに来る逞しいラグビー部の部員(大木)と道ならぬ恋に落ちる……なんてことを妄想するのも楽しいよ!

会場には、自分の名前をでかでかと書いた花輪を目立つところに置いて、抜かりなく自分の名前を売ろうとする市会議員・内田の姿も見られた。
さて、肝心の試合であるが、序盤、イソップの死によってかつてないほど奮い立つ川浜の勢いに、さしもの相模一高も気圧されていた。
だが、大木はイソップのことを思うあまり冷静さを失っていて、ボールを持ってひとりで突き進んでタックルされ、折角のチャンスを潰してしまう。
滝沢の「大助、ひとりでラグビーやろうと思うな!」と言う掛け声を聞いた大木は、なんと試合中にも拘らず、本日三回目の回想シーンに突入するのだった。
審判「フラッシュバックタイム!」(註・言ってません)

イソップ「ラグビーの精神はね、ワン・フォア・オール、オール・フォア・ワンなんだよ、ねえ、分かる?」
土手の上に寝転がっている大木にイソップがしきりにラグビーのことを語って聞かせている。
イソップ「ラグビーに一人のヒーローは要らない。全員がヒーローにならなきゃ勝てないんだよ」
大木「へーへー、左様でございますか」
大木、面倒臭そうに体の向きを変えて適当な相槌を打つ。
今更ながらイソップの教えを思い返す大木であったが、時遅し、大木のプレーで試合の流れは相模一高に傾き、トライを決められ、ゴールキックも許す。
これで6点を先取された形になる。
その後、更に4点を取られ、10対0と差が開く。
前半が終わり、スコアボードの上では、前回の惨敗と比べて信じられないほどの善戦であったが、選手たちの表情は一様に暗い。

加代がみんなを元気付けようと、その点を強調して誉めるが、
光男「けど、俺たちがゼロであることには変わりねえよ。俺たちはいつまで経ってもゼロだよ」
マルモ「ちっきしょう、どうして勝てねえのかなー」 ビア樽のような腹を揺らしてマルモが慨嘆する。
光男「……」
大木「……」
滝沢「……」
加代「……」
みんながこの瞬間、心の中で何を叫んでいたのかは各位の想像にお任せする。
大木「俺が悪かったんだ。俺が先制のチャンス、逃しちまった」
滝沢「そのとおりだ。お前が試合の流れを変えたんだ」
いつもなら「お前のせいじゃないさっ」と白い歯を光らせて否定するところだが、今回に限って、滝沢は厳然たる事実を指摘する。

加代「先生、そんな言い方したら大木くんがかわいそうですよ」
玉川「そうですよ、誰だってミスはあります」
滝沢「そうだ、誰だってミスをする。しかし問題は、そのミスを次にどう活かすかだ。だが今のお前たちはたった一つのミスに戦う意欲をなくして負け犬根性の虜になりかかってる! そんなことでどうするんだ。そのままじゃ、お前たちのゼロ行進はいつまで経っても終わらん。イソップが泣くぞ」
滝沢、大木のみならず、チーム全体に覆い被さる弱気に活を入れる。
大木「先生、教えてくれ、どうやったら勝てるんだ?」 切羽詰ったように、大木がとても選手が試合中にするような質問とは思えない質問を放り込んでくる。
それを遠くで耳にした勝又(あんなチームと試合してたのか、ワシら……)と心の中で嘆いたと言う。
管理人がもし監督だったら、
「そうだな、相手より多く点を取ったら勝てるんじゃないかな?」と小笑いを取りに行くところだが、生真面目な滝沢は、
「弱気にならずに、今までやってきたことをそのままやればいいんだ!」 と、今度は選手たちの方が「え……?」と言う顔になるようなクソの役にも立たない精神論で応じる。
ここはせめて、もうちょっとテクニカルなこと……専門用語を使わなくても良いけど、「大木が囮になって敵を引き付けるんだ」みたいな具体的なアドバイスが欲しかったところだ。

