第6話「お帰りなさいませ、御主人様!~萌え系メイドカフェ殺人事件」(2006年2月5日)
港区赤坂のメイドカフェ「かめいど」の人気ナンバーワンメイド、城星ナーミと言う女性に対する殺人予告事件が発生する。
雷「岡野さん遅いなぁ……」
岡野「お待たせ」
先に店の前に来て腕時計を見ながら岡野を待っていた雷、その声に振り向くと、

岡野が壊れていた……じゃなくて、コスプレしてポーズを取っていた。

岡野「ぶーん、ぶーん、ぶるるーん! はっはっ、お面バイカーいびき(?)参上! どう、我ながら完璧なコスプレ!」
無論、これは「仮面ライダー」の、ぎりぎり問題の発生しないパロディである。
「いびき」の部分はなんと言っているのか良く分からないのだが、当時、「仮面ライダー ヒビキ」と言うのが放送されていたから、そのもじりだと思う。
それにしても、あの凛々しかった哲也さん↓がこんなことに……時の流れは、げに恐ろしい。
「不良少女とよばれて」第24話より 
潜入捜査に来てるのに……と、雷は当然怒るが、岡野によればこの店では何かのコスプレをしてきた客に対し、抽選で撮影会に参加できる権利が与えられるシステムらしい。
雷「話が見えないんですけど」
岡野「いいか、脅迫してきたやつは熱烈なメイド萌えに違いない。従って自慢のコスチュームに身を包んでやって来るはずだ。だからこういうコスプレの方がオタクたちに紛れてかえって分からないと言うものだ。潜入捜査の基本中の基本だよ」
雷「そんなこと言って、単に自分がコスプレオタクなだけなんじゃないですか?」
二人があれこれ話していると、自身も釣りキチ三平(ドラマでは、さんぺーた)のコスプレをした、かめいど店長・秋葉が話しかけてくる。
秋葉「これがナーミちゃん宛に届いた脅迫状です」
雷「指、どうかされたんですか?」
秋葉が封筒を持つ親指に絆創膏が巻かれているのに気付き、雷が何気なく尋ねる。
秋葉「昨日河口湖に釣りに行って、針で引っ掛けちゃったんです」
無論、これはミステリードラマなので、このやりとりが後々の伏線になっているのである。

雷「愛しのナーミたん乙。御主人様はナーミたんに萌え萌え~♪ (中略)まずは詳細キボンヌ」
雷、その手紙をいかにもそれらしい喋り方で音読して聞かせる。
だが、おじさんの岡野には2ちゃんねる的なスラングが散りばめられている、緊張感と真実味のない脅迫状の内容がいまいち理解できない。ま、言っても10年以上前のドラマだからね。

岡野「ねえ、この乙ってなぁに?」
雷「お疲れ様って意味です」
岡野「それじゃ、このキボウヌってのはなに?」
雷「希望しますの略です」
岡野「そう、詳しいんだね」
画面には、雷の台詞に合わせてちゃんとテロップも表示される、親切なドラマなのである。

雷、ここで不意にカメラに向かい、
雷「CXの『電車男』に出た時、だいぶ勉強しましたから!」
と、雷ではなく小出さんとして視聴者に可愛く説明する。
それにしても「電車男」か、懐かしいなぁ。
見たことないけど……。
雷「それで、この、メイドをやめちゃうっては本当なんですか」
秋葉「はい、さびしいですが、仕方ありません」

無念さを押し殺すように言う秋葉の顔をじっと見詰める雷。
とにかく三人は店に入るが、一応メイド喫茶と言う設定なので、二人のメイドが「おかえりなさいませ、ご主人様、お嬢様」と、にこやかに挨拶する。
さすがにトミー、劇中とは言え、こんな店にやってきたのは生まれて初めてだと思うが。
秋葉が、イベントの準備があるとその場を離れた直後、雷はくんくんと鼻を動かし、「なんかニンニク臭くないですか?」と岡野に尋ねる。
無論、これも後の伏線になっているのだ。
……しかし、まだ何の事件も起きていないが、秋葉が犯人だってバレバレだなぁ。
その後、コスプレをしたむさ苦しい客たちの前にそのナーミと言うメイドが登場する。
化粧は濃いが、なかなかの美人である。
そして、抽選会が行われ、当選した2名だけが、ナーミの最後の撮影会に参加できることになる。

抽選に外れた人たちはすごすごと帰っていくのだが(なんで帰るの?)、店の出口でメイドから「メイドの土産です」と記念品を渡される。
「メイドの土産」、つまり「冥途の土産」と言う、しょうもないシャレである。
管理人はそう言うしょうもないギャグが大好きである(言わなくても分かるか)。
他の客がみんないなくなったところで、撮影会が開始される。
具体的には、ナーミが次々とコスプレを変えながら、お立ち台に立ち、それを二人の当選者がバシャバシャ撮りまくると言うものであった。

最初は普通のメイド姿で、2番目は「鉛の錬金術師」と言う架空のアニメのキャラクター。
雷「パロディの方向、間違ってませんか?」
カウンターに座ってその様子を眺めている雷がぼそりとつぶやく。

3番目は、「鉄鋼戦士みるく」のゴスロリファッションと言う、管理人には元ネタがなんなのかすら分からないキャラクター。

ナーミを演じているのは「もも子」と言う人なのだが、何をやっている人なのか良く分からない。
こういうポーズをしたらそりゃ可愛いけど、どうせなら雷がコスプレをする……と言う流れにして欲しかった。

で、最後となる4番目は「お天気魔女・雨乞いルーシー」と言うキャラクター。
岡野は、何も起こりそうにないと油断していたが、秋葉がストップウォッチ片手に撮影終了を宣言すると同時に、

突然、ナーミの着ているドレスが燃え出し、あっという間にナーミの全身を炎で包み込んでしまう。
雷たちにも手の施しようがなく、ナーミは脅迫状の予告どおり、殺されてしまった。
……うん、これって、雷と岡野の
大失態だと思うのだが、二人は何事もなかったような顔で淡々と捜査を開始する。
岡野、抽選に当たった二人のうち、メーテル風のコスプレをした男性を呼び出し、いきなり「お前が犯人だ」と決め付ける。

岡野「そのコスプレだよ、キャラクターの名前が全てを物語っている!」

岡野「あんたは我々に気付かれないようにエーテルを吹きかけていたんだ!」

岡野「どうだ!」
何故か、ここで萌えイラストによる再現シーンと、名指しシーンになる。
「ケータイ刑事」にしては金がかかっているよね。
雷「待ってください、エーテル(ジエチルエーテル)の発火温度は160度です、ステージ上がそんな高温になったら私たちも熱くていられなくなった筈です」
岡野苦心の推理だったが、雷にあっさり否定される。
……でも、部屋そのものを熱くしなくても、チャッカマンを使えば発火するんじゃないのかなぁ?
もっとも、それ以前に、撮影しながらエーテルを相手にかけるなんてことをすれば、雷たちが気付かない筈がないので、どっちにしろ不正解なのだが。

岡野はめげずに、その男が飲んでいたダイエットドリンクに着目する。
岡野「それは28種類のアミノ酸が体脂肪を燃やすって言う、例の……と言うことは……あの時、あんたの汗がナーミちゃんにかかった。それで体脂肪と一緒に燃えてしまったんだ!」
雷「体脂肪が燃えたからって体が燃える訳ないでしょう!」
岡野の意味不明の推理は、またしても雷に粉砕される。
ならばと、岡野は残る当選者を呼び出し、いきなり犯人だと決め付ける。