滝沢「今度ボールを持って走る時、お前の後ろには14人の仲間がいることを忘れるな」
大木「15人だ。イソップも俺の後ろを走ってる!」 滝沢「そうだ、そのとおりだ」
大木「やってやるぜ、このままじゃ、イソップに合わせる顔ねえよ!」
大木の叫びに呼応して、他の部員たちも俄かにやる気を取り戻して気合を入れなおす。
結局、彼らには100の技術論より、1つの精神論のほうが有効だということか……。
その間、きっと勝又監督は選手たちに、素人には理解できないような高度なアドバイスをしていたであろうが、その様子は一切映し出されない。
後半が開始される。
開始早々、大木がペナルティキックを得るが、キッカーの光男が失敗して得点ならず。

と、そこへふらりとやってきたのは、新聞記者の木村であった。
……どいつもこいつも暇だなぁ。
木村「頑張ってるじゃないか、さしずめ、イソップの弔い合戦ってとこかな」
滝沢「ご存知なんですか」
木村「俺、ブンヤだぜぇ」 木村の言葉には、説得力が悲しいほどになかった。
その直後、遂に川浜がトライを上げるが、続くゴールキックはまたしても光男が失敗してしまい、4点どまり。
一方、葬儀会場。
イソップの(一応)担任だった甘利先生が、逐一試合の経過をほかの教師たちに知らせていた。

甘利「イソップ、みんな頑張ってるぞ、相模一高から初めてトライを奪ったんだ」
甘利先生は、イソップの眠る棺に向かって話しかける。
イソップ「ソレハヨカッタデスネー」 甘利「ぎゃーっ! し、死体がしゃべったーっ!」 ……と言うような不謹慎なギャグを考えた管理人であったが、ボツにした(きっちり書いてるけど)。
甘利先生の言葉に、そばに控えていたイソップの母親がハンカチを顔に当てて号泣する。

すかさず節子が母親に歩み寄り、「奥様、少しお休みになった方が……」と、美しさだけじゃなく、気遣いも一級品ですのよ、おほほほ……と言う出来る女ぶりを、大勢の人の前でアピールする。
川浜の健闘を知った内田親子は居ても立っても居られなくなって、葬儀場から急いで相模一高へ向かう。
ま、彼らは良いのだが、

真面目に仕事をする気が
全くない下田も、さっさと店を閉めて、「ああ、ごめんよ、店仕舞いなんだ」と、入りかけた老夫婦をすげなく追い払ってスクーターを発進させるのだった。
……
こんな店、さっさと潰れてしまえ! さて、波に乗る川浜は、相模一高から二本目のトライを奪うものの、今度も光男がキックを仕損じてしまい、4点しか取れず、同点のチャンスを逃す。
さらに、残り5分で相模一高にペナルティゴールを奪われ、13対8となる。

木村「どうやらゴールキッカーの差が出たようだな」
滝沢「おい、あと時間何分あるんだ」
加代「ロスタイム入れても3分ちょっとあります」
終盤の試合経過は、迅速に甘利先生によって葬儀場にもたらされる。
甘利「そろそろノーサイドかと」
教頭「善戦、空しくか」
柳「まだ負けたと決まった訳じゃありませんわ」
校長「そうです。まだ負けた訳じゃない」
教師たちの反応は様々であったが、

別室にいる両親のそばにいた節子は、不意に、「勝ちますわ……主人は浩さんの霊に必ず勝つと誓いました。勝ちます、必ず勝ちます。
どんな手を使ってでも勝ちます!」と、確信ありげに断言するのだった。

終盤、相手ゴール前でスクラムを組んでいる川浜。
激しく相手と押し合っていた大木がふと顔を起こすと、

スクラムの中に、懐かしいイソップの顔が見えたではないか!
無論、それは大木の見た幻影であり、実際はこともあろうにマルモの顔であったのだが、

イソップの霊に励まされた大木は、こぼれた球を素早く拾うと、

そのままゴールに走りこんで、起死回生のトライを決めるのだった。
大木「やったーっ!」
地面を殴りつけて喜びを爆発させる大木。
この時点で、13対12となり、次のゴールキックが勝敗を分ける重要なプレーとなる。
その3へ続く。