岡野「答えはその眼鏡だ。あなたはその眼鏡のレンズを使ってステージの光を集めた。そしてナーミちゃんに火をつけた!」

雷「それは無理です」
岡野「どうしてーっ?」
雷「(スポコンに)ちょっと眼鏡を貸して貰えませんか? このレンズ、まったく度が入ってないんです。これじゃあ何時間かけても光なんか集められません」
またまた雷に明快に否定された岡野だったが、なおも挫けず、

岡野「ちょっと待って下さいよ、あなたの好きなコスプレは?」
男「僕はスポ根が専門です」
岡野「やっぱりあなたが犯人だ!」
男「ど、どうしてですか」
岡野「すなわち、人体自然発火現象……英語で言うと! むんっ」
英語で何て言うのか分からなかったので、雷に言わせる。

雷「スポンティニアスコンバッション……」
岡野「そう、スポンティニアスコンバショ!」

岡野「略して、スポコン!」
テロップの文字を圧縮して、無理矢理、スポコンにする岡野。

岡野「はっはっはっはっはっ」
雷「ただの駄洒落じゃないですか!」
岡野「あっ」
雷、そのスポコンにチョップして、画面の下に叩き落す。
役者の動きとテロップを連動させたお遊び、「雷」ではちょくちょく出てくる演出である。
と、そこへ、血相変えて秋葉が飛び込んでくる。その手には脅迫状のコピーが握られていた。
秋葉は、それをメーテルのカバンから見付けたと言い、続いてスポコンの持ち物からもコピーが発見される。
単純極まりない岡野は、二人を容疑者として強引に連行していく。
雷、再び秋葉の体からニンニク臭を感じ取り、

雷「臭う……悪の香り……あ、違う、違う、よどむ、悪の天気……」
人差し指をかざし、いつもの決め台詞をつぶやく。
雷、取調べから戻ってきた岡野に頼んで、あのお立ち台に立って貰い、撮影会の時と同じようにスポットライトを浴びせる。

雷「ポーズとって下さい、なんでもいいんで」
岡野「こうか、どうだ、むっ」
岡野、とにかく色々なポーズを延々取り続ける。

頑張ってるおじさんの姿に、思わず微笑む雷。
こういうところにも、雷の性格の良さが表れていると管理人は思うのだ。
これが、性格の悪い宮崎あおいの銭形愛だったら(註1)、しらけきった顔でそっぽを向いているだろう。
(註1……宮崎あおいの性格が悪いと言ってるのではなく、宮崎あおいの演じている愛の性格が悪いと言っているのである。くれぐれも誤解無きよう)
撮影会と同じ10分が経過したところで、雷はお立ち台周辺の温度を測る。
雷「42度か……」
岡野「青春の熱い日々を思い出したよ。はっははぁ、しかし火がつくほどではなかったなぁ」
そこへ柴田がメーテルたちが撮影したナーミの写真を現像して持ってくる。雷、その写真を見て、漸く真相に辿り着く。
以下、解決編となる(一応、ネタバレ注意!)

秋葉が何気なく店に入ってくると、メイドコスプレをした岡野が手でハートを作りながら、「お帰りなさいませ、ご主人様

」とにこやかに挨拶する。
嗚呼、哲也さん……、こんな変わり果てた姿になって。
秋葉「まだいたんですか」
雷「今からある実験をしたいと思います」
秋葉「実験?」
雷「はい、店長さんも是非ご参加下さい」
秋葉「あ、あの~」
雷「お願いしまぁす!」 雷、ここで必殺の招き猫ポーズを決めて、秋葉を落とそうとする。
秋葉「萌え~っ」

が、それに続けて、「お願いします!」と、岡野まで悩殺ポーズを取ったので、秋葉は「萎えっ」と凹む。
うう、哲也さん、どうしてこんなことに……(しつこいですか?)
とにかく、秋葉は雷の言う実験に付き合わされることになる。

雷「ここで問題です。物が燃えるには三つの要素が必要となりますが、それはなんでしょう?」
岡野「はいっ、燃える物と酸素と温度の上昇です」
雷「ピンポンピンポン!」
岡野「実はねえ、私、こう見えても東京大学法学部の出身なんですよ」
秋葉「はぁ……」
雷「ま、今のは小学生用の問題でした」
岡野「……」
雷「さて、燃える物、つまり可燃物にはそれぞれ引火点や発火点と呼ばれる温度が存在します。ガソリンを例に取ると、引火点は-40度以下、発火点は300度となります。そしてここからが重要なんですが、発火点に達しさえすれば、着火しなくても火は燃える訳です」
岡野「しかし、火の気もないのに300度以上の高温になることってあるんですか」
雷「まず、ありません」
岡野「じゃダメですね」
雷「ですが、そこまで高温にならなくても発火する可燃物があるんです」
岡野「それは?」
雷は、照明によって自分のいるところが十分熱くなったのを確かめると、岡野に明かりを消してもらい、ステージ上に青白い、人魂のような炎を燃やして見せる。
岡野「今のはなんだ? それニンニク臭いな」
雷「リンです。リンは外気に触れるとニンニクとよく似た臭いを発するものなんです。これが人体自然発火のトリックです」

岡野「ちょっと待った、あの時は確か、全身がブワーッと燃え上がった。しかし今の火はすぐに消えちゃったじゃないか。第一、炎の色が全然違う」
雷は、ナーミの体に火が付いた前後の写真を岡野に見せ、全身が真っ赤に燃え上がる直前、青白い炎がナーミの服に発生していることを示す。
雷「リンの小さな火種が、引火性の高いポリエステルの衣装に燃え移った。それで赤い炎になったんです」
秋葉「なるほど、勉強になりました。じゃ僕はこれで失礼します」
トリックを看破されたと言うのに、秋葉は抜け抜けとその場を離れようとするが、そこへお仕置きの雷が落ちてくる。
秋葉「あんたが着火してどうすんだ!」
雷「ナーミさんを殺したのはあなたですね」
秋葉「証拠はあるんですか?」
雷「雨乞いルーシー、ナーミさんが最後に来ていた衣装です。焦げ跡から微量のリンが検出されました。あなたが付着させたんじゃないんですか」
秋葉「そんなのはやろうと思えば誰だって出来る。僕が犯人だって証明できるんですか?」
雷「出来ます」
往生際の悪い秋葉に、雷が二カッと笑って説明する。

雷「ナーミさんの撮影タイムはひとつの衣装につき約1分、その間ステージ上は、照明のせいで徐々に熱くなっていきました」
ナーミ「なんか熱いですー」
雷「リンは摂氏35度から45度の間で、発火すると言われています。ステージがその温度に達するまで約10分……」
ナーミ「熱いなー、もう熱いなー」
雷「これは撮影の終了時間とほぼ一致します」
ナーミ「ひゃーっ! 燃えちゃいましたーっ!」
雷は、衣装の順番を決めることが出来たのは店長の秋葉だけだと指摘する。
つまり、リンが発火すると思われる時刻に引火性の高いポリエステルの衣装をナーミが着ていたのは偶然ではなく、ナーミを焼き殺す為の秋葉の陰謀だったと言うのだ。
無論、それだけでは証拠にはならないが、「言いがかりだ!」と、雷を指差した秋葉の親指の絆創膏の下に、釣り針による傷ではなく、火傷の跡が残っていたことが最後の決め手となる。
雷「それは今日、リンを仕込もうとして出来た火傷の跡じゃないんですか? リンは劇薬です。きちんと取り扱わないととても危険なんですよね」
図々しい秋葉も、ここに至って遂に罪を認める。
秋葉がナーミを殺したのは、メイドをやめてアイドルになろうとしていたナーミが許せなかったと言うしょうもない動機からだった。
何の余韻もなく終わる(疲れた)。